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第1話 ゴーレム作りに挑戦!

この章は短編集的なものにしようと思います。

第1話ではゴーレムを作ります。

作り上げたゴーレムは……。

「まぜ~まぜ~まぜます~まぜちゃいます」


 のどかな陽気のM&Mの隣の空き地。

 マユさんが歌を歌いながら大きなタライの中身を混ぜ続ける。

 俺は幾つかの鉱石を粉々に砕き付与魔法をかけてからタライの中に追加する。

 そんな感じでどんどんどんどん混ぜていく。


「まだ出来ないんですか? 師匠?」


 セリカが待ち遠しそうに聞いてくる。


「う~ん、そろそろいいか、マユさんそろそろいいよ」

「はい~わかりました~」

 

 マユさんはいい汗かいたとばかりに、右手のおでこの汗をぬぐう。


 さて、今日はゴーレムなんかを作っていたりする。

 足元には木製の試作品がいくつか転がっている。

 今作っているのは、サンドゴーレムとかクレイマンとかいう砂とか粘土のゴーレムだ。

 先日王国とトラブルを起し、今は他が忙しくてちょっかいをかけてこないとはいえ、準備するに越した事は無いので、色々作っているのだ。

 消耗品以外の製造スキルは特にマスターしようとは思ってなかったけど、それでも取りたい隠し職業の前提でそれなりにマスターしている。

 今作れる材料で便利そうな消耗品やアクセサリなんかはそれなりに作れた。

 材料的な制限がきつくて作れない物も多かったのだけど……。


 それはともかく、ゴーレムだ。

 材料などの問題で上級の物を作ることは出来なかったが、木製のウッドゴーレム程度ならすぐに出来た。

 だが、早速動かしてみようという時になって問題が起きた。

 簡単に言うと、ゴーレムのAIとか頭脳とかの部分で問題が起きたのだ。

 ゲーム中だと、デフォルトでAIがいくつか用意されていたし、他のユーザーの作ったAIも公開(一部有料で)されていたのでその辺を使ったのだが……。

 この世界ではそんなものが全く無かったのだ。

 ゴーレム制御用のプログラムを一から作らないといけなかった。

 俺に出来たのは、単純な行動パターンのAIだけ。

 ただ殴るだけとか、指定した場所に移動するとかだけだった。

 一応もうすこし賢い行動パターンにも挑戦したのだが、バグで俺やマユさんを叩いたりしてきた。

 30cmサイズのゴーレムだからよかった物を数メートルとか凶悪な力を持ったゴーレムが暴走したら被害がしゃれにならない。

 俺は攻撃にゴーレムを使うのを諦めた。


 しかし、防御用の盾役ぐらいにならなるのではないかと今一生懸命試行錯誤してる所のである。

 ミスリルやオリハルコンといった凶悪な素材で作ればそれだけで簡単に防御力の高い物は出来る。材料さえあれば……。

 今の材料で出来て防御力が高い物となると難しい。

 結果……砂製や粘土製のゴーレムを作ってみる事になったのだ。



「それじゃあはじめるぞ! 離れてて」

「はい」

「解かりました」


 俺はゴーレムのコアの魔石を先ほどタライで混ぜていた砂に埋め込む。

 すると、砂がどんどん盛り上がり人型を取る。

 

「すごいです」

「おおお~」

 

 マユさんとセリカの賞賛の言葉を聴きながら、あらかじめプログラムしておいた通り、ゴーレムからコードを引き出すようにゴーレムのコアを取り出す。

 サンドゴーレムの体からゴーレムコアにひものような物が繋がって10m程伸びる。

 手元にサンドゴーレムから繋がったゴーレムコアを置き、セリカに声をかける。


「セリカー準備は出来たぞ~攻撃してみろ」


 セリカはすぐさまサンドゴーレムに切りかかる。

 一応最初だからかあまり壊れないようにだろう腕を切り落とす。

 サンドゴーレムの腕は切り離されてすぐに砂に戻り、地面に落ちる。

 地面に落ちてしばらくすると、砂は少しずつ動きサンドゴーレムの体にくっついていく。

 そして体の体積が元に戻ったところで腕が生えてきた。


「お、一応成功か」

「ちゃんと再生してますね」

「でも、全然弱いよ!」


 再生までの時間が掛かりすぎるな……。

 じゃあ、この設定でどうだ? 

 手元のゴーレムコアを少し操作する。


「セリカーもう一度攻撃してみてくれ。今度は真っ二つにするぐらいで頼む」

「解かりました師匠」


 セリカは言われたとおりサンドゴーレムを真っ二つにする。

 ゴーレムコアの繋がってない方はすぐに砂に戻る。

 今回違ったのはゴーレムコアが繋がっていた方だ、そのまま再生をはじめ、砂の減った分小さくなって人型に戻る。

 そして、少しずつ砂がくっついいき、体を徐々に大きくし元の大きさに戻る。


「う~ん、さっきよりはましか」

「ですね~」

「でも弱いよ!」


 次はちょっとゴーレムの硬度を上げてみる。

 

「さっきより硬くしてみたからセリカ試してみてくれ」

「解かりました」


 セリカはさっきのようにサンドゴーレムに切りかかる。

 今度はセリカの剣がはじかれて全くダメージが与えられなかった。


「硬いです。でもこれなら!『ホーリーブレイカー』!」


 剣から光を噴出しながらサンドゴーレムに切りかかる。

 そのまま木っ端微塵に砕け飛ぶ。

 

「って、セリカやりすぎだ!」

「ごめんなさい師匠つい……」


 セリカ……そんなに剣がはじかれた事が不満だったか……。

 だがまあ、これもいいデータが取れるな。

 ここまで木っ端微塵にされて戻るモノか?


 ………………。

 …………。

 ……。


 うん、ほんの少し小さくはなったがサンドゴーレムは人型に戻った。

 さっきの一撃で砂の一部が消滅したのか、付与してた魔力が消えたのかしたんだろうな。

 それはともかくとして、やっぱり硬度をあげると再生速度が大きく落ちるな……。


 次は……思いっきり柔らかくしてダメージ衝撃吸収できないかと思ったが、セリカの一撃で簡単に木っ端微塵に砕かれた。

 う~ん、中々うまくいかないものだ。

 衝撃吸収だと液体状の素材の方がいいのだろうか……でもあれは人型にならなかったしな……。


「師匠! もっと強いゴーレム作ってください!」

「今は素材込みで無理っぽいな」

「残念です……。それじゃあ、師匠が相手になってください」

「また今度な……」


 セリカは相変わらず訓練相手に飢えているな。

 出来れば、ゴーレムを使ってとも考えていたのだが今の段階では無理そうだ。


「クロさんゴーレム作りを教えてください」

「う~ん、これはスキルの問題だからな……」


 この世界ではゴーレム作成など、基本的にスキルが無いと作ることは出来ない。

 ただ、ゲームの時と違い結構自由度があるみたいだ。

 今作っていたサンドゴーレムもそうだが、付与魔法を材料に使用することで、再生するように作ることが出来た。

 本来だったら、其れ相応の素材を使わないと出来なかったのを擬似的とはいえ再生するように作れたのだ。

 マユさんはマジックアイテム作成で部品をいくつか作り、ゴーレムもどきを作っていたしな……。

 ゲームの時だったら、候補以外のアイテムはどうがんばっても作れなかったからな。

 もしかしたら、スキルの使い方の工夫次第で色々出来るのかもしれないな。



「何やってたの?」

 

 俺たちがゴーレムの片づけをしてるとシーナが転移を使って戻ってきた。

 今単独行動は結構危険なので、指輪に5つの小さな魔法石を組み込んだマジックアイテムを渡しておてある。

 もちろん、俺が作った物だ。

 マユさんが作ってる途中、穴が開くほど見つめられて結構つくりにくかったりした物だ。

 効果は、転移、変装、幻惑、身代わり、お仕置きの5つ。

 ついでに呪いモドキの効果(装備品に付与した効果と『命令』スキルの併用)でシーナから外れないようにしてあったりする。


「ゴーレムを作って実験してたんですよ」

「ゴーレムか……」


 マユさんの答えにシーナの瞳がキラリと光る。

 うん、何かまたろくでもないこと考えているな。


「ゴーレムはもう片付けるの?」

「ああ、素材とか色々足りないしな……」

「そうなの……」


 シーナはゴーレムのしまわれていく倉庫の方をずっと見ていた。



「それで街の方はどうだった?」

「S級モンスターの話でもちきりだったわ」

「やっぱりか……」

「ええ、それでだろうけど、物の値段が高騰してたわよ。素材とかまともに手に入るような値段じゃなかったし。消耗品は品切れ続出って感じよ」

「そうか」


 俺は、ゴーレムの片付けが終わったのを見計らって幻惑の結界石の効果を解く。

 前に集めた幻惑石を使って作った物だ。

 まあ、効果が発揮してる間は近づくものを迷わせる。

 シーナみたいに転移で戻ってくるか、無効化できるようなスキルでもないと近づく事は出来ない。

 王国の奴らにはあんまり見せたくないしな。あいつらへの対策だし……。


「それにしても、私を偵察になんか行かせてよかったの? あんたを売るかもしれないのよ?」

「それはないな」

「どうしてよ?」


 どうしてとか聞きながら全く疑問に思ってなさそうな様子、こいつわかってて言っているな。


「王国に俺を売ったとして、お前に支払わせる方法が無いからだ」

「ああ、やっぱり解かっちゃうか……」

「盗賊ギルドなんかも国につくだろうしな」

「そうなのよね~あいつらの為に仕事しても用済みになったらポイっての目に見えてるのよね」


 まあ、王国とのトラブルが解決しない限り、こいつは俺の命を狙う事は無いだろうな。

 暫くは安心だな。

 

「それよりも、この後どうするの?」

「どうって?」

「国もそんなにバカじゃないし。このままS級モンスターが現れなかったら、またこっちにちょっかい出してくるんじゃない?」

「まあな~だからこそ色々準備してるんだけどな」


 ゴーレムや色々なアイテムの作成もその時に備えてだ。

 ただ、素材が足りないのがな……。

 意識不明のまま眠り続けているミルファさんがいるからレベリングにしろ素材採集にしろ行くなら二手に分かれることになるし。

 一応、表立っては狙われてる感じは無いとは言え、何時狙われるかも解からないし、シーナみたいに逃げるのが得意な奴ばかりじゃないしな。

 セリカなんて、逃げずに戦いそうだし。レナさんはミルファを置いてはいけないだろうしな。


「ま、あんたがもう一発どこかにどでかいのを打ち込めばいいんじゃない? 死人を出したくないなら誰も居ない平原でもいいから」


 冗談半分だろうそのシーナの発言に、俺はしばし考える。

 街の人間とかには色々と迷惑をかけそうだけど……戦争になるよりはよっぽどましか……。


「って、冗談だから。黙り込まないでよ……」

「考えておくよ」

「…………」


 そんな事をやりながら午後ひと時は過ぎていく。



「「「いただきます」」」


 レナさん達がやってきてからは、ご飯は基本的にミルファさんが眠り続けてる部屋で食べる事になっている。

 お風呂やトイレなど以外はレナさんがミルファさんの元を離れようとしないからだ。

 ただ、これでもましになった方だ。最初は、トイレはともかく、お風呂にも入らず、寝ずの看病を続けた。

 流石に其れは無茶だと言う事で次の日からは何とか説得し、レナさんが寝たりその場を離れる時は誰かが居る事になったのだ。

 そのため、全員で食事を取ろうとしたらミルファさんの部屋で取るしかなかったのだ。

 

「なんか何時も一緒で飽きたわよ」


 シーナが食事に文句を言いつつ食べている。


「では、シーナは自分で作ってください」


 マユさんはそう言ってシーナのご飯を取り上げようとする。

 シーナは其れをガード。まあ、シーナもそれなりに食事は作れるんだから作ってもいいと思う。


「食べられればなんでもいいよ」


 セリカはモグモグと食べ続けている。

 彼女に料理をさせたら、丸焼き料理が並んだからな……それこそ食べられれば何でもいい感じで……。


「出されたものに文句を言ってはいけません」


 レナさんは上品なしぐさで食べていく。流石王族としての教育を受けているな……。

 ただ、彼女に料理をさせてはいけない。

 一度「やってみたいです」と言うのでやらせてみたら……食べ物じゃないものが出てきた……あれは……思い出したくない。


 このごろは何時もにぎやかに食事をしている。

 リアルではさびしく一人で取る事が多かったのでこれは何気に楽しかったりする。



 夕食後、風呂に入って寝る準備を整えた後、俺は自分の部屋で何時も考えにふける。

 

 こっちに着てから色々忙しかったけど、ひとまずは余裕が出来た。

 今後の為に、王国を何とかする手段を考える必要はあるだろうけど……。


 今のうちにこのゲームの世界について考えておいた方がいいのかもしれない。

 簡単に言うと、この先帰るのか? 帰る方法はあるのか? などだ。

 う~ん、この世界でチート能力を持って生きていくのは、元の世界で生きていくよりも魅力的に感じるんだよな。

 ただ、向こうの世界の両親なんかに会えなくなるのがつらいところではある。

 幼馴染のアイツなんかは今頃必死に探し回ってそうだしな……。

 だけど、それ以外はこの世界でもいい気もしてるんだよな。

 それに、シーナやマユさん、セリカ、レナさん、ミルファさん、彼女達をこのまま放りだしてもいけないしな。

 最低限、王国の事はけりをつけておかないとな……。

 まあ、それ以前に帰り方がさっぱり見当もつかないのだけどな……。

 手がかりになりそうなのと言ったら、あの時であったレアモンスターか。

 あのモンスターはあの後どうなったんだろうな?

 う~ん、帰るとしても情報が足りなさ過ぎるな……。

 結局は、ここで暮らしていくしかないわけか……まあ、一応情報あつめはしておいても損ではないだろう……。


 

 考えに沈んでいた意識をトントンと部屋をノックする音が引き上げる。


「なんですか?」


 ドアを開けてみるとマユさんが部屋を覗き込む。


「シーナしりませんか?」


 なんてたずねてきた。


「アイツがどうしたんですか?」

「夕飯を食べた後から見ないので探しているんです。今日のミルファさんの看病はシーナだったはずなので……」


 またアイツサボる気なのか……。

 まあ、一応探してみるかな。


「俺も外の方探してみます」

「はい、お願いします」



 そんな訳で外に探しに来たわけだが……。

 外にある倉庫から何か声が聞こえてきた。


「なによこれ~取れないわよ~」


 うん、聞いたことがある声がする。

 どうやら中で何かやってるみたいだ。


 そっと、倉庫を開けてみると……。

 液体状のゴーレムにシーナがあられもない姿で囚われていた。

 人型にならずに丸い饅頭みたいな形にしかならなかったから、触手状の手を何本か付けて見たんだが……。

 うん、うまく捕縛用のゴーレムになっているみたいだ。

 シーナのステータスを見ても特にダメージを受けてる様子も無いし、これは成功だな。

 難点は、近くで動くものを無差別で捕まえる点だけど……。

 まあ、警備用には悪くないか。


「って、見ていないで、あんたこれをはずしなさい!」


 シーナが俺を見つけたみたいで文句を言ってくる。

 だけどまあ、どうせゴーレムでも盗みに来たんだろうなこいつは。

 昼間なにかたくらんでそうだったし。

 それじゃあまあ実験に丁度いいし。


「朝までそうしてろ。朝になったらはずしてやるよ」


 と言って放置する事にする。


「アクマ~人でなし~」


 シーナの罵声が後ろから聞こえるが無視して倉庫の戸を閉める。


「ああ、そんなところ触らないで……だ……だめー」


 うん、なんか色っぽい声が聞こえた気がするが気にしないことにしよう。



 その後、マユさんにシーナのことを伝えて今日のミルファさんの看病はシーナに代わって俺がやる事にした。

 一応、シーナのステータスを見ながら液体状のゴーレム……ウォーターゴーレムとでもしておくか……捕縛性能の実験を続けた。



 次の日の朝、開放したシーナは真っ赤に体を火照らせピクピクしていたが、特に命にかかわるダメージは無かった。

 う~ん、一応は成功と言えるのか?

 なんか全く違う用途の道具をつくりだしてしまったような気がするが……。

次の話は……。

まだ未定です、たぶん。



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