不正旅団の捕縛
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エウラの特訓は長く続いたが、気を体外に放つ事は出来そうに無い。見兼ねた俺は、彼女の身体に手を触れて、体内の気を作り出す丹田に直接、干渉する事にした。
「ひゃぁあぁっ⁉ ちょ、ちょっと……な、なにするんですかぁ!」
いきなりお腹の下を触られた彼女は、悲鳴に似た非難の声を上げて後退る。
「気を作り出す部分に直接気を送ろうと──、やましい気持ちなんて無いぞ? いいからマラを……じゃない、腹を出せぇ!」
彼女は恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら、子供の様にベソをかいて上着を捲った。白い肌のお腹や腰回りだ。──いかん、いかん。そんな事では団員達から信頼を失ってしまう。
小さな臍の窪みの下に手を当てると、エウラはびくんと身体を強張らせる。丹田に気を流し込みながら外部へ放出するよう誘導してみる。──体内に送り込んだ気を操作してやるのだ。
「岩に手を置け」
そう言うと彼女は屈み込み、それに合わせて俺も膝を折る。エウラが岩に手を乗せると、目を閉じていても彼女が岩に触れた感触が、ぼんやりと伝わって来る。
「よし、掌に気を集める様に集中しろ。そこから外部に放出する気を──刃や、打撃を打ち出す心象をもって気を撃ち出せ。内部の気を外部へ撃ち出す時に、攻撃的な気に変換する感じで行え」
彼女は言われるままに呼吸を整えながら気を手に集め、掌に集中する。
「やれ」
俺はそう言いながら、彼女の腕から手に向かって流れる気を外へ向けて放ち、岩を通った気が地面を打って「どすっ」と、足下に響く音を立てた。
「気が岩を透過してしまった。これはこれで悪くない、鎧を身に着けた相手を鎧を透過して、内部の肉体を攻撃するのに使えるからだ。──ではもう一度だ」
「はいっ」
彼女は元気に返事をした。今の一撃で外部に気を伝える感じを理解できたらしい。次は直接岩を砕くか割る心象で打ってみろと言いながら、彼女のお腹から気を送り続ける。
三度目で岩が割れた。エウラ一人の気では、まだ大きな破壊力は生み出せないが、練習すれば自分のものに出来るだろう。
その後もしばらく剣を使った特訓をしたが、さすがに気の練り過ぎでヘトヘトになってしまったエウラ。だがそれはこちらも同じだ、彼女を通して(背中から気を通すやり方で)剣に集めた気を撃ち出す訓練を重ねたのだ。──こちらも打ち止めである。
「今日は、ありがとうございました」
彼女は呼吸を整えると感謝を口にした。しかし連続で気を消費するのは危険な事だ、今日はゆっくり休むよう言ってミスランへ戻る事にした。
すると街の大通りに人が大勢集まっていた。俺とエウラは顔を見合わせると、そちらに近づいて行く。
公園のある区画の方にも人が大勢集まって、何事かを話し合っている様子だ。
側に居た人に声を掛けて何があったのかと尋ねると、その男は「若者から搾取していた者達を管理局が捕縛した」と、掲示板に書かれていたのだと説明する。
「明後日には四大神の裁定が読み上げられるらしいわよ」
と近くに居たおばさんが説明する。もしかしたら四大神の誰かがミスランに来るかもしれないと言うので、盛り上がっているようだ。
「不正旅団の制裁ですか、いいじゃないですか。これで若手の冒険者も旅団に参加しやすくなるといいですね」
エウラの言葉に曖昧に頷く。その掲示板を見てみたが、管理局の上層部に当たる七賢者の不正については何も書かれていなかった。まだそちらは捕まえていないのか、それとも内々に処理するつもりなのだろうか。
それは管理局からすると後者の方を選択するだろうというのは目に見えていた、必要な者だけが情報を得ればいいと考えるのが権力者(管理者)の思考なのだ。公明正大な懐の深い権力者など微々たるものだ、それはどこでも変わらない事実のようである。




