第1話 さあ、冒険に出発だ!
更新です。
今後11月いっぱい、少し更新が滞るかもしれません。
申し訳ありません。
冒険の旅に出発?
その前に色々計画を立てましょう。
「さあ、冒険に出発だ!」
ティナが夕飯を物凄い勢いでかっこんで、急いで部屋に戻ったから何をしてるのかと思っていたのだが……。
他の皆が食べ終われないうちに、雪山登山用の如く、大きくパンパンに膨らんだバックパックを背負って戻ってきたのだ。
「どこに行くんだ?」
「冒険に行くんだよ!」
俺は何処と聞いたんだが……。
「何時行くんだ?」
「今からに決まってるよ!」
うん、わざわざ夜間踏破とかバカげているよな。
ただエルフの試練が終わって直ぐに旅に出ようといわなかった理由がわかった。
色々準備してたんだな……準備の方向がなんか間違ってる気がするのだが……。
「目的地は、何処なんだ?」
「そりゃ~もちろん、ぼうけ……あれ?」
やっと気づいたか、まあティナが目的地を上げるようなら、よっぽど酷い場所でなければそこにしても良かったんだが……。
俺達(どこかに行ってたティナ以外)は、エルフの試練が終わってから数日、どこに行くかの相談をしていた。
だが、街に行きたい、ダンジョンに行きたいなんていう目的はあっても、具体的な場所に対する希望がなかったのだ。
その上、急ぐ用事も無いので、全く目的地が決まってなかった。
みんなの意見を個別に紹介すると……。
シーナは、「下手な未攻略ダンジョンよりも、この拠点の中の方がお宝一杯でしょ」とか言っている。
まあ、確かにそうだよな……だがくれてやるつもりは無いぞ!
マユさんは、「大きな街でお店を開きたいです」といった感じだ。
まあ、それなりに大きな街を拠点に行動したいから、どっちにしろそうなるだろうな……。
セリカは、「強敵がいるダンジョン」という希望だ。
いつもどおりな感じなので、大森林に在るいくつか上のランクのダンジョンでも満足しそうだった。
闘技大会みたいなものが開かれていればそっちに行きたいとか言うかもしれないけど、そういう話も無いしな。
レナさんやミルファさんは、セントリナ王国以外なら何処でもよさそうだった。
俺もあの王国にいって面倒事の再開はいやなので、それでいいと思う。
最後に俺の希望は、平穏無事なスローライフなら……。
あ、そういえば、飛ばされた原因の究明や帰還方法さがすとかも……。
でも、手がかり以前に何をどうしたらいいのかの取っ掛かりすらないからな。
そんな感じで、目的地は……。
1つ、大きな街。
1つ、セントリナ王国以外。
1つ、近くにダンジョンがあるところ。
なんて事になっているのだ。
こんな条件で決まるわけが無い。
その上話をややこしくしたのが、
「歩いていくの?」
シーナのこの言葉から始まった、移動方法についての事だ。
拠点を持ち運べるので、最悪砂漠のど真ん中でも快適な住環境だけは確保できる。
つまり、無茶な移動をしても、疲れたら拠点で休むことが出来るのだ。
旅に対する備えもあったものじゃないよなこれじゃあ……。
そんな感じで、問題が起きても何とかなる分、逆に選択肢が多くなりすぎてしまって決められないのだ。
ついでに問題をややこしくしたのが、拠点の移動用ゴーレムなどの移動手段と、俺の転移魔法や拠点の転移設備だ。
拠点の戦闘用の設備のなかには、輸送用ゴーレムや騎兵用の馬型ゴーレムなどの移動用のゴーレムが何種類もあった。
ついでに、厩舎なんかの施設を設置して、馬や騎獣、果ては騎乗用のモンスターなどもGPで手に入れることが出来るのだ。
速くて快適な馬車での旅はもちろん、空での旅すら出来る。
ここでも選択肢が多くなりすぎたのだ……。
ただ、拠点の移送用の設備を使う時には一つ問題があった。
大前提として、GPが大量に必要な事以外に、拠点をアイテム化すると、馬車だの移動用ゴーレムも一緒にアイテムになる点だ。
ヘルプに載っていたのをマユさんが指摘してくれた。
コレを解決する為の方法として、出てきたのが、転移魔法や転移設備だ。
転移手段にはいくつか種類がある。
1つめは、世界間を移動する為の大型ゲートだ。
これは世界毎に一箇所で、普通の世界間移動の時の出現地点でもある。
基本的(事故やイベントを除いて)に世界間を移動するのにはこの大型ゲートしか方法がなく、魔法やアイテムでは移動できなかった。
WMOはお馴染みの方法だが、こっちに着てから大型ゲートの話は全然聞いていない。
2つめは、街などの転移クリスタルによる移動だ。
転移クリスタルに触って登録すれば、登録された転移クリスタル同士はいつでもコストなしで移動できる。
WMOでは当たり前の移動手段だったのだが、こちらの世界では今は使われていないらしい。
転移クリスタル自体が無くなったり、整備する人員が居なくて壊れてしまったようだ(伝説や御伽噺では登場していた)。
3つめは、アイテムによる移動だ。
その世界の大型ゲート(一度いった事のある場合)に転移するアイテム。
最後に使った転移クリスタルの場所に移動するアイテム。
マーキングアイテムで記録した位置に転移するアイテム。
この3種類がWMOではあった。
普通にNPCの道具屋で買える様なアイテムだったのだが、この世界ではレアアイテムとして扱われているようだ。
一応買えなくは無いが、贅沢しなければ1年ぐらい遊べる金額になるらしい。
まあ、一番上のアイテムは不発になるらしく、ゴミ扱いらしいけど……。
2つめは登録できる転移クリスタルがほとんど残ってなくて、登録自体が大変らしい。
3つめは、マーキングアイテムも同じぐらい高価らしい。
どっちにしろ転移は軍事用の緊急用のアイテムとしてしか使われてないみたいだった。
一応、いくつか手持ちはあったが、そんな話を聞くと使うに使えなかった。
4つめは、魔法だ。
アイテムで行った3つをそのまま使える。
だが、マーキングと転移のやつだけは触媒が必要だったりする。
一応それなりに触媒はあるが、補給のあてが無い現在はあんまり乱発したくは無い。
大型ゲートと転移クリスタルの方への移動はMPだけでいけるが、両方ともこの世界でいった事がないので移動は出来ない。
5つめは、拠点設備だ。
・転送装置
マーキングした場所に転移できる装置。
一方通行、ギルドメンバーのみ使用可能。
・帰還魔法陣
ギルドメンバーが専用の指輪を使うと魔法陣に戻ってこれる。
・ゲート
ギルド拠点とゲートを作った場所をつなぐ。
双方向、指定した者は自由に移動可能。
現時点で使えそうなのは、この3つだった。
GPだけで設置も使用も出来る帰還魔法陣は設置は良いとして、問題は他の2つだ。
両方とも特殊な素材が必要だったのだ。
ゲートの方は、設置に素材が必要だが、使う分にはコアのMP消費だけで使える。
ただし、ゲートの位置の変更は出来ず、新たにまた設置する必要がある。
転送装置の方は、送り出す専用という問題と、設置に使う素材が結構大量に必要な点だ。
あとマーキングの上限は初期3つでGP使って増設は可能みたいだった。
ただし、マーキングするのには、専用の消費アイテムが必要で、作らなくてはならなかった。
作成難易度はともかくとして、材料が3つ分には足りない。
マーキング&転移回数に制限が無いのなら、誰かが、先に進んで、マーキング&拠点を持ってくるなんて事もできるのだが、それは難しそうだった。
そんな感じで、手段が沢山ありすぎで中々決まらない。
そもそも、目的地が決まらないのだから、手段も決まらないのではあるのだが……。
ついでに言うと、切迫した時間制限も無い。
そんな訳で、目的地が全く決まってなかったのだ。
「で、ティナどこか良い場所あるのか? 皆で考えてよさそうならそこにするが……」
「う~~~~あ! 良い事思いついた!」
そう言って、ティナは部屋に慌てて戻って行く。
うん、凄く不安なフレーズを聞いたな。
「じゃ~ん、これだ!」
ティナは手にした棒切れ……何か変なミミズがのた打ち回ったような模様がついている。
「コレ私が作ったんだよ!」
うれしそうにそう言って、床に垂直に立てる。
そして、手を離す。
ま……まさか……。
「あっちだ!」
ティナは、棒が倒れた方向を指差してそう叫ぶ。
その瞬間、彼女以外に戦慄が走った。
このままなし崩し的に棒倒しで旅をさせられたらたまったものではない。
そこからの議論は皆真剣だった。
「セントリナ王国以外で、大きな街で、ダンジョンがそれなりに近くにあるというなら、冒険者の街でどうでしょうか?」
マユさんが冒険者の街というのを説明する。
聞いた所によると、ダンジョンや森、山、海、川、砂漠など色々な環境が近くにある街で冒険で一攫千金を求める人たちが集まる場所らしい。
冒険者ギルドの本拠地もここにあり、そのギルド長が治める街らしい。
街といっても、国などから独立しているらしく、国がらみのしがらみも無いらしい。
あと、冒険者の街というのは通称で正式名称はあるらしいが……ギルド長が自由に命名できるらしく、ギルド長が代わる毎に変更されるので覚えてないと言う事だった。
「冒険者の街!? ダンジョン!? 行くよ! 今すぐに!」
セリカは凄く乗り気だ。
「迷子の為の帰還魔法陣は必須として、補給用にこの場所にゲート設置しておいたほうがいいわ」
シーナの意見は無難で、その場でみんなの合意の元決定する。
「楽しみですね冒険者の街」
「はい」
「冒険だ~~~」
レナさん、ミルファさん、ティナも賛成のようだ。
「目的地は冒険者の街として、移動手段はどうする?」
「必要なら途中で馬とか馬車をかえばいいんじゃない?」
まあ、それでいいか時間制限ないんだからのんびり移動しても。
そんな感じで、あっという間に目的地が決定した。
冒険者の街だ!
冒険者ギルド、クエスト……。
なんか聞くだけで胸が躍る。
WMOとは違ってリアルの冒険者ギルドだ!
次回はついに出発です




