表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/30

第二十五話 情報交換

 ある程度は予想していたから、俺はさほどショックを受けなかった。けど、百花さんはそうは行かなかったのか、机の下から俺に手を伸ばしてきた。

 その手を握り返し、どういう訳かを待つ。

 桑名さんは少しだけ悩むようなそぶりを見せ、小さくため息をついてから口を開いた。

「――政府が閉鎖を決定したのは、何もカマキリやエイみたいな怪物がいるからだけではないのだよ」

「というと」

「知っているかい? 今回の騒動は、海底から見つかった地球外の物質で作られた船の様なものが原因だと」

「UFOってことですか?」

 百花さんが聞く。

 噂としては俺は知ってたけど、本当だったんだと俺は確認するだけだった。

「まさしく。

 三流のSFでもやらないような設定が、まさに現実として存在したわけだ。

 それを運送中、偶発かはたまた何処かの国の妨害か。ともかく、事故を起こしたらしい。

 結果、中で冷凍されていた大本が目覚めてしまったと言うわけだ」

「大元……最初の感染者ってことっすか?」

 宇宙人ゾンビってやつか。

 頭のなかでドロドロに溶けた銀色で目がデカイ例の宇宙人を想像する。

 しかし、その予想は大ハズレだったようだ。

「いや。報告では、それは石柱に括りつけられた人であったと聞いている」

「なんだか、想像が付かない姿なんですが……」

 百花さんの方を見てみるが、こっちも良くわかってないのか首をかしげている。

 そんな俺達の反応を予想してか、桑名さんはふっと笑ってみせた。

「正確な事はまるで分からないが、そいつが輸送していたスタッフと警備の人員をどうにかしてゾンビ化させたのは間違いがない。

 加えて、船が事故現場から移動していてね。それを探しているところで、カマキリやエイと言った怪物の発生を確認したと言うわけだ」

 何でもない事のように、とんでもない事が言われた。

「ちょっ、ちょっと待って下さい。それじゃあ、宇宙人の侵略ってことなんですか?」

 百花さんがいきり立つ。

 確かに。ゾンビ化云々はともかく、船が移動しているのは不自然だ。

 少なくとも、俺が相手してきたゾンビには知性なんてない。

 ところが、桑名さんは首を左右に一回振った。

「何時から海底で眠っていたかもわからない船だ。何らかの事故で人類史が始まる前に落下して、そのまま眠っていたとするのが大多数の見解だね」

「意見ってことは、正確な情報じゃない?」

なげかわしいことに。

 何分、詳しい調査を実施する前にこうなってしまったからね。そこで、我々が調査のために派遣されたと言うことだ。

 政府としても、ゾンビ化の要因や他者への感染条件などの情報が整理し終わるまでは、誰一人として外に逃がしはしないさ」

 終わるまでと言うが、その後でも出られる保証はなさそうだ。

 もしかすると、調査に来たと言う自衛隊も同じかもしれない。

「だったら、物資などの援助はできないんですか? たしか、第一次の救助隊が来たんですよね」

 百花さんがゆっくりと、何かをこらえるように聞く。

 確かに、見捨てられたと公言されたようなもんだからな。思うところがあるのは仕方がない。

 逆に、妙に落ち着いてる俺がおかしいんだろう。

 それとも、百花さんが慌ててるから逆に冷静に慣れてるんかな。

「……残念ながら、彼ら以降の救助隊も同じ末路をたどったよ。結果、三次の失敗を持ってコレ以上の被害拡大を防ぐために打ち切りとなった。

 我々は調査隊として現地入りし、戦闘を極力さけてきたらか全滅は免れたがね」

 また笑う。癖なんかね。

「物資についてだが、これについては検討けんとうはされている。

 だが、生き残りの全数と所在。全てが不明な状態で無差別に空からばら撒くわけにもいくまい」

「――なら、俺達の学校は大丈夫ですね?」

 所在も生き残りの数もわかっている。周辺から集めたとしても、数百人単位で増えたりしないだろう。

「……報告はしておこう」

 目を細め、それだけを答える。

 期待はできなさそうだ。たぶん、外じゃあもう切り捨てにかかってる。

 じゃなきゃ、調査隊とやらが何時までも十人くらいで活動しているわけがないからな。

 核で焼き払うとならないだけ、マシと思っておこう。

 時間の問題かも知れないけれど。







「それで、君たちは今後はどうするんだい?」

 ひと通り話したと判断したのか、桑名さんが聞いてきた。

 答える前に、百花さんを見る。

「ごめん。任せて、良いかな」

 疲れきった顔をして、すまなそうに頭を下げてくる。仕方ないか、いろいろと衝撃的だったし。

「なら、学校に戻ります。できれば武器とか援助えんじょしてくれたら、最高ですね」

「銃のことかな? なら、おすすめはしないよ」

「あまりはないんすか?」

「はっきりと聞くね。余っているが、君は手入れもできないし弾薬を補充するてもないだろう。

 となると、継戦能力けいせんのうりょくが低すぎるのが一点。

 そして、訓練をしてない一般人が必中させる事ができるのは映画の中だけだよ」

「そっすか。そりゃあ、ダメだ」

 やっぱり鉄パイプが最高ってことだな。出来ればここで新しく拾っていこう。

 うんうんと納得していたところに、ダメ押しで桑名さんが付け加えた。

「もっとも、自死のためならばやぶさかではないが」

 ニヤリと意地悪く笑う。

「いりませんよ。寿命以外で、死ぬ予定はないし殺させる気もないんでね」

 百花さんの手を固く握り、鼻で笑い返してやる。

「そうかい。頼もしいものだね。

 では、最後に二つだけ教えておこう。ここを脱出するならば、知って置かなければならないことだ」

 そう言って、桑名さんは懐から地図を取り出した。

次回は7月19日の12時です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ