第143話弱いサラリーマンの典型
腎不全の定期診察の日です。
体調的には少し良くなったように思いますが、この病気は改善することは全くありません。
透析への道のりをひたすら伸ばすだけです。
「腎臓の機能としては1割というところです。でもクレアチニンは6.78と微妙なところで留まっています。ただBUN(尿素窒素)が80.70という厳しい状態です。体調は?」
「顔や下肢がむくんでいるようです。一時血尿で褐色でしたが、今は透明な色になっています」
「腎不全の最終段階の兆候に向かっていますね。どこで透析を始めるかが難しいところです。私としてはクレアチニンが7.00を超えたあたりを考えています」
「会社は辞めましたが、雑用が・・・」
ある程度労働審判を進めて、刑事訴訟にも片を付けてからという気持ちがあります。
今日はこれから相棒の部長を労働裁判の弁護士に会わせます。
すでに弁護士事務所につくと具体的な話が始まっています。
「同じ不当解雇で争うことになりますが、相手側は1か月前引き継ぎ後の無断欠勤というでしょう。私の感覚では未払い賃金と残業代を合わせて50万取れれば成功と思いますよ。それでもやりますか?」
「はい」
「これは失礼ですけれども、申立書をこしらえてみようと思いますが、私自身が理解できないところが多くあるのです。たとえばなぜ専務と同じ頃に辞めなかったか。それと後任のホテルの責任者から専務のパソコンの調査を受けたのか。不当解雇を戦う姿勢が全く見られないのです」
弁護士の言うところは同感です。でもそれが弱いサラリーマンなのだと思います。




