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第6話:VS上級貴族ライド・ボルテックス

『行くぞステラ!』


「うん! ニブルヘイム!」


 俺の言葉に頷いてステラは、俺を強く握って雷小僧へと向かって行く。


 初の対人戦だ。しかも雷の魔法使いと来たもんだ。

 俺も集中しないとな。持ち主との初戦闘で敗北は格好が悪いからな。


 俺は可能な限り、俺の能力をステラの意識の共有で教える。

 口で言うより、こっちの方が早い。


「分かる! 分かるよ! ニブルヘイムの力が……!」


『おうよ! 伊達に魔剣はやってない! 好きに戦えステラ!』


「うん!」


 俺は可能な限りは補助の方が良さそうだ。

 危なくなったら助ける程度。その方が邪魔をせずにステラの実力が見られる。


 そう思っていると、あの雷小僧も槍を構えていた。


「この下級貴族が! お前如きが! ボクをボルテックス家の神童――ライド・ボルテックスと知って挑んでくるか!――サンダラス!」


 うおっ! 槍から雷を撃って来やがった!

 しかも結構、誘導してくるじゃないか!


『ステラ! 避け――』


 俺はステラに回避するように言おうとしたが、ステラの足は止まる気配はなかった。

 

 寧ろ、加速している!?


「その程度……! 嘗めるなぁ!!」


 おいマジか。

 ステラは誘導してくる雷を、紙一重で回避しやがった。


 確実に動きを見切っている証拠だ。

 そう言えばスキルに見切りってあったな。もしかして、この子凄いんじゃ?


「なに!? 生意気な!!――サンダラ・スパイダル!!」


 今度は何をする気だ雷小僧め。

 槍に地面に刺して、何やら呪文を唱えたぞ?


――そう思っていたら刺した槍を中心に、広範囲に雷の蜘蛛の巣みたいなのが放たれたぞ!?


――スキル『危険感知』も反応してる!?


『まずい! スキル浮遊!!』 


「えっ!? うわっ! 飛んだ!?」


 俺は攻撃を避ける為、浮遊でステラごと浮いた。

 ステラは驚いた声を出していたが。回避する為だ許せ!


「ぎゅあぁぁぁ!!」


「若君!? まだ我々が――があぁぁぁ!!」


 しかし下は地獄だな。

 アイツの攻撃で自分の味方の騎士達を巻き込んでるぞ。


『降りたくねぇ……』


 俺は思わずそんな事を呟いてしまうが、そんな俺にステラが話しかけてきた。


「ニブルヘイム! このまま落下させて! 仲間を平然と攻撃するアイツに、目に物をみせてあげる!」


『えっ!? ま、良いけどさ――じゃあ解除するぞ! 浮遊解除』


 何をする気は知らないが、とりあえず任せるぞ!

 浮遊を解除したことで落下していくステラと俺。


 するとステラは身体を捻りながら勢いをつけ、そのまま雷小僧へ俺を振るった。


 その攻撃を雷小僧は槍で受け止めた。

 だが凄い勢いだった筈だ。雷小僧は防ぎはしたが態勢を崩し、しかも槍に異変が起きた。


「うわっ!!? なんだコイツ!? 槍が凍っ――!」


「遅い――!」


 俺の斬撃で槍の一部が凍った事にライドは驚いていたが、その間にもステラは槍よりも内側に入り、完全に間合いに入っていた。


『やれるかステラ!!』


「うん! できる!……ニブルヘイム! 力を貸して!!」

 

 ステラが強く握った途端、俺にも彼女の考えが流れ込んで来た。

 

 そして何をしようとしているのかが分かると、気付けば俺は刃に氷の魔力を纏わせていた。


 成程、これが持ち主がいる時の戦い方か。

 俺は相棒であり、完全な道具――魔剣だ!


 自分一人で戦っていた時と違う戦い方に驚きはあったが、不思議と違和感はなかった。


 そしてステラは、氷の魔力を込めた刀身を下から上へと振るった。


「秘技――氷刃剣(ひょうじんけん)!!」


「なっ――がはっ!!?」


 よっしゃ! 腹に良いの入った!

 雷小僧の奴、今の攻撃でかなり吹き飛んだぞ!


 けど今のは氷の魔力をぶつけただけで斬ってはいない。

 しかも雪がクッションになったのか、地面に落ちた時の音が柔かったな。


「ニブルヘイム……多分だけど」


『あぁ……まだ終わってないぞ』


 ステラの言葉に俺は同意すると、案の定だ。

 雷小僧――ライドの野郎、フラフラと立ち上がりやがった。


 それを見てステラは再度、俺を握る手に力を入れて構えた。


「クッ!――なっ! 血が……このボルテックス家のボクが、高貴な血を流したのか!! ふざけるな下級貴族がっ!! こうなったら見せてやる!! ボクの最大攻撃魔法!!」


 おぉ! あの野郎、全身から凄い魔力を放出し始めたぞ。

 槍を掲げて、その上には巨大な魔法陣が現れた。


「凄い魔力……ニブルヘイム?」


『任せろ……こっちも最大の攻撃魔法で対抗だ。俺の魔法と魔力を貸す! だから好きにイメージして放て!』


「!――うん! 行くよ!」


 俺の持つ魔法のイメージや使い方。そして魔力をステラへと貸した。


 すると彼女が放とうとしている魔法。そのイメージが俺にも流れてくる。


 そして俺を両手で掲げると、彼女と俺から魔力が溢れ出し、俺達の背後に巨大な魔法陣が展開される。


 それを見てライドは驚いた様子だ。


「なに!? 魔法も碌に使えない下級貴族が!? それ程の魔法をどうやって!?――しかし! 僕の最大魔法は止められないぞ!! 喰らえ!!」


 ライドは槍を俺達に向けてくると、それと同時だった。

 魔法陣から魔法が放たれた。


「サンダラ・コブラ!!!」


『うおっ! 雷の大蛇か!』


 驚いた事に魔法陣から出てきたのは、雷の巨大な大蛇だった。

 その大蛇は俺達へ迫ってくるが、もうこっちも準備は終わったぞ!


『行くぞステラ!!』


「うん! これが私の初めての魔法――アイスガ・ハルバドン!!」


 俺達の背後――魔法陣から出現したのは、巨大な氷のハルバードだった。


 色んな武器の知識があるステラと、俺の氷魔法の合わせた最強魔法だ!


「なっ! デカイ!?」


 ライドが驚愕の声をあげた。

 そして巨大な氷のハルバードは、雷の大蛇を放電させながらも貫き続けた。


 その光景に槍を持つライドにも限界が迫った様子だ。


 全身汗だくで、それでも魔法を維持しようと槍を持っているが、槍にも亀裂が入って大蛇の半身も既にズタズタだ。


「バ、バカな……!! このボクが……名門のボルテックス家の……貴族位100位内のボクがぁぁぁぁぁ!!?」


 ライドの叫びと共に槍は砕け散り、大蛇も消滅した。


 だが俺達のハルバードは存在を維持し、そのままライドへと突っ込んでいき、その衝撃でライドは吹き飛んだ。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 今度こそ手応えのある吹き飛び方をしたライド。

 

 だがその瞬間、俺は見た。ライドのブレスレットの魔石が砕け散るのを。


 そして俺達が放ったハルバドンも消滅すると、ステラの俺を握る手がようやく弱まった。


「終わった……」


『終わった……のか? まだあのライドって奴、動けると思うぞ? それに周りの騎士だって襲ってくるかも?』


 俺は警戒しながらそう言ったが、ステラは分かっているかの様に首を振った。


「ううん、例え動けても……彼はもう《《参加者》》じゃない」


『うん? 参加者?』


 一体何を言っているんだ?

 何かのイベントにでも参加しているのか?


 俺が不思議そうにしていると、ステラはジッとライドを見ていた。

 

 それに釣られて俺もライドを見てみると、彼は痛みに耐えながら立ち上がっていた。


「ま、まだだ……ボクはボルテックス家の神童……! それを下級貴族如きにぃ……!――あっ!!」


 なんだ? まだまだ敵意がありそうだが、ブレスレットを見て固まったぞ。


 そう言えばさっき、攻撃で吹き飛んだ時にブレスレットの石が割れてたな。


 っていうか、なんか様子がおかしいぞ? ブレスレットを見て震えているな。

 寒さのせいって訳じゃなさそうだ。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!! そんな馬鹿なぁぁぁ!! 僕が《《敗退》》だなんて!! うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」


『うおっ! なんだアイツ、泣き叫びながら走って行ったぞ? っていうか仲間の騎士とか連れてけよ。なんだってんだ?』


「これが貴族王を決める戦いの《《ルール》》だから……渡された魔石が砕けたら、戦いから敗退する」


 なんだ貴族王? 戦いのルール?

 訳の分からない事ばかり言っているな。


『どういう事だ? 説明してくれ』


「……そうだね。ニブルヘイムには伝えた方が良いよね。私がアナタを探していた理由……そして貴族王を決める戦いの事も」


 そう言って彼女が話す内容。

 それは俺からしても興味深い内容だった。

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