第19話:終演
氷漬けとなったマオ達の氷を解き、俺達は彼等の治療を始めた。
その間、ステラは黙っていた。
無理もない。候補者の戦いに領民を巻き込んだ様なものだ。
悪いのはマオだが、リンクしているからステラの葛藤が伝わってくる。
そんな憎い連中でも治療してあげようとするのは、やっぱりステラらしいと思うけどな。
しかし、俺だって黙って治療するのは納得できない。
流石に罰が必要だ。特に領民すら人形として弄ぶコイツには。
『――スキル吸収発動!』
――スキル吸収発動・対象<糸魔法>
――吸収完了・<糸魔法・氷>を獲得。
よし、これでもうコイツは、糸で誰かを弄ぶ事は出来なくなった筈だ。
俺が魔法を吸収したのはステラにも伝わっている筈。
格付けも済んだ以上、これで報復の恐れもないな。
「……うん? ここは――ひっ!?」
そんな時だった。マオが目を覚ましたのは。
マオは目覚ますと、すぐに冷たい瞳のステラと目が合って後退している。
そして、すぐに攻撃する気だったのか腕を伸ばしたが、魔石が消えた指輪を見て絶句していた。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 魔石が……そんなぁ~!」
情けない声を出しながら腕を降ろすマオだったが、そんな奴にステラは一歩前に出ると、そのまま睨みつけた。
「ここに二度と来るな!!」
「ぐっ、ぐぅ……クソォォォォ!!!」
そう叫びながらマオは護衛騎士達を置いて、そのまま一人で逃げて行った。
おいおい、せめて全員連れて帰れよ。
まっ、でも大丈夫か。治療したし、その内気付いて勝手に帰るだろ。
『ステラ……行こう。俺達は勝ったんだ。領民の人達も元に戻ってるって。いつまでも気にしてるなよ?』
「アハハ……ニブルには全部お見通しなんだね」
そりゃ仮にも魔剣ですし、相棒ですから。
困った様に笑うステラを見て、俺はそう思った。
そんな事を思いながら俺達が戻ると、ステラの親父さんや騎士達。
また、領民の人達が走って俺達の所へ来るのが見えた。
そして最後は皆に囲まれながらも、嬉しそうに話すステラの姿が見れて、俺は満足した。
けれど、貴族王の戦いは始まったばかりだ。
だからすぐに次の問題が来るのは必然だった。
「旦那さまぁ~! お嬢様ぁ~!」
「あれ、セーバス? どうしたの?」
走って来たのは執事のセーバスさんだった。
急いで来たのだろう。汗を流しながら、その手には何か持っていた。
「たった今、届いたのですが……これを――」
そう言ったセーバスから、ステラの親父さんが受け取ったのは一通の手紙だった。
それは軽く開けて中身を見たあと、親父さんはステラに渡してきた。
「ステラ、これはお前宛だ」
「私に?」
そう言ってステラが手紙を受け取ると、そこにはこう書かれていた。
『上級貴族・ブライス家より、候補者又は貴族間の親睦パーティへの招待状』




