第3話 エルフの森に出かけよう
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ついにエルフが……。
エルフの森に行くための準備を始めてまず最初に決まったのは、先ほどまで散々悩んでいたギルド拠点のGPの使い道だ。
心の秘薬を作成するのには、出来るだけ良い設備があった方が良かったのだ。
WMOの時のように候補のレシピに上がらないとまではいかなくても、成功率が大きく落ちるのは当然予想できる。
エリクサーの数が限られてる現状では少しでも成功率が上がるようにしておきたいのだ。
ただ、直ぐに設備を設置するのではなく、材料を手に入れてから設置と言う事にした。
どんな材料が手に入り、どんな設備が必要になるかまだわからないからだ。
そうなってくると、拠点の防衛に大量のGPを使うわけにもいかなくなってくる。
その上、ギルド拠点の放棄は簡単にする訳にはいかなくなったのだ。
ギルド拠点の占領などがされた場合どうなるかは、いまいち不明だからだ。
システム上はコアをつぶしてGPを奪うという事になっていても、システムに沿った動きを王国がするとは限らないからだ。
ギルド拠点の生産設備が必要でなくすわけには、いかなくなったのだ。
あと、ギルド拠点を放棄して新しいギルド拠点を作るのも出来なくはない。
だが、王国にギルド拠点を渡す事になりかねない。
コアの追加機能で操作が出来るようになっているので、そのまま使われたら色々問題なのだ。
特に、あの恐ろしい攻撃設備を渡すわけには絶対にいかない。
そうなってくると、エルフの森で目的が達成できるかまだ不明で、どれだけ時間がかかるかわからない現状ではギルド拠点をアイテム化して持ち運んだ方がいいという結論になった。
ミルファさんも目を覚まし、一応肉体的には戦えない事はなかったことも大きい。
積極的に戦闘に参加させる気は無いが、いざという時自分の身を守る事ぐらいできそうだった。
ただ、意思というものが殆ど感じられないので、細かく条件設定して【奴隷調教師】の『命令』スキルなどで指示して置く必要はありそうだが……。
それで、肝心の拠点のアイテム化は、方法が2種類あった。
・ギルド拠点をアイテム化(1回)
コスト:500GP(30:00 50MP)
必要アイテム:時空石1個
ギルド拠点をアイテム化して持ち運ぶ事ができる。
必要な広さに十分の所有地でギルド拠点(アイテム)を使用すれば設置できる(必要時間 01:00)
※拠点内に人が居る状態ではアイテム化は行えません。
・ギルド拠点アイテム化を行う設備を設置する(回数無制限)
コスト:1000GP(50:00 250MP)
必要アイテム:時空石10個
必要容量:10
ギルド拠点をアイテム化する設備を設置できる。
ギルド拠点アイテム化
コスト:100GP(01:00 50MP)
※作成されたギルド拠点(アイテム)は設備を使わずに行った場合と同じものが出来る。
と言う事だった。
移転機能は消費アイテムがネックなだけで、消費GPは比較的少な目の設定だ。
アイテム化、拠点復元中、アイテム状態の時、いずれも色々と無防備になるので、戦時の移動には使われなかったのも消費GPの低さの理由かもしれない。
本当に、お引越しの用という感じだった。
移動要塞なら、飛行機能などがあったしな。
具体的に二つの方法を比べると、設備を設置する方は初期投資がきつくはあるが、何度もアイテム化するなら時空石の消費を気にしなくてすむ事が大きい。
それと、アイテム化する時間そのものは、凄く短い。
設備を使わない方の30時間もかかるのに対し1時間ですむのだ。ギルド拠点の外で待つ必要があるこの時間は短い方がいい。
1時間で撤収が出来るのであれば、最悪土地さえ手に入れてしまえば、テント代わりにも出来そうでもある。
街などと違い、森や荒野などの殆どは、所有者不在で占拠するだけで土地を自分の物に出来たはずだ。
まあ、モンスターが出現するような土地は維持するのに結界などをはってモンスターを寄せ付けなくしたりする必要があったはずだが……。
そんな訳で、まずはギルド拠点アイテム化を行う設備を設置する事になった。
必要作業時間は50時間。
ギルド拠点のコアのMPチャージするのにもMP回復を待たないといけない(回復薬は温存したかった)。
そのため、それにあわせて準備期間を3日間、4日後の朝に出発する事にする。
俺はひたすらMPのチャージだ。
コアにチャージしてMPが尽きたら寝て回復、回復したらチャージを繰り返す。
シーナは街で買出しだ。
物不足とはいえ、食料品などは高くても買えないほどではない。
M&Mの商品がインフレで売れまくった時の売り上げがあったので出来るだけ調達させる。
旅の消耗品関係も頼んではみたものの、まず絶望的ではあるだろう。
あと、噂程度でいいから王国の動きを聞いてきてもらうのも忘れない。
マユさんはM&Mの在庫整理だ。
自分達が使うために取っておいたアイテムとあまっている素材の確認。
旅の必需品関係を色々探してもらっている。
最悪旅先で現地調達になるかもしれないので、その加工準備もだ。
レナさんはミルファさんの面倒だ。
少しでも彼女の体力を戻すために色々やってもらっている。
そして最後はセリカ……。
うん、彼女はM&Mの警備をお願いした。
頼む事がなかったからではない、これも重要な仕事だ。
旅にそれなりに、なれてそうだからと聞いた時、「適当でいいよ。足りなかったら足りなかった時の事。なんとかなるよ」なんて言ってたのは関係ない。
1日目の夜にちょっと一仕事して、
「あんた何をやったのよ? 王都の西の草原にクレーターが出来たって大騒ぎよ!」
と言った感じで王国を牽制したり。
あまっていた幻惑石を全部使って置き土産を作ったりしながら、準備期間を過ごしていった。
そして、出発当日。
俺達は拠点がアイテムに変わるのを待っていた。
「それにしても、あんた結構えぐいわね。迷いの森を拡大させるなんて」
うん、幻惑石で作った置き土産で方向感覚などを惑わせたのだ。
今、M&Mの周囲には深い霧が立ち込めて、上位の探索スキルが無い限り迷い続ける事になる。
まあ、出れなくなる類ではなく入り口に戻される感じにはしてあるが……。
今もPTを組んでいなかったらシーナ以外は簡単に迷った事だろう。
「あ、お店が消えていくよ~」
「M&Mが……しばしのお別れです……」
「すごいですね」
「…………」
お、アイテム化したのか?
直ぐに、頭の中にメッセージが響く。
『ギルド拠点(アイテム)を手に入れました』
手にはミニチュアのM&Mが、俺は慎重にアイテムボックスにしまう。
「よし、M&Mのアイテム化もすんだし、エルフの森に出発しよう!」
「「「「おお~」」」」
こうして、俺達はM&M跡地を出発した。
置き土産や草原のクレーターなどの効果がでたのだろう。
迷いの森を進む俺達の索敵範囲には王国の人間は居なかった。
出会うのはモンスターぐらいだが、ここ暫くの鬱憤を晴らすかのようなセリカの戦いの贄になっていった。
「ガンガンいくよ~どんどん倒すよ~」
レベル上げの為に、わざわざ回り道をしたりはしないが、道中で出会ったモンスターは逃げずに倒していく(主にセリカが)。
今後何があるかわからないので、レナさんや俺、低レベル組のレベルを上げて置くには越した事はなかったからだ。
ガロン鉱山のある幻惑の山。
鉱山の入り口を越え、しばらくいった場所の獣道のような山道を上っていった。
そして、1日目は幻惑の山の山頂でキャンプをする事になった。
「レナさん、ミルファさんは大丈夫そうですか?」
「モンスターを全てセリカ様が倒してくださるので、特に問題はありませんでした。疲労の方については……ミルファ疲れていませんか?」
「……わかりません……」
「と、こんな感じですから」
う~ん、疲れた疲れてないは感覚的なものも大きいからな。
夢中になって疲れ知らずで気がついたらどっと疲れがでるとかもあるし。
感情とか意思がないとそういう感覚もあいまいになるのかもしれないな。
「そうですか、異常があったら遠慮なくいってください」
「はい。わかってます」
ミルファさんの顔色をみてもこれと言った問題はなさそうだ。
俺は二人に『フル・ヒール』をかけてその場を離れる。
「う~ん、こんなものかしら?」
シーナが途中で狩った獲物で料理をしていた。
何気に迷いの森で暮らしていた彼女はこういったことに慣れていた。
マユさんでも出来そうではあったのだが……彼女は……。
「薬草にどく消し。あ、こっちにはマヒ消しや癒し草まで!」
周囲の採取に夢中になっている。
セリカはというと……。
「モンスター! どんどん来なさい! どんどん倒すよ!」
と言った感じで闘気をみなぎらせている。
う~ん、自分より低レベルのモンスターをそんな風に威圧したら近づくモンスターは居ない気がするんだが……。
まあ、モンスターよけになるならいいか、と放置する。
その後、シーナが作った料理を食べた後、俺が結界を張って眠りについた。
一応、シーナと俺とセリカで交代の見張りをしたが特に問題も起きなかった。
――2日目
この日は幻惑の山を反対側にくだり、深い森(大森林とか呼ばれる広大な森らしい)に入ってしばらく進んだ所にあった湖の辺で休む事にした。
お昼を2~3時間過ぎたぐらいでまだ夕方には早かったが、この場所の広さなら拠点を出すことが出来たからだ。
「まだまだ大丈夫です」
とミルファさんを気遣っているレナさんがちょっと限界っぽかったのだ。
流石に(元)お姫様に山越えはきつかったのかもしれない。
ミルファさんよりも先に倒れてしまいそうだった。
「こんな場所に拠点を作って大丈夫なの?」
「まあ、モンスターが来ても、セリカが喜んで殲滅するだろうさ」
「確かにそうね……」
そんな感じで、その場で一晩過ごす。
「色々珍しい素材が一杯です!」
と、目を輝かせて色々採取しまくるマユさんや。
「全然モンスターが襲ってこない!」
と、見張りに飽きてきたセリカなどといった事はあったが概ね平穏にすごせた。
う~ん、旅というものは色々とトラブルが続出するのが常のようなだと思っていたのだが……。
まあ、レベルに任せて、力ずくで踏み潰しているだけだろうとツッコミが入りそうだけどな。
――7日目。
俺達は『索敵(M)』スキルの効果範囲を最大限広域に広げて人(たぶんエルフなどの亜人も含むと思う)の反応があった場所にひたすら突き進む。
そして、ついにまとまった人数が集まっている村のような場所の近くまでやってきた。
あとちょっとで村だと心なしか足の進みも速くなったところで、いきなり目の前に気配が現れた。
『索敵(M)』は一応使っていたのだが全く反応がなかった。
「まって、誰か居るわ!」
シーナの注意で皆が足を止める。
良く見ると凄く整った顔の美形の男達が武器を構えていた。
前に出てきたのは5人ほどで、真ん中の男は剣を抜き、その両隣の男達は弓を構えている。
奥に杖を構えたやつも何人か見える。
あと、幾つかの木の枝上から弓で狙いをつけているやつらも見えた。
彼らの耳は一様に長くとがっており、エルフの特徴そのままだった。
「ここは我々の土地。それ以上踏み込むというなら……」
エルフの男達がそれぞれ武器を持つ手に力が入る。
杖を持つ男達のまわりには魔法が発動し、弓を持つものは矢をつがえて俺達に狙いをつけていた。
まさに一触即発の空気だった。
しかしその時、その時、俺の胸を占めていたのは……。
なんで男のエルフばかりなんだ!
こういうイベントのお約束は女エルフの警備隊じゃないのか!?
はじめてあったエルフが、男だったという憤りだったりした。
次の話はエルフの話……。
もしかしたら、少し間に入れるかもしれませんが……。
まだ未定です。
最初に出会うエルフはやっぱり女性がいいよね。




