第6話 ホームシックなのか?
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いまいち更新速度が上がりません。
う~ん、調子が出ないな。
目の前に一人の剣士が立っている。
白銀の軽鎧を身にまとい、手にしてる刺突剣は確かスターライトブレイカーだったはず。
見慣れたそして、久しぶりに見たその姿は、腐れ縁のあいつの姿だ。
だが、顔に浮かべてる表情がやばい。
一応笑顔に分類されるそれは、あいつの怒りが限界突破して一周回った時の笑顔だ。
やばい、あの笑顔を浮かべたあいつの記憶はろくな物が無い。
何をやった? 何を怒らせた? ここでの選択ミスは致命的だぞ!
「ちょっと、お仕置きしないとダメみたいね」
ちょっとまて、調教ってなんだ!?
いや、それより、その構えはやばい!
あれは、あいつの得意技だ!
「まて、話せばわかる、まずはその物騒なのを」
「ふふふふふ……お話の時間は終わったのよ」
やばいやばい、あの目はマジだ!
こうなったら、なんとかあいつの目を覚まさせるしか……って何だこれ!
装備してる武器が枕で、防具がパジャマ一式!?
これでどうしろって言うんだ!
「お祈りの時間は終わったかしら?」
ちょっとまてーそれは、殺す前に言う言葉だろ!
「って、ほんとま、うぁぁぁぁぁ」
「うぁぁぁぁぁ~~~ぐへぇ」
気がつくと、床にしたたかにぶつけたのか背中が痛い。
「うん? ここは?」
見上げると天井が、横を見るとベッドが、そして今いるのが床の上。
ああ、ベッドから落ちたのか。
俺はそこまで寝相が悪くないはずなんだけどな。ベッドから落ちるなんていつぶりだ?
まあ、それはいいか。
「う~ん、何か妙に体がべたつくな」
パジャマを見てみると、寝汗を吸ってずいぶん重くなっている。
「このまま二度寝もきついし、風呂で汗だけでも流してくるか……それにしても何でこんなに寝汗を……あっ……」
思い出した。
あいつの夢を見たんだ。
めちゃくちゃ説教喰らった覚えがある。
でも何故だろう?
冷や汗が止まらないのは……。
「床で寝ていて体が冷えたんだなきっと。とにかく急いで風呂に行こう」
「あ、あんたこんな時間にどうしたのよ?」
浴場に入るとシーナが湯に浸かっていた。その周りには妖精達と、酒瓶のような物が乗せられた桶が多数。
「お前達こそ、何してるんだ?」
「2次会~?」
「いや、3時だろ?」
「五次だと思う」
「リタイアはリーフちゃんだけ~」
「ま、飲み会ね。最初はリーフと飲んでたんだけどこの子達も集まってきてね」
何気に、シーナとリーフは飲み友達なのか?
うちのメンバーの中では苦労性の二人だからな……。
あと、妖精達が飲んでるのは魔力ポーションとかのMP回復薬っぽいな。よっぱらってるっぽいから妖精達にはお酒のような効果があるんだろう。
「で、リーフさんはどうしたんだ?」
リタイヤとかって声も聞こえたけど……。
「あ、酔いつぶれたから隣の大部屋に布団引いて寝かせたわよ」
「そっか……」
色々溜まってそうだからなリーフさん……。
「で、あんたはどうしたのよ」
おい、酒の肴に面白い話でもしなさいって感じで聞いてくるなよ。
「ちょっと、夢見が悪くて寝汗かいだから流しに来たんだよ」
「へ~面白そうね、その夢の話しなさいよ」
「おお~ドラゴンに食べられたとか?」
「リーフちゃんに説教されたとか?」
「ティナちゃんと一緒に大目玉食らったとか?」
「寝ぼけたティナちゃんに食べられそうになったとか?」
シーナ、面白がってるだろ!
あと、妖精さん達のそれは、夢の内容なのか?
「いいからいいから、お姉さんに話してみなさいよ~」
「そうだそうだ~」
「話してみなさいよ~」
「話~話~」
「パチパチパチ」
酔っ払いからは逃げられそうに無いな。
俺は観念して覚えてる範囲で話し始めた。
「う~ん、それってホームシックなんじゃないの?」
「ホームシック?」
「故郷を懐かしむだっけ? 図書館の本の中で出てたわよ。意味を調べるのに苦労したわ」
ああ、ホームシックって言葉が出るほど移動しないからなこの世界の人たちは。
そんなことよりもだ。
「俺がホームシックだと?」
「そうでしょ、故郷にいる幼馴染が気になるんでしょ?」
確かに、言われて見ればそうかもしれない……。
だからあんな夢をみたのかも。
「まあ、レナにはこの事は黙っておいてあげるわ」
「? 何でここでレナさんが?」
「その幼馴染って故郷での恋人なんでしょ?」
「ないない、それは無い! 腐れ縁だよ」
「そういう腐れ縁ってバカに出来ないんじゃない? 順当に進むと結婚してたりするものじゃないの?」
「順当?」
「モンスターに襲われて死んだりしなければって話よ」
あっちの世界にはモンスターなんかいないけど……。
う~ん、あいつと結婚?
「う~ん、考えられないな」
「そういうのがいつの間にかくっついてたりするものよ」
やっぱり悪い冗談にしか思えない。
あいつと俺が? ない、ない。
どっちかと言うと手のかかる妹分?
あっちは、あっちで姉貴分とか言いそうだけどな。
「そうだ、前々から少し気になってたんだけど、元の場所に帰ろうとかそういう気は無いの? 帰る方法とか探してるふうには見えないんだけど。まあ、色々トラブってて時間が無かった感じがするしこれから始めるといわれたらそうかもしれないけどね」
「う~ん、特に探そうって気は無い。というより、何をどう探すのかって部分からわからないからな」
元居たゲームの世界までなら探せば行けそうな気がするけど、それじゃあゲームの住人になりかねない怖さがあるんだよな。
ゲームシステム的な物の範疇なら探せばありそうだけど、それ以上となるとお手上げなんだよな。
「その答え方だと、方法がわからないというより、帰りたいって気持ちが薄い気がするわよ。未練とか殆どないんじゃないの?」
未練か、確かにあの世界には殆どないかもしれないな。
こっちの世界はゲームそのものともいえるしな。職業がバグってなければもっと色々ゲーム的な事を楽しめたんだろうけど……。
「ただ、唯一あるのがあいつ、幼馴染の事かもしれないな」
「やっぱり、気になってるんじゃない」
確かに気になる。だけど、シーナお前の思ってる内容とはたぶん違うぞ。
「あいつがバカやらないか心配でな……」
「へっ?」
「あいつは、時々恐ろしい行動力を発揮するんだよな。わかりやすく言うと、当社比ティナの5倍ぐらい?」
「って、ちょっとそれ本気でまずいんじゃ?」
「そうなんだけどな……動きようがないしな」
「確かにそうね……」
ほんと、あいつ無茶してなけりゃいいけど……。
俺がゲーム中に行方不明になったと知ったらゲーム会社に潜入してサーバー調べるくらいやりそうだからなあいつ。
ゲーム会社の所在地すらいまいち不明な事なんて気にせずに探し当てそうな怖さがあるんだよな。
とある教師が社会的に抹消されてた事があったからな……。
「まあ、あいつが無茶をしない様に祈っておこう」
「やっぱり、探しには行かないのね」
「さっきも言ったけど、探しようが無いんだよな」
「ま、今あんたがいなくなったら色々大変な事に成りそうだしいてくれた方が嬉しいけどさ」
「へ~シーナは、俺に居てほしいのか?」
少しからかい気味に言ってみたのだが。
「そうよ。今あんたがいなくなったら、レナにセリカにマユにティナとかどうするのよ! 面倒見切れないわよ私」
うん、素で返されるとは思わなかった。
というか、面倒事を押し付ける気満々だな。
まあ、元の世界に戻る方法については、手がかりが見つかったら程度に考えておこう。
あいつの事がなければ、後腐れなくあの世界を捨てられるんだけどな……。
次は、お留守番のちびっ子達の話になりそうです。
※スターライトブレイカー
クロの幼馴染のお気に入りの刺突武器。
攻撃する時にキラキラと星のエフェクトが出るのがいいらしい。
彼女にとってはネタ武器枠。
ただし、武器固有技で、攻撃力に魔力を乗せて攻撃する流星突撃という技があり魔法剣士にとっては実用武器だったりする。地味に、刺突技じゃなく打撃技になるのも人気の理由だったりする。




