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第4話 レナの看病な一日

今日は続けて2話目を投稿です。


「う、う~ん」


 背中が痛いです。


「ここは……?」


 背中の痛さで目を覚ますとそこは見覚えの無い場所でした。

 ぼんやりとした頭で考えます。

 木でできた床に壁に天井。

 窓の曇ったガラスから太陽の光が入ってきています。

 日の光の様子からして時間的にはもう直ぐお昼と言った感じでしょうか?

 あ、木の床に寝ていたんですね、初めての経験ではないでしょうか?

 木の床の上で寝ると背中が痛くなるんですね。

 他にはベッドや机や椅子もあります。

 何故わたくしは床で寝ていたんでしょうか?

 立ち上がってベッドを覗き込むと、そこにはわたくしの良く見知ってる顔がありました。

 親友のミルファです。彼女は穏やかな寝息を立てています。

 

「あ、そうでした」


 やっと頭が動き出したようです。

 数日前からマユさんのお店にお世話になっているんでした。

 それで、昨日は眠り続けているミルファの看病をしている途中で寝てしまったようです。

 そういえば、足元には白い毛皮が落ちています。

 どなたかかけてくださったのでしょうか?

 

「はいるぞ」


 ノックと共にはいってきたのは黒い髪の少年。

 わたくしやミルファを助けてくださったクロ様です。

 手にパンなどの入ったかごを抱えています。


「起してしまったか? すまない」

「いいえ。こちらこそ、途中で寝てしまったようで申し訳ありません」


 ミルファの世話までクロ様達に任せるのは申し訳ありません。

 途中で寝てしまうなんて。

 もっとがんばらないといけません。


「いや、レナさんも、もう少し休んでもらいたい。看病したいというのもわかるけど、無理の無いようにな」

「で……ですが……」


 ミルファはわたくしのせいで、こんな事になってしまったのです。

 何も出来ないとはいえ、看病ぐらいはしなくてはなりません。


「最悪王国のやつらに襲撃される可能性もあるからな。その時は、レナさんにはミルファさんを背負って逃げてもらう事もあるかもしれない。俺たちはたぶん戦闘なんかで手はあかないだろうし」

「はい! ミルファは責任をもってわたくしが連れて行きます!」

「うん、だからその時寝不足で体調不良では困るんだよ」

「わかりました。自分の体調にも気をつけます。」


 確かに非常時にはわたくしがミルファを守らなくてはいけません。

 今まで守ってもらい続けたんですから、こんな時ぐらいはわたくしががんばらないと。


「ま、ミルファさんの状況は急変するような病気でもないし、そこまで根をつめるな」

「……はい」


 あの日から全く目を覚まさないミルファですが、わたくしには彼女の病状が全くわかりません。

 クロ様は「医療的な知識は無いけど、回復魔法で全快にしてステータス異常がないか調べるくらいは出来る」と言って治療を行ってくださいました。

 少なくとも、回復魔法の腕は今までに見た王宮の【ヒーラー】よりもはるかに高いのだけは感じられました。


「じゃあ、今日もいつものやつをはじめるぞ」

「よろしくお願いします」


 クロ様はミルファに向かって手をかざし、しばらく詠唱し、「『フル・ヒール』」と魔法を使います。

 ミルファの体を暖かい光が包み込み彼女を癒していきます。

 これほど高度な魔法は毎日かけてもあんまり意味の無いことだとは思うのですが、クロ様は、「レナさんが安心出来るならこれぐらい問題ないよ。過剰回復ダメージとかが発生するわけでもないし」なんて言ってくださいました。


「うん、問題なさそうだな。じゃあ次は『満腹度譲渡(M)』」


 クロ様がもう一つ使ったのは『満腹度譲渡(M)』のスキルだそうです。

 【大食い】とか言う聞いたこともない職業のマスタースキルだそうです。

 眠り続けて食事も取れない病人はいくら回復魔法をかけ続けてもやがて衰弱していってしまいます。

 ですが、このスキルは本人が摂取した栄養を他人に譲渡できるそうで、そういう心配がないんだそうです。

 クエストで昏睡状態の病人に使い続けて治療に成功した事があるとか。

 実際、ミルファは数日間眠り続けているのにもかかわらず衰弱する様子も見えません。

 ただ、このスキルには欠点があって……。


「ああ、お腹がすいた」


 と、クロ様は持ってきたかごの中の食料を凄い勢いで食べていきます。

 使う本人の栄養を譲渡するから、使った本人は凄くお腹がすくそうです。

 それなら、栄養を回復する魔法は無いかとたずねたら、「それは魔力を食料に変換するって事だから無理だろう」っていってました。

 確かに、そんな魔法があれば食料問題が根こそぎ解決しますね。


「毎日、ありがとうございます」

「気にするな、助けたのは俺だし、途中で投げ出す気も無いよ」


 本当にクロ様にはどれだけお礼を言っても足りませんね。



 そんな感じで、クロ様と一緒にミルファの看病を暫く続けます。


「く、そろそろシーナの時間のはずなんだが……やっぱりさぼりか?」

「気にしないでください」


 皆さんに迷惑をかけてるのはわたくし達なのですから……。


「ま、今日は特に急ぐ用事も無いから俺が看病続けるよ。レナさんは休んでていいよ」

「先ほどまで寝ていたので大丈夫です。それよりもお願いがあるのですが」


 ちょうどいい機会です、前々からお願いしたかった事を頼んでみましょう。

 ごめいわくをこれ以上かけるのもどうかと思いますが……。

 少しでも役に立てるようになりたいですし。


「どんなことですか?」

「クロ様に回復魔法を教えていただきたいのですが……」


 クロ様はわたくしの突然の頼みに一瞬驚いたような顔をしましたが、何事か考えているようです。


「これはいい機会か?」

「え?」

「いや、こっちの話だ。だけど、回復魔法に限らず魔法なんてどう教えたらいいか解からないぞ」

「え? 回復魔法は誰かに教わったのではないのですか?」

「いや、回復魔法を使える職業について勝手に覚えた感じか?」


 ああ、クロ様は天才型の魔法習得をされたようです。

 適正がある者が魔法を使おうとすると何の苦労もなく魔法を習得できる事があると聞いた事があります。

 この話をクロ様にしたら、逆に普通はどう覚えるのだと聞き返されました。

 わたくしも詳しくは知りませんが師弟関係になって師匠から学ぶとか、専門の学校で学ぶと言う感じでしょうか?

 

「そんな習得方法があるのか。一度、教えてもらいたいな。マユさんならその辺知ってるかな?」

「彼女も天才型のような気がします」

「確かにそんな感じはするよな」


 おかしいです。わたくしが習うはずでしたのに、わたくしが教える側になっています。

 

 そのまま、クロ様に色々説明してもらいましたが、魔法のランク付けや消費魔力がどのくらいかと言った事は詳しく解かりやすかったのですが、使い方はあまり良くわかりませんでした。

 感覚でやってる人が説明が苦手と言うのは本当みたいですね。


「『ヒール』はこんな感じ」


 手の甲にナイフでつけた傷を癒してみせるクロ様。

 何度もやろうと思いますが、見ただけで出来るほど簡単なわけはありません。

 それに、毎回ナイフで傷つけるのは申し訳ないので、話題を変えることにします。


「ところで、クロ様、ミルファが眠り続けている原因ってわかりますか?」


 まあ、われながら酷い質問かとは思います。

 ミルファの呪いを解いた副作用ってのは解かりきっているのですから……。


「『マリオネット』の呪縛を解いた副作用だと思いたいな……」


 クロ様は少し表情を曇らせそんな風に答えてくれました。

 

「思いたい?」


 少し言い方に妙な含みがあるような気がします。


「杞憂ですむならいいんだ。それに彼女が目覚めない事には確かめようが無いしな」

「何か問題があるのですか!?」

「う~ん、解からないってのが正直な所だな。まあそうなった場合でも方法は一応あるし。今は起きるのをまとう」

「わかりました。ミルファの看病に全力を注ぎます」

「ああ、無理はしない範囲でな」

「そうでした」


 今は、クロ様を信じてミルファが一刻も早く目を覚ますように一生懸命看病しましょう。





 その日の夕食は全員そろってとりました。


「シーナ、今日の当番の分はセリカが肩代わりするって。その代わりシーナはセリカに代金払えよ」

「え? お金取るの!?」

「いや……」

「ふふふ、明日は一日シーナと特訓だよ!」

「ちゃんと、俺が逃がさないようにするって約束だから。覚悟しろよ」

「いやぁぁぁぁぁ」


 皆でしゃべりながら食べるご飯がこれだけおいしいと言う事はここに来てはじめて知りました。

 ミルファが早くよくなって一緒に食べれるようになったらもっとおいしいのでしょうね。

 

 ミルファ、早く起きてくださいね。

 わたしくは貴方が居ないとさびしいです。

次の話はクロが何かを始めます。

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