第6話 砦の秘密
あけましておめでとうございます。
今年初めての更新です。
今年もよろしくお願いします。
「あ~あ~いっちゃった」
ティナがサラちゃんが飛んでいた方角を残念そうに肩を落としている。
「ワゥ……」
「……ニャー……」
ちびっ子達もなんだかさびしそうにしている。
まあ、なんだかんだ言って今まで一緒に居たんだろうからな……。
「それでこの後どうするのですか?」
「そうよ、お宝あさるにしても、何にしても急いだ方がいいわ。一応ここは敵地なんだし……」
「俺は、気になる事があるから、この砦を調べてみたいんだが……」
リーフさん、シーナ、俺の大人組は……ティナがちびっ子組なのは説明の必要はないだろう……サラちゃんが見えなくなったぐらいで早々に今後について相談を始めていた。
先ずはお互いの状況を説明する。
先ずは、簡単にエルフの森での出来事辺りから説明する。
途中俺が話したティナの救出に向かう様子などには色々と複雑な顔をしていたが……お礼と小言どっちを言うべきか悩んでいるような感じだ。
一通り俺の方の説明が終わったあたりでリーフさんの方の話を聞く。
エルフの森で転送トラップにかかって捕まり、双子の狐と一緒に暫く監禁された後、彼女だけがこの砦に運ばれたそうだ。
その後2日ほどは、定期的に食糧を運んでくる人が居るだけで、何事も無く5人で閉じ込められていたらしい。
それが、今日の昼前に何か慌てた様子で、監禁されていた部屋に結構な量の食糧などを置いていったそうだ。1月は持たなくても5人で1~2週程度なら食べていけるぐらいだったらしい。
「そして、ティナが魔法をぶっぱなすと……」
「……そうね」
俺とリーフさんのため息が重なった。
何げにティナの苦労話で気が合いそうな気がする。喜ぶべき事かは微妙だけど……。
「まとまった量の食糧を牢屋においていったと言う事はもしかしたら暫く留守にする気だったのかもしれないわね。それなら見張りとか全然居ないのも納得できるんだけど……」
「ああ、それならありえるか」
確かにそれなら、捕まってた彼女達以外だれも居ない理由にはなるが……。
問題は……。
「だけど問題は……」
「その理由だな」
「そうよ。何で留守にする必要があったのかよ。リーフとか言ったっけ? あんたなんか聞いてない?」
俺とシーナの視線がリーフさんに向く。
彼女は手をあごに当てて思い出そうとしてる。
「う~ん、食べ物とかを置いてった以外は急いでいた事しか解りません……。でもちょっとまってください。ちょっと聞いてみます」
彼女は周りを見回して、近くに雑草をみつけるとそのそばまで行ってしゃがみこむ。
その雑草となにやら言葉を交わす(?)と戻ってきてその内容を話す。
「あの子に聞いてみたけど、沢山の人間が外に行ったってことぐらいしか解らなかったわ。知ってる子を探し出しせばもっと解るかもしれないけど……。ここは妖精が入れないようになってたからここの子達はつながりが薄いみたいで自分で探すしかないから……」
「それをするぐらいなら私が索敵するのとそう変わらないわね」
「そういうことです」
さてどうしようかと3人で相談を続けていると……。
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ。
「おなかすいたよ~」
いい加減、見送りも終わらせてティナが近づいてきていた。
ちびっ子二人も一緒に来て何か訴えかけるような目をこっちに向けてきている所を見ると、ちびっ子組全員が腹ペコのようだ。
かく言う俺も、朝食の後は干し肉を少しかじったぐらいでちゃんと昼食を取ってなかったな。
「ご飯食べようよ~」
「……(じー)」
「……(ごくん)」
まあ、このままほっとくと煩そうだし、昼飯にするか……。
「わかったよ」
「やった~~~」
「ワン!(パタパタパタ)」
「にゃ~~~」
うん、ちびっ子達は凄く喜んでいるが、君達ここ一応敵地だからな、わかってない気がするけど……。
「そんなことしてて大丈夫でしょうか?」
リーフさんは不安そうにしている。
「シーナ、周りの索敵頼む」
「解ってるわよ。近くの建物軽く見てくるわ」
「リーフさんは、ティナが馬鹿なことしようとしたら教えて」
「はい」
その後、馬型ゴーレムの中から5人分の食糧を取り出して凄く遅い昼食を取った。
「じゃあ、まずは……」
「リーちゃんの呪いを解こう!」
俺の言葉にかぶせるようにティナが宣言する。
彼女の考えてる方法は何となく解る……出来るだけ考えないようにしてる方法が一つある。
「あんた……またやるのね……」
シーナがため息一つついてこっちに視線を向けてくる。
「あの……本当に方法が?」
ティナだけが言うのであればスルーしていたのだろうが、俺やシーナにも心当たりがありそうな雰囲気を感じて、リーフさんはいくぶん期待のこもった視線を向けてくる。
「あると言えばあるんだが……」
リーフさんが呪いで奴隷にされているのを解いて、俺の奴隷にしちゃな……。
と言うか、ティナの様子を見てると、そんなことをすると俺がエルフ族に襲われそうな気がするんだよな。
でも、説明だけはしておくか……。
俺はリーフさんに【奴隷調教師】と、その職業の持つスキルについて説明する。
簡単に言えば、奴隷の呪いを解くのではなく、俺の奴隷として上書きする感じになる。
はっきり言うと、奴隷の主人が変わるだけで、この場合はあんまり意味が無いような気もしないでもない。
リーフさんは話を聞いた後目を瞑って考え込んでいたが、目を開き決意をこめた瞳をこちらに向ける。
「解りました。最善とはいえないですが、今の状況よりはずっとましだと思います」
「リーフさんにとっては、主が代わるだけで奴隷からは抜け出せてないぞ」
リーフさんに念をおして確認しておく。
「はい、解ってます」
それに彼女ははっきりと答える。
「初めて会った俺の事を信用できるのか?」
それでももう一度確認する。
「ティナのバカに投げ出さずちゃんと付き合ってくれていますから」
「…………」
その評価方法はどうなんだ?
ティナの方に目を向けると、
「?」
不思議そうに首をかしげている。
「あと最後に、エルフ族との間に問題は起きないのか?」
「それは私が説明します。私が酷い扱いをされない限りそう言った事にはならないようします」
「本当に大丈夫か?」
「はい、ティナの面倒を投げ出さずに見てくれる良い人間族だと説明すれば大丈夫です!」
「…………」
「??」
ティナの方をジトッとした目で見るが……やっぱり本人は解ってないようだ。
それにしても、ティナお前一体何をやったんだ?
はぁ……。
まあ、ティナの事は置いておいてリーフさんを奴隷にする事自体は問題なさそうだ。
彼女と交代でティナを置いて行きたくなったのはともかく。
「解りました」
俺は皆から距離を離してにリーフさんと向かい合う。
「いきますよ、少し痛いかもしれませんが、抵抗とかはしないでくださいね」
「わかりました」
リーフさんはそう言いつつも両手を力いっぱい握っている。
まあ、戦闘中で急ぐとか理由もないし、安全に『パラライズショック』で行こう。
気絶が成功しなくても、やり直せばいいしな今回は……。
「ではいきます! 『パラライズショック』」
「いまだ~~~みんな! ブーストだよ!!」
俺の『パラライズショック』に合わせてティナが妖精達に命令している。
って、ブーストってまさか効果増幅!?
「きゃあぁぁぁぁぁっぁ~~」
リーフさんが凄い悲鳴を上げて倒れる。
何かからだのところどころから煙が上がっている気がする……大丈夫なのか!?
『リーフ(エルフ・女)を隷属させました』
「『フル・ヒール』『リカバリー』」
俺は慌てて回復魔法をリーフさんにかける。
『パラライズショック』のスキルそのものはダメージが発生しないはずだが、ティナの増幅でどうなったか解らない。
「ティナ! 何をやっているんだ!!」
俺はティナに怒鳴りつける。
「ショック療法だよ!」
「……は?」
「記憶撲滅バットが見つからなかったから、電気ショックを使ったんだよ!」
「…………」
「これでここ半日ぐらいの記憶を忘れて、これ以上怒られずにすむんだよ!」
うん、物凄い酷い理由だった。
周りで見ていた皆もびっくりした顔で固まっている。
さっきリーフさんの言っていた事が少し理解できた気がする。確かにこれを投げ出さずに付き合うってのは……。
でもまあ、その辺は処理は黒い炎を燃やす彼女に任せよう。
「だいせいこ……」
「ティナ……ちょっとこっちにいらっしゃい」
そう言うリーフさんの顔には何の感情も浮かんでいない。
「!?」
ティナはそれを見てだらだら汗を流している。
「い・い・か・ら。いらっしゃい」
リーフさんがティナの手をつかみ引きずっていく。
引きずられていくティナがこちらの方をみて必死に「助けて~~」と念を送ってきている気がするが自業自得だ、さっくりと無視をする。
そのまま俺達が見えない場所に引きずれてていった後、物凄い悲鳴を聞いた気がするが、俺達は皆見なかったことにする。
…………。
……。
うん、忘れよう。
「えっぐ、えっぐ」
暫くたってリーフさんが戻ってきたところで、これからの予定の改めて相談する。
「俺は気になる事があるからこの砦を調べたい」
「人が居なくなってる理由ですか?」
特にプレッシャーを感じないリーフさんが……こんな事を気にするのはおかしいよな……人気を感じない砦を見回す。
あと、泣き続けている奴が居る気がするが気にしない。
「それもある」
「もしかして、本当に誰もいないか探すとか? 捕まってる人がまだ居るとか考えてる?」
シーナが少しあきれた感じでたずねてくる。
まあ、人助けの度に厄介事が増えてる気がするからな。彼女の言いたいことも解る。
「それもあるな」
「あとは……兵が少数隠れていて情報を持ち帰られるのも面倒か……」
確かに、指名手配とかになったら面倒だな。この世界だと賞金首とかか?
「ああ、そういうのも面倒だな」
「他にもあるの?」
「えっぐ、えっぐ、えっぐ」
「ここに来る時途中に気になる情報が手に入れてな」
この砦に突入する少し前だ。
いきなりシステムメッセージが表示されたのだ。
内容は……。
『支配拠点に接近しています。
許可無く拠点に侵入すると自動的に宣戦布告されます。
このまま進みますか?(Y/N)
==================================================
支配拠点名:第13砦
所持ギルド:不在
ランク:砦Lv5
==================================================』
こんなメッセージだ。
ちなみに支配拠点ってのは、WMOの中ではギルド拠点以外に作れる拠点の事だ。
戦争用の軍事拠点、街や村などの内政拠点、鉱山などの資源拠点なんかを作れた。
色々面倒な条件があって、勢力戦に参加しないようなギルドが村を作るとかは出来なかった。
あと、ギルド拠点とは違い拠点移動関係は不可で、建てられる施設にもいくらか制限があったはずだ。
細かい事は勢力戦に積極的に参加してたわけじゃないので良く知らない。
ただ、一つだけ解っている事がある。
この拠点のコア……ギルド拠点のギルドコアに当たる物……これを書き換えることで奪うことが出来るのだ。
新規設置に関してはハードルが高いが支配拠点の強奪に関してはコアまでたどり着いて書き換え完了すればいい。
まあ、勢力戦ではそれをするのが凄くハードルが高かったのだが……。
なんて説明をシーナ達にする。
「何時そんな情報を手に入れたの?」
「それは、まあ面倒だから省く」
システムメッセージとか言っても面倒になるだけだしな。
「それで、出来たらこの拠点を手に入れたい」
「ここにいたやつらが戻ってきたらどうするのよ?」
「バリアか何かで近づけさせないようにするか……色々GPに変換して破棄か……まあ、制圧してしまえば拠点内に人が残っているか調べるのも簡単にできるしな」
溜まってるGPや機材をM&Mの方に移動するだけでもやる価値はある。
「ギルド拠点でGP使う時の一覧に載ってた様な物騒なゴーレムとか居るんじゃないの?」
「その点は大丈夫だろう。あくまでここは所持ギルド不在だからそんなのが居たらここに来ていたやつらは全滅してるはず」
「ああ、ここを使ってた奴が占領してたわけではないって事ね」
「そういうこと」
「えっぐ、えっぐ、えっぐ、えっぐ」
「いまいち、良くわかりませんが……」
「???」
「???」
リーフさん達にはギルドとか殆ど何も説明して無いからな。
ちびっ子達も含めて、ギルド拠点にもどって落ち着いたら説明しないとな。
「その辺については後で説明します。俺とシーナで砦の探索をするので、そこの馬のゴーレムを守っていてもらえますか?」
「この馬ですか……わかりました」
リーフさんが少し馬型ゴーレムにおびえながら答える。
「いきなり襲ってくると言う事もないですし、大丈夫ですよ。あと、奴らが戻ってきて危なそうだったら動かして逃げてしまってかまいません。あのゴーレムを敵に鹵獲されないようにお願いします」
「あの……動かすって……」
「そこの……ティ……いや、説明しておきます」
「えっぐ、えっぐ」
リーフさんと一緒に馬に乗り込み操作方法を簡単に説明する。
あと、ついでに彼女やちびっ子達をギルドのゲストとして設定しておいた。
「では、ちびっ子達とそこの泣いてる奴をお願いします」
「ちびっ子達…………はい、わかりました。気をつけてくださいね」
「ワンワン!」
「にゃ!」
「えっぐ、えっぐ」
こうして、リーフさんに後は任せて俺とシーナは砦のコアを探しに行く。
ちびっ子達がリーフさんにほんの少しおびえている気がしたが……任せよう。
ほんの1歩前よりも距離を取ってるだけで、基本離れようとしてないからな。
さて、がんばって拠点を手に入れよう!
シーナ達にはああいったが、完全に無防備って事もないだろうし多少の戦闘はあるだろうしな、準備だけはしっかりしておこう。
「ちょっとまって、あんたなんで装備を変更してるのよ? 最初に出会ったときの装備になってるわよ!」
「ああ、まあ念のためにな」
「本当に大丈夫なの!?」
「ま、気にするな」
「気にするわよ!!」
「えっぐ、えっぐ、えっぐ、えっぐ、えっぐ、えっぐ(わたしも、いきた……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、リーちゃん怖いよ~)」
次章は、砦の制圧と、後日談の予定?
記憶撲滅バッド、ショック療法
ティナがGP使って手に入れた本から手に入れた知識。
一応フィクションのはずだが……。




