エウラに「破砕撃」を習得させる
《外伝》や登場人物の設定を読める物を投稿してあります。そちらも読んでもらえると嬉しいです。
少し新たに書き足した部分と新たな登場人物を表記しました。
朝になると冒険へ向かう仲間達を送り出しながら、エウラと共に市外訓練場へ向かう。昨日のうちに義足を調整して、何とか軸足を滑らないようにした──つもりだ。
しかし、脚を失ったばかりの頃にも、何とか様々な体重移動に耐えられる義足を作ろうと工夫したが、結局足首部分に掛かる負荷と、脚の裏が地面に平行に着く機能が両立しなかったのだ。
それに素材も無い。いわば人体の腱に当たる動きをする、丈夫で伸縮する素材で、これといった物が手に入らなかったのだ。一応現在は皮の束を重ねた物で補っているが、思う通りの足運びを可能にする様な義足は、ついに完成しなかった。
まあその後は錬金鍛冶師として、冒険者達の支援に回ろうと考えたので。それ以来、新しい義足の作製はほとんどしなかったが、今の技術ならもしかすると、冒険や戦闘に耐えうる物を作り出す事は可能かもしれないな。
そんな風に思いながら今日は義足を身に着けた。
「どうかしましたか?」市外へ向かう道の途中でエウラが声を掛けて俺の思考を中断した。いつもよりも大股で歩いて、足の接地面などを確認していた俺は、彼女の方を向こうとして足が滑り、その場で膝を突きそうになる。
「──あっ⁉ 膝がぁ!」
「ぇえっ‼ だ、大丈夫ですか……!」
心配して肩を貸しましょうかと声を掛けてくるエウラ。
「大丈夫、ちょっとした持ちネタだ」
俺がそう言いながら立ち上がると「そんな持ちネタは止めて下さい」と、エウラは若干キレ気味だ。
こんなやり取りをしつつ市外へ出て、訓練場へ向かう。──今日は人が居ない、まだ早い時間だというのもあるだろう。
今回は岩がある場所へ向かった。これを破壊する事で、エウラに習得したいという気持ちを起こさせようと思う。
「ちょっと待ってくれ」
そう言って大きな石を足下に置き、地面に踏みつけて埋めておく。足を踏み込んだ時にそれ以上広がらない様にする為だ。
「よし、それではそこの岩に『破砕撃』を撃ち込もう。よく見ておけ──気の流れを」
ぐっと足に力を入れ、大剣を構える。気は腹部から胸を通り腕を通ると、その勢いのまま、手にする大剣の剣先まで覆う。刃に気が集中すると俺は、一歩踏み込んで剣を振り下ろし、岩に剣が当たらぬギリギリの距離から攻撃して、岩を打ち砕いた。
気の刃が岩を斬り裂き、爆裂する気の放射で岩を砕くと、周辺に砕いた岩の欠片をバラバラと撒き散らす
「ぁあ、この程度しか出来ないか。以前なら岩を完全に砕いていたが」
そう言って足を元に戻そうとする、しかし義足だと思うようにいかないのだ。体重の釣り合いを取りながら引き足を軸に、前に出した右脚を戻す。たったこれだけの作業に意識を集中しないと、右脚を引きずる羽目になる。
「凄い威力だと思いますが……」
エウラは岩を打ち砕いた事に感心している様子である。もし全盛期の俺が本気で撃てば、地面はえぐれ、新たに溜め池となる窪地が出来ていたかもしれない。そのくらいの威力を発揮する事も可能なのだ。
「さあ、そんな事より、エウラが気を剣に纏わせる事ができるかどうか、やってみようじゃないか」
適当な岩の前に立たせると気を(扱えない戦士も居るが、彼女は使える)腹部から胸に、腕にと伝わせて剣先へ溜め込むよう集中する。──しかし剣には行かずに、手に溜まってしまう。
「それだと強力な攻撃は放てるが、気による破壊は起こせないぞ。──腹から腕まで一気に伝える感じでやってみろ」
俺は彼女の魔剣の刃を掴んで気の流入を計ったが、これも駄目だった。
剣を肉体の一部と考えさせても無理、なら……
「剣を持つのは止めよう。俺の腕に気を通す感じで握ってみろ」
そう言って手を差し出して彼女の手を握る。しかし彼女の気は、こちらまで流れて来ない。俺の方からは彼女の腕に伝わって行くが(気が体内に入っても違和感は無いが、その状態から気を操作して相手を転ばせたり、衝撃を与える事は可能)、体内でのみ活性化する気を、外へ発散するのは慣れが必要なのだろうか。
「あれだ、掌から放って岩を割ろう」
「そ、そんな事もできるんですか?」
「まあ、いきなり割るのは無理でも外へ放出する方法を会得すれば、剣の刃に気を集中するコツも掴めるだろう」
俺は小さな岩の前に屈み込み、岩に手を当てると掌に溜めた気を一気に打ち出して、岩を真っ二つにする。
「さ、やってみろ」
この後めちゃくちゃ特訓した。




