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第1話 エルフの森のM&M

新章です。


章題の通り、エルフの試練のクリアを目指します。

めざしてないって?

あれ? おかしい、なんでこうなった?

 朝食後、散歩がてらぶらりとM&Mの近くの森を散策する。

 モンスターについてはティナの森の中の索敵性能が高すぎて心配は無かった。

 動植物やら妖精のネットワークで大森林全部を網羅とか……。

 まあ、他の森だとそこまでの索敵はできないみたいだけどな。


 そんなわけでぶらりと散歩して戻ってくると、マユさん達が店舗で何かをしていた。


「商品の在庫も此処暫くの採取や生産で十分に揃いました! これでやっとお店を再開できます!」

「おおおお~パチパチパチ」

「わたくしも、がんばります!」

「姫様がそんな作業しなくても私がやります!」


 おそろいのエプロンをつけたマユさん、ティナ、レナさん、ミルファさんの四人だ。

 何時の間に作ったのか、胸元にM&Mを意匠化した、刺繍のマークがついたものだ。

 マユさんはお店の再開に燃えていた。

 ティナはお店の店員という物に興味津々だ。

 レナさんはなにやら拳を握ってやる気をみなぎらせている。

 ミルファさんは、レナさんがやる仕事じゃないと渋い顔だ。


 だけど、マユさん解かってるのか?

 この場所がどこだか……。

 まあ、好きにさせておこうと軽く挨拶して部屋に戻っていく。



 部屋に戻った俺は、ベッドに横になってマッタリする。

 ここ数日間結構自堕落な生活が続いていたりする。

 ミルファさんの治療が終わり、王国からも離れているこの地で、この世界に来てから初めてのんびりとする時間が手に入ったのだ。

 それに加えて、レナさんが献身的に色々身の回りの事をやってくれるので堕落率が加速度的にあがっている気がする。

 これまでも、多少は時間が出来た事もあったが、その時はこの世界に慣れるのに色々やっていたりして、のんびりは出来なかった。


 う~ん、露天風呂に入ってのんびりすごしたいな……ギルド拠点の施設であったから建てようか?

 いやいやいや、流石に今は必要なものが多い、個人的にほしいものは後回しだ。

 でも……。よし、個人的に使えるGPについて今夜にも相談しよう。


 なんか爺臭い思考になっているが……。

 こっちで映画とかの映像メディアなんかの娯楽はないしな。

 なにか他の娯楽は……。


 女の子と楽しむ?

 何かの勢いとか流れならともかく、俺が声かけてそういうことを?

 誰に?

 なんと言って?

 う………………。

 へタレって言うな!

 

 他には……もの作りでもしてみようかな?

 う~ん。



 ちなみに他のみんなはというと……。

 まずは、ティナだ。

 あれから俺達のギルド拠点に入り浸るようになった。

 ギルド拠点の色々な場所(ほぼM&Mの時と変わっていないが……)に行こうとして、ゲスト権限で立ち入り禁止の場所に入りたいと、何度も設定の変更を頼んできた。

 俺は面倒になって、「もういっそギルドに加入しないか?」と聞いたら「うん、やるやる」と二つ返事で加入してたりする。

 そのまま、入りびたりが住み込みになったのは言うまでも無い。

 まあ、何かたくらんで悪さしそうなタイプにも見えなかったし、ハイエルフだし、ギルドに加入して問題なさそうだったからな。

 で……加入しておどろいた。

 メンバーリストで彼女の情報をみたら……。



 名前:セレスティナ

 職業:森の守護者Lv62

 種族:ハイエルフ



 めちゃくちゃレベルが高い。

 セリカ以上だった。

 フォレンストみたいな規格外なやつ以外なら楽勝なんじゃないか?


 あと、約束のエルフの試練については急いでないらしい。

 というか、森の外に出る事自体、森の中に飽きて面白い事を探す為だったらしい。

 俺達のギルド拠点の中を探索して、色々興味深い事が出来た今は、飽きるまでは満足っぽかった。



 シーナは森の中で色々物を集めたりしてるみたいだ。

 街に行った時に売り払おうとか、マユさんと取引でもしてるのだろう。

 そういえば、ギルドのお財布と個人のお財布、その辺の線引きがあいまいだったな、これは要相談だな。



 セリカは、森の中のダンジョンをティナに教えてもらって戦いまくっている。

 まあ、エルフの修練場にもなってる場所で、難易度もそこまで高くないので、セリカには好きにさせている。

 危なくなったら助けてくれるように皆に頼んであるから大丈夫だよとティナもいっていた。

 しかし、皆ってなんだろうな?


 そういえば、大分前に手に入れた、『奴隷取得経験値UP』『奴隷取得経験値プール』のスキルも試してみた。

 まあ、経験値UPの方はパッシブで常時発動だから試すまでもなかったのだが……。

 『奴隷取得経験値プール』の方は結構便利だった。

 奴隷メンバー全員の取得経験値を一律0~50%の割合で貯めておくという物だった。

 デメリットは俺の経験値もその割合で減り、且つ溜まることが無い。

 つまり、俺の経験値分コストとして消えていく物だったが、俺が居ないPTでも有効だったので俺が居ない時に狩りをする時は最高倍率にしておくことにした。

 熟練度があがるごとに、ほんの少しボーナスがついて、俺が払うコストも減るようだったし、上げておいて損は無いだろう。

 熟練度の上げ方は累積プール経験値量みたいなので、ひたすら経験値を最大倍率で貯めるぐらいしかないのだが。

 あと、たまった経験値の使い道は後で考えよう。



 マユさんは当然の如くお店の事をしていた。

 採取もしくは、作業場でなにか色々忙しそうにしていたが詳細は良く知らない。

 まあ、ギルド設備の魔法の薬剤合成装置に凄く感動してたのだけは色々聞いた。

 

 

 レナさんは俺の身の回りの世話をすると共に、自分に出来る事を色々探してる感じだった。

 これから生きていく為の方法を一生懸命探してるのかもしれない。

 


 ミルファさんは、リハビリがてらシーナと森にいったり、セリカとダンジョンに行ったりする以外は、レナさんにべったりだった。

 そういえば、レナさんがやる事を色々代わりにやろうと口をだしてるのをなんども見かけた。

 まだ、レナさんが王女であるという感覚が抜けてない感じはする。

 下々のものがやることをレナさんがしてるのにあまり良い顔をしていない。

 あと、何か俺に向ける視線に敵意があるような気がするのが少し気になるが……。



 うん、皆も充実した生活を送っているな。

 というわけで、俺も充実した生活の為に昼寝をしよう。

 働けなんていうなよ!

 休みは大切なんだ!




 昼過ぎおなかが減ってきたので、一階に行ってみるが、昼食を作ってる気配が無い。

 食べ終わった感じでもなかったので、皆を探して拠点内を歩き回る。

 

 すぐに、マユさんたちを見つけたのだが……。


「姫様それは錯乱草です! 麻痺消し草はこっちです!」

「ではこっちが毒消し草ですか?」


 レナさんとミルファさんは薬草の種類を覚えているみたいだった。

 だが何故か、不自然なまでにある一方に目を向けようとしない。

 後ろの方にある薬草を取るのにも振り向こうとせず一歩下がって手にしている。


「う~わ! すご~い」


 ティナは相変わらず色んな物を見ては面白そうに弄っている。

 この森で取れる素材はともかく、加工品にはどれも興味津々だ。

 そういえばちょっと気になったので前にちょっと聞いてみた事がある。森の植物と会話が出来るんなら、植物の採取って嫌じゃないかと言う事だ。

 その時ティナは、少し悲しそうな顔をして、


「自然は厳しいんだよ! 全部が全部いきられるわけじゃないんだ。だから少しでも他のみなが生きられるように犠牲になろうとする子が居るんだよ。すこしでも役に立ててねって言って……」


 なんて話をしていた。

 この世界に間引きや間伐なんて知識はないかもしれないが、それに近い形を採取で行っているのかもしれないな。

 そんな事を考えると、植物から作ったアイテムなんかにどんな思い入れがあるんだろうな?

 

 

 うん、少し現実逃避してた……。

 だって、マユさんの方から何かすごくよどんだ空気を感じるから。

 考えてみればティナも不自然に商品に集中してる気がしないでもない。

 でも、気づいてしまったからには放置して出て行くことも出来ない。


 俺は、意を決してマユさんの方に目を向ける。


 すると、死んだような目でうつろな笑いを浮かべるマユさんが居た。


「マ、マユさん。一体どうしたんだ!?」

「…………ない」

「うん?」

「全然お客が来ない」

「…………」

「誰一人としてお客が来ない」


 うん、そりゃ……こんな森の中でお店始めてもな……。

 ティナみたいな変わり者以外接触しようとするエルフも居ないし、他の街からも望み薄だし、客が来るわけ無いよな。


「そりゃな……こんな場所じゃな……」

「うううう、折角商品の在庫が充実したのに、今度はお客の来店数すら0。全くなんですよ! 場所がダメなのはわかっていました、でも一人ぐらいと夢を見たっていいじゃないですか!」


 まあ、M&Mもお客はすくなかったけど0ってのはなかったしな……。


「え? お客さんが来てほしかったの?」


 俺達の会話を聞いてたのだろう、ティナが不思議そうにたずねてくる。


「あたりまえじゃないですか! お店なんですよ」

「そうなんだ! じゃあ、私のお友達を呼ぶね~」

「え!? お客さんが?」


 俺達がティナの様子に注目してると……。


「はい! ふーちゃん、しーちゃん、るーちゃんだよ!」


 何も無い場所を指差してそんな事を言い出す。


「誰も居ないじゃないですか!」

「あ、そうだった、皆に見えるようにして~」


 ティナのその言葉に緑色の光が3つほど灯った。

 暫く見ていると、だんだんと良く見るシルフの姿になった。


「コレでみんなにも見えるよね? お友達のシルフだよ。ふーちゃんが強くて、しーちゃんが早くて、るーちゃんが細かいんだよ!」


 うん、それぞれ、力に秀でたふーちゃん、速度に秀でたしーちゃん、技に秀でたるーちゃんって所か?


「お、お客さんです!!」


 

 そのあと、森の妖精や一部の動物などを呼んでM&Mはそれなりにお客さんが増えた(お客と本当にいってもいいものかは議論はありそうだが……)。

 シルフには光を放つ閃光弾のようなマジックアイテムやらスパイダーネットやらが売れていた。

 うん、なにやら色々いたずらに使えそうな気がするアイテムばかりなのは気のせいか?

 ノームの子にはこのあたりでは珍しい鉱石が、ウィンデーネの少女にはポーションなどの液体の薬が売れていた。

 そんな感じで色々売れていき夕方近くで店じまいをした。

 妙におなかがすくと思ったら、お昼食べそこなったな。



「一杯売れました!」

「わ~パチパチパチ」

「おめでとうございます」

「よかったですね」

「パチパチパチ」


 マユさん喜んでいる所わるいけど、あの売方じゃたぶん……。

 そう思って、帳簿を確認し始めたマユさんを見ていると……。

 また、沈んだ感じになっていた。


「売り上げが0です……」


 まあな……妖精だの動物だのが、お金持ってるはず無いよな。

 すべての取引が物々交換だったら売り上げは0だよな。



 そんな感じに役立たずになったマユさんの代わりにミルファさんが夕飯の料理をしてくれた。

 侍女などの訓練も受けていたみたいで、その手際はすごかった。

 手伝おうとするレナさんにもやんわり断りをいれて10分足らずで料理を作り上げていた。


 丁度、帰ってきたシーナとセリカ、お店から引きずってきたマユさんとあわせて全員で食卓を囲んだ。

 う~ん、このダイニングもこの人数では手狭だなと感じる。

 まあ、床に座って食べてもミルファさん以外は文句はでないから一応は食べるのにも問題ないのだが、食堂ぐらいちゃんと作ったほうがいいのかもしれないな。



 食後、皆がそろっている事だし、ギルドと個人の財産管理とGPの使い道について相談した。

 食費などの諸経費についてはギルドの資産から、個人で稼いだ金銭については個人所有として、ギルドの資産はギルドの活動やメンバーからの徴収で集める事にした。

 だけど、今回の目的は、ギルドの資産と個人の資産を切り分ける事だったので、徴収については必要になったらというぐらいしか決めてない。


 GPの方はまずは凄く簡単なルールでやってみることにした。

 メンバー個人の取得GPの半分はギルドに、半分は自分で好きに使ってよいとしたのだ。

 ただし、設備や施設は全員で使うような物は個人のGPで設置した物でも自由に使える事にした。

 あと、拠点の武装については、基本ギルドのほうのGPでやることにする。(個人のGPを使っても、武装は自由には使えない事にする)

 宝物庫の不思議な宝箱みたいに資産を生む物は、得た物の半分をギルド資産に半分を本人に渡すようにする。

 他にギルドに貯めたGPの使い道は皆で相談することに決まった。


 そして、初めてのギルドで貯めたGPの使い道の相談の結果、M&M(店舗)をギルド施設化する事に決まった。

 ギルド拠点に店が無いときに店を設置すると結構大量のGPを消費するが、今回は登録だけなので、500GPですんだ。

 ギルドの施設にすると何かいいことがあるのかというと、商業活動などの活動でも、活動の規模(取引量)でGPがもらえるので、やっておくことにしたのだ。

 今までしてなかったのは、当分お店を開かないと思ってたからだったりする。


「宝物庫を目指すわよ!」

「う~ん、お店の充実と生産設備迷います……」

「まずは訓練設備よ!」

「ミルファどうしましょう?」

「姫様に全て任せます」

「いっぱいおもしろそうなものがある~」


 前みたいにGPの使い道で不毛な議論になるのもあれだしな……。

 良かったよかった。


 俺?

 俺はもちろん、目指すは温泉露天風呂だ!

 混浴は? だって!?

 それは……当然きまってるじゃないか……。

次の話は、森に在るダンジョンの一つに皆でGP稼ぎに行きます。

経験値かせぎ? それはついでです!

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