第22話:親友、ソフィア・ロウガーデン
あれから周囲の視線から逃げる様に、俺は違和感ない様にステラを引っ張りながら中庭へとやって来た。
そして設置されていたベンチにステラを座らせると、ステラは腕を顔に付けながら空を見上げた。
「もう……いつもいつも本当にぃ……!」
『ハハ、随分と慕われてたな』
疲れ果てた様な声を出すステラに、俺は笑うしかなかった。
あんな大勢のいる空間で、あそこまで嬉しそうに手を振るかね。
少しはステラの立場も考えて欲しいが、あれは悪気ないだろうな。
それはステラも分かっている筈だ。
彼女からはファルへの悪い感情が流れて来ないし、本当に疲れてるだけだろう。
まぁ、その疲れさせた張本人がファルだけどな。
「慕われても嬉しくないよぉ……なんで子犬みたいに私に構ってくるかなぁ~! もう、めんどくさいぃ~!」
どうやら悪い感情はなくても、精神ダメージは大きそうだな。
面倒と思っているのは本心らしい。
けど、あの能天気な感じからして、絶対に止めないだろうな。
俺はファルのアホっぽい笑顔を思いだしながら、ステラへ同情した時だった。
「はい、ステラ。飲み物持って来てあげたよ?」
不意にステラの横からグラスが差し出された。
俺は無意識に誰だと、そのグラスを差し出した人物を見ると、そこにいたのは一人の少女だった。
歳はステラよりかは上かな?
薄紫色のショートの髪で、お姫様みたいなドレスも来て清楚美人って雰囲気だ。
『誰だ?』
「えっ、あっ! 《《ソフィア》》!!」
俺が呟くと同時に、ステラが彼女の名を嬉しそうに呼んだ。
どうやら彼女はソフィアと言うらしい。
『知り合いか?』
「あっ、うん……中級貴族のロウガーデン家で、私の親友なの」
ステラは彼女に聞こえないよう、小さな声でそう言うと彼女からグラスを受け取った。
同時にステラから、心底安心したという感情が流れて来たのを感じ、俺はステラがソフィアを信頼しているんだと分かった。
そして、俺が観察する様にソフィアを見ていると、彼女は優しい笑みでステラを見ていた。
そんな時だ。俺が彼女の首に掛かっているネックレスに目が入ったのは。
翼の付いたネックレス。
やけに装飾が細かいなと思って見てたら、その真ん中に『魔石』があるのが見えた。
――彼女も候補者か。
俺がそう思っている間にも、ステラとソフィアは楽しそうにしているのだった。




