第111話派閥争い
仕事の目途を立てようと午前中一杯パソコンに向かっています。
当初目標の売り上げの2億は今月で達成見込みです。
家賃の引き下げも月末から実行です。
単月黒字となります。経費の圧縮も目標通りで累積赤字の目途もできました。
新しい支配人制度は始まりましたが微妙な状況です。
「少しいいですか?」
最近よく顔を出すようになった髭専務の側近ナンバー3の支配人です。
「話の前に伝えておきたいことがあります。私はもう髭の専務の派閥ではありません。おそらく3人ほど支配人が離れたと思います」
「でしたら今回の支配人制度の評価はどんなものですか?」
「髭専務派は大反対です。元専務派は大賛成、中間派は成り行きを見ています」
「それは?」
「賃金の改正がされていないからです。それと相変わらず髭専務が中抜きをしています。社長はすでに指導力を失っています。今は専務の動きをみんなが見ています」
「でもここからが実は難しいのです。今のところ本社の意向と大きくかけ離れていませんが、賃金の見直しについては少し時間が必要です。本社の社長は家賃の引き下げと融資の返済猶予を1年として認めたにすぎません。その間に融資の返済の原資を作るのには売り上げを2億2千万まで伸ばさないとダメです」
「それは分かります。でも昨晩髭専務がお宅の不動産部長と飲んでいます。嫌な予感がしています」
支配人はそれだけ言うと部屋を出ていきます。
「大丈夫ですか?」
相棒に声をかけます。
「人は悪くないのだけど、お金には弱いですから」




