神々の力の増幅と優遇措置の説明
旅団の仲間を送り出し、庭で小鉢植物園を作っていると、玄関の扉を叩く音が聞こえてきた。花壇の側に小さな椅子を置いて、のんびりしているとこれだ。たまには休ませて欲しいものだ。
「はいはい、なんでしょう」
ぞんざいな態度で扉を開けると、そこにはメリッサが立っていた。彼女は固い素材の手提げ鞄を手にしており、何やら真剣な──いつもそうだが──表情をしている。
「少しお話がありまして」
俺はぴんときた、これはまた厄介な事を押し付けてくるつもりだと。
「お引き取り下さい」
そう言って扉を閉めようとすると、扉に体当たりする勢いでメリッサが扉をぐいぐい押してくる。
「ちょっと! 何故閉めるのですか! 話を聞いて下さい!」
俺が改めて「お引き取り下さい!」と喚くと、彼女は半分キレて「お引き取りしません! ぜっっっっったいに、帰りませんよ! ここを開けて下さい!」
仕舞いには扉の隙間に固い手提げ鞄を突っ込んで、何が何でも閉じさせないつもりだ。
さすがにこれ以上抵抗して、彼女を怒らせるのもまずいだろうと思い、渋々と彼女を庭に通す事にした。
メリッサは、はぁはぁと肩で息をしながら恨めしそうな目で、こちらを睨んでくる。
「まったく……なんなんですか。……客を閉め出そうだなんて──酷い旅団もあったものです」
俺はゆっくりしていたかったのに、と文句を口にしながら花壇前に置いた椅子に腰掛け、硝子の器の中に、摘み金具を使って丸みのある石や角張った石などを苔の上に乗せていく。
「……? 何をしているのですか、それは」
「テラリゥ……観賞用小鉢を作っているんだよ。趣味だ、趣味」
そう説明しながら羊歯なども、均衡を考えながら配置していく。う──ん、蕨や薇を使ってもいいが、石との大きさの調整が──、大きな硝子鉢で作る時は蕨なども使おう。
そう考えていると、メリッサが「相変わらず面白い事を考えつきますね」と口にする。
「ほら、この小鉢植物園をやるから帰りなさい。今日は休日、お仕事はお断りします」
硝子の小鉢を受け取りながらメリッサは「そうはいかないのです」と言って、手提げ鞄から数枚の紙を取り出す。
「オーディスワイアさん、あなたが水の神の為に作った神貴鉄鋼の短剣で儀式を行ったところ、とんでもない事が起こったそうです」
彼女はそう言うと紙を差し出してきて、見るように強く言う。
やれやれと思いつつ「とんでもない事」とは穏やかじゃないなと思い、紙の内容を読んでみる。
そこには神貴鉄鋼の短剣を使って儀式を行うと、短剣が光を発して水の神の顕現体を光で満たし、転移門を開くのに必要な分の精霊力を増幅させた、と書かれていた。
「ほぅ、こりゃ一大事だな」
「何を他人事の様に言っているのですか、あなたが作った物でこのような結果が現れたのですよ。これからは、あなたに儀式用の錬成品を作ってもらう事になるでしょう」
う──む、と唸りつつ、思いついた事を口にした。
「しかし、あの短剣は、俺の力だけで作れた訳では無いかもしれないのだが」
俺は正直に、装飾を施してもいないのに、刃に装飾が現れて、通常とは違った物になった事を説明した。それはもしかすると神への祈りが作用して、神の力が宿った(神が力を貸した)からではないかという推測を話しておいた。
「……なるほど。しかしあなたが、その奇跡を起こした一端である事に変わりはありません。そこで私達管理局は、あなたの新しい鍛冶屋の改築に優遇措置を行う事にしました。建物の解体や建築作業に携わる人員を増量し、短期間での建築をするように手配するつもりです。構いませんね? もちろんその分の費用は管理局が持ちます」
彼女は明らかに「決定事項だ」という、強い意味合いをもって語っていた。




