第3話 加入クエスト
更新です。
冒険者ギルドの加入クエスト、さて内容は?
「まあ、何が起こったのかは理解したわ。何か調べなくちゃいけないことが増えた気がしないでもないけど……」
「そいつぁ大変だな。で、どうするんだ?」
街の惨状について説明を終わった男……冒険者ギルドのカウンターで受付している……は、シーナと俺に目線を向けてくる。
ティナの方は……4人の冒険者のPTと近くのテーブルで盛り上がっている。変な情報に影響受けなけりゃいいんだが……。
「そうね、冒険者ギルドについての話も聞かせてもらうわ。内容によっては入ってもいいわよ」
「そりゃありがてぇ。で? 何から聞く?」
「冒険者ギルド全般と、加入時のメリットとデメリットね」
「そうか……ところでお前さん達、他の街の冒険者ギルドには入っているのか?」
「私は、別の場所で入っていたわ。他のメンバーは……」
シーナが俺に答えを促してくる。
「俺は入ってないし、ティナは……」
つい最近、エルフの森から出てきたんだから入ってるわけ無いよな。
エルフの村に冒険者ギルドは無いだろうしな。
「そうね、一緒に来てる二人は入った事ないわね。別の場所で待ってるメンバーは……もしかしたら入ってたかもね」
「そうか、なら前の場所の冒険者ギルドから招待状とか持ってきてるか?」
「なにそれ? 初耳ね」
どうやら、男の説明によると、冒険者ギルドってのは、色々な場所に個別の組織として、幾つも存在しているらしかった。
ある国では、国が運営する冒険者ギルドだったり、ある商業都市では商人の組合が運営していたり……。
場所によっては、学園が運営してる場所や、個人で運営とかもあるらしい。
ちなみに、冒険者の街の冒険者ギルドは、冒険者同士の自助組織的なものであるらしい。
よって、最上位ランクの冒険者がギルドマスターとなっているそうだ。
それで、冒険者ギルド同士のつながりはそこまで強くは無いが、情報のやり取りなどの連絡は取っているらしい。
そのため、他ギルドが発行した『ウチのBランク冒険者です』という紹介状を参考に、通常Gランクから始まるのを、前のギルドのランクを引き継げるそうだ。
まあ、引き継いだ先がテストして能力を試したりはするのだが……。
「他の場所でAランクで活躍してた奴をまた最初からGランクからランク上げさせるのは無駄だからな、ギルドにとってもな」
「と言う事は、ランク分けについては、どのギルドも一緒の基準って事?」
俺には、他のギルドの基準はわからないが、シーナは今までの基準でいいのかは気になるかもしれないな。
「ああ、ランクの分け方は一応統一してあるんだが――」
男が言うには、冒険者のランクは、S、A、B、C、D、E、Fが設定されているらしい。
もちろんFが一番低いランクだ。
ちなみに、クエストボードにあったGってのを聞いたら、「それは見習いだ」という事らしい。
ここまでは、どの冒険者ギルドも同じわけ方で、統一されていると言う事だ。
それ以外にSより上のランクをそれぞれの冒険者ギルドがつける事が出来るそうだ。
名誉称号とかの意味合いが強いらしいが、このギルドでは、SSランクを一人決めて、その人物がギルドマスターになるらしい。
名目上は、この冒険者ギルドのトップの冒険者が、ギルドマスターに成っていると言う事らしい。
まあ、本当にトップの奴がなってしまうと、ギルドとしては損なので、実質は引退した元トップの冒険者がやっているらしい。
あと、SSランクとは別にLランクというのが、歴史に残るような功績をあげた冒険者に与えられるらしい。
「ただ、同じAランクでも基準が違ったりするからな。こっちでテストしてBランクに成るとかはあるぞ」
「まあ、ランクの呼び方で混乱しないのは楽ね。で、実際のメリットとデメリットは?」
「基本的には他の冒険者ギルドと同じような感じだな。まあ、今説明したとおり、自助組織みたいなモノだからなここは、ギルドが極端に冒険者の上前をはねると言うような事はないな。人材はこの街の宝だからな」
「つまり、私たちの取り分が多いって事?」
シーナが嬉しそう頬を緩めながら確認する。
「そうなったら、良かったんだがな――」
そんなシーナに対して、男は残念そうに続ける。
簡単に言ってしまえば、この街の税金と言うべき物がギルド単位で徴収されるらしい。
このギルド単位というのは、冒険者ギルド、商業ギルド、生産者の各種ギルド、他細かなギルドなどだ。
そんな幾つのもギルドのトップで集まって、街の運営が行われてるそうだ。
まあ、住む為の街ではなく、攻略拠点としての街なのでその内容は普通の街や村なんかとは大きく違うそうだが……。
徴収されたお金の殆どが、城壁などの防衛費用や治安維持の費用に当てられるって話だから、安全に対するコストと考えれば安いのかもしれない。
いくら弱いモンスターばかりの場所でも、何時出現するかわからない中ゆっくりと休息は取れないからな。
「まあ、お偉いさんの懐に入るよりはよっぽどましね」
「ま、仕事には適正な対価をってのはこの街の基本だからな。ふんぞり返っているだけでお金が入ってくる奴らは排除されるのさ」
その後、細かい質問をシーナが行い、男が答えるというのが暫く続き。
「で、他に質問はあるか?」
「冒険者ギルドに関しては、今の所ないわね」
「で、どうする? 入るか?」
「まあ、入っても損はなさそうだしね」
そこでシーナが俺に目配せをする。
「ティナ~そろそろ戻って来い!」
「あ、またね~おじちゃん達~~」
「「「「お……おじちゃん!?」」」」
なんかティナと話していた4人PTの面々がショックを受けている。
年齢でダメージがあるのは女性の特権ではないようだ。
「今、ここに居るメンバーはこの3人だけど、他はどうなるの? あと、他のギルド、商売したいメンバーも居るんだけど?」
「他のギルドとの掛け持ちは出来るぞ。まあ、それぞれのギルドにお金を納めることになるけどな。冒険者ギルドの場合クエスト報酬から天引きだから、あんまりかわらないがな」
「他のギルドは違うの?」
「色々だな。直接お金は取らないが、基本は、ギルドとの間でお金が動く時、手数料がかかるって感じだな」
「露店を出す時の場所代とか?」
「そんな感じだな」
この街では勝手に店を開けないのか……まあ、どの街でも俺が知らないだけでそうかも知れないけどな。
「他のメンバーについてだが、コレについてはそれぞれ加入クエストを受けてもらうしかないな。PTで受けるような物じゃないから後からでもOKだ」
「加入クエストって、具体的には?」
おおお~加入クエスト!
初めてのクエストだ!
何だかんだ言っても、初めてのクエストってのには心踊る物があるな!
「クエスト!!」
ティナと同じ事を考えてる気がするが、こればっかりはな……。
リアルに冒険者ギルドのクエストをやるってのはやっぱりな!
「それなんだがな……いまだと……」
とたんに男のしゃべりが話歯切れの悪い物になる。
何か問題でもあるのか?
「今の状況だとな……雑用10個ほどこなしてもらう事になるな……」
とたんに、シーナが嫌そうな顔になりたずねる。
「雑用って具体的には?」
「ガレキの片付けか、モンスターの死体処理だな」
それ、何か違う!
俺の思い浮かべていた初めてのクエストってもっとこう……。
「えええ~~~モンスター退治とかは!?」
ティナが不満そうに声を上げる。
珍しい事って意味ではガレキ処理とかもありそうだが、冒険者のクエストってものに抱くイメージと違ったのだろう、俺のイメージとも違うしな。
「モンスター退治でなくとも、簡単な採取とかじゃダメなんですか?」
「そうね、後片付けなんて、かったるくてやってられないわね」
シーナはクエストというよりも、低賃金の面倒な労働を避けたい感じだな。
「本来は……このあたりの最弱モンスターのゴブリンあたりを数匹倒すか、薬草をひと束用意するかなんだが……」
お、ちゃんとクエストっぽいものがあるじゃないか!
当然そっちだな!
「そっちでいいわよ。頼める?」
「う~ん……まあ、今の時期……自力でここまで来た外部組だから……やるってなら止めはしないが……今は街の外の依頼は、ソロだと最低Cランク、PTでもDランクの依頼だぞ。内容的にもそのくらいのランクの仕事になっちまうしな……」
うん?
外に出るのはモンスターの残党が残ってて危険だからと言うのは解るが……ゴブリン退治や薬草採取がそのランクなのはどうしてだ?
「いいわよ? で、薬草の束の場合は入手方法問わずここに持って来ればいいの?」
「内部組の場合はその辺ちゃんと採取して来いって言う所だが、外部組のあんたらなら細かい事は言わない。こんな事で時間かけるよりやってほしい事は山ほどあるしな」
「それでいいわ、手続きしちゃって」
「おう、じゃあまってろ」
男はカウンターから立ち上がり、後ろのドアから事務室のような所に入っていく。
ごそごそと何か探してるようだったが、「あった、あった、これだな」といいながら戻ってくる。
「これに名前とか書いてくれ。まあ、内容は特に正確じゃなくてもいい。手札を隠したいなら偽名だけでもOKだ」
おいおい、登録内容そんな適当でいいのかよ?
そんな考えが顔に出ていたのだろう。
「まあ、ギルドカードに表示する情報ってだけだからな。どっかの国のギルドみたいに情報を集めてるわけじゃない」
まあ、それでいいならいいが……。
そんな訳で、俺とシーナはすぐに書き終わる。
名前と適当な職業を書いてるだけだったからな。
ちなみに、シーナは『トレジャーハンター』、俺は『魔法剣士』なんて職業欄に書き込んでおいた。
「ううう~ん。これはどうしよう?」
ティナは無茶苦茶なやんでいる。
結局10分ほどなやんで、色々バカ正直に書き込みをしていた。
俺は、書き直させようとしたが、シーナが「別にかまわないわ」なんて言うものだから、止める機会を失ってそのまま提出になった。
ティナの書いた情報を見た男が、「おもしれぇな、じょうちゃん」なんて笑っていたので冗談か何かだと思っているのだろう。
多分、シーナはまじめに取られる事がないとわかっていたのだろう。
そういえば、ティナは変装用のネタ装備つけっぱなしだったな。
「で、これが、仮ギルド章だ。これを門番に見せれば、金を取られずに行き来できる」
男が、何かの金属の板を渡してくる。
この冒険者ギルドの入り口にあった、盾の上に剣と杖が交差しているマークが刻印されただけの板だ。
それを、3人は受け取る。
「これで、加入クエストは開始でいいのね?」
「おお、がんばれよ?」
シーナの確認に男が答える。
その言葉に彼女は頷くと、俺の方に振り向く。
「あんた、薬草もってたわよね? それだしなさい」
って……それは……。
「シーナちゃんズルはダメだよ! ちゃんと取ってこないと!」
「あんたらは好きにしたらいいわ、でも私はそんな面倒な事付き合ってられないわよ」
俺は「いいのか?」と目線で男に問いかける。
「まあ、この街に自力で着いた時点でテストする意味もないからな~形だけだし別にかまわねぇよ」
俺は、何か釈然としない物を感じながらシーナに薬草の束を1つ渡す。
「これでいいわね?」
「おう、そっちの二人はどうするんだ?」
「流石に、最初のクエストぐらいはちゃんとやりたい」
うん、達成感もなにもあったもんじゃないからな。
クエストという作業を繰り返すのは、まだ先でいい。
「わたしは、ずるはしないよ!」
と言う事でシーナは先に、冒険者ギルドに加入して、俺とティナで加入クエストをする事になった。
やっぱり、最初だけはまじめにやりたいよな。
この先は、どうせ無茶苦茶な事になるんだし……。
「おう、受け取ったぜ。じょうちゃんの方のギルドカードは、4~5日まってくれ、今はちょっと忙しくて人手がたりねぇ。それまでは仮ギルド章使ってくれればいい。あと、入ってきた時の割符があるならここで払い戻すぞ」
そんな感じでシーナは男に割符を渡して、入る時に払った金貨10枚を受け取っていた。
「あと、もし回復アイテムとかあまってたら売ってくれると嬉しい。今は、枯渇がはげしくてな、少しでも手に入れたいんだ」
「無い事はないけど……。うちのメンバーが店で売るつもりだから……」
「在庫を持ってきてるのか!?」
「ある程度はね。ただ、今回街の様子が変だったから、私達が先行してきたのよ。呼んでくるのはしばらく時間がかかるかもしれないわ」
「そうか……だが、まあその時はこっちに流してくれると助かる」
「普通に売った方が儲かるでしょ?」
「加入クエスト代わりや、ランクに色をつけるぞ」
おい、おい、おい、そんな事勝手にしていいのかよおっさん。
「ま、考えておくわ」
「おう、たのむ。あと、そっちの二人は……がんばれよ。やめたくなったら、普通にもちこんでくれりゃいいからよ」
「絶対にずるなんか、しないよ!」
「まあ、最初のクエから横着するのもな……」
男は「がんばれよ~」と軽い感じで送り出しくる。
さっきの4人TPにも「がんばれよ、じょうちゃん」なんて声をかけれながら俺たちは冒険者ギルドを後にした。
「さて、冒険者ギルドでの加入クエも受けたし。次は……」
「クエストだよ!」
「それは後な」
「ええええ~」
「そうね、商業ギルドでちょっと色々調べてみましょう。まずは、マユのM&Mをどうするか考えないと……」
そうして、次は商業ギルドを目指す俺たちだった。
何かさっきの冒険者ギルドのカウンターの男も、軽い雑談って感じで回復アイテム売ってくれとか言ってたけど、目だけはかなりマジだったからな。
早々にM&Mを開店させたほうがいいのかもしれないな。
次の話は……加入クエスト攻略……ではなく、M&Mの開店準備です!
クロはついに色々開き直るのか?
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