表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/29

第5話:魔剣と下級貴族

 俺がいつもの台座に突き刺さって、佇んでいた時の事だった。

 俺は危険を感じ取っていた。


『ん!? なんだ……『危険感知』が反応している。こんな極寒の山で誰か戦ってるのか?』


 よくよく聞いていれば何やら戦闘音が聞こえてくる。

 

 雷の様な轟音と、金属同士をぶつけ合う様な音だ。

 

 しかしまさか、こんな極寒の山で戦ってる連中は正気か?

 そして仮に戦っていたとしても、目的は何なんだ?


 少し気になるな。

 俺は何やら妙な胸騒ぎを覚えていると、俺の台座へ巨大な白い熊がやってきた。


『おぉ! シロ! どうした?』


 こいつの名前はシロ。俺が適当に名付けたスノーベアの名前だ。

 他にもいるんだが、今はシロしか来てない様だ。


『何か問題でもあったか?』


『ガウ! ガウガウ!』


 えっと、何々――


『人間達が争ってる? それでこの地の魔物達も気が立ってるから、このままだと危険だって?』


 おいおい、どういうことだ。

 この山には夜盗だって来ない程の場所なんだぞ。


 それなのに人間達が争い?

 こんな極寒の山で?――そんな馬鹿な。


 そう思いたかったが、スキル『危険感知』も警報を鳴らしているな。

 ってことは間違いなく戦闘は起こっているのか。


『良し分かった! シロ! お前は他の魔物達に伝えてくれ。俺が納めるから手出し無用ってな』 


『ガウ!』


 シロは頷くと、そう言って走って行った。

 これで魔物達の方は何とかなるだろう。あとは元凶を見に行くか。


 俺は浮遊で浮くと、音のする方へと飛んでいった。

 今日はあまり吹雪いていないからか山の中が良く見える。


 だからこそ、すぐにその戦いの場所を見つける事が出来た。


『なんだこりゃ? 山の中で随分と派手にやってるな』


 俺が見た光景――それは金髪の奴が、槍から雷を発して次々と騎士らしい者達を薙ぎ払っている光景だった。


 生きている様に動く雷に対し、騎士達は決死に掛かっていくがすぐに倒れてしまう。


 それでも盾になろうとしているのか、奥にいる青髪の女の子を攻撃から庇っていた。


『蒼髪の子が押されているな……誰だ? この辺りで見かけた事はないぞ?』


 勿論、両方共だ。 

 何かの小競り合い――にしては少し派手過ぎるし、それに金髪の方がさっきから何か叫んでるな。


「アッハッハッハ! ゴミ以下め! ボクの雷の前にとっととくたばれば良いんだよ!」


 あぁ駄目だ。俺、アイツ嫌いだわ。

 さっきから倒れた騎士にも弄るように雷を浴びせ続けてるし、それに言葉が汚い。


 ありゃ駄目だね。心が腐ってるわ。

 金髪の雷小僧は最悪と、じゃあ攻められてる反対側の子は?


「皆! 下がって! 私が戦う! アイツの狙いは私だもの! 参加者の私が戦うから皆にはもう手を出さないで!」


「やだね! 下級貴族風情が! ボクに命令するな! やれお前達!!」


 ん? 雷小僧の背後にいた騎士達が動きだしたな。

 倒れている騎士達に近付いて、何をする気だ?


――って、そんなの分かり切ってるよな!

 

 倒れている騎士達へ武器を抜いたのを見て、俺はすぐに飛び出した。

 トドメを差す気だって分かったからな!


「やめて!!」


『任せろ! アイスガ・ランス』


 俺は空から地上へ落下しながら氷魔法を唱えた。

 すると尖った氷柱が次々と現れ、剣を振り上げる騎士達の手へと放った。


 そして氷柱は相手の腕を貫き、騎士達は次々と腕を抑えて武器を落としていく。


「ぐあっ! 腕が!?」


「いてぇ!! なんだ! どこから攻撃が……!」


「ええい何をやっている!――氷の魔法だと? 一体どこからだ!」


 雷小僧がなんか叫んでいるが、無視だ無視。

 俺は唖然としている蒼髪の女の子の前に降りた。


 そして俺を見て目を丸くした女の子は、思ったより冷静に口を開いた。


「えっ……氷の魔剣?」


『おっ? なんだ俺を知っているのか?』


「喋った!?」


 念話で話しかけると女の子は驚きの声を上げるが、それでも臆した様子はなかった。

 

 寧ろ、唖然としながらも不意に真剣な表情となって俺へ近付いてきた。


「あなたが……氷の魔剣」


『そうだ。俺は……魔剣ニブルヘイムだ』


「魔剣ニブルヘイム……! お願い! 力を貸して! 皆を助けたいの!」


『……力が欲しいのか?』


 なんか持ち主との出会いイベントみたいなの起きてるけど、これ大丈夫か?


 いやそりゃ助けたいけど、もうちょっと俺にも考える時間ってのを――


「なんだその剣は!?――サンダラス!」


『うおっ!! 結界(氷)!』


 あの野郎! ゲームだったら絶対に大事なイベント中なのに雷撃って来やがった!

 

 咄嗟に氷の結界を張って防いだが、あの雷小僧、うるさいぐらいに撃って来てるな。


 まぁ『鑑定』で見る限り、雷小僧の最大魔力は800ぐらいだし、余裕で防げるけど。


「欲しい……私は力が欲しい! 皆を守れるぐらい! 守りたいの!」


 あぁ、こっちも続いてたのか。

 そりゃそうだ。完全に追い詰められてる状況だしな。


――仕方ない。こうなりゃ俺も覚悟を決めるか!


『じゃあ……抜く?』


 俺は地面に刺さってみると、蒼髪の女の子は力強く頷いた。

 そして目の前に立ち、俺の持ち手に手を触れた瞬間、彼女の腕が凍り始めた。


「っ! ぐっ、ぐぅぅぅぅ!!」


『あっ! そうか! スキル『絶対氷域』か!』


 あれって環境的に凍らせると思ってたけど、持ち手にも影響を及ぼすのか。

 初めて知った。


――って、そんな事を言っている場合じゃない!


 凄いなこの子! 氷漬けになっても全然、手を放そうとしないぞ!?

 あぁもう! いよいよ覚悟を決めてやる!


『待ってろ! スキル付与――氷結耐性!』


 俺は彼女に氷結耐性のスキルを付与した。

 すると、彼女の腕に付いていた氷は消えて行った。


「えっ……! 氷が消えてく……それに寒くない!」


 それを見て彼女は驚きの声をあげるが、大丈夫だと分かると一気に力を入れてきた。


 俺はその力を受け、かなりの力だと理解した。


『おぉ! 嬢ちゃん! 凄い力だな! 握力幾つだ!?』


「嬢ちゃんじゃない!――ステラ! ステラ・ブルーハーツ!」


 へぇステラか。いい名前じゃないか。

 

『良し! ステラ! 一気に抜け!!』


「うん! おりやぁぁぁぁぁぁ!!!」


 結構、深く刺さったと思ったけど、それ以上にステラの力が強かったようだ。


 彼女が俺を引き抜くと、俺も彼女と共鳴する様な感覚に陥った。


 持ち主:ステラ・ブルーハーツ。


 成程、これで持ち主が決まったのか。

 

「お願い! 力を貸してニブルヘイム!」


『あいよステラ! あの雷小僧に目に物を見せてやるぞ!』

 

 俺を持って身構えるステラ。

 魔剣的にも彼女が剣の扱い方を理解していると分かる程に持ち方も、力の入れ方も正しいと分かる。


 でも……うん? 鑑定で見る限り、ステラの魔力は――20? 低っ!?


 ステラ・ブルーハーツ

 魔力:20/20

 スキル:武器術・格闘・見切り――


 成程、その代わり武器の扱いとか。そう言うのは高いな。

 魔法が使えないみたいだが、そこは俺に任せろ!


『行くぞステラ!』


「うん!」


 そう言ってステラは俺を持って、雷小僧へと向かって行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ