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第13話:帰還

「ステラ!!」


 帰還を果たしてブルーハーツ家領内に戻って来た俺達。

 そんな俺等を出迎えてくれたのは、ステラの両親や大勢の使用人達だった。


 多分、父親と母親だろう。

 やや豪華な服を着ている二人が、帰還し、やや汚れているステラを抱きしめた。


「よく無事に帰った……! 既に国中で候補者の戦いが始まったと聞いていたから心配してたぞ!」


「本当に心配したのですよ……!」


「……うん! ただいま、お父様、お母様……皆!」


 両親や使用人達からの心配の声に、ステラは満面の笑みで答えた。


 大事にされてるな。これだけでステラが大事に育てられたって事が分かるな。


 嬉しそうな表情の両親や使用人達。

 誰一人として嫌な顔をしていない。


 スキル<危険感知>も念の為に発動していたが、当然ながら反応しないな。


――当然か。雰囲気も優しくて暖かいし。


 俺はこの短時間で、ステラが本当に愛されているのだと理解するのに時間は掛からなかった。


 そして、そんな事を思っているとステラ達の興味が俺に移ったのか、ステラの両親は腰に引っ掛けている俺へ視線を向けた。


「ステラ……それが例の魔剣なのか?」

 

「なんて蒼く、美しい剣なのでしょう」


 いやいやお母様、褒めても何も出ませんよ。

 出せるのは氷や雪とかぐらいです。


「うん! ニブル……魔剣ニブルヘイムっていうの! 本当に凄いんだよ! ニブルのお陰でここまで無事に帰ってこれたの!」


 そう言ってステラはここまでの事を皆に話し始めた。


 俺との出会い、候補者二人の襲撃、そして俺の力をステラは自分の事の様に話した。


 ただ少し大袈裟過ぎないか? ステラの話す内容が派手だったから少し恥ずかしかった。


 けれどステラの両親は誇張とは思わず、ステラの話を全て鵜呑みにしてしまったよ。


「なんと……話せる魔剣とは。しかも上級貴族二人を倒したというのか……!」


「本当によく無事に帰ってこれましたね……!」


 本当にな。まさか短時間で二度も候補者と戦うとは思ってなかったわ。


 ステラの能力と俺の能力。

 この二つが合わさって勝てた相手だったが、今はあれだ。無事でよかったよほんと。


「ところでお父様……お風呂入りたい……!」


 そんな会話をしていると、ステラが僅かにフラついてしまいながら、そんな事を言った。


 きっと実家に帰れて安心したのだろう。

 それを聞いて両親や使用人も慌て始めた。


「あ、あぁ! そうだな、ここで立ち話も酷だ」


「セーバス! お風呂の準備をしてあげて」


「かしこまりました。すぐに」


 そう言って使用人達は慌ただしく動き始め、父親の方もボロボロの騎士達に休息を言い渡していた。


 そしてステラは母親と共に中へ入るが、俺はそんなステラの屋敷を見て驚いていた。


『凄いな……立派な屋敷じゃないか。本当に下級貴族なのか?』


「えぇ、普通だよニブル。上級貴族の家はもっと凄いんだから」


 照れくさそうにステラは言うが、それでも俺は信じられなかった。


 普通に豪華で広い屋敷だし、領内もここまで来るまで結構広かった気がする。


 なのにこれで下級貴族って、上級貴族の家は宮殿かっての。

 俺なんて、この屋敷だけで緊張してるわ!


『なんか緊張するな……お邪魔します』


「もう! ニブル……緊張しなくて良いし、それにお邪魔しますじゃないよ?――《《ただいま》》で良いの。だってニブルは私の相棒――家族なんだから」


――家族か。


 前世を思いだす、久しぶりな言葉だった。

 なんか感傷深く感じてしまうな。


『……あぁ、ただいま』


「へへへ、お帰りニブル!」


 こうして俺はステラの実家――ブルーハーツ家に身を置く事になった。

 ステラの優しい両親、使用人達、そして自慢の領民達。


 きっと能天気な程、平和が続いてくれるだろうな。この場所なら。


――そう。俺はその時はそう思っていた。まさか、あんな事態が起こるなんて微塵も思わずにな。

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