第5話 生産ギルドからの呼び出し
大変長らくお待たせしました。
やっと更新です。
この頃なんか集中力が続かなくて書けませんでした。
気力が減衰してる気がする……。
翌日、朝早くから生産者ギルドの前まやって来ていた。
冒険者ギルドのように、朝の早い時間帯は混んでるかもしれないと思って、少し遅めに行きたかったんだが、アンが「急ぐのであります!」って言ってこんな時間になったのだ。
「あんたは良いわよ。呼び出し受けたんだから? でも、何故私まで巻き込むのよ?」
眠たそうに目をこすりながらシーナが文句を言ってくる。
「いや、何かの交渉事ならシーナに任せた方がいい気がしたからさ」
はっきり言って面倒くさい。
「なんか余計な一言が聞こえた気がしないでもないんだけど、確かにあんた達に任せるのも不安ね。はぁ、しょうがないわね」
考えてみたら、うちで交渉ごとに強いのはシーナぐらいしかいないんだよな。次点でマユさんとかリーフさんかな?
外に積極的に出ていいならミルファさんも意外に行けそうな気がしないでもないけど……。
結果を気にしなければ、謎の交渉力を持ってるティナも交渉上手かもしれない。まあ、結果が怖すぎるけどな。
「あんた、何処かから腕の良い商人とか拾ってきなさいよ。交渉事が殆ど私に回ってきてる気がするわ」
拾うって……。まあ、うちらの中で唯一の常識人って感じになってるもんな、シーナって。
「師匠! シーナさん。早く入るであります!」
中に入らずしゃべっていた俺達にじれたのか、アンが声をかけてくる。
「ああ、そうだな」
「そうね」
生産者ギルドに入ると、大雑把に正面は受付、だけど受付は一人いるだけで他の席は閉まっている。
右手は素材などの販売所、アンが売られていたのもここだったはず。
左手には冒険者ギルドのクエストボードの様な依頼掲示板がある。クエストというよりも、『幾らで買います・売ります』といった募集掲示板って感じだ。
「思ったよりも混んでないな」
ポツポツとギルド関係者がいるだけで殆ど人がいない。
「そりゃ、この時間帯だからね」
「え? 冒険者ギルドみたいに混んでるんじゃ?」
「それは無いわよ。生産者が朝早くから何を取り合うの? 早朝早く出て日帰りで出かける事も無いでしょし」
たしかに、考えてみればそうか。
「それに、仕事終わったら夜遅くまで飲んで次の日は朝遅くまで寝てるもんじゃないの?」
それは偏見な気が……。でもドワーフとかそういうイメージがあるような。
そんな風に閑散とした生産者ギルドを眺めてる間に、アンが受付で話を始めていたみたいで、呼び声が聞こえてきた。
「師匠! シーナさん。今すぐ副ギルドマスターが会議室まできてくれって事なのであります」
「ああ、わかった」
シーナも頷いているので一緒に受付の人の案内で会議室に向かった。
「おお、悪い悪いまたせた」
会議室の席に座って5分と経たずに副ギルドマスターやって来た。
副ギルドマスターってたしか、鍛冶職人の第12代目ロドニーさんだったよな。
「そんなに待ってないわよ」
シーナが無難に答えている。
「もう一人来るまであと少しまっくれ」
そういいながらロドニーさんが俺達の向かいの席につく。
「お待たせしました」
少し遅れて入ってきたのが、会計の人がジルバさんだっけ?
「先方への連絡は終わりました」
ジルバさんは、ロドニーさんの隣に座る。
「じゃあ、早速だが、アンジェリカと言ったかの少しやってほしい事があるのだ。ついてきてくれるか?」
ロドニーさんは、椅子から立ち上がると、アンについてくるように促す。
「え? なんでありますか? 何が始まるでありますか?」
「詳しい説明は、残ったお二人にしておきますので、時間が無いので副ギルマスについていってください」
ジルバさんはアンを急かす。
俺は、シーナに目配せするが、「問題ないわよ」と返される。おおよそ話の内容は想像がついていそうだな。
「アン、行って来い。説明は聞いておくから」
「わかった出あります、師匠」
アンは、足早に部屋を出て行くロドニーさんに急いで着いていく。
「で? どういうことか説明してもらえる?」
アンが出て行ってしばらくしてからシーナは説明を促す。
「何処から話したら言いか……。そうですね……アンジェリカさんの前の師匠が行方不明になったというのは知っていますか?」
そんな切り出しで始まった話は、すごく簡単にまとめると、債権者集会って感じか?
アンの前のダメ師匠は、色々と借金がかさんでいたらしい。それでいて失踪したもんだから急いで債権回収してる人たちがいると。
まあ、そこまでなら俺達には何も関係が無かった。
「そこで、アンの弟子入り奴隷の話が絡んでくる訳ね」
ここの生産者ギルドでは、弟子入りの時、弟子入り料(教育費の様な物)を払えば、人数的に無理の無い範囲で希望するギルドメンバーに弟子入りする事が出来るらしい。
で、払えない場合は、弟子入り奴隷と言う形で奴隷として働く事で料金を支払う制度があるそうだ。ま、丁稚奉公のようなものか?
まあ、ある程度技術を身につけて1~2年で返済できる感じらしい。
そこまでは、何の伝もお金も無い素人が、技術を身につける為の救済制度みたいな物だろう。
問題は、どうしよも無いと師匠の方がさじを投げるほど、資質がない場合だ。そういう場合、最終手段として生産者ギルドで売られることになるらしい。
ただし、その場合もしその判断が間違っていたならペナルティとして師匠の方が販売額の倍額払うことになるらしい。
今回、アンが呼ばれたのはその資質をテストするためだったらしい。
「それなら、アンがお金を回収し損ねてお終いなんじゃないの?」
「それが、この場合の回収責任が生産者ギルドの方にある決まりなんですよ」
ジルバさんが説明するには、生産者ギルドが師匠を斡旋した事の責任も込みで回収責任を決めているらしい。
まあ、泣き寝入りの詐欺まがいなのが横行したらギルドの信用がガタガタになるからな。
それで、販売額に関しては、回収不能の場合でもギルドが補填するという事だ。あと、師匠のペナルティ分は最大限に回収に努める(努力義務)って感じらしい。
「まあ、アンの値段は桁違いだったから色々と面倒が起きてるんでしょうね」
たしか、100万ゴールドだったか?
「ええ、流石に私達ギルドも100万ゴールドを保証させられるのはたまらないので、9割ほどの支払いを3年ほどの間凍結させておく事にしてありました、その代わり結構高い利子が着いてしまう事になりましたが……」
弟子入り奴隷に関しては、ギルドが斡旋してる事もあり、色々細かい規則があるそうだ。
まあ、規定の利子を払うことで支払いの猶予期間を設けることが出来るとかそういった感じらしい。
「その他にも、この街の生産区画の売買には生産者ギルドの許可が必要で、ギルドの債権回収は最優先されるようになっています」
「もしかして、そいつがもってた鍛冶場とかもアンのものになるとか? それともお金に替えてくれるの?」
そういうことか、アンも一気にお金持ちだな。
「そのことで少し相談が……」
「なによ? 負けないわよ! そもそも、私のお金じゃないし」
シーナがこっそり俺の方に「手数料はらってもらうからね」と耳打ちしてくる。
それに対して「5%ぐらいゴールドで払うならいいぞ」と返と、「はぁ、金銭感覚がおかしくなりそう」とポツリと呟いている。
「いえ、査定額の方については幾分甘く見積もってもかまいません。それよりも物納でお願いできませんか? 冒険者ギルドの方から話しが言ってると思うのですが、この街のお金の流通に少し不安がありまして……」
何か聞いてるか? とシーナを肘でつつくと、「言ってなかったっけ?」とシーナが説明してくる。
まあ、簡単に言うとM&Mは利益率が恐ろしい事になってるって事だった。
自分達で収集して、仕入れでどころか経費すらも自分達で殆ど用意して殆どゼロだからな。
ただだからこそ、お金が入ってくる一方で、不健全だという事らしい。まあ、普通の商売は仕入れにお金払うからな。
仕入れよりも、ティナのガラクタ購入の方が金額が高いとかありそうだからな。
「まあ、とは言っても通常なら一店舗だけでは街に影響があるほどの金額が動く事はないのですが……。クロさんのオークションに合わせてて外部の商人達が動いたりすると貨幣の不足で物価が乱高下しかねない危険がありますから」
貨幣価値を意図的に乱高下させたら大儲け出来るからな。
俺達は混乱が出来るだけ起きないように色々シーナに任せているけど、外部の人が意図的に混乱を起そうとすると不安ではあるか。
「つまり、うちには余りお金を集めさせたくないって事ね?」
「何か使う予定があるとかならばかまいませんが、特に予定も無く貯められるのは少し困るかもしれません」
確かに、金庫にお金が詰みあがっていく一方になってるよな。
迂闊に使って買い取り始めると相場が壊れかねなくて使うに使えないんだよな。ゴールドをGPにするために大々的に買取したくても諦めたからな。
「じゃあ、加工に難しくて手に負えない素材とかを物納なんてどう?」
お、それはいいかもしれない。上位の素材とかが安くある程度の量入ってくるなら色々作れるようになりそうだな。
だけどさシーナ、良く色々ポンポンと交渉を進めれるよな。俺には無理だなこれは……。
「加工に費用がかかりすぎる素材は死蔵されているものも結構ありますし、いいかもしれません。金額も安めに出来るでしょう」
「お金は生産者ギルドの方に預けた形にして置いて、そのお金からいい素材があったらそのつど物納って形でいい?」
「それなら此方も助かります。そのようにしましょう。あと、鍛冶場の所有権はどうしましょうか?」
「所有権はこっち持ちでギルドに貸し出すとかでは無理?」
「それなら管理費込みで月××ゴールドぐらいでどうでしょうか?」
「生産者ギルドの色々な利用手数料を負けてくれるならその値段でもいいわよ」
「それでは――――」
「――――ね」
う~ん、俺必要なかったような気がして来た。
交渉は、シーナに全て任せる。
あ、それなら一つ欲しい物を探してもらえるかな?
「シーナ、オリハルコン硬貨やミスリル硬貨を手に入れる事は無理か?」
修理用とかにオリハルコンやミスリルの補給のあてが欲しかったんだよな。
「ああ、それはいいわね。額面ではなく売却相場で買取で探せるなら買い取るけどどう?」
「売却相場ですか……。ある程度の金額をギルドに預けて置いてくださるならなんとかしましょう。あなた達にお金が集まりすぎるのを防止するのに丁度いいかもしれませんし」
「普通にお金預けるだけじゃダメなのか?」
ふと疑問に思った事を二人に質問してみる。
「決済口座ならともかく、何時使うかわからないお金を大量に貯金されるのもそれはそれで問題ですから。額が、生産者ギルド全体の貯金額の割合で、結構おおきくなりそうですし」
「私達が全額引きおろそうとした時に運転資金が無くて黒字倒産とかになりかねないからね」
利便性や安全性に関しては拠点の倉庫に保管してた方が安全そうだしな。
そんな感じで、シーナとジルバさんは詳細をつめていく。
そういえば、このお金アンのお金だよな。勝手に決めていいのか?
気にし無さそうではあるけど……。
その後、もう直ぐお昼と言う時間ぐらいに、アンとロドニーさんが戻ってきた。
「師匠……全然だめだったであります」
アンがうなだれた様子で帰ってきた。
「え? ダメだったの!?」
シーナがまずったなと言った感じで聞き返している。
「いやいやいや、試験としては十分合格だ。十分鍛冶師としての資質はあるだろう」
ロドニーさんは笑顔で答えている。それどころか、「周りの奴らにいい刺激になったな」とか呟いている。
アンはこの頃結構安定して作れるようになってたと思ったんだけどな。試験で緊張とかしたのか?
「何か、いつも使ってる道具と違って使いにくかったのであります」
道具?
………………。
あ!! しまった、うちの鍛冶の施設のランク忘れてた。
アンに普通のレベルを教える為にもたまにはロドニーさんの所に行かせたりする必要があるかもしれないな。
俺にも必要だって? うん、俺はもう諦めてるから。
「少しは努力しなさいよ」
次の話は、クロが色々考える?




