第152話暴対室取り調べ3日目
「なんだか心配だわ」
女房に声をかけられ笑いながら家を出た私ですが、やはりいつ被告にされるかという不安があります。
「たびたび悪いねえ。ホテルの社長と部長の調書で少し見えて来たかな」
今日は丸刈りの暴対刑事が愛想がいいようです。
さっそくパソコンを出してきてカタカタと打ち始めます。
「・・・元々ホテルの会社を取り戻そうとしていた親会社はホテルの登記の持ち株の変更を考えていた。ホテルの社長はうすうす知っていたが、あんたは入ったばかりで知らなかった。それでいいかな?」
「ええ」
「それで株主総会を開いたことにして会社分割をして後にすべての株を買い上げたように装った。議事録を作ったのは息子とホテルの経理担当、それに司法書士だね」
「そうです」
「だが息子は否定している。だが経理担当と司法書士は否定していない。だが司法書士はまだ隠していることがある」
どうも自分ながら筋書きを立てているようだ。
「息子がホテルの責任者だった?」
「いえ、ただの担当者ですべては社長が支配していました」
「社長を呼ぶのにはまだ弱い」
独り言を言う。
6時間かけて長い調書が出来ました。それを読みながら訂正を入れていきます。
「息子を呼ぶか」
その一言でサインを入れて判を押して調書は完成したようです。




