第4話 聖騎士
やっと、戦闘開始!
※2014/02/28
一部文章がおかしかったので修正。
店の隣の空き地で対峙した俺とセリカ。
セリカは今すぐにでもはじめたそうにうずうずしている。
シーナとマユさんも気になったのだろう外に出てきて隅っこの方で見物モードだ。
しかし、俺はまずさきに聞いておかなければならない事がある。
それは……。
「何か聞きたそうだね。いいよ、答えるよ!」
セリカは俺の表情に気がついたのだろう。
それなら、その言葉に甘えて聞かせてもらおうか……。
「何故こんな戦いを挑んだかだよね?」
あ、そっちも確かに気になるな何でだ?
「それは、強くなって【ロードナイト】になるためよ!」
【ロードナイト】……ああ、だから【聖騎士】なのか……。
でもあれにはPvPの撃破スコアなんて条件に無かったはずだが……。
「そもそも、なんで【ロードナイト】になりたいかって言うと……」
う……何かやばい気配がする。
オタクの知り合いが自分の趣味について語りだす時のような……そのまま数時間の長話に付き合われるような……。
そんな気配がする。
「いやいい、聞きたいのは別の事だ」
咄嗟にそう言って話を止めたがセリカは残念そうだ。
ふと、シーナを見てみると、あからさまにほっとした表情を浮かべている。予感はあたってたようだ。
「で、何なの聞きたい事って」
【ロードナイト】について語れなかったからだろうセリカは少し不満げにたずねてきた。
そうだな、俺にとって、とても重要な質問をさせてもらおう。
「セリカだったな、その【聖騎士】の職業にどうやって転職した?」
俺が聞きたかったのは、これだ。
”隠し職業”の【聖騎士】にどうやって転職したかだ。
そもそも、隠し職業というのは。
一般的な上級職がレベルを上げただけで昇格できるのに対して。
それ以外の条件が必要なものの事だ。
【聖騎士】でいうと、騎士系の職業を一定レベルまで上げてなおかつ神聖属性の熟練度を幾つか上げる必要があったはずだ。
一般的には、転職して、他の職業の条件を満たす必要がある。
転職が必要ない隠し職業には特殊職やクエスト職なんて分け方もあるが今は関係ない。
でだ……、【聖騎士】は一見、転職が必要なさそうに見えるが神聖属性の熟練度を上げるというのが罠だったりする。
普通、属性の熟練度をあげるにはその属性の、魔法かスキルを使う事が必要なのだが、騎士系の下位の職業では持ってる職業がないのである。(持っている上級職に転職するには【聖騎士】と同様の条件がいる)
となると、神官系などの初級職業をマスターして神聖魔法のマスタースキルを手に入れるのが手っ取り早いのだ。
魔法系でも神聖属性の魔法は覚えるのだが、上位の職にならないと覚えないので、遠回りなのだ。(職業は上位のものになるにしたがってマスターするのがきつくなるのだ)
結局なにが言いたいかというと、【聖騎士】になるには転職する事が必要だという事だ。
つまり……転職できる……俺の【奴隷調教師】の職業から転職できる方法があるという事だ!
転職できるならすぐにも転職して、マスターしている最上位の隠し職業か、剣と魔法が両立できる魔法剣士系の職業につきたい。
最低でも色々やばいこの職業をやめたいのだ!
そんな期待とは裏腹にセリカは妙な答えを返してきた。
「転職って昇格の事? だったら【騎士】から昇格したに決まってるじゃない」
「その前に、【ヒーラー】か何か極めたんじゃないのか?」
「え? 【ヒーラー】になったら【騎士】になれないでしょ?」
「転職すればいいじゃないか?」
「え? 昇格じゃなくて?」
おかしい何か根本的なすれ違いがある気がする。
マユさんやシーナを見ても不思議そうにこちらを見てる。なんだ?
「ちょっとまて、【聖騎士】になるための神聖属性の熟練度、どうやって上げた?」
「神聖属性の熟練度? なにそれ? もしかして、光の加護の事?」
”光の加護”?
何か聞き覚えがあるぞ、何だった?
「まあいい、その光の加護とやらはどうやって得るんだ?」
なにを今更と居た表情でセリカは答える。
「光の洞窟で修行して加護を集めるのよ!」
あっ……。
”光の加護”と”光の洞窟”この二つの言葉を聞いてやっと思い出した。
あまりに酷いクエストでやりこみ専用とかマゾプレイ専用とかいわれた奴を。
【聖騎士】に転職する際、神聖属性のマスタースキルを使って神聖属性の熟練度をあげるのは本来は邪道なのだ。
だけど、それが王道のように扱われるのには理由があった。
王道の方があまりに酷かったからである。
どう酷いかというと……。
光の洞窟では何種類かモンスターがいる。その全部が神聖属性の熟練度を上げるアイテムをドロップする。
なんだ、特に問題ないじゃないかと思うかもしれない。
問題はドロップ率だ。熟練度をあげるアイテム……”聖なる息吹”はレアドロップなのである。
そのうえ、聖なる息吹を使ってもあがる熟練度は普通にスキルで上げた時のスキル1回分。
とんでもない量のレアドロップを集める必要があるのだ。
レアドロップなんて1日中狩りをして1個手に入ればいいようなものだそれを……大量にだ。
どれだけひどいことになるか解かるだろう。
だが、この方法にも一つだけ利点がある。
『光の加護』のスキルが【聖騎士】のスキル(マスタースキルにも)に追加される事だ。
邪なものを退けるとか言う効果で……状態異常やデバフなどのマイナス効果が付与される攻撃を受けた時、受ける確率計算で最終値の1/2にするとか言う結構とんでもない代物だ。
一度マスターしたら、その手の効果の命中率は必中属性のものでない限り50%以下になるのだ。
そんな訳で一部のプレイヤーはその茨の道を突き進んだ。
「……一つ聞いていいか? 光の洞窟でどの位の間……修行した?」
「1年はかからなかったよ!」
「……そうか……すごいな……」
本当にすごいと思う。数ヶ月単位でこもり続けるなんて。
「それより、聞きたいことってそんな事なの?」
「ああ、想像してたのとは違うけど……」
「じゃあ、初めてもいい?」
セリカはその手に持った剣を握り締める。
「そうだな」
俺も王都で買ったショートソードを取り出し構える。
そういえば、俺はこの世界で正面から戦うのは初めてだったな。
シーナとの戦いは搦め手同士だったしな。
「はぁぁ!」
セリカが一直線に突っ込んでくる。
それにあわせて俺も真正面から剣で受ける。
剣と剣が火花を散らしそこからつばぜり合いにもつれ込む。
「くっ」
見かけによらずセリカの力が強い。
押し込まれそうになる。
ちょっと卑怯だが……使わせてもらう。
「『パラライズショック(M)』」
『パラライズショック(M)』、これは攻撃力皆無の電撃で対象をマヒさせる効果があるスキルだ。
「うわ!」
セリカが驚いて慌てて距離をとる。
やっぱりマヒにはならないか。
「なに今の、ビリってきたよ!」
それはいいんだが、セリカ……なんでそんなにうれしそうなんだ?
「じゃあこっちも行くよ~『ホーリーアタック』」
『ホーリーアタック』神聖属性を付与した攻撃スキルか。
俺はとっさに後ろに下がって回避する。
完全によけたつもりだったが頬にピリッとした痛みを感じる。手を当ててみるとほんの少し血が付いていた。
最初にシーナと戦った時よりは幾分ましになったものの、実戦というのはきつい。
それに、あの時は初めての実戦の所為だと気にしてなかったのだが……。
俺の体が妙に重い。回避するにも妙に遅いし、力も弱まってる気がする。魔法なんかも威力が弱まってるかもしれない。
う~ん何故だ?
「考え事してる暇なんて無いよ!」
次々に振るわれるセリカの剣を回避していく。
何発かかすり傷程度だが被弾していく。
シーナの時以上にひどいかもしれない。
なぜだ?
と、そこでシーナがつぶやくのが聞こえる。
「さすが私よりレベルが高いだけあるわ。押してるじゃない」
う? レベル?
シーナのつぶやきに、唐突に悟る。
そうか今の俺のレベルは5だ!
ゲーム中はこのごろはレベル一桁でまともに戦った事がない。
たいてい隠しダンジョンの入り口辺りでコストがバカ高い燃費の悪い魔法を一発使ってその辺のモンスターを一掃する。
それで、最低でも20台後半。敵の数が多かったりすると40台ぐらいに一気に飛び越えるんだ。
いくらマスタースキルで底上げがあるといっても、ベースの能力が低ければ割合で増加させるタイプは伸びが悪くなる。
ステータスが低くなっても当然だな。
それに、【奴隷調教師】そのものが戦闘職ではなさそうだしな。
もっというなら、熟練度関係は殆ど0だ。
これは本気でまずいかもしれない。
「攻撃してこないの? そんなんじゃすぐに終わっちゃうよ!」
セリカはそんな事をいいながら『ホーリースラッシュ』のスキルで光の刃を飛ばしてくる。
回避が間に合わず、浅くは無い傷を何箇所か負う。
くっ、ちゃんとした戦闘をこちらでも試しておくべきだった。
痛みに顔をしかめながら俺は。
ゲームではなく実際の戦闘という事で意識せずに避けてた事を後悔していた。
次回は セリカとの戦闘の決着です。
能力UPのマスタースキル。
2種類の系統がありそれぞれ、
・能力値を固定値で上げるスキル。
HP+100、力+50など……。
・能力値を割合で上げるスキル。
HPUP微小(HP1%UP)、力UP極小(力0.1%UP)など……。
すべての効果は重複するため、取れば取っただけ無駄にはならないが、基本的に割合であがる方が人気がある。
最終的に固定値の方は誤差になってしまうからである。
クロも固定値の方は前提で取得した以外は手に入れていない。




