第2話:初戦闘
浮遊で周囲を見てみて分かった事がある。
俺がいた周囲は極寒の地――っていうか雪山だった。
どうりで寒い――いや寒さは感じなかったな。
どうりで氷と雪の世界の筈だ。
空から見ても分かる程に真っ白だし、生息している連中も明らかに寒冷地仕様の奴ばかりだ。
スキル『鑑定』で見てみたが、スノーウルフ・アイスオーガ・フリーズドラゴンとか名前からしてそうだろう。
連中のスキルを見てみたが、俺の持っている奴と大差もない感じだ。
倒してもあまり意味は――って、倒すのか?
――倒せばスキル吸収が発動できる。
そうか、なんか自然に理解できたぞ。
スキル吸収――これは倒せば吸収できるってことか。
成程、俺自身が魔剣なんだから、そりゃ自分のことは分かるよな。
けどなぁ、似たスキルを吸収しても旨味があるとは思えない。
もう少しだけ遠出してみるか。
せめて環境が違う敵じゃなきゃ、吸収するべきスキルは無い気がする。
この浮遊も思ったより長く、速く飛べそうだし、もう少し無理しても良さそうだ。
『……となると、せめて普通の環境の場所じゃなきゃな』
俺はもう少し高く飛んで周囲を見渡してみた。
こんぐらい飛べば見つかるだろうと周囲を見てみると、俺は遠くに緑が見えた。
『あそこだ! あっちに行けば森とかありそうだ。きっとここじゃ手に入らないスキルとか持っている奴もいる筈だ!』
待ってろよ。強くなる為にはガンガン戦わないとな。
何かの拍子に折れて、はいサヨナラは嫌だからな。
俺はそう思いながら遠くの森へと狙いを定め、一気に飛んでいった。
♦♦♦
『おぉ……いるいる!』
森へ来た俺は空から獲物を見つけた。
ゲームとかでしか見たことないが、きっとゴブリンだ。
なんか明らかに偉そうな個体が、周囲の個体に指示を出しているぞ。
きっと、アイツが群れのボスだろう。早速、鑑定スキルで――
対象:ロードゴブリン
スキル:ゴブリン統率・スキル付与・炎魔法・剣術・斧術
『う~ん、強そうに見えるが思った程のスキルはないな。けど、スキル付与は気になるぞ』
俺は少し観察してみる事にした。
するとどうだろう。ロードが部下である個体に触れると、その個体は手から炎を出したじゃないか。
成程な。自身の持つスキルを渡せるのか。
それなら魔剣の俺には必要なスキルなんじゃないか?
もし持ち主が見つかれば、俺のスキルを持ち主にも渡せるって事じゃないか。
そうすれば持ち主を強化できる。やるしかないな。
それに不思議と今から攻撃――命を奪おうってのに抵抗感が薄いな。
魔剣になったからなのか、それとも別の理由かは分からない。
けど、強くなるためにやるぞ。
『よっしゃあぁぁぁ!』
『グギ!!?』
俺は一気に突っ込んだ。
すると簡単にロードを背後から貫き、ロードはそのまま血を吐きながら倒れてしまった。
『良し! 今だ! スキル吸収!』
魔剣ニブルヘイム:スキル付与・獲得。
良し! なんか頭に情報が流れ込んで来たぞ!
これでスキルをゲットだ!
『グギ!?』
『グギギ!!』
『おっと!?』
喜んでいる場合じゃない。ボスがやられても、こいつ等逃げないぞ。
錆びた武器とか持って身構えてるし、中には炎とか投げてきて攻撃してきたぞ!
『だったらやってやる! 魔剣を舐めるなよ!』
俺は浮遊を利用して低空で素早く動いた。
そしてその場で回転してみると、まるで回転切りの様にゴブリン達を斬って行く。
『こりゃ良い! 魔剣だから目も回らないからな!――って、おっと!』
油断していたら炎に当たりそうになった!?
俺は炎の来た方向を見ると、そこには手に炎を纏った個体が身構えていた。
『アイツか! さっきからちょくちょくと攻撃して来てんのは! つうか、アイツ……ロードに炎魔法を貰った奴か』
クソッ……無駄に賢い奴だ。俺に間合いを取って遠距離を徹底していやがる。
俺も遠距離攻撃が出来れば――ってそうか!
『氷魔法だ! 俺にだって氷魔法があるじゃないか!』
そうと分かれば……って、どうすれば良いんだ?
――魔力を意識をして放つ。
『そうだ魔力を意識して放てば良いんだ! って、便利になったな俺。――いやいやそんな事を言ってる場合じゃないな! 良し! 氷魔法!!』
俺は全身に流れる魔力を意識して、目の前に吐き出すなイメージでやってみた。
すると魔力の塊が現れて、周囲が凍り付いてきたじゃないか。
『良し! 氷魔法!――じゃ、なんか味気ないな。なんか呪文的な何か考えないと――』
『グヒ!』
って、あの野郎! 先に撃って来やがった!
こうなりゃ適当だ。イメージだ。氷の剣を放つようなイメージで――
『アイスガ・ソルドン!!』
俺はそう唱えた瞬間、巨大な氷の剣が現れて、そのままゴブリンを炎ごと貫いた。
そして、そのまま凍結して砕け散ってしまった。
こうして俺の初の戦いは終わりを告げたのだった。




