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異世界に飛ばされた俺は奴隷調教師になっていた  作者: 七瀬 優
第13章 M&M冒険者の街前店オープン!
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第1話 熟練度と隠しパラメータ

今回は、生産スキルの説明が結構あります。

う~ん、もう少し短くまとめたかったんだけど……。

うまくいかないものです。

 トンテンカン、トンテンカン、トンテンカン……。


 真っ赤に熱した鉄を叩くと瞬く間に剣になっていく…………。

 なんて事も無く、少しずつ形を整える作業が続く。

 

 トトカカ、トンカカ、トトトカン……。


「う~ん」


 トントントンガン、トントントンガン、トントントントントントンガン、トントン……。


「う~~~ん?」


 トンガラガンガン、トンガラガンガン、トンガンガン、ピシ。


「あ!?」


 あああ~遊びすぎた、冷えすぎた鉄にひびがはいっている。

 集中力が尽きているな。

 もう、遊び半分になってたし後半……。

 一旦休憩するか……。


 俺は、失敗作を炉に戻しもう一度溶かす。

 失敗作を溶かして鉄にすると品質が落ちるんだが……まあ練習だしいいか。


「マユさん、そろそろ一休み入れませんか?」


 M&Mの作業部屋の片隅で薬を作ってるマユさんに声をかける。


 ゴリゴリゴリゴリゴリ……。


 すり鉢で薬草をすりつぶす音だけが返ってくる。

 反応が無い……。

 集中していて周りの音が聞こえていない。

 う~ん、凄い集中力だ。

 途中で、集中力が切れて遊び半分になってた俺とは大違いだな。

 まあ、邪魔するのも悪いし、一人で休憩するか。

 同じ作業部屋に溶鉱炉があるとしても、俺たちに脱水症状とかは、関係ないからな。

 完全耐熱効果のアクセサリ万歳だ。



 俺は、台所で冷たいジュースをコップに入れて来て、隣のダイニングで一休みする。

 

「この世界の生産は地味に疲れるな……」


 なんて呟きながら、こんな事をする事になった原因を思い出す。





 それは……。


 俺とティナとセリカが冒険者ギルドの加入クエストを終えてしばらくたった頃。

 そろそろM&Mも開店と思いきや、土壁さえ外されていなかった。

 簡単に言うと、冒険者ギルドに在庫の殆どを売り払ってしまったので、お店を開くだけの商品が無かったのだ。

 マユさん曰く「開店早々売り切れではダメなのです! スタートダッシュが肝心です!」らしい。

 そんな彼女は当然、売り物の生産にかかりっきり。

 土壁の方はというと、肝心のマユさんが生産中で何も言わなかったので、そのままにされていた。


「う~ん、これからどうしよう?」


 シーナ、セリカ、ティナはこの所、朝早くから薬草採取に行っている。

 当然冒険者の街周辺ではなく、砦とかエルフの森へだ。今日は、砦の近くに行っているはずだ。

 

 リーフさん達は、あんまり進展が無く、砦の樹の家で何かしている。

 レナさんとミルファさんは、マユさんが生産にかかりっきりなので、家事を色々やってくれている。

 ミルファさんがメインで、その手伝いをレナさんがだ……主従が逆転してる気もしないでもないが……。


 それで肝心の俺だが、はっきり言う暇をしてる。


「薬草採取についていけばよかったかな?」


 布団の誘惑に勝てなかったんだよな……。


 う~ん、どうするか?


 …………。

 ……。


 街の探索がてら、装備品でも探してくるか。

 そろそろ、本格的に攻略に行きたいと言い出す奴が出てきそうだし、装備を整えておいた方がいいだろうからな。

 冒険者の街ならそれなりにいい装備が出回ってるだろうしな~。


 俺はそんな軽い気持ちで、街の武器屋、防具屋をめぐる事にしたのだが……。




 ない……。


「もっとランクのいい商品ってないですか?」

「う~ん、うちではちょっと……」



 ない……。


「他に武器は無いですか?」

「ここにあるだけなんだ」



 な……お、つなぎぐらいにはなりそうだな。


「これっていくらですか?」

「すまんな売約済みなんだ」



 ないか?


「ちょっとうちでは……」

「そうですか……」



 もう、ここで最後だ。

 おおお、これもつなぎにいけるな!


「これって……」

「ああ、今度のオークションで出すやつだ」

「今売っては……」

「すまんな……」




 ろくな武器がなかった。

 もちろん、防具もだ。

 いいのが見つかるまでの繋ぎぐらいになりそうなやつは、売約済みとか非売品、オークションの見本とか……。


「やっぱり、モンスター襲撃で枯渇したのは、消耗品ばかりではなかったんだな……」


 品切れにはなってはいないが、いいものが殆ど店頭から消えている。

 う~ん、これはまじめに鍛冶をやって自分で作った方が早いかもしれない。




 と言う訳で、俺は装備品を自作する事にした。

 ただ、あまり気が進まなかった。


 その理由は、回復スキルなど消耗品を作成する生産スキルはともかく、鍛冶などの装備品を生産するスキルの熟練度の上げ方にある。

 端的に言うと、俺はズルをしてあげたのだ。


 ズルと言っても、チートとかそういった類ではない。

 金満レベリングとか、経験値をお金で買うような類の話だ。

 もっと解りやすくいうなら、高額の触媒が必要で、ここぞの必殺技として使うようなスキルを格上のモンスター狩りのために使ったり、そのままずばり、ゴールド(お金)を消耗して高火力をたたき出すスキルでレベリングをしたりする事だ。

 WMOではレベリングという意味では、ここに飛ばされる前にもぐっていたような上位の隠しダンジョンにいけば、1回もぐるだけで最上位でひたすら必要経験値が高い職以外はマスターできる。

 最上位の職は、そもそもが、一番効率のいい狩場で簡単に戦える。生産系とかでも、前提で取った戦闘職のマスタースキルで狩ればいい事だしな。


 しかし、職業レベルに比べてスキルや、それぞれの武器や、属性などの熟練度あげは困難を極める。

 武器や属性、スキルなどは、それぞれのマスタースキルを取る事で、熟練度の数値がすべての職で統合される。

 マスターしてない職業スキルなどは、職毎に個別に数値をもっているが、マスタースキルにすることで職が変わっても熟練度を保持するようになるのだ。

 まあ、普通の職業スキルなどや、マスタースキルは熟練度をもっていて、マスタースキルは職を変えても変化しないと言った方が解りやすいか。

 そんな訳で最終的にはすべての職業で、同じスキルは熟練度が1つになる感じなのだ。

 ある程度までは結構上がるのだが、最高値を目指すと、とんでもないことになる。と言うか、俺は熟練度MAXに出来たものが一つもなかったりする。

 

 で、肝心の生産スキルだが、できるだけ良い物を出来るだけ沢山作ることで上がっていく。

 消耗品の場合は、自作で数をつくるので、あまり問題にはならないのだが、質が悪い事を我慢すれば……。

 装備品の場合はそうは行かない。

 そもそも、装備品は生産特化のプレイヤーメイドに任せて自分で作るなんて事はほぼなかったのだから……。

 それでもある理由で一定の熟練度が必要になったのだ。


 それは……修理だ。


 熟練度が足りない状況で修理すると、品質が落ちたり、武器が壊れる(ロスト)したりするのだ。

 なので、無理にでも上げないといけない羽目になる。


 で、俺の取った手段が、上位の素材を使って物を作る……当然失敗するが、上位の素材を使えば使うほど熟練度のあがり方は早くなるのだ……たとえ失敗しても。成功した方があがりやすいのは当然だが。

 

 例えば、最低ランクの銅の剣を作成したとする。

 大成功で5P、成功で3P、失敗で1Pって感じだ。

 

 これが、上位ランクのオリハルコンの剣だとすると……。

 大成功で50,000P、成功で30,000P、失敗で5,000Pって感じだ。このランクになると大成功より上の成功もあったりするのだがそれはまあいい。


 つまり、銅の剣を1000回成功させたのと同じ熟練度がオリハルコンの剣の失敗で得られるのだ。

 ちなみに、このPと言うのは、攻略サイトなどで使われていた値で、熟練度0の時、0%→1%になる量を1Pとして扱ってた物である。

 WMO内で実際には○○%で表示されていた。



 そんなわけで、俺は、高級素材を大量にゴミに変えることで、強制的に修理に必要な熟練度まで上げたのだ。


 

 熟練度が高いならいいものが作れるじゃないと言われるかもしれないが、そうは問屋がおろさなかった。

 

 あるプレイヤーが金満レベリングで鍛冶スキルの熟練度を上げまくって、プレイヤーメイドの装備品の市場に殴りこみをかけた事があったのだ。

 彼は、戦闘系のトッププレイヤーの一人で大量の上位素材を狩りで手に入れて、その時の生産系TOPのユーザーよりも熟練度が上になったと言う噂さえあった。

 しかし、結果から言うと、彼の装備品は見向きもされなかった。

 高い鍛冶スキルの熟練度に物を言わせた装備品は、鍛冶スキルの熟練度が劣る本職の装備品よりも遥かに性能が下だったのだ。

 そんな訳で、熟練度以外に隠しパラメータがあるんだろうって言う話になった。

 修理の仕様をみると、熟練度は低いと大きなマイナス補正があり、高いと多少のプラス補正がある程度だと思われた。


 そして、暫くして、ある最上位の生産職のマスタースキルにより、それが裏付けられる。

 そのスキルによって解ったのは、隠しパラメータは、特定の条件を達成ごとに発生すると言う事だった。

 

 例えば……。

 

 銅の剣の作成に成功      :成功率0.001%UP

 銅の剣を100回成功させる  :成功率0.001%UP

     ・

     ・

     ・

 

 鍛冶をのべ100回行う    :品質向上率0.001%UP

 鍛冶をのべ1000回行う   :品質向上率0.005%UP

     ・

     ・

     ・

 

 これを、項目ずつON、OFFを設定できるマスタースキルだったのだ。

 それゆえ、取得した事のある隠しパラメータしかわからないが、攻略サイトなどでは結構な条件が見つけ出されていた。

 ちなみに、攻撃力UP&重量UPなどの、メリットとデメリットが合わさった補正値もあり、これの使い方で結構装備の品質向上に役が立つスキルだという話だった。





 でだ……俺は、ズルして熟練度を上げた為に、生産に必要な隠しパラメータをほぼ開放できていない。

 出来ていたとしても、『鍛冶で100回失敗する……』なんてのだけだと思われる。

 

 これから本格的に鍛冶をして、いい装備品を作ったり、貴重な素材で成功率を出来るだけ上げたいなんて時には、この隠しパラメータが必須になってくる。


 つまりは……。

 作って、作って、作りまくるしか方法がない!


 あいにくと、砦で手に入れた鉄鉱石は個人で使うには十分すぎる量がある!




 そうして、地獄の鍛冶修行が始まったのだ。

 最初はバカ正直に溶鉱炉に熱せられた部屋で汗をかきながらやっていたのだが、途中で気づいて完全耐熱効果のアクセサリを作ったりもした。


 最初はひたすら、鉄鉱石を鉄のインゴットや塊に変える作業だった。

 初めのころは鉄の塊の品質が悪いのばかりだったが、流石に量が量だったのか次第に鉄のインゴットがかなりの割合で作れるようになった。


 で、肝心の鍛冶はというと、ひたすら最初はナイフを作っていた。

 しかし、何十本もずっと作り続けていると飽きてくる。

 次は、剣。

 そして、篭手、盾、斧、槍、兜、弓、鎧……などと、色々作るものを変えていった。


 

「鍛冶の練習なら、矢が不足してるんだからそっちを作ったら?」


 シーナがそんな事を言ってきた時もあり、鉄の矢を作ってみた事もあったが……。

 あれは無理だ。

 ゲーム中だと、まとめて○本作るとかあったけど……。

 こっちでは無い。1本1本手作業で作り上げていく事になる。

 その上、矢は一度狩りに行くと、少なくとも数千本の単位下手をすると万の単位消費する消耗品だった。

 そのためだろう、隠しパラメータの設定も、『鉄の矢の作成を10,000回成功……』なんて感じで単位がおかしかったのを思い出し断念した。




 鍛冶の道は長いな~。

 なんて、思いつつも、台所でコップを洗い、鍛冶場に戻る。


「さて今日は、あと100は行くぞ!」




 そして夜、マユさんが皆に報告していた。


「ふう、なんとかこれである程度の在庫は確保できました」

「やっと終わったの? それじゃあそろそろお店を始めるの?」

「はい、明日の朝から始めようと思います」

「結構急ぐわね」

「だいぶん、予定よりおくれましたから」


「お店だ~~~一杯買うぞ~~~」

「ティナ、お前は買う方じゃなくて……どっちかと言うと、売る方だぞ」

「売る方~~~!? おおお~~~楽しそう~」

 

「私でも役に立つでしょうか?」

「今まで、練習してきたんだから大丈夫です!」


「それじゃあ、そろそろ狩にも行こうよ~~~」


 なんて感じで、明日からM&Mがオープンする事に決まる。



 そうだな~。

 鍛冶の練習で大量の装備品が出来たし、品質の良いのは溶かして作り直すのももったいない気がするし……。

 自分達の訓練用や予備用に一番出来のいいのを取り置くとして、あまったのはお店の商品として出すか。


 あとでシーナに鉄の装備品の相場を聞いておかないとな……。



 そうして、M&Mに俺の作った装備品類もならべられる事になる。

 マユさんは特に反対しなかった。

 ただ、「いつか装備品にも魔力を付与などしてマジックアイテムにしたいですね……」なんて呟いてはいたが……。

次の話はついにM&M冒険者の街前店オープンです!


ところで、クロさん……なんか色々と忘れていませんか?






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レビューはまだまだ募集中です。

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