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第21話:光の貴族・ファル・ブライス登場

 うわぁ……これって歓迎じゃないよな。警戒心バリバリって感じだ。


 入った瞬間に聞こえてきた言葉と、一斉に受ける視線。

 それを受けた俺とステラは思わず足を止めてしまった。


『おいおい……空気が重すぎるぞ』


「仕方ないよ……よく見て、殆どの人が『魔石』を持ってる。きっと候補者だよ」


 ステラの言葉に俺は『鑑定』スキルで周囲を見てみると、確かに『魔石』持ちの者が多くいた。


 腕輪・ネックレス・ティアラ等々、色んな物に『魔石』を付けた貴族達が、俺達を見ていた。


 だけど、いつまでも突っ立っている場合でもない。

 俺がそう思うと、ステラも同じ意見だったのだろう。

 

 ステラは静かに会場の中を歩き始めると、他の者達も視線を外すが、言葉だけは聞こえてくる。


「あれがブルーハーツ家の候補者か……聞いた話では、既に2~3人は脱落させたと聞くぞ」


「たかが2、3人だ。それぐらいで騒ぐな」


「その2、3人が問題なのよ。一人は中級貴族だけれど、他の二人はあのボルテックス家とアスライト家の上級貴族ですもの」


「だからか……先程、彼等に出会ったが、随分と覇気がないと思ったよ」


 そう言って視線を一定の場所に向ける貴族の少年少女達。

 俺とステラも釣られて向くと、そこには俺達が脱落させた雷小僧とグーランがいた。


 雷小僧は一人で飲み物を飲んでいるが、グーランは必死に他の貴族と何やら話し合っている様子だった。


『あの二人も来ていたのか……脱落しても関係ないんだな』


「多分、既に招待状を送っていたか、そこまで考えてないだけだと思う。《《ファル》》は本当に馬鹿だから」


『ファル? それがこのパーティーの主催者なのか?』


「そう、ファル・ブライス。上級貴族ブライス家の長男。私とは家の付き合いもあって、幼馴染で腐れ縁かな」


 へぇー、上級貴族の幼馴染か。

 なんか意外だが、だからステラからは悪いイメージはなかったのか。


 俺達がそんな会話をしていると、先程の所からの会話が再び聞こえてきた。


「アスライト家も必死だな。下級貴族に敗北して脱落したから、立場が危うくなった。だから必死に売り物の鉱石や宝石を、安く買い叩かれない様に説得中とはな」


「アスライト家はまだ良い。最初の脱落者のボルテックス家のライドは更に大変だろ。婚約破棄、商売の下落、領内も他の上級貴族の干渉で荒れてると聞く」


「更には敗北した中級貴族の者は脱落のショックで魔法が使えなくなったと聞きますわ。難儀なことです」


「そして、それを起こした張本人が――」


――ジッ!


 うわっ! また視線を一斉に感じるぞ。

 圧が凄いが、しかし雷小僧達がそうなっていたとは知らなかったな。


 ステラからすれば下剋上――いや火の粉を払っただけだが、彼等からすれば違うんだろうな。


 勝ちが当たり前の勝負で負けた。 

 きっとそれは、許されない事だったんだろうな。上級貴族的に。


「うぅ……視線がイタイ」


『……気にするな。ステラは火の粉を払っただけだ。ドンと構えてろ。寧ろ睨み返せ!』


「無理言わないでよぉ……」


 何を弱気な事を言っているんだか。

 今にも逃げ出しそうなステラの声に、俺は溜息を吐いた時だった。


――バッと! 急に周囲が暗くなったと同時に、大きな笑い声が聞こえてきた。


「ア~ハッハッハッ! 皆! 今日は良く来てくれたね!! 楽しんでるか~い!!」


「キャー! ファル様~!!」


「ファル様さいこう~!!」


 若い男の声、それと同時に聞こえてくる黄色い歓声。

 それの発信源を俺は探してみると、普通に見つけた。


 ホールの中央に、いつの間にかいた大勢の女性に囲まれた金髪の青年が。


「ファル様~!!」


「ファル様~!!」


「アハハハハ! おいおい! 手が足りないよぉ!」


 うわリア充だ。間違いなくリア充だ。

 顔は確かに良いが、顔にステラの言う通り馬鹿と書かれている。


 まさかと思うが、いやもう確信だ。


『ステラ……あの女性達に揉みくちゃにされてアホ顔で笑ってるのが……』


「うん……ファルだよ」


 ステラは悟った様な表情でそう言った。

 あぁ、気持ちは分かる。あれが上級貴族でも、幼馴染は普通に嫌だろ。


 そんな事を俺は思っていると、ファルが不意にこっちを見た。

 そして間違いなく、ステラと目が合ったと思う。


 何故なら、あのファルって奴の表情が嬉しそうな笑顔になって手を振り始めたからだ。


「あっ! お~い! ステラじゃないか! ステラァ~!」


「……聞こえない。何も見ていない」


 ステラは現実逃避をしていたが、それに気付いていないんだろうな。

 ファルって奴は更に激しく手を振り始めたぞ。


「あれ? お~いステラァ~! 私だよぉ~! 君の幼馴染のファルだよぉ~! お~い! お~い! ステラ~! ス・テ・ラ!!」


 うぜぇ……!! アイツ普通にうざいぞ。

 ステラも顔を真っ赤にしてプルプル震えて耐えているし、しかもそれだけじゃない。

 

 あのファルって奴の取り巻き達の視線が鋭くなってるぞ!?


「なによあの下級貴族! ファル様に声を掛けてもらえるなんて!」


「生意気よ!!」


「……やっぱり帰りたい」


 ステラのライフは既に空っぽだぞ!?

 そりゃ嫌だよな。下級貴族で馬鹿にされる中で、更に嫉妬の対象にもされるんだから。


 けど、あのファルって奴は悪い奴じゃないな。

 あのアホ面を見ればわかる。自分に正直なだけだきっと。


 そしてステラの事も大好きなだけだな、きっと。


「アハハハハ! みんな~嫉妬しているのかい! アハハハハ! これは困ったなぁ!!」


 いや、やっぱりただの馬鹿だ。

 あんな馬鹿は放っておいて、一旦ステラに連れ出そう。


 俺はそう思って、精神ダメージで真っ白になったステラを引っ張りながら会場を後にするのだった。


 こんなデカイ屋敷なら落ち着ける庭もあるだろう。

 頑張れ、ステラ! 傷は浅いぞ!


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