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第十二話 脱出の準備

 あさった更衣室は、残念ながら鍵がかかっていて開かなかった。まあ、当たり前か。

 さて、お次は一階のゾンビ共だ。

 単純に必要なのは、一箇所に集める方法。可能ならそこから動かさず、俺の邪魔をしないこと。

 集めるだけなら、一階に騒音を発生させる器具を設置してやればいい。この階で手にはいりそうなのは、ゲーム機と本屋に置かれた私物らしきCDプレイヤーくらいだ。

 十分だな。問題は、こいつをどうやって下に送るか。

 鳥元とりもとにある階下への移動手段は、階段とエレベーターのみ。エスカレーターがないのは以外だけど、そのおかげで二階が安全だったのだから、よしとしておこう。

 使うとすると、エレベーターだな。

 念のためエレベーターのボタンを押し、一階に停まっていたのを呼び出す。

 俺は少し離れ、背負ったバッグをそのままにバッドを構えた。

 やがて、無機質なチーンと言う音とともに扉がゆっくりと開く。

 中は空だった。血の跡も、ゾンビも、死体もない。

「……ふぅ」

 どうやら使われることは無かったらしい。二つあるから、反対側はわからないけど。

 ちらっと、今回は開かなかった左側を見る。上にある現在位置を知らせるランプはRが点灯していた。釣られて何となく上を見るが、あたりまえだけど天井があるだけだ。

「さて、後はどうやって下に下ろすかだな」

 ひとまず、ゲーム機とプレイヤーを使えるようにセットしなくちゃならない。

 それに加えて、ゾンビを足止めする方法も必要だ。

「あー、集めて上から倒せりゃ楽なんだけどな」

 例えば上から物を投げつけるとか。問題は、数も質も足りないってことだけど。

 ともあれ、動き出しますか。






 集めたゲーム機はタコ足に繋いで充電し、その間に俺はこれらを載せるワゴンの準備を始める。

 ワゴンは、商品を陳列していたものを使う。

 在庫処理なのか、やたらと安い服が目白押しだ。

 プレイヤーは電源をささなきゃ使えないので、今回は見送りだな。

「こういう時の曲は、やっぱりマイケル・ジャクソンのスリラーかね」

 それとも、ゾンビ映画で使われてたクイーンの曲か。曲名は知らないけど。

「……あっ、そうだ」

 そういえば、あの映画ではゾンビを阻むためにバーのカウンターに火をつけていたな。

 流石に火をつけるのは俺の命がマズイことになるけど、流用できそうな手段は思いついた。

 充電しているゲーム機をそのままに、俺は足をフードコートに向ける。

 営業しているのは全国チェーンのハンバーガーショップとうどん屋と、なんだかよくわからないけど色々なメニューがある無節操むせっそうな店。

 普段なら、店のカウンターに囲まれるようにして並ぶ飲食用のテーブルや椅子を使うのだけど、今日は別口だ。

 出入り用に仕切られたドアを開ける。ここから一本道で、全ての店舗がつながっているみたいだ。

「……おっ、あったあった」

 狙いは油だ。

 一斗缶いっとかんって言うんだったか。それが、ハンバーガー屋に三つ。うどん屋に一つと奥まった多目的なショップに二つ。

 ずいぶんとあるけど、それだけ油を使う頻度ひんどが多いってことだろう。俺からすれば、これは助かる。

 一斗缶をカウンターに乗せ、目についた商品を陳列するキャスター付きのワゴンを持って来て順番に移し替えていく。重いので一苦労だ。

「……あんまり時間ねえな」

 ふと時計を見てみると、既に四時を回ろうとしている。

 季節がら、暗くなるまではまだ多少のゆとりはあるけれど、急ぐに越したことはなさそうだ。

 俺はワゴンをエレベーター近くまで運び、次の準備を始めるために忙しなく動き始めた。






 次の仕込みは、下にゲーム機を運ぶワゴンがエレベーターにセット出来るかどうかを確かめることだ。

 が、これは意外とすんなり入った。始めから搬入もできるように、大きめのエレベーターを設置していたのかもしれない。

「あとは、コレが自動で閉まらないように細工をしなくちゃな」

 うーん。どうしたもんか。

 ワゴンが大きければ斜めに立たせて閉じる扉に引っ掛け、俺が隙間から脱出してエレベーターを閉じるんだけどな。

 もう少し大きいワゴンはないかとざっと見渡すけど、どうも規格は統一されているらしく、差は見当たらない。

 他に何かないかと見渡していると、洋服屋のハンガーラックが目についた。

 そうだ。ワゴンが駄目なら、他のでもいいんじゃないか。ようはゲーム機を仕込めればいいんだし。

 ラックはそこそこ大きく、縦にしてそのまま入れるとエレベーターが閉まらない。ただ、伸縮はできるみたいなのでそうやって操作してやれば簡単に入るだろう。

「で、これをどうしよう」

 ラックの間にワゴンを仕込み、あとはこのラックをどうにか扉に引っ掛ける形にすれば良い。

 ちょっと斜めにして、扉を閉めてみる。開く。また閉じる……駄目か。

 下を持ち上げ、扉が閉まる位置で調整してラックの下にどかしたボールとかをかませる。

 閉じると同時にボールを引き抜く。

 大げさな音を立てて、扉は閉まった。

 ボタンを押して、エレベーターの扉を開く。

 ラックが倒れこんできて、外にはみ出した。

 扉は閉まらない。

 よし、これで完璧だな。

 俺は残る準備であるゲーム機の充電を確かめるため、おもちゃ屋に移動した。

 とりあえずデザリングで接続中。

 次回は可能なら7月7の12時に。

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