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第5話 禁断の魔法少女

ずいぶん間が空いてしまいましたが、やっと更新です。

今回は本当に難産でした……。

体調を崩すと執筆はきついですね。

 とあるMAPで勢力戦が行われていた。

 WMOの中でも最大勢力のギルド『獣耳愛好会』と『神聖帝国』がメインでぶつかり合う大戦だ。

 このWMOでは勢力戦は、一般フィールドの拠点(領地)の奪い合いなので、二つの同盟以外にも、お祭り騒ぎの自爆特攻や漁夫の利狙いのユーザーなどが参加していた。

 他にも見物に来たユーザーや一般の観光客が、安全圏や空の上または、幽霊状態(死亡復活待ち)で観戦していた。

 GvGの場合は特別フィールドでの同盟同士の一騎打ちが行われる。その中継映像での観戦と違い現場での臨場感あふれ大規模戦闘は人気の高い娯楽の一つとなっていたのだ。



 そんな中、一人の少女が変わった杖を持って空に浮かんでいた。それを気に留るような人は誰も居なかったが……。

 戦場を見渡すには絶好の位置ではあるが、戦場からはいささか離れている。

 気がついた人が居ても観客かもしくはどこかのギルドの偵察役ぐらいにしか思って居なかっただろう。


 その少女が巨大でカラフルな魔法陣を展開しはじめて初めて一部注目があつまるが、それでもただの目立ちたがりやぐらいにしか思われてなかった。

 というのも、飛行状態で放つ魔法と言うのは基本的に威力や射程、範囲などが落ちるからだ。

 簡単に言えば飛行するのに何らかのコストを払っている分威力が落ちるのだ。

 そのうえ、増幅の魔法陣などを書こうにも空中だと目立つ上に難易度が高くなる。

 まあ、射線を確保できるという利点はありはするが、上位同士の戦いではまともなダメージを与えるのが難しく、拠点からの施設ボーナスを使った大規模魔法の方が有用だという結論に落ち着いていたのだ。

 そういうわけで、戦闘を続けていたギルドも少女には気づいていたが特に何もすることなく放置していた。



 そして……。

 詠唱を完了したのであろう少女が杖を戦場に向けて、何色ものパステルカラーの光を凝縮していく。


 その時点でも観客や戦闘をしてるギルドメンバーでさえ派手好きが何かやってるな程度の認識だった。



 少女は凝縮しきったカラフルな光を発射する。

 極太のカラフルなビームのようなものが戦場に向かっていく。


 それでもまだ、その場に居る人達は見掛け倒しのただの派手な技ぐらいの認識しかなかった。

 一応、魔法防御力を上げるシールドを張はしたが、戦闘は気にせず継続していたのだから……。



 そのまま、ついに戦場にその光が到達する。


 次の瞬間。

 光がそのMAP上を埋め尽くす。

 戦っていたギルドのメンバーも驚いただろう、ゲーム内でトップレベルの自分たちのHPが一瞬で蒸発してしまうのには……。

 

 光が消えた時、その場に残っていたのはそのフィールドに居るすべての生き物が全滅している地獄絵図だった。


 

 この勢力戦は後に『悪魔が舞い降りた戦い』として有名になるのである。







 この少女の事はすぐさま話題になり、掲示板にもその時の動画が何個もUPされた。

 俺が知ったのも、その時の戦場ではなく、掲示板の動画でだった。

 最初の頃は、レイドBOSS出現かとも騒がれていたが、攻撃後の少女の姿の動画がアップされて立ち消える。

 彼女は攻撃の後、力を使い果たしそのまま墜落死したのだ。

 そのせいで逆に、彼女の職業は? あのスキルはなんだ? という話題に代わっていったのだが……。



 最終的に少女は【魔法少女】という職業である事がわかる。

 運営が用意した職業では【魔法少女】のような性能が出ないと言う事で、作り手が新規に作成した職業だろう言われた。


 WMOで世界を作る時に、その世界で転職できる職業を色々設定できたりもするのだ。

 和風の世界を作成して、【武士】や【大名】なんて職業を作るような感じだ。

 まあ、基本的に運営が用意したルールで職業を設定していく。

 転職条件が厳しいほど、職業の能力をあげれるのだが、まあ面倒だし正確には知らないので細かい説明は出来ない。

 それが基本だが、運営が想定してなかったような職業を作りたい場合は運営に申請して認められたら作ることが出来るようになるのだ。

 あと、スキルや魔法でもオリジナルの効果の物を申請するようなことも出来る。

 この運営申請だが、ネタ関係(見た目だけで効果は弱い)には寛容で直ぐに通るが、パワーバランスを崩すようなモノには厳しく、容赦なく却下や修正が入るのだ。

 まあ、他のゲームなんかとは違ってここの運営のバランス調整は絶妙だとある意味ユーザーからは信頼されていたのだが……。


 だからこそ、今回の【魔法少女】の件は運営に非難が殺到して、運営が告知で情報を一部とは出すという異例の事態となった。

 内容は、【魔法少女】の職業は物凄い能力が高く設定されているが、ペナルティーがとんでもなく大きいという事だった。


 その後、情報が色々出てきて、”村人レベル1”と言われる変身前の状態と、変身時間の制限、変身後のクールタイムがほぼ1日だと言う話だった。

 まあ、他にも色々細かい設定が作られていたが……。

 どうも、凶悪なキャラクターを作る事を目的に作成されたわけじゃなく、魔法少女を徹底的に再現しようと汗と涙と情熱を注ぎ込んだ結果のようだった。

 その設定が偶然ゲームバランスに合致してしまって凶悪な職業になった感じだった。

 その入れ込みようはすさまじく、【魔法少女】の作り手が作った世界は、恐ろしい完成度で作りこまれていて、その後観光名所の一つになったりした。


 そんな感じである程度情報が出てきたところで、【魔法少女】は、核弾頭、最終兵器、パステルカラーの悪魔、魔砲少女などという愛称(?)と共にユーザーが認知する事となる。




 まあ、WMO内なら【魔法少女】に出会っても、魔法発動しそうになったら打ち落とすなり転移するなりすればいい。最悪でも死に戻りになるだけだし。

 恐怖の対象と言うわけではない。厄介者というイメージはあるが……。

 ただ、WMO内ではフィールド毎にマップが分けられていて、マップを行き来したのだが、ここでは当然そんな事は無い。

 もし、彼女が【魔法少女】が最大火力で魔法をぶっぱなした場合、ゲーム中のようにマップ内全滅で収まるとは思えないのだ。

 ついでに言えば、WMOの【魔法少女】の魔法はHPを持った相手だけにしかダメージを与える事は無かったが……【魔法少女】の一撃で城とか砦が消滅したらゲームバランス壊すと思ったのか、【魔法少女】の魔法は悪い子だけに効くとでも設定したのかは定かではない……この世界でその設定が生きてる保証もない。

 というか試してみる勇気は無い。

 この世界ではあれは撃たせては行けない、リアルに核兵器のような物なのだ!


 なんて、考えにふけっている間に……。


「マジカル~~~~~」


 何て掛け声を上げてる少女が!

 って、止めないと……やばい!


「ま、まて!」

「ル~~~~~~あれ?」


 と、彼女……サラちゃんだっけか? ……が首辺りで何かを摘もうとして空振りしてる?

 透明な何かがあるのか?


「ああああああ~~ペンダントを取られてたんでした。どうしよう」 


 と、あたふたとし始める。

 変身用のアイテムが無いのか、このまま手にさせない方が……。


「どんなペンダントなの? 私も探すよ~」


 キラキラと瞳を輝かせるティナ、何か面白い事が起きる匂いでも嗅ぎ取ったのか?

 はぁ……と一つため息をついてどうやって探索を妨害するか考えて……ふと戦慄が走った。


 

「いっけ~~~サラちゃん!」

「はい、ティナさん」

 

 ドッカーン!



 物凄く物騒な映像が頭に過ぎった。


 この二人を一緒に居させていいのだろうか?

 いや、ダメだろう!

 真っ赤な太文字で『混ぜるな危険!』と書かれているのが見えるぞ!


 でもどうやって二人を分かれさせる?


「それなら、多分、この建物(半壊してるけど)の壊れてない向こうの部屋にあると思うよ」


 リーフさんが答えている。

 やばい、時間が無い。

 さすがに彼女も【魔法少女】の危険性をしらなければ、ティナの事を理解していても止めることはないだろう。


「リーちゃん知ってるの?」

「私の相棒がそこに居るからね」

「あああ~あの弓か~~」

「弓で思い出したけど、ちゃんと毎日訓練してるわよね?」

「え? …………うん、早くペンダントを探しに行こう~」


 そういえば、エルフといえば弓はうまいイメージあるけど、ティナが使っているのを一度も……というよりティナの弓自体見たことないな。


「は、はい」


 と、サラちゃんは慌ててティナについていく。


「ティナ……後でちょっとお話しましょうね……」 

 

 リーフさんからは、なにやら怖い波動が出てる気がする。

 ポチとタマのちびっ子達は、リーフさんの様子にビクビクしながら少し距離はとるものの、彼女にくっついていく。

 

「で、ほっといていいの? あの子達というか……ティナを……」


 ああ、考えている場合じゃなかった。

 俺も慌てて後を追う。



 俺が着いたときには、部屋というよりは、倉庫と言った感じの場所に、ティナが扉をぶち壊して入っていた。

 中は、ガラガラで殆ど物は置いてなかった。

 ただ、ティナが扉を壊す時に結界の様な物を壊した感じがしたので、探索魔法なんかを妨害してたのかもしれない。リーフさんには効果が無かったみたいだが。


「やっぱりこの子が居ないと調子が出ないね」


 リーフさんがなにやら樹木で出来た……木材ではなく、細い樹木が形作っている……弓を手にして弦をはじいている。

 う~ん、アレは専用装備と言うやつか?

 運営が企画したイベントの上位入賞者に配られたユニーク武器に似た感じの物を見た覚えがあるような……。

 まさかな……ただ、俺が見ても相当強そうな弓だと感じた。


「あ、ありました~これです、このペンダントです!」


 サラちゃんは、ペンダントと大事そうに首にかけている。

 小さな赤い魔石のようなモノのペンダントだ。

 う~ん、【魔法少女】の変身アイテムであんな感じなのを見たな。


「変わってるね~なんか、妙な力を感じるよ~~」


 ティナは……うん、言うまでもないな……。


 それよりもだ、どうする?

 ティナとサラちゃんを引き離すには……。


「どうも皆さんありがとうございました。スーちゃんを探しに行きますね」


 サラちゃんがそんな事を言い出した。

 あ、考えてみればコレはチャンスか?


「え? 私も手伝うよ~一緒に探そうよ~~~」

「え、ですが……」


 ティナの言葉にサラちゃんは一瞬迷いを浮かべてリーフさんの方を見る。


「それ……」

 

 リーフさんが、答えようとしたので俺は慌てて口を挟む。


「ダメだ、ティナ。サラちゃん一人でがんばってもらえ」

「えええ~~クロちゃん。酷いよ!」

「…………」


 ティナとリーフさんの非難の視線が俺を貫く。


「ティナが探したら、妙な物を見つけてくるだろう!」

「ああ!」


 リーフさんが物凄く納得したようにうなずくいて、サラちゃんに話しかける。


「ごめんなさい、サラちゃん。ティナに手伝わせると見つかる物も見つからず、妙な物を見つけてくるわ。多分、探すどころの騒ぎじゃなくなっちゃうの、だから、ごめんなさい」

「えええ~~そんなことないよ。リーちゃん酷いよ!」


 本気で申し訳なさそうに頭を下げるリーフさんと、心外だと言う表情で文句を言うティナ。


「わ、わかりました。がんばってスーちゃんを探しますね。ありがとう、ティナちゃん」

「て、手伝う……」

「テーーーィーーーナーーーーー」

「わ、ごめん、サラちゃん」


 うん、サラちゃん一人で探すことになったようだ。

 ティナとの組み合わせは、この世界がやばすぎる。

 あとサラちゃんを一人で行かせた理由に【魔法少女】の特性がある。


 命の危機になると、お供のペット(たぶん彼女の場合はスーちゃん)が飛んできて助けてくれると言う設定があったのだ。

 死にそうに成った時点で復活ポイントに強制転送及び完全回復されるのだ。

 デスペナが無いから最高じゃないと思った人も居るかもしれないが、とんでもない落とし穴がある。

 復活ポイント転送などに使った力を補給する為に、お供のペットがデスペナの2倍を強制的に徴収するのだ。

 その上、死にそうに成った時点で転送するので、蘇生魔法で助けることも出来ない。

 つまるところ、単純に蘇生禁止とデスペナ2倍になっただけと言う状況だったりした。

 WMO内では……。


 だけど、この世界なら死ぬ前に転送して怪我の治療も完璧にしてくれる事になる。

 ついでに言えば、その方法でなら直ぐにスーちゃんを見つける事も出来るだろう。

 

 そっちの方が良いんだ。

 WMOとの設定とは違いそのまま死んでしまうという可能性に目をつぶる。

 ティナに核兵器のボタンを自由にさせるような事になってしまったら……まともな精神で居られる自信が無いのだ。

 

 あと、変身アイテム取り上げて一緒に居ると言う手もあるかもしれないが……。

 こっちにも何気に問題がある。

 変身してない【魔法少女】をいじめ続けていると、お供のペットのヘイト値がたまってレイドBOSS化するって設定があったりするのだ。

 【魔法少女】がPK(勢力戦とかじゃなく迷惑行為の)しまくったりして悪に落ちても、同じような事があったりする。

 流石にレイド戦をソロに近い戦力で何とかできるほどの自信はない、と言うより今のこの世界だと滅びかねないかもしれない。


 そんな訳で、取り上げるのもまずいから……。

 と言い訳を……。


「まった、サラちゃんコレをお守り代わりに持って行け」


 俺はアイテムボックスからある腕輪を取り出す。

 結構強力な守りの効果のあるWMOからの持込品だ。

 魔法少女に変身してる時は装備できないが、村人レベル1の時には効果はあるだろう。


「あ、ありがとうございます」


 サラちゃんは頭を下げると、キリリと表情を引き締めペンダントの赤い魔石を手にする。


「マジカル~~~~チェンジ~~~~」


 パステルカラーの目に痛いド派手なエフェクトが発動する。

 色々危ない所を完璧防御した変身シーンが……ロリコンじゃないから防御されてなくても気にしなかったんだが……終わった後。

 見るからに魔法少女と言う感じの衣装を着たサラちゃんが居た。


「おおおおおおお~~~~」


 その様子に物凄い興奮してるのは……当然の如くティナだ。

 他の面々も。


「なんか……すごいわね」

「きれいね」

「わ~わん」

「にゃん~」


 うん、ちびっ子達も興奮してた。


「では、制限時間がありますので行きますね。それではまた。皆さんありがとうございました」




 こうして、ティナとサラちゃんを混ぜ合わせて世界が崩壊するのは食い止められた。

 だが……何故だろう?

 サラちゃんにも一抹の不安を覚えるのは……。


 本当にこれでよかったのか?

 自分の決断の自信が揺らぐ。



 あと、最後に【魔法少女】の変身という切り札を移動に使うのはどうなんだろう?

ティナとサラのコンビと言う世界崩壊の危機を辛くも回避した彼らは……砦の謎に迫る!


「リーちゃんを助けるいい方法があるよ!」


クロはリーフを助ける為に最後の手段を使うのか!?


次回「砦の秘密」乞うご期待!



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