第334話後出しじゃんけん
今日は労働裁判の事前打ち合わせの日です。
NPOに助成金の申請用紙を届けて歩いて弁護士事務所に向かいます。
「また今回も新しい解雇理由ですよ」
へきへきとした顔で30センチもあるファイルをテーブルに置きます。
「そんなに後出しじゃんけんは違反じゃないのですか?」
「証拠があれば文句を言えないのです」
「いつまでもいたちごっこですか?」
と言っても裁判は辛抱辛抱です。
仕方なく総務部長が書いた調書を読みます。
「ホテルで新会社を作ったことは権限違反だと言ってるわけですね?彼は当時総務課長でトラックの事ばかりしていたのに、誰からの伝聞ですかね?とは言え我慢して権限違反でない証拠を出すわけですね」
毎回この繰り返しです。
証拠を出してきたことはないのです。
「まず、私が作った本社幹部会の議事録のこの2枚を見てください。顧問税理士の指摘で現在の会社がペーパーカンパニーで税務署から何度も呼び出しを受けている。それで新会社を作ると言う報告も書かれています」
「その議事録が偽物だと言っているが?」
「これは刑事事件で証拠採用されたもので、作った書類の履歴日付と私のカレンダーの幹部会議の記録…」
「これで行きましょう」




