第6話 大事件
何とか今日も更新です。
※一部内容的におかしな点を修正
王都からなんとか歩いてきたと言う感じでつかれきったレナさん。
途中の戦闘に備えて背中に背負い直し、まだ意識の戻る様子のないミルファさん。
二人を連れてM&Mに戻ると、突然飛び込んできたマユさんに抱きつかれた。
背中に背負ったミルファさんを落としかけるが何とか耐える。
マユさんには、俺以外が全く見えてないようだった。
「クロさん大丈夫だったのですか!? 凄く心配したんですよ!」
そういいながら、抱きついたまま離れようとしない。よっぽど心配していたのだろう。
まあ、暫くはこのままにさせておくかと思っていると、セリカも近づいてきていた。
「師匠どうでした?」
セリカの方はまったく心配した様子も無く城での出来事をたずねてくる。
マユさんまでとは言わなくても少しは心配してもいいのではないかと少し思う。
その表情を見て取ったのだろう、
「師匠ならあの程度、何も問題ないでしょう?」
少し怖くなるくらい信頼されていた。
「まあ……そうなんだが……」
マユさんの態度と比較するとなんともいえなくなる。
「其れよりも、後ろの二人は誰ですか?」
「二人?」
マユさんはここで始めて気がついたようだ。慌てて俺から身を離す。
「ああその前に、ミルファさんをベッドで休ませたい。用意してくれ」
背中に負ぶったミルファさんを見せながらマユさんに頼む。
すぐにマユさんは奥のほうに準備に向かっていく。
「ところでセリカ、この店を包囲していた連中はどうした? お前が殲滅したのか?」
「何故? 包囲されてた事を?」
俺は『索敵(M)』スキルで奴隷達の様子も探れた事を話す。
ついでにシーナの様子も見たが、どうやらそっちも敵は居なくなったらしい、M&Mに向けて結構な速度で移動中だ。しばらくしたら彼女もここに帰ってくるだろう。
「さすが師匠ですね。そんなことも出来るのですか。包囲していた連中は少し前に姿を消しました。何かから逃げるような様子だったので師匠に気がついて逃げ出したのでしょう」
信頼してくれるのはいいが、其れはなんか違うと思うぞ。
「クロさん~準備できました~」
奥の部屋からマユさんの声が聞こえる。
セリカと話している間にベッドが準備が出来たようだ。セリカとレナさん、ミルファさんを連れてその部屋に行くことにする。
ミルファさんをベッドに寝かせたあと、レナさんが彼女の元から離れようとしないので、その場で話をすることにする。
「わたくしはレナと申します。意識を失ったままの彼女は私の親友でミルファです。色々とご配慮ありがとうございます」
「私は、マジックアイテムの店M&Mの店長をしているマユです。よろしくお願いしますね」
「私はセリカよ! 師匠の弟子よ!」
「あとは、シーナという【ブラッディシーフ】の少女が住んでいるが今は出かけてる。そろそろ戻るみたいだから戻ったら紹介しよう」
そんな感じで自己紹介を終わらせ、城での出来事を説明する。
「エ、エリクサーですって! そんな貴重なものを……」
エリクサーの話が出た時、マユさんが凄く驚いて、自分の為に売った事に凄く申し訳なさそうに頭を下げていた。
やっぱり、この世界では相当なレアアイテムみたいだなエリクサーってのは……。
レナさんの境遇の話では、
「そんな、酷い……」
「許せません! 師匠そいつらを成敗しましょう!」
マユさんとセリカが憤っている。
そんな感じで説明を続けていたのだが、突然M&Mの入り口の方で乱暴に扉を開ける音が聞こえてきた。
シーナが帰ってきたなと『索敵(M)』で確認していると。
「マユ! いる? セリカ! あと、ついでにクロも!」
何か相当に切羽詰った感じで大声を上げて俺たちを呼んでいる。
「シーナさん、お店の扉をそんなに乱暴に開け閉めしないでください!」
マユさんがそんな注意をしながら店の方に出ていこうとする。
だが、その声を聞いたのだろう凄い速度でこっちにやってくると部屋の中を見回す。
「なんか、増えてる気がするけど、今はそんな場合じゃないわ! 今すぐ逃げるわよ!」
シーナの言葉に皆がいまひとつ状況が飲み込めない。
「城から来た奴らなら逃げ出したみたいだぞ」
城の奴らの情報でも入手してきたのだろうとそう返してみるがシーナはすぐに其れを否定する。
「この国の連中がエリクサーを探してる話なら知ってるわよ。だけど、今はそんな事気にしてるような状況じゃないのよ!」
「知っていたのか? それでその状況ってのは?」
「S級のモンスターよ、もしかしたらそれ以上の! 上級魔族や魔王復活とかもありえるかもしれない!」
相当あせっているのか説明が要領を得ない。
「S級!? 魔族!? 魔王!?」
セリカが目を輝かせているがそれは見なかった事にしてたずねる。
「どう言う事だ?」
「迷いの森の深部に現れたのよ! 今すぐ逃げ出さないとここも危ないわよ!」
その言葉にマユさんとレナさんが真っ青になる。
「で、S級とか上級魔族とか具体的には何が出たんだ?」
「解からないわ」
「解からないってそれでどうしてS級とかいえるんだ?」
「迷いの森の深部の殆どが氷付けになってたのよ!」
その光景を思い出したのだろうシーナが身を震わせる。
迷いの森の氷付け……なんか覚えがあるんだが……。
「氷付け?」
「そうよ魔法かなにかであたり一面ね……そんな事ができるのなんて少なく見積もってもS級以上だわ!」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
レナさんは絶句して何もいえなくなっている。
マユさんとセリカは無言で俺の方に視線を向けてきている。
俺は二人の視線に気がつかないふりをする。
「? あんたなんか視線が泳いでない? 何か知ってるの?」
「な、何の事だ?」
シーナが俺のほうをジトっとした目で睨んでくる。
ついつい俺は視線をはずす。
「それに、マユにセリカも何か知ってるんじゃない?」
シーナがマユさんやセリカに矛先を変える。
二人は俺の方にちらちらと目を向けてきた。
「やっぱり、あんたが何かしたのね? さっさと白状しなさい!」
しょうがなく、火の魔法で迷いの森を火事にしかけて慌てて氷雪の魔法で消したらやりすぎたと説明した所。
シーナは頭痛をこらえるように頭に手を当てていた。
レナさんの方は「凄いです」と俺を見る目に何か熱が感じられる気がした。
まあ、其れはともかくM&Mを包囲してた奴らやシーナの追っていた奴らは、S級とかそれ以上のモンスターが王都のすぐ近くに出現したと言う事で、俺たちにかまっている場合じゃなくなったと言う事らしかった。
聞く所によると、S級モンスターってのは下手すると国家存亡の危機を与えるようなモンスターらしい。
俺は初めて、この世界における自分の能力の立ち位置を本当の意味で実感できたのかもしれない。
その後、シーナにも城での事を説明し、彼女から王都での話を聞いたりして情報を皆で共有した。
そして最後に、シーナに一つ聞いてみた。
「そんな危険なモンスターが居ると思ってるなら俺を見捨てた方がよかったんじゃないか? 俺が命を落として奴隷から開放されるんじゃないのか?」
「S級のモンスターが近くに居るんだから弾除けの盾ぐらい欲しいわよ!」
うん、『命令』の効果を知ってるためか、このごろ俺に対して本音が駄々漏れになってきてる気がする。
まあそれはともかくとして、ちょっとお仕置きにシーナを氷付けにして、死んだりしないように回復魔法の魔法陣の上に一晩放置した。
いつもの事だとばかりに、マユさんやセリカは何事も無く放置した。
レナさんは最初色々と驚いていたようだけど、回復魔法の魔法陣に興味を持ったようで真剣な表情で観察していた。
次の章は……ど、どうしよう……。
王国対策を考える予定?




