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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第四章 新たなる旅立ち

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神々、あるいは世界への奉公

「メリッサさんは仕事の鬼」というサブタイトルの方が良かったかな(笑)

 「水清めの儀式」で起こった、新たなる神への精霊力の供給についての報告書を読み終えると、メリッサは次に、建築に関する優遇措置の執行しっこうについて書かれた文書を渡してきて、その内容について暗唱して聞かせてくれた。

 彼女が、いかに今回の事を重く受け止めているかが伝わる。


 それはそうだろう。今まで不要とされてきた物が有用となり、それが最も重要な行程に関わるものだったのだから尚更なおさらだ。


「今回の神貴鉄鋼シルエヴァルリスの錬成品について神々へ使者を送り、ご意見を伺う事もしています。これから神貴鉄鋼は神々の力を増幅させる目的にのみ使われる、と考えて下さい」

 彼女は断定的に言う。


 我ながら、とんでもない問題に腕を振るってしまったようだが──後の祭りだ。腹をくくるしかない。


「ともかく、あなたの魔法の剣の作製技術のお陰で、新たな転移門を開放する効率が上がる訳ですから、これはフォロスハート全体にとっても、大きな飛躍です。それを考慮しての建築作業への優遇措置であると理解して下さい」

 鍛冶屋の建て直しの短縮が報酬と言う訳か、工期を短くする代わりに、神貴鉄鋼の錬成に力を入れろ、と言われている気しかしないな。


「しかし、建物の増改築にまで口を出し、あまつさえ権力を振りかざして、建築現場の作業員を増やすだなんて、そんな横暴が許されるのか?」

 俺が言うと彼女は表情で「何を言っているのですか」と訴えてきた。

「公的な利益の為に権力を使うのが、公的権力側に立つ者の義務です」

 彼女は「どうだ」と言わんばかりの()()()をして見せる。つまり俺を公的利益の為に使い倒す気なのか──やだ、この人。絶対上司にしたくない。

 俺はぼそっと「部下は大変だろうな」と漏らしたが、彼女の耳には入らなかったようだ。


「この神貴鉄鋼の錬成品を使えば、『大地の接合』にも使えるのではないかと、私は期待しているのですよ。もちろん課題が多いのは理解していますが」

 フォロスハート以外の大地に居る精霊や、神々の中枢がなんなのか、どこに居るのかを突き止めなければ、力を与える事も出来ないだろう。

 各大地に居ると思われる、それらの存在に呼び掛けるには、やはり四大神の力が必要になるかもしれない。


 メリッサは伝えるべき事を話し終えると、俺が手渡した硝子がらす小鉢の中の小さな植物園を観察し始める。彼女にもテラリウムの良さが伝わると良いのだが。


「硝子の中に小さな自然……管理局の施設には、『都市の中にも自然を』という事が求められて、公園を設置したり、鉢植えにした植物を観賞する慣習かんしゅうが昔からありますが……。これは何だか可愛らしい物ですね」

「机の上にも飾れるからいいんだ。霧吹きで水を与えてやれば長持ちするし、愛着も湧く」

 彼女は頷き、それでは頂いていきますね、と言って帰ろうとする。


「忙しそうだな」

 俺の別れの言葉に彼女は振り返り、物騒な予言をした。

「鍛冶屋が新しくなれば、あなたはもっと忙しい目に会いますよ。鍛冶場を手伝う者を雇い入れる事をお勧めします」

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