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異世界に飛ばされた俺は奴隷調教師になっていた  作者: 七瀬 優
第8章 いざ冒険の旅へ!
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第6話 奴隷商人

少し遅れてしまいましたが更新です!

 ティナを見つけたのは豪邸の中の一室、テーブルと一対のソファー、それに高価な調度品が置かれたいっけん応接室という感じの部屋だった。

 俺は、その部屋の扉のほんの少し開いた隙間から覗き込む。

 一緒に来たセリカには廊下から人が来ないか警戒してもらっているので、意識を部屋の中にだけに向けられる。

 その応接室は、見た目とは違い、窓にはめられた鉄格子、扉にこめられた魔法、多分壁にもなんらしかの細工がしてあるだろう、高貴な人間を監禁する牢屋と言った方がいい感じだ。

 

 中に居るのは、後姿しか見えないティナと小太りな男、それに男の前に不安そうな面持ちで立っている同じ姿の2人の子供?

 う~ん、いまいち状況がわからない、ばれるかもしれないがちょっと『人物鑑定(M)』で調べてみるか。



 まずは小太りの男だ。



 名前:ジョン・スミス

 職業:奴隷商人Lv11

 種族:ヒューマン

 備考:………………………………………………

    ………………………………………………

    ………………………………………………



 ジョン・スミス……ありふれた名前だが、元の世界だと、”名無しのごんべい”みたいな意味で使われることもあると、聞いたことがある。

 う~ん、偽名なのか本名なのか良くわからんな。

 それに……【奴隷商人】!?

 ゲームでは無かった職業だな。

 まあ、俺の【奴隷調教師】ってのも見たことが無かったものだけど……。

 そもそもゲーム内で奴隷って概念が無かったからな。

 

 次は場違いな子供二人だ。



 名前:天狐

 職業:戦士Lv2

 種族:九尾の狐

 備考:ジョン・スミスの奴隷。

    地狐とは双子の姉妹である。

    ………………………………………………

    ………………………………………………



 名前:地狐

 職業:戦士Lv2

 種族:九尾の狐

 備考:ジョン・スミスの奴隷。

    天狐とは双子の姉妹である。

    ………………………………………………

    ………………………………………………



 調べてみると、種族が九尾の狐となっている。

 獣人なのか?

 良く見ると頭に獣耳、たぶん狐耳なんだろうがぴょこんとのぞいている。

 それに双子の姉妹なのか、どおりで姿がそっくりなわけだ。



「エルフのお嬢さん。遠路はるばるようこそ」

「…………」


 うん?

 そういえば奴隷商の男は妙に余裕があるな。

 エルフを扱っているというならその危険性も解っているはずなのに。

 まさか、人違いだったのか?

 

「ふふふ、さすが懸命なエルフです。この二人の事が理解できているようですね」

「?」


 ほんのわずかだが、ティナが困惑に首をかしげる気配がする。

 小さすぎて奴隷商の男には気づけなかったようだが……。


「そうです、九尾の狐ですよ。貴方達エルフと昔戦った獣人たちの王族ですよ」

「??」


 エルフと獣人で戦った?

 う~ん、この世界の歴史なんてさっぱりわからんぞ。


「多くの血が流れすぎて、お互い不干渉を貫くと約束されたそうですが……もし自分たちの王族が、エルフの手にかけられたらどうなるでしょう?」

「???」


 まさか、戦争が再発する?

 だからエルフは、うかつに彼女達には手が出せない?

 まずい、どの程度奴隷商の言っている事が当てになるかはわからないが、ハイエルフのティナが獣達の王族を手にかけるのはまずい気がする。

 レナさん達を連れてこなかった理由と同じような事が起こる気がする。図式は獣人とエルフだが……。

 それ以前にその事を全く理解してないティナが凄くまずい。


「外の傭兵達のようには……」

「…………話は…………終わった…………?」


 ティナの声音からはまったく感情が感じられなかったが、話の内容に全く興味をもってないのだけは伝わってくる。

 

「へ?」

「…………」


 奴隷商の間の抜けた声が聞こえる。

 ティナは右手を上げて……。

 やばい、俺はそこで慌てて部屋の中に飛び込む。


「ティナ、お前はその男をやれ、子供は俺が何とかする」

「…………ん…………」


 ほんのわずかにうなずいたティナが奴隷商に手を向ける。


「お前達、あのエルフを、侵入者から私をまもりなさい!」

「ぐ……」

「ぐ……」


 奴隷商が慌てて二人の子供に命令する。

 二人はほんのわずかに抵抗したようだが、お互いの苦痛の声を聞いて行動に移す。


 俺はとっさに『パラライズスタン』のスキルを2発立て続けに使う。

 『パラライズショック』の遠距離版のようなスキルだが幾分成功率が落ちる。


「く、やっぱり抵抗されるか」


 九尾と言えば、元の世界では相当高ランクの妖怪だったはず、そんな相手には生半可な状態異常は効くはずもないか……。

 下手をすると、上位ボスと同じように状態異常無効化とか持っていてもおかしくは無い。


「…………」


 奴隷商を攻撃させまいと2人の子供がティナの前に立つ。

 やばい、ティナはかまわず殺るつもりだ。

 子供相手にあんまり使いたくは無かったが、『手加減(M)』&『ファイアーアロー』×2だ!

 ベーススキルの戦士のそれもLv2ならちゃんと『手加減(M)』は効くはずだ。

 俺の炎の矢というより槍というべきものが二人の子供に炸裂する。


「「きゃ~」」


 二人分の悲鳴が聞こえたと思ったら直ぐに静かになる。

 ちゃんと『手加減(M)』効いたよな?

 ピクリとも動かなくなった二人の子供に不安を覚えていた所で……。


『天狐(九尾の狐・女)を隷属させました』

『地狐(九尾の狐・女)を隷属させました』


 のメッセージが頭に浮かぶ。

 何とか殺さずに無力化できたようだ。

 それと同時に何かが砕け散る音が二人の首の辺りから聞こえる。

 もしかしたら隷属用の首輪とかをされていたのかもしれない。

 そんなことよりも、今は……。


「ティナ、子供たちは無力化したあとはその男だけだ!」

「……ん……」


 その直後、奴隷商の四肢が氷、炎、風、土の力で粉砕される。


「ぎゃあぁぁ~~」

「…………」


 それに奴隷商が絶叫をあげるが、ティナは全く顔色も変えずに近づいていく。


 そして、盗賊の頭相手にしてたように、闇をまとった手で奴隷商の頭をつかむ。


「ぎゃ……ぐぁ……ぁぁぁぁぁ……」


 次第に声が小さくなっていき、声が途切れた所で、ティナはその躯を投げ捨てる。

 あの闇をまとった手は、色からして闇の精霊の力でも借りてるんだろう。

 でも、何故とどめをわざわざそれでやる必要があるんだ?

 他にも色々あるだろうに……。

 強力な苦痛をあたえると言った効果なんだろうか?


「…………」


 ティナは直ぐに飛び出そうとする。


「まて、ティナどこに行くんだ?」

「…………馬車……を……追いかける…………」

「馬車??」


 なんだ? いきなり馬車の話が出てくるんだ?


「…………リーフが……馬車で…………」


 リーフというのが連れ去られたエルフの名前か?

 馬車で連れて行かれた?

 なんだ?

 何処からそんな情報が出てくる?


「何時連れて行かれたんだ? 今からでも間に合うのか?」

「…………5日前……この場所から…………」


 5日前って今からじゃ間にあわないだろう!


「どこに行くのかわかるのか!?」

「…………馬車を…………おいかける…………」


 まて、5日前に出た馬車を今追いかけても。


「何処に向かったか解るのか?」

「…………だから追いかける…………」


 解ってないのか!?


「まて、ティナ」

「…………じゃまするなら…………」


 く、元々考えて行動するタイプじゃないよなティナは……。

 まずは、何とか正気を取り戻させないと。

 ここは……。

 ゲーム中のイベントで見たあの方法を使おう。


「えい」


 俺はおもむろに、ティナに近づくと両手の握りこぶしを彼女のこめかみにあて……。

 

 グリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリ。


「ぎゃあああ~~~痛い痛い~~いたいよ~クロちゃん~いたいよ~~~~」


 暫くグリグリを続けてティナが正気を取り戻した事を確認して止める。


「ひどいよ、クロちゃん、凄く痛いよ!」


 うん、効果はばつぐんだな。


「じゃなくて、直ぐにリーちゃんを追いかけないと!」

「まて、ティナ今から追いかけてもわかるはず無い!」

「でも、追いかけないと!!」


 今にも駆け出そうとするティナを捕まえながら続ける。


「追いかけるよりもまずは場所を探せ! 妖精達なんかを全力で使えば見つけれるだろう?」

「でも……リーちゃんの反応がさっぱりわからないよ!」

「まずは、さっきから言ってる馬車の行方がどこに行くかを探してもらえ、追いかける移動手段は心当たりがある」


 普通に追いかけるよりとにかく足の速い乗り物に乗る方がいい。

 もう、5日も前なら走って追いかけるのは無理がありすぎる。


「わ、わかったよ! まずは馬車だね!」


 ティナは直ぐにその場で妖精達に協力を求めようとする。


「まて、ティナ。拠点の方に戻ってから探せ、ここの場所にずっといるのはまずい。前に作った帰還の指輪を使え!」

「前に……あ、これか! えい!」


 ティナの足元に魔法陣が現れたと思ったら直ぐに彼女ごと消滅する。

 よしもどったか……。


 俺はこの子達を連れて帰らないとな。

 二人(?)の九尾の狐の子供を見ながらどう帰ろうか考える。

 帰還の指輪を二人は使えないから背負って帰るか……。


「なんか、凄い音がしたよ~~~」


 あ、そういえば、セリカを忘れていたな。

 廊下から走りこんできたセリカが、


「戦闘だね! やるよ~~~」


 笑顔で飛び込んでくるが……うん、戦闘はもう終わってるぞ。


「あれ? 戦闘は」

「色々終わったから帰るぞ!」

「ええええええ~~~~廊下の先の方を行ってる間に!」


 おい、ちゃんと監視してろよ!

 扉の前で守ってろよ!

 まあ、いいやどっとつかれた……。


「セリカ、そこの子供を一人おぶれ、一緒に連れて帰るぞ」

「え? この子達なに? どうしたの?」

「色々と説明はあとでな……」


 俺達はそのまま、九尾の子供達を連れて拠点まで歩いて戻った。

 豪邸を出たときに、街の人達になんて説明しようと考えたりしてたのだが……。


「私達は何も見ていません!」

「何も言わないでください!」

「何も知りません、何も聞きたくありません」

「不思議な事件があったのです、一夜にして屋敷から人々が消えたのです!」


 うん、俺たちを怖がっているのか……、豪邸の事件にかかわるのを嫌がっているのか……。

 街の衛兵らしきものも一緒になって、そんな事をいって追い出そうとするのには疑問を覚えたが、説明しなくてもいいなら丁度いいのでそのままその場を後にした。

 う~ん、街の人の様子から、あの奴隷商に喧嘩を売るのは結構まずい事なのか?


 少し不安を覚えながら拠点までの帰り道をセリカと一緒に歩いて帰った。

次の章はリーちゃんの救出か?

ティナが大活躍(歩く災害かもしれないが……)の予定。

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