第5話 奴隷調教師
まだまだいきます!
真っ赤な血を流しながら倒れていく少女を見ながら、手に残る生々しい感触に体がすくむ。
俺は、人を殺してしまったのか!?
混乱しそうになる頭をむりやりに保とうとする。
そんなはずはない。
ここはゲームのはず。
ゲームのはずなんだ!
俺は、俺は……。
「うぐぅ」
少女が痛そうにうめき声を上げた所で我に返る。
まだ死んでない……そういえば、『手加減(M)』のスキルを使っていた。
その時やっと思い出して少し心が落ち着く。
「な、なに……これ……いや、いやーーーーーー」
突然少女が悲鳴を上げる。
な、なにがおこっている?
『バインドアタック(M)』の効果で動きを封じられているのも気にせず必死に何かを追い出すかのように必死に頭を振る。
そして、
「や、やめてーーーーーー」
と一際大きな悲鳴を上げた所で動きが止まる。
ま、まさか死んでしまったのか!?
さっきの人殺しの後悔がまたせりあがってくるが、その時突然頭の中に何かが浮かんだ。
『シーナ(ヒューマン・女)を隷属させました』
え?
なにこれ?
俺の頭を疑問符が埋め尽くす。
しばらく疑問だらけで混乱していたが、ふと思いだした。
テイムに成功すると、『○○のテイムに成功しました』とメッセージが表示されるらしいことを。
今回浮かんだ言葉は内容はともかくとして、それに近い感じがした。
だが、プレイヤーをテイムするスキルなんて聞いたことも無い。
そもそも、【モンスターマスター】にはそんな効果は無いはずだ。
それでも一応、ステータスでスキルの説明を確認しようと『ステータス表示(M)』を使った所で気がつく。
クロ(ヒューマン・男)
奴隷調教師Lv1
え?
なにこれ……。
【奴隷調教師】なんて職業しらない。そもそも俺の職業は【モンスターマスター】だったはずだ。
なにが起きた?
スキルを確認してみると。
『隷属』弱らせた人属性キャラクターを100%の確率で隷属させる。
『調教』隷属したキャラクターの職業、スキル、能力などを強化・変更させる。
『命令』隷属したキャラクターに命令して強制的に言うことを聞かせる。
なにか、恐ろしいスキルが増えていた。
ただ、『調教』については殆ど機能が開放されていなかった。
何か条件でもあるのか?
「うぅ……」
気を失っていた少女が目を覚ます。
「おい、どうなっているんだ?」
俺は疑問をぶつけるが、彼女の方が怒鳴るように疑問をかえす。
「あなた、いったい私になにしたのよ!」
「それがわからなくて……」
「奴隷ってどういうことよ! なんなのよこれ!」
そのまま、彼女の罵詈雑言を聞き流して彼女が落ち着いたあと、自己紹介なども含めて二人で状況を整理した。すると信じられないことがわかった。
まず第一に彼女にはゲーム内に居るという認識が無かったのだ。
それに加え、切りつけた時の生々しい手の感触、血の匂い。
他にも草木などの感覚があまりにリアルなのだ。
VRの中に居る時はあくまでVRだと最後の一線で感覚的に解かるのだ。
しかし、今はまったくそれがない。俺の感覚は信じられないことにここが現実だとリアルだと告げていた。
二つ目に【奴隷調教師】の『命令』スキルが実際に効いてしまったのだ。
『命令』スキルで服を脱げと命令した所、実際に服を脱ぎ始めてしまったのだ。
俺は慌てて止めて、質問に正直に答えるように命令を変えて、幾つか命令した。
WMOについて知っていること、自分の名前、ここの地名など確認してみた。
WMOについては何も知らないと答る。やっぱり知らないようだ。
自分の名前についてはシーナだと答え、隷属のメッセージの時と同じ名前だった。
地名については、この場所はセントリナ王国の外れの迷いの森だと答え、世界名は知らなかった。
『現在地・取得(M)』で確認した所。
世界:????
国:セントリナ王国
地名:迷いの森
と出たので間違っては居ない。
その後も色々シーナに話を聞いて。
ついに、俺は納得するしかなくなってしまった。
ここは紛れも無いリアル(現実)で俺の知ってる世界とは違う異世界であることを……。
そんな場所で【奴隷調教師】なんていうわけの解からない職業に付いてしまったことを……。
次回、同棲はじめました。




