表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/30

第十三話 食料品の回収

 投稿し忘れると言う痛恨のミス……ッ!

 店舗に置いてあったゲームをセットし、最大音量で放置する。多少はうるさいし、ゾンビの注意も引くだろう。

「頼むから上手くいってくれよ……」

 勝手にエレベーターが閉まらないよう、バッドを置いてから階下へのボタンを押す。

 次に、適切な位置へと持ち上げて閉まるのを待った。

 扉は閉じた。

 ややあって、重い音を立ててエレベーターは階下へと向かっていく。

 ほんの数十秒。間抜けな、チーンと言う音が聞こえた。

 吹き抜けから見ていると、うまい具合に下へと降りたようだ。扉も一定時間ごとに開閉を繰り返している。

「よし。あとは、少し待って……いや、もういいか」

 ゾンビは続々と増えている。全部を待ちたい所だけど、それまで待っていたら日が暮れそうだ。

 俺は一斗缶を一つ持ち上げ、封を切る。

 そして、上からぶちまけた。ドッドッドッと重苦しい音がする。

 ぶちまけられた油は、ゾンビにかかったり床に溢れたりと辺り一面に広がっていく。

 そうして、床にこぼれた油を踏んでゾンビが転ぶ。次のゾンビがまた、転ぶ。もがくように腕を動かせば、それもまた滑る。

 滑稽こっけい光景こうけいだ。

 これが画面の向こうの出来事なら、そりゃあ笑うこともできたんだけど。

 ともあれ、効果はあるようだ。場所を変えながら、油をどんどん撒いていく。

 合わせて五個。全部を巻き終える頃には、集まってきたゾンビの大半が転げていた。

 ゴキブリみたいに、その場で接着できればベストだけどな。まあいい、コレで一階の探索はやりやすくなった。

 俺は最後に、一斗缶を上からゾンビ目掛けて投げつけてから、階下へと移動した。






「ゥゥォォァァァグゥォァ」

 流石に、一階まで来るとゾンビのうめき声も大きくなってくる。

 階段の途中でとまり、まずは前方確認。ゾンビはいるけど、移動中だ。少し待とう。

 一直線に進めば食料品売場があり、右にいけば生活雑貨や薬局にお菓子屋ってところか。

 横を見てみると、ゾンビが何十体も倒れているのが見えた。よしよし。

 警戒するに越したことはないけど、しばらくは大丈夫そうだ。

 前の方も、まあこれくらいなあ良いか。

 二体ほどがいる。けど、走りぬけつつ頭をぶっ叩けば突破はできそうだ。

 少し視線を横に向けると、俺が投げたリュックがある。ゾンビは減ってきてるな、先に回収しよう。

 その後、食料品売場近くで放置されたカートを拾う。そこに食料品とかを詰めて、一旦階段へ。そこで荷物をまとめて脱出と言う段取りだな。

 不測事態には臨機応変に。

「うしっ、行くか」

 気合を入れて屈伸。

 階段を飛び降りる勢いで走りだし、まずはリュックへ。手を伸ばし、上体を倒して回収。

 姿勢を起こすと、ゾンビと目があった。

 嬉しくないので、片手で勢い良く振りかぶったバッドを、無防備な頭へ叩きつける。

 手応えは弱い。けど、流石に姿勢は崩れた。

 ――追撃。

 は、しない。威力が足りないし、既に転倒しかけている。ここで殺す意味は薄い。

 ゾンビを回避するように足を向け、走り抜ける。

 カートへは一直線に行けた。リュックを中に放り込み、左手で持ち手を掴む。右手ききてはバッドだ。

 集めている最中に襲われたのか、カートの中には乾麺が入っている。

「そうか、スパゲティとか茹でれば食えるか」

 缶詰とかばっかり考えてたけど、そう言う手もあったか。

 選択肢を増やし、俺はカートを食品売り場へと向けた。







 やはり食料は真っ先に持って行かれたのか、虫食い状態だ。けど、一人で持ち運ぶには十分な位には残っている。

 カートにそうめんやうどん、スパゲティと言った乾麺を手当たり次第に入れていく。もともとセール用で在庫が多かったのか、割りと数は常備してあるようで、一箱分くらいは揃った。

 あとは調味料。塩が一キロと、砂糖を一キロずつ。もっと欲しいけど、重いんだよな。せいぜい胡椒こしょうを一瓶くらいだ。

 水は、まだ出るからやめておく。適当なペットボトルドリンクを三つ、おみやげにしておこう。

 缶詰は――ほとんどないな。ただ残ったのもあるから、とうぜん入れておく。フルーツみたいな甘味料は、ご褒美にもなるしな。

「はいはい、邪魔しない」

 向かってきたゾンビにカートを押し付け、頭をバッドで二、三回殴る。多少は、エレベーターに向かわなかった奴がいるようだ。

 そうやって邪魔なゾンビをどかしつつ、食料をカートに詰めていく。

 もう少し余裕があれば、在庫なんかを箱単位で頂いていけるんだけど、まあしゃーない。逃げるのも俺一人だし、持ち手も一人だけだ。

「……こんなもんか」

 カートにはあふれんばかりの乾麺や、缶詰と栄養バランスフードが詰め込まれている。

 あの二人がどうするかはわからないけど、しばらくは持つだろう。仮に学校へ行くなら、手土産としては十分だ。

 俺は中身をこぼさないよう注意しながら、二階へと向かう階段へ歩いて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ