第4話 突撃ティナ!
今回も1日遅れてしまいましたが更新です。
ああ……更新時間も少し遅れました。
救出ミッションってのは情報が大事だよね。
特に囚われた人達のいる場所は……。
昼過ぎのまだ明るい森の中を馬型ゴーレムが疾駆する。
多分、ティナがやってるのだろう、森の木々が道を空けてくれているので、森の中でも速度を落とすことが無い。
「そろそろ、じゃない?」
シーナがモニタに写る周囲の様子を確認しながら呟く。
それを聞いていたわけでは無いだろうがティナが大声を上げる。
「見つけた~~~」
頭まですっぽりと覆われる外套を着たティナが指をさす。
外套のおかげで表情はわからないが、興奮してるのは声からわかる。
ちなみにこの外套は、馬型ゴーレムの頭の上に姿をさらしたままずっといるのはまずいって事で、シーナが渡していた。
シーナ曰く「このゴーレムの中は快適だから必要なかったわ」らしい。まあ、普通は旅立ったら防寒対策とかするよな。
外套はティナにはダボダボで大きすぎていたが、喜んで着ていた。まあ、外見はちゃんと隠せてるしいいか。
前方を写すモニタを最大望遠で表示させると、防壁に囲まれた小さな砦が見える。
もしかしたら、堀ぐらいあるかもしれない。
「ちょっとまて、家じゃないのか!?」
俺が慌ててティナに問いただすと、
「ちゃんと大きなお家じゃない!」
何て返ってくる。
ああ、何でティナに人間族の建物の違いがわかるなんて思ったんだろう。
多分、城でも凄く大きなお家とか言うぞ。
まあ、それは今はいいや。
小さいとはいえ砦となると、どうやって攻めるか?
ちょっと様子を見て……。
うん? システムメッセージ?
なんだ? えっと……。
「ちょ、あの子にあのままやらせていいの?」
突然現れたシステムメッセージに目を向けていたら慌てたシーナの声が聞こえた。
なんだ? とモニターを見る。
すると、ティナの頭上あたりに幾つもの火球が浮かんでいた。
うわ、炎の力を風で圧縮して無いかあれ?
なんかとんでもない火力が出そうな気がする。
「まて、ティナそ……」
「いっけ~~~~」
俺の制止の言葉も間に合わない。
ティナが火球の一つを砦の防壁のにぶち当てる。
ドゴーンって感じの爆発が起きる。
俺は馬型ゴーレムの中だからはっきりとはわからないが、モニターの中では防壁に大穴が開いていた。
ちょっとまて、防壁って言っても木製とかじゃなくちゃんと石で作ったような頑丈なやつだぞ!
それを一発で大穴って……。
「じゃあ、次々いくよ~~~~」
「いくな~~~!!!」
2発目を打ち出した体勢でティナが止まる。
「何で止めるの? リーちゃんを捕まえた悪いやつらの居る場所だよ!」
「ああ、解ってる。ついでにあそこのどこかにリーちゃんが居るんだよな? ちゃんと居る場所確認したのか?」
俺の言葉にティナが全く動かなくなる。
何か大きな冷や汗が流れるエフェクトでも表示されそうな感じだ。
「………………あっ! だ、大丈夫だよ! あんなに建物一杯あるんだからリーちゃんが居る場所に当たるなんて……」
そう言いかけた途中で、またもや凍りつく。
さっきより冷や汗の量が増えてる気がするぞ。
何があったのかと、モニタを確認してみると、2発目の火球が着弾した建物の一室をなにやら木の根っこの網みたいなものが出来て防御してるように見える。
「……お、お、お、お……怒られる!?」
ティナ方を確認すると慌てたように何か叫んでいる。
外部の音声を拾ってみると……。
「リーちゃん、助けに来たよ~~~どこ~~~~?」
今更な声をティナが上げている。
それは攻撃する前にしろよ。
何処って言うか解りきってるだろう?
その後直ぐに返事がする。
「ティーーーナーーーー!」
怒りを押し殺したように低い女の人の声だ。
「ま、まずいよ、敵だよ! 強敵だよ! 直ぐ逃げないと!」
「お前を呼んでるように聞こえるんだが?」
絶対にティナを探してるぞあれは、ほら今も「ティナーー! 降りてきなさい!」って聞こえるじゃないか。
「そら口だよ、かげ耳だよ!」
うん、そら耳とかげ口か? そら耳はともかくかげ口は違わないか?
「逃げないと~~早くしないと~~~大変だよ~~~」
助けに来たんだろお前は……まあ、そんな事やってる間に防壁内部に馬型ゴーレムが到着し、降り易いように姿勢を低くしていく。
「わわ、止まっちゃったよ! どんどん低くなるよ!」
搭乗したときと同じく腹ばいにし、ついでに馬の頭も地面まで倒してティナも降りやすくする。
「ティーナーーーどう言うつもり? いきなり火球をぶつけてくるなんて。ゆっくりと話を聞こうじゃないの?」
「ああ、ああ~~うん、敵が居たんだよ! だからやっつけたの!?」
「へぇ~~~何処に居たの?」
「あ……え……う~~~~」
ティナの近くにやってきた少女。
整った顔立ち、綺麗な緑色の髪、とがった耳、スレンダーなボディ。
エルフ耳! 美人! ペッタン胸!
まさにエルフといわれて思い浮かべるエルフがそこに居た!
あれがティナの友達で捕らえられていたエルフで間違いないだろう。
「変ね……敵の姿が全く見えない。これだけの騒ぎがあれば何人か出てきてもいいはずなのに」
馬型ゴーレムを降りて直ぐ索敵していたシーナが近づいてくる。
俺もさっきから『索敵(M)』のスキルを使っているが、見つかるのは囚われていたエルフが出てきた場所に4人ほどいるだけだ。
他には探してみるが、反応は無い。
う~ん、ここには索敵妨害系の施設があっても不思議じゃないんだよなここには。
「だな、警戒はしつつも、まずは彼女に聞いてみよう」
「もう少し時間が掛かりそうだけどね」
俺達は説教を受けているティナと説教をしているエルフを見ながら、まずは彼女達が終わるのを待った。
「ちょっと見苦しい姿を見せてしまったわね。このティナと同じ村のエルフのリーフといいます。救出ありがとうございます」
暫く、ティナの説教を続けていたリーフさんだが、ひと段落ついたのかこちらに挨拶に来た。
エグエグと涙を流しているティナを引きずってるのは……見なかったことにしよう。
「いえ、俺達はティナに協力してただけだから……」
「そうそう、暴走するティナを止める為にね」
そんな感じで俺たちはこれまでのいきさつを説明する。
「本当に色々迷惑をかけましたね。重ね重ねありがとうございます」
リーフさんはそう感謝を述べる。
説教がもう1セット追加でボロボロになったティナの方は視界に入れない。
「あの、それで助けてもらえるというなら、他の子達をお願いしたいのですが……」
リーフさんはそう言って、隠れたままだった人達を呼ぶ。
犬耳のワンコって感じの獣人少女。
猫耳の子猫って感じの獣人少女。
白と赤の巫女装束の巫女さん。
最後に普通の人間の少女?
そんな四人だった。
まず俺たちが自己紹介をしたあと、4人が続く。
「タマ…………」
「……ポチ……」
「神龍の巫女のミコと申します」
「魔法少女のサラです」
うん、色々突っ込みどころのある自己紹介だったが、その前に一つ確認しよう。
「リーフさん、さっき”他の子達をお願いしたい”と言ってましたが、リーフさんはどうするのですか?」
少し気になっていた言い回しをたずねる。
「私には奴隷の呪いが掛かっていてここから逃げ出すことが出来ないんです」
彼女は、無理やり明るい笑顔を浮かべて答える。
のだが……いつの間にか復活したティナが割り込んでくる。
「大丈夫、良い方法があるよ!」
と言うのを二人でスルーして話を進める。
「まあまずは、彼女達の能力を封印する首輪をはずしてしまいましょう」
と、俺は4人に方を見る。
彼女たちの装備は、スキルで鑑定済みだ。
ポチとタマの二人には、運動能力低下とスキル・魔法封印の効果の首輪が、ミコさんとサラさんには魔力封印とスキル・魔法封印の効果の首輪だ。
全部に装備がはずせなくなる呪いが掛かっている。
あと、運動能力が低下で魔力が封印なのは、魔力が無くても生活できるからだろう。
この4人の封印を解くのは特に問題は無い。
俺はすぐに『祝福の光(M)』のスキルを4人に使う。
これは呪われた品に大ダメージを与えるスキルだ。
外せなくなる呪いの掛かったアイテムや、呪いで動くモンスターなんかに効果的な攻撃スキルで、特に装備者本人ではなくアイテムに対して攻撃できる、便利なスキルだったりする。
まあ、簡単に言えば、呪われた装備品だけを攻撃して破壊できるのだ。
何気に手に取るだけで呪われた武器を強制装備なんて事もあるWMOでは、最も簡単に解呪出来る手段だったりする。
まあ、いくつか同じようなスキルや魔法、使い捨てアイテムなんかがあるので、高位のダンジョンではいずれか一つは持っておくのが必須だったりした。
あとこれとは別に、正式に呪いを解く方法はあるにはあるのだが、色々準備が面倒だったりする。
解呪すれば高性能のアイテムになる物もあるので、一応とってはあるのだが……よっぽど貴重なもので無い限り壊した方が早いとなるのだ。
『祝福の光(M)』の純白の光で彼女たちの首輪を特に問題なく破壊していく。
「ありがとうだワン」
「ありだとうだニャン」
と獣人少女達は飛び跳ねて力を確認している。
「ありがとうです」
魔法少女(?)のサラさんはボロボロに崩れ落ちた首輪のあったあたりをさすりながらお礼を言う。
「ありがとうございました。解呪する為には今しばらく力を溜める必要があった為たすかりました」
ミコさんは、そんなふうに礼を言ってくる。
力ずくで解呪する方法があったとか……何か特別な力でも持ってるのか?
巫女ってそこまで強い職業じゃなかったはずだぞ……そう思って『人物鑑定(M)』のスキルを使ってみる。
名前:*********
職業:*********
種族:*********
備考:*********
全く内容が見えなかった。
というか普通に確認できない時の”????”では無い。”*”で情報が塗りつぶされてる感じだ。
一体何故だ?
「ふふ……あまり、勝手に覗くのは感心しませんよ」
ミコさんはにっこりと俺の方に笑いかける。
「すいません、つい気になったもので……」
直ぐに頭を深く下げる。
「解ってもらえればいいのです。あ、こうしては居られません。お役目が遅れてしまっているのです」
慌ててるといいつつゆったりとした動作で懐の辺りに手を入れ何かを取り出す。
うん? どっから取り出した、今?
何か素朴な首飾りを手に乗せて差し出してくる。
「何か困ったことがありましたら神龍の社においでください。これをもっていれば入れるはずです」
神龍の社? 何処だろうと思いながら、紐のようなものに、勾玉が一つ通されただけの首飾りを受け取る。
「出来る範囲で力をお貸ししましょう」
「あ、ありがとうございます」
と頭を下げる。
「リーフ様、ポチ様、タマ様、サラ様、色々お世話になりました。ティナ様、シーナ様、クロ様助けていただきありがとうございました。それではこの辺で失礼させてもらいます」
と、ミコさんは、ゆっくりと砦の外に歩いていく。
「ちょっと何あれ?」
シーナが声を上げたので指差す方を見てみると、黒い雲が何処からか突然現われていた。
様子を伺っていると……。
突然、何か神々しいイカズチがミコさんに落ちる。
そして、次の瞬間には何事も無かったように。
黒い雲は消え、イカズチが落ちた場所には焦げ跡すら残っていなかった。
「ミコちゃん……雷で消滅?」
「多分、転移の術か何かでしょうね。ミコの発していた力と同系統の力を感じたわ」
驚いたティナにリーフさんが説明していた。
シーナは、そんな説明に納得してるようだ。
たしかに、転移魔法の類の気はするが……。う~ん、WMOにあんなのあったか?
「ワ……ワン!」
「ニャアァァァァ」
獣人の子供達はイカズチに毛を逆立てて興奮してる。
サラさんの方はと、見てみると……。
「あああああ! 私もスーちゃん探さないとダメだったんだ~~~」
何て言いながら、慌てだしている。
凄くいやな予感がする……スーちゃんって言うのは……。
う~ん、さっきは流したけど……。
無視する訳にはいかなくなってしまったも知れない……。
最悪を呼び寄せるあの職業……。
こっちの世界では絶対に見たくなかったあの職業を……。
あの、パステルカラーの悪魔!
魔砲少女を!!
次回!
禁断の魔法少女のベールがはがされる!
最悪最凶の悪夢、再び……




