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異世界に飛ばされた俺は奴隷調教師になっていた  作者: 七瀬 優
第12章 ボロボロの冒険者の街
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第2話 冒険者ギルド

冒険者ギルドにやってきたクロ達。

ギルドの受付は、非常時のため綺麗な受付嬢はいませんでした……。

「すっご~~~い」


 ティナが歓声を上げながら見上げている冒険者ギルド。

 その建物は、遠くから見ても高さがあり目立っていたが、目の前まで来るとその異様さが際立つ。

 近づいてみて解ったのだが、その頑丈なつくりに驚く。

 扉が内側に開かれ開け放たれた入り口を見たら……扉の厚みも、壁の厚みも、尋常じゃない。50cm以上、まるで銀行の大金庫の扉のようだ。

 窓などを見ても、外側に鎧戸それも多分鋼鉄製があり、その内側にも何枚か鉄板をはめ込めるようになってるみたいだった。

 4~5階建ての建物にしてもちょっと度が過ぎる、まるでシェルターの様だ。

 もしかしたら本当に、最悪の時はシェルターとして使うのかもしれないな。


 そんな建物、入り口の上の部分には、大きな盾の上で、剣と杖がXの字に交差した看板が掲げられている。

 たぶん、あれが冒険者ギルドのマークなんだろう。



「二人とも、そんなところで惚けていないでさっさと中に入るわよ!」


 そう言いながら中に入っていくシーナに、俺とティナは慌ててついていく。

 

 


 冒険者ギルドの中は想像以上に広そうだった。

 入って直ぐのホール部分だけでも、今のM&Mがすっぽりと入るぐらいの広さはありそうだ。

 右手奥には、受付が10人ぐらいならべるような広いカウンター、受付の背後には扉が2つほどあり、扉からスタッフの事務スペース少し見える。

 ギルド定番のクエストボード……あの依頼書が沢山張られた掲示板だ……は、左手奥の壁にずらーと並んでいる。

 うん、一通り目を通すだけでも大変そうだ。

 まあ、掲示板上にA、B、C、D、E、F、Gと記号が振られているので、多分ランク分けされて探しやすいようになってるのだろう。

 中央奥には、真っ直ぐ続く通路とその先の階段が見える。通路途中にも扉が見えるのでいくつか部屋があるのだろう。

 あと、ホールの残りの広いスペースには、丸テーブルが30脚ほどなれべられ、適当な感じでその周りに沢山の椅子が置かれていた。

 壁際にもテーブルや椅子が積まれているので、それでも足りなくなる事があるのかもしれない。

 まあ、今はテーブルに4人の集団と、5人の集団が1脚ずつ使ってるだけで凄く閑散としてるのだが……。


 まずは、カウンターで色々ギルドなんかの情報を聞くことからだな。

 シーナもそう思ったのだろう、テーブルに座っている冒険者らしき男達の、俺たちに向けられた探るような目線を無視して進んでいく。

 

「おい、ティナこっちだ」


 ふらふらふら~とクエストボードの方に引き寄せられていたティナの首根っこを引っ張る。




「おう、お前さん達見ない顔だな? 何の用だ?」


 顔や腕などに傷跡がり、歴戦の猛者と感じさせる気配をもった男がカウンターの向こう側からたずねてきた。

 うん、ギルドの受付カウンターって普通は、綺麗な女性やかわいい女の子がやるんじゃないのか?


「おお、そこの黒髪。言いたいことは解る。安心しろいつもは綺麗どころがやってる」


 男は、ニヤリと笑ってそんな事を言ってくる。

 

「はぁ……男って……」

「綺麗どころ? どころ? 綺麗な所???」


 シーナはあきれたようにため息を、ティナは……解ってないな。


「まあ、いいわ。色々聞きたい事があるのよ」

「ほう? なんだ?」


 ニヤニヤと笑いながらも、その目だけは鋭く俺たちを値踏みしている。


「本当ならギルドの事について聞いてから、加入するか決めるつもりだったんだけど……」

「この街の惨状についてか?」

「ええ、街の入り口入るところでチラッとは聞いたんだけど、詳しく聞くならまずここがいいと思ってね」

「門の所って事は、お前ら外部組か?」


 少し驚いたように男が尋ねる。

 とは言っても、外部組ってのが良くわからない。

 シーナもそうだったようで、「外部組って?」疑問を返している。


「ああ、そこからか。まあ、その反応だと外部組なのはまちがいないな。さてどう説明するか……」


 男は腕を組み少し考えたあとこんな事を聞いてきた。


「そうだな、唐突だが、この街で一番大切なものはなんだか解るか?」

「モンスター!」


 ティナが元気に答える。

 けど、お前それは色々問題あるだろ?


「はははは、ちげぇねぇ。この街にとってモンスターは、鉱山にとっての鉱脈みたいなものだからな~」


 男は、気を悪くした様子も無く笑っている。


「それ以外に思い当たるモノは?」

「冒険者でしょ?」


 シーナがコレが模範解答でしょとでも言いたげに答える。


「近いがちょっと違う」

「え? それじゃあ何なの?」


 男は少し、もったいぶった後、「それはな……人材さ」なんて答えを告げてくる。


「え? 人材って冒険者の事じゃ?」


 シーナが素直に疑問を口にする。

 ふと、ティナの方を見ると「????」頭の上に疑問符がどんどん追加されていっている。あいつは放っておこう。


「簡単に言うとな、外から来る力をつけた冒険者に頼っては、この街の冒険者の質を保つのが難しいんだな」


 そんな前置きをして男は説明する。

 外で力をつけた冒険者は、それ相応に活躍する。

 だが、力をつけた冒険者がやってくるかは完全な運になってしまい運が悪いと来ない時期がある。

 もし、外の冒険者に頼りきるとそんな時に戦力の低下を招く事に繋がる。引退するなり、死傷するなりで、減る方は止まらないのだから。

 冒険者の街では、常時一定の冒険者の質がないとモンスターの襲撃などに対応できないのでそれでは困るのだ。


「そんな訳で、俺たちはこの街で冒険者の卵のひよっ子共を、育ててるんだ」


 ああ、それなら一定量の冒険者は確保できるって事だな。


「ただな、この街は国に近い、準国家というような感じではあるんだが、純粋な人口、稼ぎに来た冒険者とかを除くと、凄く少ないんだな」

「そりゃそうね、一攫千金にはいいけど、普通に暮らすにはあんまりお勧めは出来ないわよね」

「そう、だから、他の国から集めてこないといけないわけだが一つ問題があるんだ」

「問題?」

「そうだ、これはここで冒険をやる者にとっても重要な情報だから覚えておくと良い」


 それは、モンスターの出現に関することだった。

 ゲームでいうなら、何処でどんなモンスターにエンカウントしやすいかだ。

 冒険者の街は、よくあるRPGの最初の街の如く、周囲の平原には最弱クラスのモンスター、離れるにしたがってどんどん強くなると言う事らしかった。


「まあ、コレはあくまで平地の街道を歩いてる時の目安と考えた方がいい。森などの地形やダンジョンなんかで、距離以上に強くなる事も多い。まあ、距離以上に弱くなることだけは無いから、そこは覚えておくといい。それに相性なんかで戦いやすさは変わるしな」


 う~ん、ますます、RPGとかの最初の街みたいだな。

 なにか理由があるのかもしれないな。


「それは解ったけど、何が問題なのよ?」

「この街に来るって事は街道周辺で出る一番強い敵に、最初に出会うって事さ」


 ああ、ここに向かうとなれば、強い敵から当たって行く事になるのか、そりゃ冒険者になりに来るのは無理だな。


「だからよ、冒険者になりたい奴らの為に、近隣の国の都市や街に定期的に馬車を走らせてるのさ、こちらに来るのは無料で、その上高ランクの護衛つきで至れり尽くせりさ」

「つまり、自力で来たのが外部組で、その連れてこられた卵達と分けてるのね」

「ああ、ちなみにひよっ子達は内部組だ」


 う~ん、まあ外部組と内部組の違いは理解できたけど……。


「それで外部組だとどうなのよ?」

「ああ、今は街がこんな状態だからな、外部組の即戦力はのどから手がほしい訳だ。モンスターの残党がゴロゴロしてる中を抜けてきたんだから益々だな」

「ふ~ん、まあ、まずは情報からよ? それから考えるわ」

「それでいいさ」


 シーナと男が同時にニヤッと笑う。

 うん、交渉はシーナに任せておいた方がよさそうだな。


「で、まずはこの街の惨状についてだったな」

「そうよ」

「先ずは大雑把にまとめると、合計約3度のモンスターの襲撃がこの町を襲ったんだ。大まかに2週間の間に3回だ。最後の襲撃は、だいたい今から1週間ぐらい前だ」

「約とか、だいたいとか、大まかってのは何よ?」

「それぞれの襲撃は何時から始まったのか? そして何時終わったのか。そもそも小規模の襲撃なのか? 残党なのか? まあ、期間が近すぎではっきりしないのと、正式には襲撃の終了が宣言されたわけじゃないからな。残党の殲滅を確認してからになるからな」

「まあ、命名規則とかその辺の話ね、その辺には興味ないわ。具体的な戦況は?」

「ああ、まず一回目の襲撃だが――」


 そうして男はモンスターの襲撃の詳細を話す。

 


 1度目の襲撃は、門番のロイ少年に聞いたとおり、死亡17名、重傷者52名、それ以外の負傷者多数。

 城壁は一部が削られた程度ですぐに補修可能。

 襲撃の被害としては、特に多いわけではなかったらしい。

 


 問題は2度目だ。

 まず深刻になったのは、弓を武器にする冒険者達の矢が不足した事だ。

 面倒なメイジ系の敵を狙撃したり、魔法の打ちもらしの数を減らすなど、とにかく遠距離で数を減らすために矢の数で対応していたのだ。

 それが、1度目の襲撃で在庫がつきかけて、生産が間に合っていない状況ではすぐに枯渇する。

 一射一射を大事に命中させる運用に切り替えたため殲滅速度が大きく落ちたのだ。


 そうなってくると、しわ寄せがくるのが魔法使う冒険者達だ。

 多少の打ちもらしは弓に任せていたのだが、それが心もとない。

 そのため、魔法を打つ頻度や、打つ魔法の威力や範囲を大きめにして打つ事になる。

 魔法は適度に休めば物資の消耗なしにいけるのだが、それが出来なくなりMP回復アイテムに頼る事になる。

 当然、1度目の襲撃でMP回復アイテムも少なくなっていたから足りなくなり、殲滅が追いつかなくなる。

 

 次は当然前衛の直接モンスターと戦う物達にモンスターの物量と言う形で負担がのしかかる。

 HP回復薬が枯渇し、ヒーラーに負担がかかりどんどんMPが枯渇していく。

 

 そんな感じで戦闘用の消耗品は軒並み枯渇し、泥沼の戦いになる。

 その中で門の一つが破られ、城壁の一部に穴が開き、2箇所から街の中に進攻を許す事になってしまったらしい。

 ただ、なんとか、多数の犠牲者をだしつつ追い返す事に成功した、首の皮一枚で生き延びたと言うやつだ。


 結局、死者は100人をゆうに超え、重傷者の数は数え切れないそんな被害になったそうだ。



 そして、3度目……襲撃の予兆が見つかった時、誰もが諦めていた。

 作戦の中身は襲撃を撃退するのではなく、いかに街から生きて逃げ出すかになっているほどだったらしい。

 しかし、逃げるにしても、迫っている敵の大群を避けていくのは、1~2人ならともかく多人数では難しい。

 そうして対策の無いまま絶望的な戦いが始まるかに思えた時…………。


「救世主が現れたんだ!」


 丸テーブルに居た4人の集団がいつの間にかカウンターの所まで来て話しに加わってきた。


「白銀の戦乙女だよ!」

「女神様だ!」

「あの白銀の鎧が、伝説級の装備なんじゃないか?」

「それを言ったら、あのレイピアだって、とんでもない代物だったぞ!」

「あの子、綺麗だったよな」

「嫁にほしい!」

「「「お前じゃ無理だ!」」」


 うん、どうやら恐ろしく高ランク……この世界の基準だからどの程度か不明だが……の白銀の鎧にレイピアを装備した女(少女?)が窮地を救ったようだな。


「救世主って具体的に何をしたのよ?」


 まあ、戦闘で大活躍ってのはわかるけど……レイピアとかの刺突剣は大量殲滅には、向かない気がするんだが……。


「ああ、モンスターの群を細切れにしやがったんだよ」

「モンスターを細切れに?」

「モンスターの”群”をだ!」

「群って……冗談でしょ?」


 シーナは半信半疑で聞き返す。


「いや、本当だ、俺たち見てたからな」

「ああ、戦闘が始まる直前、頭まですっぽり覆うコートを来た人物が、突然門から飛び出していったんだよ」

「凄い速度で止める暇なんて無かったよな?」

「ああ、皆唖然としてたからな」

「絶対になぶり殺しにあうと思ったからな~」

「だけど、彼女が何か力を溜めて見た事もないスキルを発動させて……」

「ああ、一筋の白い光になってモンスターの群の中心部を最後尾まで貫いたんだよな!」

「その後も凄いぜ、同じ技を何度も連発してモンスターの群をずたずたに切り裂いていったんだよな」

「あれには、俺も開いた口が塞がらなかったぜ」

「何発かスキルを発動させてるうちに、モンスターの魔法攻撃とか受けて、コートが敗れて彼女の姿が見えたんだよな」

「あれは、攻撃を受けたからよりは、強力なスキルのペナルティじゃないか。まあ、それはともかくあの少女の姿に見ほれたよ」

「だよな~」


 4人の話はどんどん続いていく。

 その頃には俺達そっちのけで、4人の世界に入り込んでしまっている。

 まあ、彼らは、放って置こう。


 問題は、白銀の少女だな。

 一瞬、あまりに無茶苦茶な戦い方から、前に会った魔法少女のサラって子を思い出したが……魔法少女なら一撃で終わって別の惨劇が広がっているか……。

 となると、エルフの森の試練であった、フォレストドラゴンのフォレンストの同類の隠しダンジョンを守護してる奴らの一人でも出張ってきたのか?

 そうだとするなら、少しスキルに思い当たる技がある。

 刺突剣と魔法を使う職業で、最上位の隠し職業にあたる【ゴッドフェンサー】のマスタースキルだ。

 幼馴染のアイツが本気でBOSS攻略する時に使っていた職業だ。

 聞いた技は、あのマスタースキルに特徴が凄く似ている、名前は……度忘れと言うかあいつが使う時は、その時の気分で好き勝手に技名を言ってたからな、本当の名前がわからなくなった。

 まあ、アイツの事はいいや、問題は【ゴッドフェンサー】をマスターしてる奴が居るっぽい事だよな。

 今の俺じゃあ勝てるかが怪しいな。



「ところで、その白銀の戦乙女ってどこ行ったのよ?」

「ああ、それなんだが、人探しで、3度目の襲撃前に、この街にきたらしんだよ。探してみたけど居なかったから出発しようとしてた所だったらしい」

「その探してる人ってのも気に成るけど、それ一歩間違ってたらこの街全滅してない?」

「ああ、偶然のめぐり合わせに感謝だな」


 確かに、その少女がいなかったら、もっとひどいことに成ってるのは確実だな。

 最悪、この街が滅んでいたな、それも高確率で……。



「で、で? 白銀の人が?」

「おう、そこで~シュピーンと」

「凄かったよな~」

「私も見たい!」

「といっても、もうこの街を出て行ったしな~」

「ええええ~」



 いつの間にか4人のおっちゃん達の話にティナが加わっている。

 話題の少女を探しに行ったり、白銀の鎧やレイピア作れとか言わないだろうな?

 

 それよりも、ティナに変な人脈が出来つつあるのを危惧すべきなのか……。

 心配な事がありすぎて判断がつかない。

 

 

 

 それはさておき、白銀の少女。

 敵に回したくは無いな、絶対に……。

次の話は、冒険者加入クエストを受ける予定。

う~ん、本当なら今日ここまで進む予定だったのに……。





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