第4話 大騒ぎになっていた
少し遅れてしまいましたが、更新です。
今回は情報収集に言っていたシーナが戻ってきます。
幻惑石の採掘をしにいった次の日、俺とマユさんでM&Mの作業場に朝からこもっていた。
早速取ってきた幻惑石の加工をしているのである。
まず、幻惑石を精錬する。不純物を取り除くのだ。
掘り出したそのままの幻惑石でもそれなりに使えるんだけど、素材や触媒としての効果は精錬した方が当然高い。
まあ、量としては少し減ってしまうのだけど……。
今回は、補充のあてもあるので、量に関しては気にする必要が無かったのでガンガン精錬した。
その後、砦の周囲の森を、迷いの森にするために、必要な量を多めに確保した後、二人で色々作り始めた。
戦闘中に幻惑するアクセサリ、幻覚を見せる霧を発生させるマジックアイテム、変装用の小道具、などなど色々作り出した。
最後の方は、暴走して実用品というよりネタ系のアイテム作りに夢中になっていたのは、気にしないことにする。
まあ、ネタ系のアイテムは妖精さん達には大人気になりそうな気もしないでもないのだが……。
昼過ぎ、マユさんが、リーフさん達に食事を届けた後、それ以外の残ってるメンバーは砦で昼食をとる。
その昼飯を皆があらかた(レナさんは優雅にゆっくり食べていて、まだ終わってなかったが)食べ終わる頃、シーナが戻ってきた。
「ただいま~」
「あ、シーナ、おかえりなさい。シーナの分は今から用意しますね」
「おねがい~まだお昼食べてないのよ」
皆と、「おかえり~」「ただいま~」と言葉を交わしながら、空いてる席に着く。
「おかえり~で、どうだった?」
「大騒ぎになってはいたけど……大方予想の範囲内かな? 色々大変な事になってたけど、私達にとっては好機ともいえるかもしれないわね」
マユさんがシーナの昼飯を作ってくるまで、シーナから簡単なあらましを聞いた。
「――と言うわけでこれからの事を話したいと思う」
シーナの食事が終わった後、砦の拠点コアの部屋で会議を行っていた。
ちびっ子4人がお昼寝したので、リーフさんも参加している。
まず最初に、シーナが調べてきた近くの街で様子の説明から始まった。
俺たちが予想していた通りと言うかなんと言うか、馬型ゴーレムが大型モンスターと思われてるらしかった。
そのため、周辺の各地では、厳重な警戒態勢が敷かれ、大規模な討伐軍が近くの街に集結中らしい。
討伐軍の集結は、もう殆ど終わっていて早ければ明日明後日には討伐に出発でき、遅くとも5日以内には動ける状態になると言う事だった。
軍の集結については、シーナの直接調べた情報なので精度は相当に高い。
と、ここまでだったら、近いうちに討伐軍が動いたんだろう。
「最新の情報として、今日朝頃騒ぎになっていたんだけど……」
また、大型モンスター(俺たちの馬型ゴーレム)が現れたらしい……うん、凄く心当たりがある。ティナがやった件だな。
「と言う事は、まさかそのまま一気に討伐開始を早めたのか?」
「逆よ、討伐開始どころか動くに動け無くなってるのよ」
シーナの調べてきた所によると、一昨日(ティナがやらかした日)に大型モンスターの目撃情報があったらしい。見事に目撃されてたんだな。
その頃には討伐軍が大分集まってきていたので、偵察して大型モンスターの居場所を割り出そうと考えたらしい。
まあ、当然だよな。何処に居るかわからずに出撃して留守の街が襲われるなんて目も当てられないから……。
「問題は、その偵察部隊が目撃証言のあった場所でモンスターの痕跡を見つけられなかった事なのよ」
「痕跡って魔力が残ったりするのか?」
この世界には、残留魔力で……とかあるのだろうか?
「そういうレベルじゃないわ。もっと単純な事。簡単に言えば、大型のモンスターが森を横断するとどうなるかって事よ」
森を横断すると……ああ!
「あ、木や植物をなぎ倒すのが普通ですね」
マユさんが声を上げる。
「ええええ~~~森の木がかわいそうじゃない!」
「ティナ……だから討伐が必要なの」
エルフ組は微妙にずれてる気はするが……。
目撃証言があれば裏をとってなおかつ、足跡を追跡しようとするよな。
で、肝心の足跡そのものが見つからないと……。
「そんな訳で、討伐軍のお偉いさん達は、大型モンスターの現在地がつかめなくて困ってるのよ」
まあ、そりゃ動けないよな。
「その上、目撃証言の場所に痕跡が見つからない事から、幻術なんかで虚像を見せるような能力を持ってるんじゃないかって話も出てるのよ。目撃証言の数が数だし、元々の情報もそんな感じなんで、誤情報として片付ける事も出来なかったんでしょうね」
ああ、居た筈の跡が残ってないって事は……そっちの可能性もあがってくる訳か……。
実態は、ティナが森の木々に避けてもらったと言う事なんだろうけど……それに直接結び付けろというのは酷だろうな。
でもまあ、何らかの確証が無い限り時間は稼げると言う事か……。
「シーナこの砦の事は知られていたか?」
「軍の情報にはなさそうだったわ。多分ここを使っていた奴は個人的な隠し拠点として使っていたんじゃない? エルフの奴隷は禁止されてるしね」
まあ、表立って所持が出来ないから、こんな森の中の砦に閉じ込めていたんだろうからな。
「当然だよ!」
「言うまでも無い事です!」
まあ、エルフの2人は、怒りがぶり返して黒い気配を漂わせ始めているのでさっさと話を流そう。
「なら、今のところ馬型ゴーレムを発見されない限りは――」
「時間は稼げるわね」
と言う事は、馬型ゴーレムの絶対使用禁止(主にティナ)と外から見つからないように隠すか……。
「マユさん、今朝作ったアイテムで馬型ゴーレムを外から見えないように隠してくれ」
「はい、そうですね。この後すぐに準備します」
マユさんは即座にうなずく。
少し嬉しそうなのは、早速作ったアイテムの効果を試せるからなのか?
「ティナ! お前は絶対に馬型ゴーレムを動かすなよ!」
俺はティナに無駄かも知れないが太い釘をさしておく。
リーフさんに目配せも忘れない。
「ええええ~~~~もうだめな……」
「ティナ、ちょっと後で話があるわ。に・げ・な・い・で・ね」
「ごめんなさい~~~もうしないよ~~~」
ティナの事はリーフさんに任せておけば大丈夫だろう。
彼女ちびっ子達の事で色々忙しいから少し不安ではあるが……。
「あと、いっその事この砦までの道をなくしてしまうのもいいかもしれないわよ」
シーナがエルフの二人を見ながらそんな事を言い出す。
道をなくすか……。
森の中の道だったら木々に動いてもらえばどうにかなるのか?
「リーフさんできそう?」
「出来なくはないけど……今は昼寝してるけどあんまりあの子達を放っては置けないわ」
ああ、確かにそうか……。
少し不安だが、ティナ1人に任せるしかないか。
「シーナ、ティナと一緒に道を潰してきてくれるか?」
「う……はぁ、あんまりやりたくないけど、出来るなら今やっておきたいからね」
そんな感じでシーナとティナでこの砦への道を潰す事に決まる。
「わたし……リーちゃんの所に行かないと……」
「ちゃんとまじめに仕事をしたらお説教はなしにするわ」
「うん! わたしがんばるよ!」
ティナの方もちゃんとまじめにやってくれそうだな。
「シーナ後は特に情報はないのか?」
「あとは……移動するなら今のうちに動いておいて方がいいかもしれないわよ。この先、街道とかが封鎖とかあるかもしれないし……」
「え? 何でだ?」
「危険な大型モンスターが現れてるんだから、危険だと思われる街道を安全が確保されるまで封鎖するとか言い出しても不思議じゃないでしょ」
ああ、確かに、討伐軍のお偉いさんの考え方によっては街道の封鎖はありえるか。
でも、俺たちなら森を抜けても……。
「ついでに言うと、私達は、まともな足を用意した方がいいかもしれないわ。このメンバーが徒歩で長距離移動って、結構目立つわよ」
目立つ?
何か変な事でもあるのか?
俺はシーナに疑問の視線を向ける。
「私達を見て貧乏冒険者ってイメージはもってもらえないだろうからね。結構成功してる冒険者のはずなのに徒歩で長距離移動なのかって。普通は馬車ぐらいあってもおかしくないわよ」
「ああ、確かに……」
「その上、砦やギルド拠点を最大限に利用して旅をするつもりなんだから、途中で人数変わったりするわよ多分。徒歩だとごまかしようがなくなるわ」
ああ、馬車なら中に居たと言えばいいけど、徒歩の場合は丸見えだな。
固定メンバーで移動するつもりじゃないから、馬車があったほうがいいか。
「あくまで見た目の性能は一般的なものにするのよ? 外から見ただけじゃわからない部分は高スペックでもいいから」
何てシーナが釘をさしてくる。
まあ、色々前科があるような気がしないでもないからな。
「まあ、探してみるよ」
「ちょっと不安だから、決める前に見せなさいよ」
信用が無い……まあ、この世界の常識から色々と外れてるからしょうがないか……。
「話す内容は他にないか?」
話し合いに出ていた皆を見回す。
うん、微妙に何人か静かだと思ったら……セリカは突っ伏して爆睡中だし、ミルファさんはうっつらうっつらと船をこいでいる。
バン、バンと机を叩いて二人を起す。
簡単にまとめた内容を説明しなおして今日の話し合いは終わった。
シーナとティナは砦への道をつぶしに、マユさんは馬型ゴーレムの隠蔽に、リーフさんはちびっ子達の所に……。
他のみんなは、旅の準備を整えに各自散って行く。
う~ん、今回は、ティナの暴走に色々助けられたのか?
いや、結果オーライか……。
少なくとも、あいつの行動はどこかに混乱を生むよな。
今回は俺達じゃなかっただけで……。
リーフさんも色々苦労するわけだな。
はぁ……。
今回、実際に冒険者の街に移動を始めるまでいけなかった……。
次回は今度こそ旅が始まります。




