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異世界に飛ばされた俺は奴隷調教師になっていた  作者: 七瀬 優
第6章 目覚めたミルファ
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第2話 深い傷

更新です!


目を覚ましたミルファですが……。

 ベッドから金髪の少女が体を起していた。

 その顔には全く感情が浮かんではおらず、ただ向かいの壁をぼんやりと見ている。

 一瞬『マリオネット』の効果がまだ残っているのかと心配になったがあの時のように剣を向けてくる様子も無い。

 M&Mに来てからの治療で血色などはよくなったので、生きた人形という感じをうける。


「ミルファが目を覚ましてから、ずっとこうなのです。質問には……ちゃんとおきてますか?ミルファ?」

「……起きています……」

「このように答えるのですが……」


 レナさんがミルファさんが目を覚ましたが様子がおかしいと助けを求めて来て直ぐに、この部屋に来たのだが……。

 そこには感情を失った少女がいた。


「クロ様、治癒魔法で治療をお願いします!」

 

 レナさんが必死に頼んでくるので、無駄だと断る事もできずに魔法を使う。


「『フル・ヒール』『リカバリー』『セイント・ヒーリング』」


 それぞれ、HP全快、全状態異常回復、浄化の魔法だ。

 しかし予想通り、効果はまったく無い。

 ミルファさんはされるがままになっている。


「え? なんで効かないのですか? クロ様、もっと強い魔法はないのですか?」

「たぶん、回復魔法とかそういったものじゃ……」


 これはたぶんそういった系統のダメージじゃ……。


「レナ様、使うために取っておいたポーションなんかの薬をもってきました」


 マユさんはミルファさんを見て直ぐに異常に気づき薬を取りに行っていたみたいだ。


「マユ様、ありがとうございます」


 レナさんはマユさんから受け取った薬を直ぐに使おうとする。


「まった、レナさん、マユさん。普通の薬で効果があるなら、さっきの回復魔法で治ってる!」


 俺は慌てて止める。


「でも、このままじゃミルファが……」

「そうです、何もしないよりは……」


 むやみやたらに薬を飲ませても下手をすると毒になるだろうに。

 そんな事も忘れるくらい衝撃が大きかったのか。


「ちょっとまて、落ち着けよ二人とも」

「そうよ。こいつは、なんだかこの症状に心当たりが有りそうだし」


 シーナが挟んだ一言でレナさん、マユさんの視線が俺に向く。


「ほんとうですか?」

「知っているんですか?」


 二人が詰め寄ってくるが、まずは何とか落ち着いてもらわないと。


「ちょっとまて、落ち着け」


 何て言葉で落ち着くはずもなく、周りに視線を向ける。

 シーナは私には無理って感じで首を振っている。

 セリカは、慌てた様子も無く凄く落ち着いている。

 シーナでさえ、少しは動揺してるのが伺えるのに、そんなのが全く無い。

 もしかして、セリカは治療法を知っているのか?


「セリカ、凄く落ち着いているな? 治療できるのか?」

「違うよ。ルナに、こういう時は詳しい人に全部任せなさいって言われてるんだよ。誰もいなかったときだけ! 最後の手段として! 私が治療を考えなさいって」


 ルナというのはセリカの知り合いなのだろう。

 だが、何をやらかしたんだ?

 セリカの治療が最終手段のようにいわれてるぞ。

 まあ、どっちにしろ今後もセリカに治療を任せるのは控えた方がいい気がする。


「セリカあんた……」

「セリカさん……」

「…………」


 セリカの発言で3人が絶句している。

 だが、動きを止めてる今がチャンスだ。

 強引に説明を始めてしまおう。



「ちょっと気になっていたことがあるんだ」


 俺はそういって説明を始める。

 『マリオネット』のスキル、あれは解除すると戦闘不能になるようなものではなく、即座に復帰する類の物だった。

 【奴隷調教師】の『隷属』スキルの効果。呪縛の上書きの効果の副作用かとも思ってはみたけど、モンスターテイムの方での同様の効果で仲間にしてから一定期間使えないとかそういったペナルティは聞いたことがない。

 それに、『マリオネット』のスキルで操られたプレイヤーはPTチャットなどで「操られた助けて~」「すまん『マリオネット』だ、俺を倒してくれ」なんて救援を求めていた。

 『マリオネット』で対象の感情を奪い取ると言った演出はなかったのだ。

 スキルなどの説明も、そういう表現はなかったように思う。


 では、なぜ『マリオネット』で操られている時、人形のように感情をなくしていたかといえば……。

 一つ心当たりがある。

 『マリオネット』の成功率だ。

 相当弱らせて抵抗力をなくさないとまず成功しないといった趣旨の説明があったはずだ。

 ゲーム中では呪いやデバフなんかで徹底的に魔法防御力や耐性を落としてからじゃないと通らなかったので、その手の異常が重なっている時以外はあまり脅威と思っていなかった。

 成功されたら其れこそ、事故だという感じで諦めていた。

 だが、この抵抗を弱らせるってのが、こっちの世界だと抵抗する意思をなくす事でも代用可能なのではと思ったのだ。


 とまあこんな感じで説明してみた。

 まあ、プレイヤーとかのゲーム的な表現は……色々とかぼかしておいたが。



「では、ミルファのこの状態は『マリオネット』の効果や副作用ではなく、スキルをかけるための手段としてこうされたと言う事ですか?」

「まあ、『マリオネット』で操られた状態でトラウマなどを負ったというのも否定できないのだけど……」

「それは無いと思います。ミルファは『マリオネット』を受けて戻ってきた時から……ですから」


 そうか……。

 それなら、『マリオネット』を成功させるために感情を失わされたと見てもいいだろう。

 問題はその手段だ。


 トラウマを与えて……という感じの手段の場合、カウンセラーとかの出番だろう(この世界に居るかどうかは疑問だが)。

 ただ、不幸中の幸いというか、この場合は自殺などでなければ、これが原因で命を落とす事が無い点だろうか(それが幸いなのかと聞かれたらあれだが……)?


 だが、トラウマ云々ってのは、可能性は少ない気がしている。

 WMOの設定で、もっと確実かつ簡単に出来そうなモノに覚えがあるからだ。


 一つはモンスターだ。

 心を喰らうとか、悪夢で精神を……なんてモンスター図鑑で説明されているモンスターなんて結構居る。

 この手の系統は、WMO内では、MPダメージや混乱や魅了などの精神が関係する状態異常を使う事が多かったが、この世界では説明のままの可能性があるのだ。

 あと気になる点として、モンスターから受けたダメージ(重症)だから下手をすると其れが原因で死亡するかもしれないと言う事だ。

 どういった経緯でそうなるかわからないが……。


 もう一つは、WMOの夢幻の世界というシステムだ。

 夢幻の扉という施設を利用して夢(精神)の世界に入り込むという設定のものだ。

 まあ、実際は、WMOの作り手としてのお試しプレイというか、箱庭世界を作って公開する場所だった。

 ぶっちゃけた言い方をするなら、「夢の世界ならどんな無茶苦茶な世界でも世界観壊れないよね」って事らしい。

 WMOは初期のころとは違い、世界もある程度準備できていたので、作り手の選別がそれなりにされるようになっていた。

 現在だと、夢幻の世界での、訪問数や評価などでもらえる世界生成Pを貯めて島→大陸→星→世界みたいな感じでどんどん成長させる感じになっている。

 世界を作るといっても、村1つにダンジョン1つだけの世界とかが結構増えてしまったので、色々と改革があったのだ(世界の統廃合とか……)。

 それで、肝心の夢幻の世界では、システム的に少し普通の世界とは違いがあった。

 一つはHPの代わりにMindポイントになってる事だ。

 HPとMPの平均値がMindポイントになり、心(精神)の耐久力を示していた。

 ダメージを受けると数値が減少するだけでなく、最大値の方も減少する事があるシステムだった。

 100/100だったものがダメージを受けて80/95になる感じだ。

 普通に回復魔法を使ったのでは95までしか回復しないのだ。

 あと、夢幻の世界では経験値などのデスペナが無い。取得したアイテムが持ち帰れないだけだった。

 なので、デスペナが痛い状況にあるユーザーで愛用してる人も居た。

 ただ、使い方が色々特殊だったので、俺はあんまり使わなかった。

 一応、夢の中って設定なので、基本的に夢落ちって事になって死んでも特にペナルティはないのだが、この世界に入るには寝る必要があった。

 寝る前に目覚ましなどで寝ている時間を設定(1~10時間)して、夢幻の世界に行くと、指定した時間で強制的に戻ると同時に、死んだとしても設定時間まで起きられず何も出来ないのだ。

 また、短いスパンで寝起きを繰り返そうとしても、入ってから起きた後は10~20時間ほど眠れなくなるので連続では入れない。

 とまあ、そんな世界だった。

 と、忘れる所だった。

 このMindポイント0/0の状態ももしくは、殆ど最大値が無い状況、あるいは心にダメージを受けた状況かと思ったのだ。

 WMOではデスペナで復活するように、夢落ちって事で全てなかった事になったかもしれないが、こっちの世界では違う可能性もありそうだと思ったのだ。

 こっちも、放置しておいて悪化しないかどうかはさっぱりわからない。



「トラウマなどの場合。心にダメージを与えるモンスターを使った場合。精神世界で受けたダメージ。この三つが可能性としてあると思う」


 俺は皆に考えていた事を簡単に説明する。

 もちろん、ゲーム的な事はぼかす。


「トラウマはともかくとして、後の二つは早く治療しないと命の危険があるもしくは悪化する可能性があると言う事ですか……」

「正確にはどうなるかわからないだけどな。時間で悪化もしくは命を落とさないと言い切れる根拠がない」

「そ、そんな……ミルファ」


 レナさんがショックで座り込む。


「という事は時間制限のありそうな二つの対処法を考えた方がいいわね」

「私もそう思います」


 シーナとマユさんが言う事に俺も賛成だ。

 

「で、あんたなんか治療法に心当たりがあるんじゃないの?」


 俺の方に顔をやりながらシーナがが尋ねる。

 う~ん、こいつこういうところは鋭いな。


「え!? クロ様なにかあるんですか?」


 レナさんがすがりつくように方法を求める。


「一応……治療薬にこころあたりはあるんだが……。材料がな……」

「え? 薬があるんですか!?」


 この世界でのエリクサーや『フル・ヒール』などの全快させる回復方法の特徴として、本当に全快させる。

 つまるところ、腕を食いちぎられたり、目をつぶされたりといった体の欠損すらも完全に回復させるという特徴があるのだ。

 まあ、WMOのイベントの一部でNPCに対してそういった治療をしたという覚えはなくは無い。

 プレイヤーは欠損などは基本的に起きなかったしな。

 つまるところ、夢幻の世界の回復薬。

 最大値の減少込みで全回復させる、”心の秘薬”あの類のアイテムがあれば十分に可能性はあると思うのだ。

 問題は……。


「心の秘薬ですか? 今すぐ作りましょう! どこに行けばいいんですか?」


 問題はそこだ。

 基本的に夢幻の世界のアイテムで作るのだ。

 この世界では行く方法も見つかっては居ない。

 そもそも、こっちでは行けるのかどうかすらも解からない。

 ましてやアイテムを持ち帰れるのかも……。


「材料を手に入れる方法がない?」


 レナさんはまたもや力なく座り込んでしまった。

 確かに、材料を集めて普通に作るのは無理だといっていいだろう。

 だが、可能性は残っている。


「マユさん、HP回復アイテムにMP回復アイテムの材料を混ぜて、最初のHP回復のやつよりランクの落ちたMP回復を作るとかって聞いたことはありますか?」

「え? はい。ハイポーションに魔力草を混ぜて初級のマナポーションを作ることはありますね。よっぽど緊急なときしかしませんが」


 やっぱりランクダウン合成はこっちでも出来るか。

 質の悪い素材でアイテムの属性を変えようとすると、ランクダウンはするが変えることが出来るのだ。

 ダンジョンなんかだとMP回復薬が尽きた時、やる事があった。

 MP回復して『フル・ヒール』かけた方がHP回復薬使うより回復量としては良かったからだ。

 材料が現地調達できた場合だけだけど……。


「それが……どうしたんです?」

「ランクダウン合成で心の秘薬を作ってみようと思う」

「え? ですが、最上級の回復アイテムなのでしょう? 心の秘薬っていうのはランクダウンしては……」

「エリクサーを使えば何とかなる。HPとMPの2系統の最上級をランクダウンして1系統の回復アイテムにすれば……」

「エ、エリクサーをですか!?」

「まだ、いくつか残りはある」


 マユさんは驚た表情で固まっている。

 まあ、普通はしないよなこれは……。


「問題は属性を変えるためのアイテムの方だな。触れない草というのに心当たりは無いか?」

「触れない草? なによそれ」

「ゴースト系やソウル系のモンスターは物理攻撃が効かずに通り抜けるだろう? あんな感じの草だ!」

「え!? 物理攻撃が効かないモンスターなんて居るの!?」

「セリカあんたにとってアンデットなんかは、おいしい獲物でしょう? 戦った事無いの?」

「アンデットってゾンビとか骸骨とかだよね? う~ん、攻撃が効かない敵はあった事がないよ」

「ゴースト系やソウル系なんてその辺にうじゃうじゃ居るんじゃないの? なんでよ?」

「倒しにくい敵はスキルでバーンとやっちゃうし効かない敵はあった覚えが無いよ」

「…………」


 うん、セリカのスキルは基本神聖属性付与だったはずだからな。

 そりゃ攻撃も通るわ。


「話を戻すぞ。そういった触る事の出来ない草や植物……このさい鉱物でもいいやそういったものに心当たりは無いか?」

「う~ん、そんな珍しそうな物なら高く売れそうよね」

「触れないのではどうやって扱うのでしょうか?」

「触れない草? う~ん」

「誰か知ってないのですか!?」

「……知りません……」


 皆に聞くが返答はかんばしくない。


「ちなみに、草に触るには属性付与した手袋があればいい」

「あ、なるほど」


 う~ん、こっちも無理なのか?


「なんか聞いた覚えがあるよ」


 なんとセリカがそんな事を言い出した。

 ミルファさん以外みんなの注目が集まる。


「ほんとうか?」

「ほんとうなの?」

「セリカさんにアイテムの知識で負けた……」

「セリカ様、知っているのですか?」

 

 マユさんが幾分ショックを受けている気がしないでもないが、今はセリカの話だ。


「う~ん、どこだったっけな?」

「頼む思い出してくれ」

「お願いします。セリカ様」


 俺やレナさんの願いが通じたのかどうなのか。


「あ、そうだ昔住んでた村の、物知りのおじいちゃんに聞いたんだよ」


 村の物知りのおじいちゃん?


「ロードナイトになるにはどうしたらいいの? って聞いたんだよ」



「ロードナイトになるにはどうしたらいいの?」

「すまんが知らないんだ」

「どうやったら、ロードナイトになれるの?」

「聞いたことがないな」

「ロードナイトになるにはどんな訓練すればいいの?」

「わからんな」



「そんな感じで毎日聞いてたんだよ!」

「おじいさん……」

「うわぁ……」

「それは……」

「そのおじいさん……」

「…………」

 

 なんか、同情よりもそのおじいさんに共感を覚えるのはなんでだ?

 って、それよりも。


「で、触れない草の話はどうなった?」

「うん、そんなおじいさんがある時、知ってるって言って教えてもらえる事になったんだよ」


 え? 今まで知らないといい続けてたのにか?


「エルフの森に生えているという触れない草を持ってこれたら教えてやろう。って約束してくれたんだよ」


 それって……。


「でも、近くの森を探しても全然みつからないんだよ。エルフにすらあえなかったよ!」


 絶対にそれは理由をつけた拒絶だと思うぞ。

 達成不可能な条件をってやつだと……。


「セリカのバカさ加減は置いておいて、そんな突拍子もないものをいきなり考え付くとも思えないし情報自体はあったんじゃない?」


 確かにシーナの言うとおりだ。

 エルフの森にある可能性はあるな。


「エルフだったら草花の知識に関しては詳しそうですし」


 マユさんの言う事も一理あるな。


「たしかに、エルフの森で探してみるのもよさそうだな。なくてもエルフに聞くことも出来るだろうし。それでエルフの住処の心当たりあるのか?」

「ああ、それだったらガロン鉱山のある山を越えた向こうの森を越えた辺りにあるとか」

「それは聞いたことがあります。方向的にはその通りですが、普通は逆方向から森を抜けていくと聞いた気がします」


 うん、方針は決まったな。


「じゃあ、エルフの森で触れない草を手に入れる事を今後の目標にしよう!」

「ミルファの為に絶対に見つけて見せます!」

「……了解しました……」

「強い敵がいっぱいでそうだよ!」

「触れない草、興味があります」

「エルフの森なら色々珍しいものもありそうよね」



 と言う事で急遽エルフの森に向かう事に決まった。

 そういえば、この世界ではエルフにあった事なかったな。

 どんな種族なんだろう?

 良く物語で書かれてるような感じなのか?

 WMOではどうだったっけな?

次の話はエルフの森に向かいます。

っと、その前に旅には準備が必要です!



セリカがどんどん脳筋のおバカになっていってる気がする。

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