カーリアへの訓練の誘いと砂糖中毒
「カーリア」
翌朝の食堂で俺は彼女に声を掛けた。少女はいつも通り、魔女っ子の格好をして椅子に座っていたが、何を思ったかカーリアは、がばっと立ち上がり「はいっ⁉」と声を上げ、背筋を伸ばす。
「ぉ、おぅ……どした? 急に──大した話じゃないから、まあ座れ」
俺は少女に落ち着くよう言ってから、今日は冒険に出ずに、俺と魔法剣の研究をしようと持ち掛けた。
「まっ、魔法剣の──? オーディス……旅団長とか⁉」
「うむ、この前リトキスが言っていた『魔法剣は俺の剣技に似ている』っていう言葉で一つ確かめたい事があってな。今日は市外へ出て訓練場へ行き、魔法剣の練習をしよう」
じゃ、そういう事だからと言って、レーチェにもその事を伝えておいた。彼女は最近カーリアと訓練する機会が増えたのだが、そのレーチェから見ても、カーリアは伸び悩んでいる様子だと聞かされた。
「ならちょうどいい、これでカーリアが己の殻を破る機会になればいいんだが」
「そうですわね、私もそれに期待しますわ」
そう賛成して「私もオーディスワイアさんの訓練というものに、興味があるのですが……」と漏らす。俺はそれに対して「そのうちな」と軽く受け流し、席に着くと具体的な訓練の内容を想像する。──剣の威力を魔法(自分が使っていたのは「気」だったが)と共に撃ち出す。それを爆発的な威力へと変換するのだが……、どう彼女に伝えるべきか。
朝食は簡単なものだ、腹に溜まり過ぎると良く無い。ほどほどの状態で冒険に出るよう皆、心掛けている。
「団長」と声を掛けて来たのはメイだ。この少女も攻撃に「気」を用いて、爆発的な破壊を対象に打ち込む戦い方をする。
「おう、どうした」
「焼き菓子が食べたい」
俺はずっこけた。てっきりカーリアへの助言が聞けると思っていた……
「お嬢さん、昨日食べたでしょ?」
そう言うと少女はぷく──っと、頬を膨らませる。
「お菓子は毎日のご褒美」
「……毎日ご褒美とは──ヤバい薬を打ち過ぎて、おかしくなった常習者が言いそうな台詞だな」
そこへユナがやって来て、友人に忠告する。
「こらっダメでしょ、砂糖は貴重なんだから……お店でも角砂糖一個で銀貨五枚で済んだら、安い方なんだよ?」
友人の言葉に「でも……でも……」と声を震わせるメイ。ヤバい、この子。砂糖中毒者なのかもしれない──いや、子供だし多少は──たぶん。大丈夫……だよね?
「毎日甘い物なんか食べてたら病気になるわ、三日に──いや、五日に一回にしておきなさい」
俺の言葉に衝撃を受けた様子のメイ。今にも泣き出しそうな雰囲気である。
「……わぁ──った、何か考えておくから……だが、糖分の摂り過ぎは体に毒なんだぞ。注意しないと病気になるぞ」
俺がそう言うと少女は素直に喜ぶ。──こちらは砂糖を使わずに、菓子を作ろうと考えているのだが。……まあいい、そちらは何とかするとして、問題はカーリアの方だ。
彼女の魔法は最近何度も使用している成果もあり、かなり強力な物になりつつある。その魔力の爆発を使えば、剣圧で凝縮された威力で、固い敵も打ち倒す事が出来るだろう。そうなれば彼女の自信にもなるはずだ。
朝食を食べながら、どの様に教え諭すか考えていたら、いつの間にか食い終わっていた。何を食べたか思い出せない。老人ボケじゃないんだから……俺は割と深刻に悩んでしまった。
砂糖中毒というのは俗称みたいですね、砂糖依存症という方が今時の主流(笑)のようです。
糖分の摂り過ぎは、うつ病になるとの報告もあるので注意しましょう。




