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異世界に飛ばされた俺は奴隷調教師になっていた  作者: 七瀬 優
第10章 後片付けは面倒です
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第2話 砦で重要アイテムを探すなら……

RPGの砦とかのダンジョンで重要アイテムがある場所は、真ん中のいかにもって建物の最奥が多いですよね。

まあ、扉が壊れていたりして、大抵は大回りするハメになるんですが……。



 俺たちは、砦に閉じ込められていたリーフさん達を無事(?)救出することが出来た。

 そこで、リーフさんにちびっ子達を任せて、俺とシーナで気になっていた砦の探索に繰り出す事になったのだが……。


「で? 拠点のコアだっけ? 何処にあるのか解ってるの?」

「ああ、問題はそれだよな~」


 シーナの疑問も当然だよな。


 俺はまず、『索敵(M)』で砦のMAPを表示させる。

 この砦は、大雑把に500m×300mぐらいの長方形の壁で囲われた中に幾つかの建物があるって感じだ。

 入り口はティナがぶっ壊した壁の反対側、中央にある門一つだけだけみたいだな。

 それなりに大きな門で全開すれば30~40mぐらいの幅が出来そうだ。

 建物の配置は真ん中に司令部(?)みたいなのがドンとある、門のある方向を正面とすると、正面は広い空き地になっている。

 また、正面以外の右手~裏側~左手までの司令部(?)の周りには色々建物が建っている。

 ちなみに、ティナが破壊した壁や建物は司令部(?)の裏側の左手にある。


 MAPを見てみて改めて探索するには広いと感じる。

 これがただの空き地ならもっと楽かもしれないが……いや、大きな広場にある隠された入り口の方が面倒か……。

 ま、それはともかく、少なくともいちいち建物を調べていくのはとんでもなく骨が折れるのは確実だ。

 となるとやっぱり……。


「一番ありそうな真ん中の建物からだろうな」

「ま、それが無難でしょうね」


 と言うわけで真ん中の司令部っぽい建物から調べていく事になった。




 


「う~ん、遠くから見た時少し気にはなっていたんだけど、近くで改めてみると凄く変な建物ね。あの形とか……、窓が一つもないとか……」


 シーナの感想に、俺も建物を見上げながらうなずく。

 形としては、四角錐の上の尖がった部分をちょん切って正面から見ると台形に見えるようにした感じだ。

 ピラミッドみたいに石を積み上げたような感じではなく、コンクリートで平らにならした様な壁面で、色は灰色っぽいし、魔法のコンクリートとか言われても驚かないと思う。

 高さとしては3階~4階建てぐらいで結構高い。

 あと、シーナが言ってたように、窓らしき物……というより、換気口すらここからでは見えない。

 まあ、建物の天辺あたりにそういうのがあるのかもしれない。

 

 そんな訳でまずは、一周回って周囲の様子というより正面以外の入り口を探してみたが、それらしき物は全くなかった。

 

「本当になんでこんな酔狂な建物を建てたのかしら? 結構無駄が多そうよね」


 シーナがそんな感想をもらすのもしょうがない気がする。

 ただ俺は、この建物の形がある種のシェルターのような物に感じた。

 大きな爆発の衝撃を真正面から受けずに斜めに受け流してくれるような……考えすぎだよな?


「ま、形がどうであれやることは変わらないだろ」

「それもそうね。こんなんじゃ見た目から罠の想像とかもできないしね」

「たしかにな~」



 まあ、そうは言っても、古典的で罠ともいえないようなデストラップはあるわけで……。


「で、どうやって中に入るの? 正面に入り口がたった一つとか凄い面倒よ」


 まあ、全く解らないように隠された罠よりも、あからさまに堂々と設置されているが、必ず踏まなければならない罠の方が厄介なのは当然だな。

 さて……どうするか?

 とは言っても、中を探すとしたら押し通る以外の選択肢はないよな……。


「シーナ、俺が後ろから魔法で援護するから、扉を解錠して突入してくれ」

「う~ん、しょうがない……って、待ちなさいよ! 私が一方的に危険じゃない!」


 やっぱり気づくか……。

 でもな~それなりにレベルの高い解錠スキルはもっているけど……ゲーム内の操作とは違って実技でいきなりってのも不安だしな。

 ここはしょうがないエサでつるか。


「シーナこの建物の中にあるお宝、素材や装備品なんかギルドで使うもの以外全部――」

「やるわ! お金や飾り付けるだけの宝飾品なんかは全部私の物にしていいのよね?」

「あ、ああ……」


 あまりの食いつきに少し引いてしまったが……まあやってくれるならいいだろう。

 今のところお金とか見た目用の装備品なんて必要ないしな。



 すぐさまシーナは砦の方に向かう。

 お宝に目がくらんで仕事が大雑把になりはしないか少し心配したが、ゆっくりとした足取りで罠などに十分に警戒しながら近づいていってるし、まあ大丈夫だろう。

 俺の方は、まずシーナに物理防御UP、魔法防御UP、ダメージ軽減、一定ダメージ無効化の補助魔法の重ねがけをする。

 コレだけかけておけば逃げる時間ぐらいは稼げるだろう。

 自分にも同じだけ補助魔法をかけてあとは、『ファイアーボール』の詠唱して待機させておこう。

 

 『ファイアーボール』で生み出した火球を頭上に維持したままシーナの作業を見守る。

 

「変ね……鍵がかかってない?」


 シーナのいぶかしげに呟いているのが聞こえる。


「どうした?」

「鍵がかかってないわ。だから今から扉を開けるからそれぶち込んでちょうだい」

「わかった」


「じゃあいくわよ。3・2・1・GO!」


 シーナのカウントダウンに合わせて『ファイアーボール』を打ち込む。

 着弾と同時に爆発すると入り口付近を焼き払う。


「あ、あぶないじゃないの!」


 思った以上に威力が出ていた。

 うん? ちょっとまてよ、やばい罠があるだろうという事だけに気を取られていたが、普通の兵士ぐらいなら皆殺しにしてしまってないか!?

 そうじゃなくても、大量の奴隷が……。

 

 まずい、丸々抜けてた!


「? どうしたのあんた?」

「中に居た人間を皆殺しにしてしまった……」

「そりゃ……元からそのつもりでしょ?」


 シーナは特に罪悪感とか感じるそぶりもなく答えてくる。

 人殺しは出来れば避けたいのに……。


「でも、まあ……残念ながらというか幸運にというか誰も死んでないわね。というより誰もいないわよこの中」


 シーナは『ファイアーボール』の炎が消えた建物のなかを覗き込みながら敵影を探している。


「え? 誰も居ない?」


 ふう……人殺しせずにすんだのか?

 よかった…………。


「あんた、敵を殺さずいてにほっとしてるけど、必要な時に殺れないと命落とすわよ」


 シーナがあきれたような表情をこっちに向けている。

 

 確かに……もし、必要になった時俺は……。

 

「まあ、今はそんなことよりも中を調べましょ」

「ああ、うん」



 

 中に入るとそこは大きなホールのような吹き抜けの広場になっていた。

 戦闘用ゴーレムでも動けるほどの広さがあった。

 もしかしたらここでのゴーレムの運用も考えての広さなのかもしれない。

 次に、ホールの周りを見ると、1階の左右の壁には扉が等間隔で並んでいた、その先にはそれぞれ部屋があるのだろう。

 正面を真っ直ぐ行くと、6人ぐらいが横に並んで進める真っ直ぐな階段が2階の廊下まで続いている。

 2階の廊下はコの字型になっており、壁側には、こちらもずらりと扉が並んでいる。

 ちなみに2階の廊下は足場の1階にせり出した形ではなく、2の部屋を廊下の幅の分だけ狭くする事で1階の部屋の上に作られていた。


「えげつないわね。入ってきた敵を1階で包囲すると共に、2階の廊下から遠距離攻撃で一方的に攻撃ね……」


 ああ、確かに2階に上るにはホールを抜けて正面の階段を上がらないといけないから、後衛が一方的に攻撃できるな。

 ついでに、廊下がせり出した形じゃないから廊下を潰すには下の部屋ごと潰すような攻撃が必要か……。


「まあでも、敵は全然いないみたいだし探索をつづけるとして、何処から探す?」


 う~ん、壁際に並んだ扉……一つ一つ順番になんてのは……。

 最初と同じく一番目立つ所から……。


「正面の部屋……真っ直ぐ進んで階段を上った所にある……なんか少し豪華な扉の所にしないか?」

「ま、それが順当ね」





 そうして向かった部屋だったがトラップがあるわけでもなくボスが待ち構えているわけでもなくただ、司令官の執務室のような感じの部屋があるだけだった。

 一つ気になったのは色々慌てて出発したかのように散らかってる事だけだった。


「相当慌ててたみたいね……何かまずい事が起こってるのかもしれないわ」

「一応注意しておいた方がよさそうか」


 この分だと、本当にこの砦に、敵はだれもいないのかもしれない。

 リーフさん達が残された理由は移送する余裕すらない事態だったのかもしれない。

 まあ、トラブルが発生してリーフさん達が少しでも自由を取り戻したなら皆殺しとかありえたからな……。


 それはさておき。


「これはしらみつぶしにするしかないか?」

「お宝探せるしそれも悪くないかもしれないけど、ここを放棄した原因がわからない現状だと急ぐに越した事はないと思うわよ」


 シーナはお宝とリスクの間で心が揺れてるみたいだな。

 う~んとはいっても何か他にあてもないしな。


「シーナ何か他に気になる場所とかないか?」

「そうね……一つだけならあるわ」

「あるのか? それは?」

「ここの真下よ」


 確かここの真下って、正面は階段だから壁に扉とかはなかったよな。

 階段の脇の扉からならいけるのか?


「でも、どうしてそこが怪しいんだ?」

「簡単よこんなつくりなら、まず最初に階段の裏側の部屋へ行こうなんて考える人間はまずいないからよ」


 ああ、確かに攻め込んだとしてもまずは、2階のここ執務室を狙うよな。


「ま、まずは両隣の部屋を調べてみましょう」

「ああ」




 何て探し始めたのだが……。


「おかしいわ。さっきの執務室の真下のスペースが丸々あいてるわ」


 俺たちは1階に降りて両隣の部屋を調査した。

 左が武器庫で、右が食糧などの倉庫だったが、その広さがおかしい。

 MAPを見ても執務室の部屋の真下が空白になっている。

 両隣の部屋を念入りに調べるが隠し扉の類は見つからない。


「これは何かあるわね……」


 シーナは次に階段に目をつける。

 彼女はまず、階段の下を調べる。


「階段の両脇の壁は、特に怪しいところはないわね。となると階段になにかしかけがあるの?」


 呟きをもらしながら次は階段を1段1段丁寧に見ていく。

 俺は……シーナに任せて周りに注意を向ける。

 一応索敵を担当しているのだ。


「あ、これね……」

「何か見つけたのか?」

 

 シーナの上げた声に俺が尋ねると、彼女は階段のある部分を指差している。


「ここを見て、近づいてちゃんと見ないと気がつかないけど切れ目があるわ」


 ああ、確かに言われてみれば階段の右側のある部分に縦に走る切れ目がある。


「と言う事はこっちにも――」


 左側の左右対称になるぐらいの位置をシーナが調べるとそこにも真っ直ぐな切れ目が見つかった。

 これは多分、仕掛けを動かすと階段の真ん中に通路が出来るとか言う感じだろうな……問題は仕掛けの操作方法だけど……。


「となると、何かスイッチみたいな物があるわね……」


 シーナも同意見のようだ。


「あるとしたら……」


 シーナは階段の上の部屋……執務室を見上げる。


「探してみるしかないだろうな」

「そうね、見つかればいいんだけど……」




 そうして執務室を探してみた所、心配とは裏腹にすぐに仕掛けが見つかった。

 執務机の下に隠しスイッチを見つけたのだ。


「それじゃあ行くわよ」

「おう」


 シーナが念入りに罠などを調べた後ポチリとスイッチを押す。

 直ぐそばでゴゴゴゴゴと何かが動く音が聞こえてくる。

 俺たちはすぐに部屋を出る。


「どうやら正解みたいね」

「そうだな」


 階段の真ん中1/3ぐらいが沈み込んで通路が出来上がっていた。




 

 さて、隠し通路の先に進みますか。

 拠点のコアが無事にあればいいんだけど……。


 隠された宝物庫なんて落ちはないよな?

 シーナは大喜びしそうだけどな。

次回 隠し通路の先には……。



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