エピローグ
雨が降っている。
小粒だが、勢い良く振る雨が車――カローラじゃなくて、百花さん希望のダイハツ、ミラココアってやつだ――を叩く。
色は赤。丸っこいデザインから、俺にはおもちゃに見えてしょうがない。
とは言え、自分で運転したい車を選んだんだから俺が文句をいう筋合いはないだろう。
しかし、助手席ってのも暇なもんだな。なんとはなしに、頬杖をつこうとして失敗する。
左腕がないから、当たり前だ。
真新しい包帯が巻かれた腕。そこは、肩から肘――もない――の上あたりまでの長さしかない。
左腕を切ってかれこれ二ヶ月。痛み止めの服用も続けているけど、感覚的なものはどうしても、まだ慣れない。
「腕、痛むの?」
「いや、何となく見てただけよ」
後部座席から身を乗り出して、百菜が聞いてくる。どうやら、百花さんも気になってたようで、こちらにチラチラと視線を送っていた。
あの日。俺の腕をぶった切ってから、百花さんは変わった。
悪い変化ってわけじゃないと思う。ただ、色々と俺の変わりにやろうとするのだ。
例えば、車の運転。
雨の中の運転で、緊張した様子の百花さんを見る。
髪の毛には真新しい、ブルーのりボンが結ばれている。あの時に駄目にしちゃったやつの代わりにと探したやつだ。
なんでも喜んでくれたろうけど、わがままを言えば同じ色のヤツを見つけたかった。このへんは、次のチャンスを待つか。
「どうしたの?」
俺の視線に気がついたのか、百花さんが一瞬だけこっちに視線を寄越してから聞いてくる。
「うん? いや、知ってたけど美人だなと」
あんまり横顔を見つめる機会がないからか、なおさらそう思った。
「――~~ッ」
急ブレーキ。身体ががくんと前のめりに倒れる。
「ちょっ、お姉ちゃんッ! 危ないじゃないッ!」
後ろの席で百菜が抗議の声を上げる。
「まっ、待って! いきなり変なことを言う順くんが悪いでしょ、今のッ!」
「ああ、ほら。それよりもゾンビが集まってきた。早いとこ行こうぜ」
フロントガラスの向こうを指さす。
確かにそこには、ゾンビの群れがちらほらと見えていた。
流石に、この軽自動車じゃあ何体も轢いて行くのは難しいだろう。
「うぅ……わかってるけどさぁ……なんか、納得いかない」
車がゆっくりと走り出す。
運転は大分落ち着いたように思う。風間先生にいわく、慣れてきたからじゃないかとのことだ。
そのまま道なりに進むと、左右に別れるT字路に突き当たった。道幅は狭いけど、幸いにも車が通るぶんには問題はない。
「ここを左だったかな?」
「そっ。それで道なりに進めば、見えてくるはずだ」
周囲を見ながら、現在地を確認する。
雨の中に紛れてわかりにくいけど、この当たりはなんだかんだと長い間を過ごしたから、そうそうに見間違えない。
例えば、曲がってすぐに見えるのは鉄柵の玄関がある家。すぐそこに犬小屋が見えて、通る度に吠えられてた。
今は、ただ小屋だけが雨に打たれている。
左側にはコンビニがあった。
個人商店で、大きな通りじゃなかなか聞かないような名前のだ。
やる気のなさそうな爺さんが店員で、レジの前で何度も呼ぶと奥から嫌々出てくる様な所だった。
もっとも、今は売り物になりそうな商品は根こそぎ持って行かれた後で、割れたガラスが周囲に散らばっている。
「……見えた。そこだ」
小さな一軒家。古臭い作りで、木っぽい壁と曇りガラスの引き戸が玄関だ。
木造二階建て。この近辺じゃ、そう珍しい建物でもない。それを差し引いても、俺にとっては見慣れた場所だった。
「ここが、順くんの家?」
「そっ。見ての通り、何もない家だ。あー、入り口がそこそこ広いし、そのままバックで玄関を突き破ってもいいぞ」
「そんなことしたら車が壊れちゃいそうだし、ちゃんと止めるね」
「斥候役はおまかせあれ!」
車を止めると、百菜が真っ先に降りていく。
どこから調達してきたのか、迷彩模様の上下一色姿は三人で動くようになってから着るようになったものだ。
腰にはカバーにいれた包丁をナイフ代わりにぶら下げて、両手では長さを調整した物干し竿を操る。
棒術と言うらしい。開放した図書館に武道関連の書籍があり、それで見よう見まねで学習したんだとか。
天才か、あいつ。
「待ってるだけって、不安だよね」
「そうだな。中で何が起こってるかわからないし、助けに行けるかもわからない」
アイドリングの音が断続的に続く。中の音が聞こえにくいけど、すぐに逃げる準備もしておかないといけないから、一長一短だ。
お袋の死体は放置しっぱなしだけど、頭は完全に破壊した。もう一人の男も、頭は潰しておいたから大丈夫だとは思うけど、後から入り込んだのがいないとも限らない。
俺がしたように、食料品なんかを奪うために侵入してきた奴が出入口を開けっ放しにした可能性だってある。
あるいは、そいつ等が今なお居座っているか。
――いかんな。どうも、悪い考えばかりが浮かんでくる。
何処で待つのも同じだろうけれど、ここはなまじ知っている場所なだけに、余計にあれこれと結果を考えてしまう。
他の場所でも良かったんじゃないか。今更ながら、そんな弱気が心を占める。
物資を集める。目的はそれで、安全性がある程度は見込めるということで、まず行ったことのある場所から優先的に探索して行くことになった。
俺達以外にも桐原先輩や他の男子、合流出来た生き残りの何人かが車を使って各地へと駆けずり回っている。
もっとも、黒森は別だ。
あの日の出来事は、可能な限り全てを伝えた。物資は大量に残っているが、取りに行くにはリスクが高過ぎると。
命知らずがハイリスク・ハイリターンを求めて幾分には誰も止めないけど、自己責任だ。
俺は二度と、行きたくないし百花さんや百菜にも行ってほしくない。
「……そういや、桑名さん達って無事かな」
ふと、あの日に出会った自衛隊員を思い出す。
結局、あの黒森で自衛隊と会った後から二ヶ月が過ぎても、物資はやって来なかった。
合流も、ない。
だから俺達も、生活物資を求めてあちこちに向かってるわけだ。
さしあたっては布団や着替え。まだ夏前だけど、冬になったらキツイからな。
「無事、だと良いんだけどね」
「そうだな」
俺のつぶやきに、百花さんが相槌をいれる。
そうあって欲しいと願っているが、簡単に大丈夫だとは言えない。それだけ、黒森の……カマキリに対する恐怖は俺達に染み付いていた。
百花さんの場合、俺の腕を切り落としたトラウマもあるだろうけど。
そんな風に待ち続けていると、玄関から百菜がひょっこりと顔を出すのが見えた。
「あっ、百菜ちゃんが戻ってきたみたい」
「お待たせっ! 中は誰もいなかったよ」
百花さんが開けた窓から顔を出して、百菜がつげる。
「よし。それじゃあ、さっさと荷物を運び入れようか」
使えそうなものって、何があったかな。
遠くなりつつある記憶を振り返り、俺は慎重に車から降りた。
布団、毛布。着替えが数十着。
長らく放置していたから埃っぽいけど、洗ったりすれば十分に使えるだろう。
それ以外となると、もう殆ど使えそうな物はない。
「おっ、木刀もーらいッ!」
と言うのは俺の視点であって、百菜的にはまだまだあるようだ。
「確か、中学の時に修学旅行で買ったやつだな」
「男の子って、基本的に同じものを買うんだね……」
呆れたように百花さんが笑う。
うん。まあ、俺も何に使うつもりだったのかは覚えてない。
ただ、需要があるから何時だって売ってるんだろうけど。
今、俺達は俺の部屋だった場所の探索中だ。
ベッド、ほとんど使ってなかった勉強机。クローゼットに本棚。ありきたりな男の部屋だろう。
パソコンもあるけど、先月からインターネットは使用できなくなったので、ほとんど意味はない。
どうやら、順調に閉鎖は進んでいるようだ。
「おっとと……ふひひっ、やっぱり順君も男の子だねぇ」
忙しなくあちこちを見ていた百菜が、意地の悪い顔をして俺の方を向いた。
その手には隠し持っていたエロい本が数冊。
ほとんどはパソコンからゲットしてたけど、まあそう言う気分の時もあったと言うことだ。
「って、あれ? そんなに焦んないね」
「そりゃあ、なぁ」
この部屋に来た時点で、その辺は覚悟してる。
「ちぇっ」
つまらなそうにパラパラとエロ本をめくり、やがてそれにも飽きたのか百菜は適当な所に放り投げた。
「う~ん……アルバムはいる?」
本棚から一冊、カバーに収まった大きな本を取り出した百花さんが聞く。
「いらない。邪魔だし、な」
見て懐かしむつもりも、もうない。
お袋の死体は腐り、原型をとどめていなかった。あの時に一緒にいた男。それとないまぜになって。
それが本望なのかどうかは知らないが、いまさらだ。何もかも。
弔いをするにも、あそこまで腐敗してては不衛生にすぎる。代わりと言っては何だが、帰り際に火だけつけて行くつもりだ。
「それじゃあ、これくらいかな?」
「だな。じゃあ、悪いけど布団は頼むな」
「まっかせてー」
百菜が言って、布団を丸めて持ち上げる。
片腕となった今、この手の荷物持ちはほとんど百菜にまかせている。
男としてどうよと思わなくもないが、適材適所と自分を慰めておく。
「さて、それじゃあ帰ろうか」
「うん」
自分の家に来てるのに、変な言葉だと思う。けど、それが今は普通に感じるんだ。
いつの間にか、俺の中では学校のあの部屋が帰る場所になっていた。
拠点である学校の周辺は、ゾンビの数はだいぶ減ってきているが、それでもまだいくらかはいる。
車の出入りは慎重に行い、持ち回りで見張りをしている生徒が安全を確保してから門の開閉を行う。
その場合、おもに使われるのは裏口だ。
今日も裏口側にまわり、クラクションで見張りの生徒を呼ぶ。
普段は見える位置にいるけど、今日は雨が振っているので室内にいるからだ。
やがて、中から女子生徒が二人、雨ガッパを着て走ってくる。
ジャージ姿に刺又だっけ、先がふた手にわかれた槍を持つ人と普通の槍を持つ方の二人組が基本となる。
どうやら、アレでゾンビを抑えてもう一人が頭を潰すのが普通らしい。安全圏なら、それが確実で合理的だ。
逆に、ぐいぐい中に入っていってジャイアントスイングしたりしてた俺がおかしいんだろう。
何というか、よく今まで生きてこれたな、俺。
そうこうしている内に、近寄ってきてたゾンビの始末が終わったのか、ようやく門が開いた。
中に入り、車を止めるとすぐに生徒が数名、集まってきた。
どうやら荷物を運ぶのを手伝ってくれるらしい。
「おかえりなさい。どうでした?」
「ただいま。えっと、布団と着替えが多数だね。あっ、あとお菓子と缶詰も拾えたよ」
俺の家以外にも色々と回り、多少の食料は拾うことができた。
まだ持ってきた野菜類の種も実を結んでいない。今後がどうなるかはともかく、食料は余分にあって困るものでもないからな。
「農作業の方は、今日もやってないのか?」
荷物を運んでいる女子生徒に聞いてみる。たしか、昔は同じクラスだった相手だ。
「雨が続いてるから、やっぱり難しいみたい」
「そっか……」
農作業に関しては、図書室にあった本で見よう見まねでやっている。確か今は、新しい畑を作るためにグラウンドを弄っているはずだ。
もっとも、この雨で作業は遅々として進んでいないみたいだけど。
とはいえ、それも一長一短だ。
今では水の確保も、自分たちでこなさないといけない。
これだけ雨が降っているし、工夫次第で飲水も簡単に確保出来る事はもうわかっている。
上手く使えば数週間は、飲水に困らないだろう。
反面、土いじりが進まないんだが。
「となると、もう少し食料に余裕が欲しいか……」
この雨がいつまで続くかわからない。ただ、食料自給ができるようになるまではまだまだ時間がかかりそうだ。
「それは後で考えようね。まず、持ってきたものを運ぶ運ぶ」
そんな風に考えていると、百花さんがリュックを手渡してきた。
俺でも持てるくらいに軽く、コンパクトにまとめてある。
「これは?」
「洋服。大体は共有でいいかもしれないけど、ある程度は清潔にしておかないと、腕の傷に影響があるかもしれないでしょ」
「わかった。受け取っておくよ」
「よろしい。それじゃ、部屋に戻りましょ。何時までも雨の中にいるのも身体に悪いしね」
百花さんが敷布団を、百菜が掛け布団を持つ。
「布団はアタシたちの部屋でいいんだよね」
持って行く前に、百菜が改めて聞く。
「えっと、はい。残りの着替えはどうしましょう?」
「共有でいいよ」
十分に貰ったし、しばらくは回せるだろう。
「それじゃあ、私達は行くね。後はよろしく」
「はい」
百花さんが女子生徒に鍵を渡して、前に立って歩き始める。
前と逆だな。なんて考えながら、俺も後を追った。
空き教室だった部屋も、今ではすっかりと生活空間になっていた。
綺麗にたたまれた布団が二組。鞄をしまっておく棚は、洋服用のタンスとして機能している。
机を並べて作ったテーブルは、クロスをかけて何となくそれっぽい見た目に。
あとは二人の家から持ってきたクッションや
椅子はまあ、学校で使ってる奴だけど。百花さんや百菜はそろそろ新しいやつが欲しいらしいが、なかなかチャンスがない。
「布団は干すまで使えそうにないねー」
カビ臭いと百菜。
「雨で少し濡れちゃってるしね」
荷物をそれぞれ所定の場所に置いて、思い思いにくつろぐ。
帰ってきたと言う実感が、ふつふつと湧いてきた。
今日も、生きている。
そんな実感だ。
「今日はどうしようか?」
「アタシはまた棒術の練習かな~」
アチョーとか言いながら百菜が構えを取る。ずいぶんとアクティブだ。
「俺は、どうするかな」
出来る事はあまりない。かと言って、なにもしないでいるのも暇だ。
片手で戦う練習もしておきたいけど、それはまだ百花さんに止められている。
こっそりやってるけどね。
「すまない、帰っていると聞いたが部屋にいるか?」
教室のドアが力強く叩かれる。
「風間先生?」
ドアが叩かれ、返事と同時に風間先生が入ってきた。
「ああ。君たちに客人だ」
「客?」
「いい大人が高校生を尋ねると言うのも、いささかに不格好だがね」
そんな声がして、何時かに見た迷彩服が見えた。
「桑名さん! 無事だったんですかッ!」
「やぁ。君も――と言うには、些か伊達になっているか」
「――彼女のがんばりですよ」
百花さんに視線を送り、答える。
うへへと、顔を赤らめて百花さんがくねくねと踊った。
「なるほど。仲が良さそうで何よりだ」
「それで、どういう要件で」
「なに。そう身構えなくてもいいさ。あの時に見せた、地図上の赤い範囲を覚えているかい?」
「えっと、確か居住地区の……」
百花さんがぷかぷかと思い出すように腕を組みながら、上を向く。
「そうだね。あそこがあれから一向に範囲を広げないことから、他の場所への危険性は低いと判断し、生き残り達の生活圏を確保するために動き始めたんだよ」
「つまり?」
「カマキリやエイは、あの範囲から数キロ圏内で活動している。あれが広がらない以上、他の地区にカマキリが出てくることはないと言うことだ。
――監視は必要だがね」
思わず立ち上がった。
「なら、もう危険はないんですか?」
百花さんが興奮した声で聞く。
「少なくとも、状況が悪化する要因は可能な限り小さくなったと見て、良いと思うよ」
ニヤッと、あの時とは違う余裕のある笑みを見せた。
そうして夜。降り続いていた雨も止み、月明かりと星が空を埋め尽くす。
町からはいつしか、明りが消えていた。電力の供給は先月からなくなったからだ。代わりに、空が明るくなったように思う。
俺達はなんとはなしに、ベランダに出て月明かりを見上げていた。
元々は百花さんがそうしていて、俺が傍に行き、百菜が来た。それからは流れだ。
ベランダには部屋から持ってきた椅子が三つ。それぞれが適当な位置に置いて座っていた。
「うーん、ちょっと肌寒いねー」
百菜が毛布にくるまりながら言う。
「寒いなら布団に入ってても良いけど……」
「やーだよ。二人だけにしておくと、ずっといちゃいちゃしてるんだもん。
アタシが仲間はずれでアタシが可哀想じゃない」
ぷっくらと顔をふくらませ、百菜が椅子ごと俺の右側に移動する。
ちょうど、百花さんとで俺を挟み込む形だ。
「ほーれほれ、美人姉妹が両手に花だぞー」
毛布を広げ、俺と百花さんにかぶせる百菜。やわっこくて温かい感触が全身を包む。
「もう、百菜ちゃんは強引なんだから」
「ふふん。草食系に片足突っ込んでる男にはこれくらいで丁度いいんですー」
「まあ、役得と思っておくよ」
実際、前までだったらありえない経験だろう。そもそも二人と知り合っていたかも、怪しい。
そう考えると……いや、それは考えないほうが賢明か。
今は今だ。それでいい。
「……もうすぐ、平和になるのかな」
空を見上げた百花さんが、ぽつりとつぶやく。
「なるようには努力してるつもりだけど……難しいかな」
ゾンビは一向に減らない。あれだけ殺しているのに、だ。
生活も苦しい。食料を自給する目処は立っていないし、今は良いけど冬に向けた防寒対策も、まだ手を付けてない。
なにより、黒森はけっきょく手に負えずに放置するしかなくなった。
結局、状況が停滞しただけだろう。
その停滞を作るまでに払った犠牲は、とてつもなく大きいけれども。
ただ、まだ今までのように先の見えない不安からは脱出しつつあるように思う。
「そっか」
「こういう時は、優しい言葉で慰めるのが男ってもんでしょーが」
ペチペチと百菜が叩いてくる。
「……まあ、どうなろうと一緒にいるさ。それに、信じてくれるんだろ」
「うん。順くんも、ね」
こっちを見て、柔らかく微笑む。
「アタシもいるからね~」
にへへと、百菜が笑う。
まだまだ色々と問題は山積みだ。
それでも、なんとかなってきた。してこれた。
これからもそう日々が続くように、やっていくだけだ。
「さっ、明日もやることはたくさんある。そろそろ寝ようぜ」
「一緒に?」
いたずらっぽく百花さんが。
「……お邪魔します」
「順君のえっちー」
茶化すように百菜が。
「どうせエロいですよー」
ふてくされたように俺が言って、一日が終わる。
まだ遠くでゾンビのうめき声は聞こえる。
問題はなにも解決していない。
それでも、俺達はまだ生きていける。
明日も。
明後日も。
できることなら、これからもずっと。この三人でいられることを願って、俺は目を閉じた。
『完』
本編はこれにて完結となります。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。次回には近作の同一世界観で、別の場所に視点を当てた番外編を掲載いたします。
そちらは完全に趣味にはしったB級パニックホラーですが、よろしければお付き合いください。
掲載は7月22日の12時から。




