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第6話 やっと再試験……忘れてたわけじゃないよ!

更新です。


章題の『エルフの試練』が、詐欺にならなくてすみました……たぶん。


「合格さね」

「な~~ん~~で~~~~!!!」

 エルフの試練に再チャレンジする為にやってきた最終試練の場所。

 フォレストドラゴンのフォレンストが居るあの場所だ。

 さあ、これから試練だ~と息巻いていたティナに告げられたのは合格の一言。

 なんとなく、この試練の合格条件が想像できるものの、ティナが合格に文句言いたくなるのも解る気がする。

 今回は何も、具体的な試練を受けてないのだから……。

 さすがに、事実を突きつけるのはあれなので、何か試練をでっち上げれないかと、今日一日の行動を思い出す。







 今日の朝は、ダイニングに集まって皆で朝食を取っていた。

 手狭だと感じていたので、数日前にGP使って部屋を拡張した。

 共有スペースなので、ギルドのGPから出す事になった、ついでとばかりに、テーブルにイスまで出した。


「このサラダおいしい」

 

 レナさんとティナに挟まれて座ってるミルファさんが二人に話しかけている。

 先日のトラブルのあと、ミルファさんは俺に敵意むき出しにしてくるようなこともなくなり、そのうえティナにすごくなついていた。

 それに、レナさんに対する態度も主従ではなく友達とかおねえちゃんと言った感じのものになった。

 それにしても、本当に何があったんだろう?

 一応、ティナに感謝すべきかもしれないが、今一信用がもてないんだよな彼女の行動。

 悪意は無いが、トラブルメーカーとしては相当なモノを感じる。


「皆さん、食べながらでいいので、ちょっと聞いてください」


 朝食をゆくっりと食べながらミルファさん達を観察してた所で、マユさんが声を上げた。

 なんだろう?


「私たちは、大森林に何時までいるのでしょうか? 目的は果たしたのでそろそろ今後はどうするか決めませんか?」


 ああ、そういえば、そうだな。

 ここには、心の秘薬の材料を取りに来たんだよな。

 すっかり忘れてた。


「迷いの森に戻るの?」


 シーナの問いに、「う~んどうしましょう?」マユさんが悩んでいる。

 具体的な目的があるわけじゃなさそうだし、今後の予定を聞きたかっただけか?

 まあ、M&Mの在庫が溜まる一方だからちゃんと街で店を開きたいだけなのかもしれないけどな。


「まだまだ、魔物の巣もいっぱいあるし、この森でもレベルアップに困らないよ?」


 セリカはまあ、そうだろうな。

 そろそろ、GPたまって訓練施設も設置できそうだしな。


「私はクロ様達についていきます」

「いっしょ~」

「わたしも一緒についてくよ~」


 レナさん、ミルファさん、ティナは一緒についてくるか……。

 ちょっとまて、ティナは一緒にこれるのか?


「ティナ、大森林を出れるようになったのか?」

「?」


 なにやら考え込んでるな、まさか忘れてたわけじゃないだろうな?


「ああああああ、エルフの試練!」

「まさか、忘れてたのか?」

「ま、まさか……忘れてたわけじゃないよ? ちょっと忙しかっただけ!」


 うん、忘れてたんだな。


「という訳で、今日はエルフの試練だ!」


 ティナがそういって勝手に今日の予定を決める。


「まあ、確かにティナさんもついてくるならまずはそれからですね」

「がんばりましょう」

「がんばろ~」


 マユさん、レナさん、ミルファさんも賛成のようだ。


「あのドラゴンと今度こそ戦うよ!」


 セリカ、そういう不吉な事を言うのはやめてくれ、あれはさすがにしゃれにならん。


「私、ここで留守番してていい?」

「試練でお宝手に入っても、留守番には分け前なしな」

「! ティナのためじゃない! 行くに決まってるでしょ!」

 

 うん、シーナは、ぶれないな。





 そんな訳で、エルフの試練に再挑戦する事になった俺達は、見覚えのある大きな木の虚の隣の魔法陣を使って最後の試練の場に移動する。


「試練を受けに来たよ! 今日こそは試練クリアだ!」

「おじょうちゃん、今回はずいぶん間があいたさね。諦めたかと思ったさね」

「諦めるわけないじゃない! ちょっと……ちょっと忙しかったんだよ!」


 うん、すっかり忘れてたとは言わないんだな。

 最後のセリフのところを言う時、目をそらしていたから、少しは後ろめたい思いがあるのかもだけど。


「まあ、忘れたんでも、忙しかったんでも、諦めたんでもいいさね」


 フォレンストには、お見通しだったみたいだな。

 この大森林の出来事を、全て見て居てもおどろかないけどな。

 最低限、こっそり森を抜け出そうとするティナの監視ぐらいしてそうだしな。


「うぐ! そんなことはどうでもいいよ! 試練だよ! 早く始めようよ!」


 うん、ごまかしたなティナ。


「わかったさね、早速始めるけどいいさね?」

「うん、いいよ!」

「じゃあ、はじめるさね」

「いっくよ~~~~」


 ティナが妖精たちを集め始めた時……。


「試練は合格さね」


 ティナの動きが止まる。


「……………………え?」


 人の悪い笑顔を浮かべながら(ドラゴンだから人の悪いとは言わないのか?)フォレンストがもう一度告げる。


「合格さね」

「な~~ん~~で~~~~!!!」





 うん、考えてみたけど、やっぱりフォローのしようがないな。


「わたし、勝ってないよ!」

「試練の合格条件が私に勝つ事なんで一度もいったことないさね!」


 ティナが何かを思い出すように首をかしげる。


「そういえば……言われたことがない!」

「だから前にも言ったさね、ちゃんと話をきけと」


 ガックリと膝をついたティナは搾り出すように聞く。


「クリア条件はなんだったの?」

「エルフの子供が外に出て行ってもある程度安心できる力を持ってることさね」

「???」


 ティナは不思議そうに頭に疑問符を浮かべている。

 まあ、それがわかっていれば合格はできていただろうからな。


「つまり、ふつうに森の外に出て生きていくのに問題ないかどうか試していたのか?」

「クロとかいう人の子の言うとうりさね」


 フォレンストがこっちに目を向けてくる。


「前回からティナはそんなに変わった気はしないのだが?」

「あんた達、人の子となかよくなったさね」


 まさか……厄介ごとを俺達に丸投げってわけじゃないよな?


「まさか、俺達にティナの面倒を見ろとか言うんじゃないだろうな?」

「よくわかったさね、あんた達人の子込みで合格さね」


 はぁぁぁ、うっすらとそんな予感はしてたが、凄い面倒を押し付けられた気分だ。


「それじゃあ、わたしの保護者みたいじゃない! わたしが、保護者なんだよ! お姉さんなんだよ!」


 ティナの抗議に、俺とフォレンストは苦笑した。

 たぶん、思いは同じだったと思う。


「そういえば、力とかは試さなくていいのか? ある程度の力も必要だろう?」


 俺の問いに、フォレンストはとんでもない答えを返してきた。


「おじょうちゃんの力なら、ちょっと強すぎるくらいさね。下手をすると今の国なら滅ぶさね」

「冗談だろう?」

 

 冗談であってほしいという思いをこめてそうたずね返した。


「本当の事さね。おじょうちゃんを外に出すのが不安だった理由のひとつさね」

「そんな力もってるのか? ティナが……」


 確かにティナの力は強い。

 軍隊レベルを相手にできるぐらいはある気がする。

 だが、直接国を滅ぼせるとは思えない。

 というか、滅ぼせるような力をティナが持っていてほしくは無い。


「おじょうちゃんは、妖精や精霊に特に好かれてるさね。例えば風を止めるように頼んだらあの子達は、止めてしまうさね」


 風を止める……規模にもよるけど、それをやったら確かに国を滅ぼしかねないな。


「そんな事できるのかティナ?」

「そんな事をしたら大変だよ!」


 うん、そこは「出来るわけない!」という答えが欲しかった、大変な事をおこせるんだな……。


「まあ、お気に入りのおじょうちゃんが酷い目にあったら妖精や精霊達が黙っていないだろうさね」


 それは、脅しか!?

 ティナを見捨てたりしたらひどいことになると言う。


「はぁ、出来るだけこいつの面倒はみるよ」

「頼んださね」



 そんな訳で、なんともあっけなくエルフの試練が終わった俺達は魔法陣を使って戻っていく。

 セリカはフォレンストと戦いそうにしていたが、何とかティナ達が説得して(引きずって)連れていく。

 ただ、帰ろうとした時、「ちょっと、クロのぼうやだけは残るさね」と、俺だけが呼び止められたので、一人残ることになった。

 


 皆が魔法陣に消えていくのを見送った後、フォレンストに向き直る。


「それで、他に何かようか?」

「ここがどんな場所か理解してるんじゃないかさね?」


 一つだけ、心当たりがある。

 あの転送魔法陣に見覚えがあったからだ。

 あれは、ダンジョン内に入り口がある隠しダンジョンへのショートカットだ。

 普通の転送魔法陣とは別の形をしていた。


「隠しダンジョンへの入り口か?」

「隠しダンジョンさね? 確かに隠されているダンジョンではあるさね」

「入り口を守るボスなのか?」

「入り口を守るというより、門番さね。ダンジョンから出てくるものを通さない為の門番さね」


 隠しダンジョンへ入る為の試練とかじゃなくて、出てこない為の門番か……。

 ゲームとは逆だな。


「何故そんな事を?」

「転職の技があった頃はみなつよかったさね。こんなダンジョンも入り口を解き放って沢山の者たちが戦いにもぐったさね」

「まあ、貴重なアイテムとかありそうだしな」


 隠しダンジョンは色々と旨かった。

 だけど、俺がなんども通っていたのは黙ってた方がいいだろう。

 そもそも、この世界ではなく、WMOでのことだしな。


「そうさね、今では伝説になるようなアイテムを求めてもぐったさね。ただ、転職の技が失われると、もぐれる者たちがほとんどいなくなったさね」

「弱体化して適正レベルじゃなくなったという事か?」


 転職なし縛りで隠しダンジョンなんて無理ゲーだしな。


「そういうことさね。そして、問題が起こったさね。ダンジョンにもぐっていた者たちがいなくなって、逆にモンスター達がこっちに来るようになったさね」

「凶悪なモンスターがあふれ出てきたという事か? 大丈夫だったのか?」


 ゲーム内ではなかった事だな。

 確かに、ゲーム内だと区域分けされた場所から、出てくることは無いのだけど、この世界ならそんな線引き無いからありうるのか?


「エルフなんかの長寿の種族で転職を使って強くなった者たちが沢山犠牲になったさね。それでもなんとか押し返すことが出来たわたし達は門番をする事になったさね」

「わたしたち?」

「此処と同じような場所がいくつもあるさね。その場所で力を持った者たちが門番をしてるさね」


 隠しダンジョンは何個もあったから確かにそういう可能性はあるか……。


「何で、俺にその話をしたんだ?」

「色々秘密がありそうだからさね。出来たら何か力を手に入れる方法をさがしてほしいさね」

「まさか……」

「場所によっては、限界が近いところがあるさね。その前にさがしてほしいさね」


 隠しダンジョンのモンスターがあふれる?

 この世界のほとんどの者は対抗する手段なんかないだろう……。


「今のところ、全くわからないぞ」

「いいさね。もしもの時のための小さな布石の一つさね」


 何かの基準を満たしたものに現状を告げて、打開策をさぐっているのかもしれないな。

 まあ、ダメ元でやってるかんじはするけどな。


「そうか……最後にこの奥にもぐるのはいいのか?」

「力を試して十分なら、いいさね? 試すかさね?」

「いや、今の力じゃ無理だよ」

「ざんねんさね」



 そんな感じでフォレンストの元を去った。

 WMOでは稼ぎ場だった隠しダンジョンが、世界の破滅の火種になってるのはなんとも皮肉だな。

 とは言っても今できるのは地道なレベルアップだけだしな。

 次の目的地は、セリカみたいになるが、レベリングが出来る場所を選ぼう。

 あとは、転職方法を手にしたいな。

 レベルアップだけじゃ流石にきついだろう。

 転職なし縛りで、死に戻りできないんじゃ無理ゲーすぎるからな。


 あとは……。

 まあ、皆と考えよう。

 最終手段としてギルドの危険な兵器の使用も考えておこう。

次は……。

冒険を始めます!

さて、どこに行こう?










※この世界の隠しダンジョンや上級ダンジョン


 隠居したエルフの長老など、長寿な種族で隠居した者たちは、たいていダンジョンの入り口の門番をやっている。

 今、普通の開放されてるダンジョンは初級~中級まで。

 場所によっては、強固な封印を施され、封印の守人を行っている者も居る。

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