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第161話証言依頼

今日はシニアNPOの職業訓練の後、ホテルの社長と刑事訴訟の担当弁護士に呼ばれています。

「社長は?」

「息子と同じ起訴猶予です。こちらの自白も怪しいとみられているようです」

二人でしばしの雑談を交わしていると、弁護士が分厚い訴訟資料を抱えて入ってきます。

「どうもこの事件について警察の中で判断が分かれているようです。身内同士の覇権争いとみられています。確かに形式的には不正な手続きで株式の移動がされているのは認められていますが、元々は被告も原告も暗黙の上に進められてきたのではないかと最終的に検察は判断したようです」

「これで終わりと考えても?」

ホテルの社長が疲労した表情で尋ねます。彼も20日間拘留されています。

「だが専務の証言が重たい真実として残っています。被告の主張は了解の上に進めてきたことの一点張りです。だから株主総会は開かれていないもののそれは商習慣で株式の登記手続き等は会社の実印が押されて適正に行われていると反論しています。社長はどう思います?」

「これは調書に書かれていますが、元々親父の管理会社から受けた時点で、私は二つの組織の板挟みの状態でした。だから本社から回されてきた書類には考えることなく判を押してきました。とくに問題ある書類とは思えませんでした」

「だが専務が出向してきて訴状が送られてきて、今までの暗黙の了解上で書類を流せなくなってきたと見ています。すべて書類は専務の目を通ります。こちらが調べた範囲では乗っ取りの主要な書類は本社が会社の印鑑を引き上げた段階で急に増えています」

「本社は6月の後半と総務課長が証言していますが、ホテルの社長は4月の後半と2か月の開きがあります。ここは曖昧になったままですが、これは重要だという気がしています。どちらも確固とした証拠がありません。でも専務は」

「これは警察でも話題になりました。それで自分なり調べてみました。会社が印鑑の引き上げを言い出したのは、家賃の延滞が出始めてから少ししてから、この幹部会議の議事録で印鑑回収の準備とある5月の初めで、銀行印などから5月中に預かっています。でも本社の引き渡しは実印が揃った6月5日に部長に本社の経理課長に渡している」

「そこを証言いただけませんか?」

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