第5話 クロの悩み
更新です。
今回は色々悩んでます。
俺は今、悩んでいる。
M&Mの住居部分の空き部屋だった一室。
俺の部屋になっているその一室で一時間ほど悩み続けていた。
何をそんなに悩み続けているかと言うと、俺のアイテムボックスの中身についてだ。
この近辺で入手できるアイテムで国への対処手段を作れないかと色々模索していたのだがやはり素材的に無理だった。
まあ、簡単に手に入る素材で国相手に喧嘩売れるはずもなかったのだが、スキルでごり押し出来ることに一縷の望みをかけていたのだ。
そうなってくると、残るは俺のスキルで殲滅するか、アイテムボックスの中身、WMOの世界から持ち込んだアイテムになる。
スキルでの大量虐殺は最終手段として、アイテムボックスの中身だ。
何時も持ち歩いていた触媒に使うような素材アイテムは端数の残り程度しかない。
最上位のスキルともなると触媒に高級アイテムが100とか50とかの単位で飛んでいくことがざらだ。最低でも10単位だ。
そうなるとどうしても端数は出てくるわけで幸運にもその端数分は持ち込むことが出来たのだ。
決闘の結界水晶の材料である上位の魔力結晶や、シーナに渡した指輪の材料であるオリハルコンや時空石なども素材の残りのアイテムの一部だった。
あと、飛ばされる前に居た隠しダンジョンでのドロップアイテム、これもバカには出来ない。
上位の素材や素材を作る材料など……一つ例を挙げれば前者はドラゴンのうろこ、後者はオリハルコンの鉱石なんかだ。
どれも現状では手に入れる事のできない貴重なアイテムだ。
こっちは隠しダンジョンの最下層に近い所までもぐっていたので結構な量がある。
ただ、量はあっても問題がある。
1つ目は、素材の一つがあったとしても足りないアイテムがあるのだ。
単一のモンスターの素材だけで作れるアイテムや装備品など殆ど無い。普通は幾つものダンジョンでアイテムを集めて作るものだからだ。
となってくると他の素材の入手だが、これは現状絶望的である。
つまり材料が足りなくて宝の持ち腐れ状態なのだ。
2つ目は素材を作る材料、さっきのオリハルコンの鉱石なんかだ。
そのままでは素材には使えず、精錬して塊とかインゴットにする必要がある。
あるのだが、ここで問題になるのは設備の質だ。
マユさんには悪いけどはっきり言うとM&Mの設備はWMOの店売りの生産設備アイテムでも一番安いか次に安いかのレベルしかないのだ。
オリハルコンの鉱石などの隠しダンジョンで手に入るアイテムの加工には最低ラインで店売り最上級の設備。できればプレイヤーメイドの高級品が欲しいのだ。
店売りの最低ランクとかの設備では完成品の質がどうこう言う前にゲーム内では加工可能なレシピにすら乗らないのである。
設備を高級品に買い換える事も考えたのだが、マユさんいわく「店舗はともかくこれでも設備は王都の一等地に立つお店に負けないほどいいものなんですよ」らしい。
どうやら、この世界の技術水準が大分低いらしい。
WMOでも店売り最高を目指せば一番技術の発展した世界の首都なんかに移動する必要があったりした。
まあ、店売りのラインナップが貧弱な事は珍しくも無いのだが……。
どうやらこの世界では粗悪品レベルのアイテムも普通に使われてるようだった。ゲーム内ではそんな商品はプレイヤーメイドの失敗品しかなかったのだが。
もしかしたら、転職の手段がない為に根本的な技術のレベルが低いのかもしれない。
と言うわけで、こっちのアイテムも宝の持ち腐れになってしまっていた。
今思うと、エリクサーの代わりにドロップアイテムをいくつか売るのも手だったかもしれない。
ゲーム時代のイメージでNPC売りは買い叩かれるとか、すばやくお金を作りたい時には、露店で回復アイテムを相場より安めで売るってのがしみついてたからな……。
まあ、ドロップアイテムを売ったら売ったで別の問題が起きていた気もするし……今更言ってもしょうがない事か。
う~ん、幼馴染のあいつと共同購入したマイホームに移動できれば、色々と助かったのだが……。
移動魔法も発動しなかったしな。
あの家のアイテム倉庫の中には結構色々アイテムも溜め込んでるし、作業場にはプレイヤーメイドの最上級とは行かなくても高級品レベルの施設は揃っていた。
あそこに移動できれば今抱えてる問題はほぼ解決するのだが、まあ無いものねだりか。
ここでゲーム内の知識だけでいくなら、触媒の残りのアイテムを使うかどうかだけの悩みですんだ。
ややこしくしてるのはレシピ外のアイテムも作成可能だと言うゲームとの違いだったりする。
ここ何日か色々試してみた範囲だと、WMOのスキルが行動の範囲だとするならば、この世界でスキルとは技能習得のショートカットみたいな物ではないかと睨んでいる。
簡単に説明すると、例えば古代語を理解するスキルがあるとする。
WMOではスキルを覚えず自力で古代語を解読して読もうとしても絶対に不可能である。
其れに対してここでは、スキルを取得した時点で古代語を理解できるようにはなるが、スキルに頼らずに古代語を勉強する事でも読めるようなる。
つまり、スキルは技能習得方法の一つと言う考えだ。
まあ、10年の修行が必要な物を一瞬で身につけれると考えると相当便利ではあるだろうが……。
隠し職業の転職条件のスキルはどうなるだとか色々検証し足りない事は多いが、今の段階ではこの世界のスキルはこんな感じの意味合いだと思っている。
ちょっとずれた、レシピ外のアイテムが作れるという話にもどる。
あまった素材……ドロップアイテムの方を加工してなにか作れないかと言う事だ。
ドロップアイテムの方も比較的沢山あるとはいえ量は限られている。
その上、研究開発に近い事になるから賭けではある。
あと何を目指すかも問題になるか……。
国を相手に対処できるアイテムって言うと……。
レシピで何が作れるか範囲が定まってない分難しいな。
なにか参考になるようなものはないか?
向こうのリアルの世界の軍事兵器は……魔法とかで再現は出来るかもしれないけど、それなら普通に魔法を使った方がよさそうだな。
技術体系が違いすぎて、開発者などの発想の元にはなるかもしれないけど、俺には開発の才能はなさそうだ。
となると、この世界に近くて参考になりそうな……。
う~ん、何か無いか?
国との戦争で小さな拠点一つで戦うような話は……。
ああああああ、しまった凄く簡単な物を忘れてた。
WMOのギルド拠点の防衛戦だ!
小規模のギルドでも防衛うまい所だと大手の戦争ギルドをしのいだとか言う話があったな。
あれを参考にして防衛設備を……。
まてよ……ギルド拠点の防衛設備を使った方が早くないか?
確かギルド拠点の防衛機能はギルドポイントを消費して設置していたはずだ。
ギルドポイントはどの段階のメンバーでも貢献できるように経験値、所持金、アイテムなどの寄付でたまった筈だ。
当然、経験値やお金は寄付の数値が多いほど追加ポイントは多くなるし、ランクが高いアイテムほど1つあたりの追加ポイントは高い。
勢力戦などの結果でも取得できたけどそれは今は置いておこう。
今重要なのはギルドポイントは隠しダンジョンなどに行かなくてもためられる事と、そのポイントを使って防衛設備を設置できる事だ。
各種罠から結界やゴーレムまで色々と防衛設備はあったはずだ。
それに、ゴーレムなどのAIはユーザーが設定する事は出来なかったはずだ。
逆に言うと、設定しなくてもある程度の賢さで守ってくれると言う事だ。
AI作成の問題も回避できそうだ。
最上級の防衛設備は莫大なギルドポイントとギルド拠点の設備の追加などが必要だったはずだがそれでもある程度の防衛能力は得られるだろう。
うん、なんかよさそうな気がしてきた。
ギルド拠点は持つにはまずはギルド作成だな。
これは、一度ギルドを作ってみたくて、あいつと作った事があるから覚えている。
【ギルドマスター】の『メンバーリスト作成』で作れたはずだ。
まあ、2人で出来る事なんて殆どなく維持コストがもったいなかったから1月も持たずに解散させたんだけど。
ギルドのリーダー役職としてのギルドマスターには『ギルド管理』のスキルが必須(無いと機能操作が出来ない)だったから、【ギルドマスター】の職業も一応マスターしてある。
【ギルドマスター】のギルド管理系のスキルはすべてマスタースキルになっているから今も作成可能だ。
問題は『メンバーリスト作成』の時に必要な、石のメンバーリストか……ギルドメンバーの名前が彫られた石版で、ギルドマスターの証だった。
あれを作るときに盟友の石が必要なんだが……。
他にほとんど使い道のないそんなアイテムを持ってるはずも無い。
ここは上位アイテムのオリハルコンのメンバーリストで代用しよう。
ギルドに多少のプラス補正がついたはずだし、今材料が手元にある。
ギルド拠点を作るのにはどうするんだったか?
確かギルド拠点のコアを作って手持ちの建物に設置するんだったか?
勢力戦でコアを破壊されると敗北になるんだったよな。
敗北のペナルティはどうだっただろう?
ギルドポイントの一定割合の強奪と……配下? 一定期間勢力戦参戦不可? う~ん詳しくは覚えてないな。
だがまあ、この世界では敗北云々よりもデスペナ払えば復活とかは無い(たぶん……試してみる気にはなれない)から負けを考えても意味は無いか。
まず全滅してると見ていいだろう。
ギルド拠点のコアの作成は……『ギルド管理』スキルでコア作成を選択して素材を3つぐらい投入だったか?
コアの能力が素材で変化したとか聞いた覚えがある。
あと、拠点にする建物はM&Mでいいか、前の騒動の時に買い取って所有権もあるはずだし。
マユさんに確認しないとだめだろうけどな。
まあとにかく、ギルド拠点の取得はできそうだ。
WMOとこの世界で色々違う可能性はあるけど、悪くない賭けだとは思う。
まあ、失敗しても貴重な素材が少し減るだけの損害だしな。
よし、まずは皆にギルドの説明からはじめるか。
次回はギルド結成です!
隠しダンジョンのドロップアイテム。
ドラゴンの鱗などの素材はともかく、そのほかの有名じゃないモンスター素材は鑑定そのものが出来ずにこの世界では二束三文にしかならなかったりします。
同じくオリハルコンの鉱石なども加工する技術が無いに等しく殆ど値段がつかなかったりします。
何気にクロはエリクサーの方を売って正解だったのかもしれません。
ついでに言うと、もしドラゴンの素材を持ち込んら、ドラゴンスレイヤーだと別の注目を受けます。
※アイテムの加工について
シーナの指輪
オリハルコンの欠片に魔力をエンチャントしたものや、時空石を魔力で加工した物などを、M&Mにあった素材で作った指輪の台座に埋め込んだので特に上級の設備がなくとも加工できました。
オリハルコンの台座にしていたら……設備が足りませんでした。
決闘の結界水晶
こっちは魔法的な処理だけなので特に設備は必要ありませんでした。
ついでに言うと決闘用のアイテムの上位品で使用回数無制限です。
下位のアイテムは回数制限かもしくは1回きりの使い捨てになっています。




