紛糾しない会議、事件は現場で起こってます
その日の夕食が済むと、本日起きた事柄について話し合う。──冒険先では何事も無く、平穏無事に終了したらしい。
それでは、と俺はメリッサが渡してくれた紙の内容を(ある程度省略して)読み上げ、神貴鉄鋼で作った魔法の剣が、水の神の力を増幅させた事について触れ、鍛冶屋の工期が短くなる事を告げた。
……なのに、誰も何も言わない。
「おい? 何か言う事は無いのかい? 管理局が横暴にも、権力を使って作業員を増やすなど不平等だ、とか。神貴鉄鋼を使って魔法の剣を作るのは管理局がやればいい、とか。何か無いの……」
団員は互いの顔を見合わせたり、目の前に置かれた茶器に指を掛けたりしながら、何かを考えている様子だ。
「いいではありませんの、工期が短縮される事もそうですが。これはオーディスワイア旅団長の、錬金鍛冶師としての実力を認めたという事でしょう。これは、我々旅団員としても誇らしい事ですわ」
レーチェが言うと、他の団員達も「うんうん」とか「確かにそうだ」と納得してしまう。
ユナもこう発言して場を収めてしまう。
「魔法の剣の作製については高い技術が求められるらしいので、オーディスワイアさんしか安定して作れないのが現状だと思います。だからこそ管理局も『黒き錬金鍛冶の旅団』の拠点を改築する事に、協力する気になったのではないでしょうか」
彼女の言葉に危うく「確かに」と納得しそうになる俺。
しかしこのままだと、俺にばかり管理局から仕事が回されて来る事になり、鍛冶屋としての作業が出来なくなったり、旅団員の装備も錬成出来なくなるかもしれんぞ、と脅す。
そう宣言すると、さすがに旅団員の間からざわめきが起こる。確かにそれは問題だと話し合う一方で、リトキスが冷静な口調で喋り出した。
「確かに旅団長一人で、いくつもの作業をこなすのは無理でしょう。ですからここは、助手を雇うべきではないでしょうか。将来、鍛冶屋を引き継いでくれそうな若手を育てる事も、職人の責務ですから」
リトキスはそれよりも、神々の力を増幅して、新たな転移門を開放する可能性が増える事の方が重要だ。と言って、俺の尻を蹴り上げる様な事を口にする。
いずれ俺は管理局から送られてくる神貴鉄鋼と、各冒険者が持ち込んで来る錬成品や、素材に押し潰されて死んでしまうかもしれない。
そんな恐怖が脳裏を過ぎり、その日の夜は打っても打っても無くならない金属の延べ棒と、堆く積み上げられた武器や防具が雪崩を起こし、俺を潰してしまう悪夢を見て、目が覚めた──




