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ガンズオブスプリンターズ  作者: サラマンドラ松本
第二章 機械仕掛けの夢
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盾と盾VS盾と矛

「なんだこいつ!?」


アレキサンダーの前に立ちはだかる漆黒の巨獣。ギラギラと赤く輝く眼は、しっかりとアレキサンダーを見つめていた。


「…悪いな、槍男。…今は彼と話す時間だ」


「おいおい仲間外れか?つれないな。どうせなら三人で話そうぜ!!」


そう言うと、アレキサンダーは巨獣を振り切り、ギガスへと突進していく。


「…はぁ…シャルル、たっぷり遊んでやれ」


瞬間、ギガスの言葉に反応したのか、巨獣がくるりと振り返り、横凪にアレキサンダーを弾き飛ばした。


「うぉ!?」


エンジンの推進力も合わさり、アレキサンダーは体勢を崩し、地面をゴロゴロと転がっていく。その後を追うように、巨獣も後を追っていった。


その光景を横目に、レオンハルトはギガスに尋ねる。


「おぬしのアーマー、動くのか」


「…あれもロストウェポンだ。…”シャルル”と呼ばれていた、変形型自立志向兵器。…本当はガーディアン様専用のものだった。…が、あの方が譲ってくださったのだ」


「ほぉ、ボスからの贈り物か。随分と愛されているではないか!」


「…そうだ。あの方は…こんな俺を大切にしてくれた。…それに答えなければ」


ギガスがかまえる。


「…だからこそ……あの方を邪魔するのは許さない…!」


ギガスの殺気が強まる中、レオンハルトは至って冷静だった。彼はハンマーを地面に突き刺し、ゆっくりと話し始める。


「おぬし…ゼノンのやり方をおかしいとは思わんのか?」


「…なぜそんなことを聞く」


「おぬしが本当に奴を慕っているのならば!ただ脳死でうなずく”機械”になるのではなく!誤った道を進むのを正すのも役目だ!」


「…」


「そのことを踏まえたうえで問う!お主は、ゼノンのやり方を本当に正しいと思っているのか!!」


「…思う」


「ほう?」


「…あの方と共に旅をして、見てきた。アンドロイドの差別と殺戮を。…あの方はそれを止めるために、世界各地で対話した。…だが無駄だった。…それならば、もう手段はこれしかあるまい!」


言い終わると同時に、ギガスはレオンハルトへ向かって低身で直進。空を切るほどの速度で、拳をレオンハルトめがけて突き上げる。


「そうか…ならば!」


レオンハルトは地面に刺さっていたハンマーを思い切り引き抜くと、勢いそのままにギガスに振り下ろした。

拳とハンマーが空中でぶつかり合い、激突音と共に激しい衝撃波を放つ。その衝撃に耐えきれず、地面はえぐれ、がれきを舞い散らせながら大きくへこんだ。


「我がこの行為は間違っていると教えてやろう!身をもってな!」


「…やってみろ!」


ギガスが拳を繰り出す。レオンハルトも負けじとハンマーを振るい、その拳を受け止めた。すかさずレオンハルトは二撃目を繰り出す。今度はギガスが拳を使い、レオンハルトのハンマーを止めた。


「はっはっは!!やるなぁ!!ギガス!!!」


次第に二人の攻撃スピードは速くなっていく。

速度が上がるにつれて衝撃波が発生し、あたりの空気に膜のようなものができ始め、二人を徐々に包んでいく。その膜は接する地面を砕き、がれきを舞い散らせ大きくなっていく。ふいにその膜にぶつかったがれきは、即座に砂のようになるまで粉々に砕け散った。


普段は盾として動いている二人が、今は”矛”としてぶつかり合っている。果てしない衝撃とすさまじい金属音が辺りに響き渡る。二人の戦いを邪魔できるものは、だれもいなかった。





一方、熱くぶつかり合う二人とは対照的に、この戦いは”逃げ”の光景だった。





「こいついつまで追ってくるんだよ!」


黒きライオン「シャルル」に追われながら、アレキサンダーは叫ぶ。

先程、シャルルの一撃によって、戦場を一時的に離れてしまったアレキサンダー。再び戻ろうとエンジンをふかしていたところ、上空からシャルルが滑空突撃してきたのだ。

最初はランスで迎撃したものの、ギガスが来ていたアーマーということもあり、全く歯が立たない。仕方なくアレキサンダーは、打開策が見つかるまで逃げに転じたのだ。


(しかしどうするか…全速力でも余裕でくらいついてきやがる…そのうえ攻撃も歯が立たない…どうしたものか…)


アレキサンダーが考えていると、突然目の前にシャルルが立ちはだかり、大きな前足から生える鋭い爪を、アレキサンダーめがけて振り下ろす。


「うお!?」


驚いたアレキサンダーは、その拍子に一瞬バランスを崩しそうになったが、即座にこらえ持ち直すと、ランスを前に突き出した。


「そんなに欲しけりゃくれてやる!」


アレキサンダーのランスが、シャルルの胸に突き立てられる。瞬間、アレキサンダーはランスの柄についているトリガーを、握りこんだ。


「”ボルカニック・バースト”!!」


直後、ランスの先端から超量の炎が噴き出し渦を巻くと、あっという間にシャルルを包み込む。即座に後方に退避したアレキサンダーの目に映るのは、轟轟と音を立て火柱を上げる火の海だった。


その光景を見ながら、アレキサンダーはランスの柄にあるボルトを思い切り引く。すると、ランスの根元部分から、小型のカートリッジが煙とともに排出された。アレキサンダーは腰のポーチから別のカートリッジを取り出す。その中には、火薬やマグネシウムが大量に詰まっていた。

そのまま慣れた手つきでカートリッジをリロードすると、アレキサンダーは「ふぅ」と小さなため息をつき、その場にしゃがみこんだ。


「ゼロ距離で撃ったんだ…さすがに風穴ぐらいは空いた…」




「グォォォォォォ!!!」


アレキサンダーが言い終わらぬうちに、シャルルが雄たけびを上げ火の海から躍り出た。身体にはアナはおろか、すこしの傷もついていないように見える。


「…無傷だと!?」


驚くアレキサンダーをよそに、シャルルの鋭い牙が喉元に迫る。アレキサンダーもとっさにランス噛ませ攻撃をしのぐが、背中のジェットブースターをもってしても、力も速度もシャルルが圧倒的に上。踏ん張りもむなしく即座に押し戻され、すさまじい速度で壁に激突してしまった。


「がっ…!」


壁に身を打ち付けてなお、シャルルは止まらない。前進しつつ、ガチガチと鈍い金属音を立てながら、ランスをかみ砕かんと全力で歯を立てていた。


(クソ!このままじゃジリ貧だ…ランスをかみ砕かれて喉エサになるか、さもなきゃ壁とサンドウィッチだ…何か手はないか……ん?)


必死に猛攻を耐える中で、アレキサンダーの目にあるものが映った。


(こいつの前足…少し溶けてる…?)


よく見ると、先ほど自身に振り下ろされようとしていた前足の装甲が、少し溶けたようにどろりとしていた。とはいえ、動作に一切支障はきたしていないようだ。

その光景を身にして、アレキサンダーの頭に一つのひらめきが走った。


(そうか…少し考えればわかることだ…!見えたぞ打開策が!!)


アレキサンダーはフルフェイスヘルメット越しににやりと笑うと、背中のジェットエンジンを斜め下に噴射し体勢を安定させ、防御に徹した。


(まずは機を待つ…あの瞬間が来るのを…)


思考を巡らせ、アレキサンダーは腰のベルトに手をかけると、待った。


壁との圧迫による痛みと、挙動を一つ間違えれば目の前の巨獣にかみ殺されるという恐怖。それらをものともせず、ただ待った。


彼の時間感覚は、痛みと恐怖から、永遠のように感じられるほどスローに進んで行く。それでもただひたすら待った。


そして訪れたその瞬間。


ランスをかみ砕こうと懸命に噛みつくシャルルの口が、噛みどころを変えるため、大きく口を開けたほんの一瞬。


アレキサンダーが何かを投げ入れる。


それは、腰のベルトに括り付けてある高燃焼型のグレネードだった。




ドゴォォォォォン!!




シャルルが口を閉じた瞬間、牙と外装がぶつかり生じた火花によって、グレネードが起爆。たちまちシャルルの口内を炎で満たす。

機械と言えど、生物の思考をもとに作られたシャルルの思考回路は、体の中でももろい部分である”口内”に火があることを許容できなかった。


「グオォォォォォ!」


耳をつんざくほどの雄たけびを上げながら、シャルルは消火しようともだえ苦しむ。


間髪入れず、その瞬間を”待っていた”アレキサンダーは、口内にランスの先端を差し込むと、すべての力を使ってシャルルを持ち上げ、トリガーを握った。


「うぉぉぉぉぉ!”ボルカニック・バースト!!」


アレキサンダーが叫んだ直後、グレネードとは比にならないほどの炎が、シャルルの口内からあふれ出し、衝撃で空中に吹き飛ばす。


「さぁこのままカタをつけるぞ!!」


ジェットエンジンが再び動き出し、アレキサンダーは上空へ飛び上がると、再び口内へランスを差し込む。すると、先ほどギガスに突きを食らわせたときはピクリとも動かなかったからだが、徐々に進みだした。


「どれだけ硬かろうが、所詮は金属!熱してしまえば柔らかくなるもんさ!!」


ジェットの炎が青く変わる。と同時に、ランスの先端も激しく回り始めた。ランスがより一層深く、シャルルの口内に食い込む。先端はもはや口内を突き破り、高粒から先端をのぞかせていた。


シャルルが、アレキサンダーを叩き落さんと前足を向かわせる。しかし、今の彼に速度で敵うことは、いくらロストウェポンといえど出来なかった。



「くらえ!!”スピニング・ストライク”!!!」



アレキサンダーのランスが、シャルルの頭を穿つ。空中で頭部が爆散したシャルルは、勢いよく、しかし力なく、地面に身体を伏した。


「よぉし!!」


自身の勝利に、アレキサンダーは思わず空中でガッツポーズを決めると、軽やかに着地する。その勝利を祝福するかのように、上空からはシャルルの頭部のものである黒い破片が、パラパラと紙吹雪のように舞い落ちていった。


「さ、こっちは片づけた。あとはレオンの援護に」




「シャルル・モードチェンジ【プロテクト】」




突然ギガスの声が響いたかと思うと、ピクリとも動かなかったシャルルが突如変形し始めた。


「な!?まだ動くのかよ!!」


アレキサンダーは、とっさに腰のベルトを投げつけるが、大した効果はなく、シャルルはギガスの元へと飛んで行ったのだった。


「待て……は?」


シャルルの飛んでいく方角に目を向けるアレキサンダー。その視界に映ったのは、全身に日々とくぼみをつけ、口から血を垂らしている、満身創痍のレオンハルトの姿だった。






シャルル撃破の数分前 同所 ギガスVSレオンハルト


先刻の乱撃合戦によって、周囲の地形はまるで隕石が落ちたかのようにくぼみ、大小さまざまな亀裂がそこかしこに散見される。


その中心部。機械仕掛けの巨人とSIU屈指の盾は、いまだに拳とハンマーを交えていた。発生する衝撃波は威力と先鋭さを増していき、それに波及するように、部屋はガラガラと音を立て壊れていく


「おぬしやるなぁ!!シャルルとやらを脱いでから、速度が増した!!」


「…ずいぶんおしゃべりだな」


「当然だ!我はおぬしと”話している”のだから!!」


「…殴り合いと話し合いは別だ」


「拳でしか語れんこともある!!」


レオンハルトが、横降りだったハンマーを持ち上げると、素早く振り下ろす。それを予期していたかのように、ギガスは攻撃の手を止めひらりと一撃をかわす。


「…じゃあ、これで話は終わりだ」


鋭いアッパーカットが直撃し、レオンハルトの視界に天井が広がる。この機逃さずとギガスは素早く拳を戻すと、両の拳に力を籠める。


「…技名を借りよう…【バルカンナックル】…!」


瞬間、重く素早い連撃が、レオンハルトの胴めがけて放たれる。

拳とアーマーがぶつかるごとに、レオンハルトは後ろに押し戻される。それと同時にアーマーの破片が辺りを銀色に染めるほど飛び散り、火花が周囲を橙色に塗り替える。


「ぐふっ…」


レオンハルトの口から鮮血が漏れ出、ギガスの白無地の仮面を赤く染める。だが、なおもギガスの攻撃の手はやまない。


「…まだ倒れてくれるな。ようやくあったまってきたところだ…!」


言葉通り、徐々にギガスの拳の速度は増していく。ついに壁際まで追いつめられたレオンハルト。身体には、すべての衝撃が逃げ場なくダイレクトに響いていく。彼の手は、力なくハンマーを地面に落とした。

もはやアーマーは意味をなしていない。耐え難い激痛と衝撃が、レオンハルトの全身を駆け巡っていた。


だが、彼はそこであきらめるほど”やわ”ではない。



ふと、ギガスの目にレオンハルトの顔が映る。


彼の目は鬼気迫る眼光を放ち、ギガスをにらみつけている。その眼光に、ほんの数瞬。一秒にも満たないであろう時間、ギガスが怯み攻撃の手が止まった。


その直後。


「ぬぐ…ぉぉぉおおおおおお!!!」


レオンハルトの右腕がうなりをあげてギガスを殴りつける。


ほんの一瞬の、踏ん張りも聞いていないような一撃。しかし威力はすさまじく、ギガスは大きく宙を舞い、吹き飛ばされてしまった。


ギガスの連撃から逃れられたことによって、レオンハルトの体に一気にダメージが襲い来る。


「ぐぁ…がっはぁ…!…はぁ…はぁ…」


水たまりができそうなほどの血を吐いたレオンハルトは、苦しそうにその場に膝をつく。


(我としたことが…これしきで血を吐くとは……年には勝てぬものか…)


確かに、レオンハルトは全盛期よりも頑丈さも筋力も劣っている。

しかしそれだけではない。

ギガスの連撃が生むすさまじい衝撃は、レオンハルトの体全体に、芯に響き奥に残る深刻なダメージを生み出している。

レオンハルトの体に限界が近づいていた。


(だが…まだここで倒れるわけにはいかん…!あ奴とはまだ…!まだ話せておらんのだ…!!)


レオンハルトが起き上がろうとした直後。


「シャルル・モードチェンジ【プロテクト】」


ギガスがつぶやいた直後、アレキサンダーと戦っていたであろうシャルルが遠方から飛んでくると、ギガスの体に空中で変形したシャルルが張り付き、元のアーマーに戻っていく。


変形が終わると、ギガスは再び首をゴキゴキと鳴らし、拳どうしを打ち鳴らした。


「…お前の一撃は重い。…だから防御特化で行かせてもらう」


「また…その黒装束か…ぐ…」


レオンハルトは立ち上がろうとするが、体にうまく力が入らない。その間にも、ギガスはゆっくりと彼に近づいていく。


だが、その二人の間を割って入るものがいた


「レオーン!!」


そう、アレキサンダーだ。彼はレオンハルトをかばうように前に立つと同時に、ギガスに立ちふさがった。


「レオン!あんたその体…」


「案ずるな…まだ動け…ぐ…」


「無理するな…相当こたえてるだろ…」


「だが…我々が負ければ奴がアナの元へ行ってしまう…それだけは避けなくては…!」


「…わかった。レオン。俺に考えがある」


そう言うと、アレキサンダーはレオンハルトの耳に顔を近づけ、何かを話す。


「…わかった。頼んだぞ、アレク」


「任せろ。出番の時まで休んでな」


アレキサンダーはレオンハルトに笑いかけると、再びギガスに向き直る。


「…おしゃべりは終わったか?」


「ああ。今しがた終わったとこだぜ。お前を倒す作戦をな」


「…お前の攻撃は俺には効かん。…唯一届くレオンハルトも今はその状態。…あきらめたほうが賢明だぞ」


「悪いな。俺もレオンも、そういわれて引き下がるほど弱くねぇ!!」


直後、アレキサンダーのジェットが点火し、轟轟と火を噴くと、ギガスめがけて突撃していく。

ギガスはあきれたように「ふぅ…」とため息をつくと、迎撃の構えをとる。




パリン!




突然、ギガスの体の中で何かが割れるような音がした。それは一度ではなく、連続的に体から鳴り響く。何事かとギガスが視線を落とすと、地面に黒と銀の砂のようなものが、小さな山を作っている。その砂は、ギガスの体から漏れ出ていた。


「そのシャルルってやつ。自立思考の時は頭がいいが、変形の時はそうでもないようだな!」


ギガスが気をとられているうちに、アレキサンダーは懐まで潜り込むと、ランスを回転させギガスに突き立てる。


無論、ランスは先ほどまでと同じく火花を散らしてはじかれ、ギガスに攻撃は通らない。



だが、アレキサンダーの本命は、”自身の攻撃によるダメージ”ではなかった。




ゴオッ!!!!




突如、あふれんばかりの大火がギガスの体を包み込む。


「ぐぉおおおおおおお!!?」


いくら物理には強くとも、炎の熱には耐えられない。ギガスがその場でもだえ苦しんでいると、ギガスを通り過ぎ退避していたアレキサンダーが話し始めた。


「言ったろ?お前のアーマー、”変形時は頭がよくない”って」


「どういうことだ…!!」


「シャルルがお前の方向に飛んでいくとき、俺は腰についているあるものをとっさにぶん投げた。『ボルカニック・バーストを撃つために使うカートリッジ』が満杯に入ったポーチだ。そいつ(シャルル)は知ってかしらずか、変形時にそのままポーチを巻き込んだ。結果、アーマーになって形が変わったおかげでポーチの中のカートリッジが割れ、お前の体の中は特殊な可燃物質まみれ。少しの火花で大火事が生み出せるほどだ」


アレキサンダーの言葉の通り、ギガスの体は、先ほどのシャルルとは比べ物にならないほど燃え上っている。あまりの熱に部屋が溶け始めるほどに。

隙間という隙間から火が噴き出し、彼に地獄の苦しみを与える。


「確かに、俺の攻撃はお前にとって致命傷にはならない。レオンの攻撃も、ダメージは入っても決定打にはならない。だが、”熱にやられて溶けかけてる状態”ならどうかな?」


その言葉にハッとしたギガスが、レオンハルトのほうを向く。


彼はハンマーを固く握りしめ、ギガスに向かって突撃していた。


「ぬぐああああああああ!!!!」


熱に耐え雄たけびを上げるギガスの腕が、再び高速で動き始める。先ほどレオンハルトに浴びせた連撃、【バルカンナックル】をもう一度発動したのだ。しかし、烈火に燃ゆるギガスの拳は、すべて空を切った。


「な!?」


「普段は攻撃を受けるが…守るものがいない中で受ける義理はない!!」


その巨体からは似合わないほどの素早い動きで、レオンハルトはギガスの懐に入り込むと、短く持っていたハンマーを振り上げる。ギガスは防ぐために腕を動かそうとするが、既に高速で動かしている腕は、いくらアンドロイドといえど、即座に止め防御に移行するには時間が足りなかった。


「終わりだ!ギガス!!”ギガンテス・スマッシュ”!!!!!」


レオンハルトのすさまじい一撃が、ギガスの融解しそうな左半身をえぐり取った。


to be continued

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