第2話 なかなか売れないであります!
アンのナイフが初売りされる日のM&M。
何気に今のM&Mは、原価が0同然のものが結構売れ筋だったりして。
利益率は恐ろしい事になりそうな……。
※毎日更新継続中
「こんな感じでいいであります? あ、少しずれてるであります!」
M&Mの生活雑貨品のコーナの一画。隅っこに置かれた台が初めての売り場になるであります!
準備に手は抜けないのであります!
「アン~それ何度目だ? そんなに丁寧に並べてもあんまり意味ないと思うぞ」
「そうでありますか?」
師匠の言葉に頷こうとするも、気になって仕方が無いであります!
「はぁ……まあ、気のすむまでやれ。ただ店の仕事はちゃんとしろよ」
「わかったであります!」
おかしいであります。日も出てない早朝から準備を始めたはずなのに、もう開店時間であります!
急ぐであります。準備がまだ終わってないであります!
危なかったであります。マユさんが手伝ってくれてギリギリ間に合ったであります。
「初めて自分の作った物を売る時はそういうものですよ。私の時……わた……わたし……」
「どうしたであります? だいじょうぶでありますか?」
すごく暗い顔でうなだれていたので師匠にお願いして部屋で休んでもらう事にしたであります。本当に、だいじょうぶでありますか?
あ、時間を見ると店をあける時間が過ぎてるであります! 急ぐであります!
「M&M~開店であります~」
店の扉の鍵を開け放ち元気一杯一声上げて、今日も開店であります。
すると、すぐに何人かの冒険者が店に入ってきたであります。たぶん、開店を待って居たでありますね。
「おう、嬢ちゃん、ポーション10個と毒消し5個。あと、氷袋人数分で6つ頼むわ」
ポーションは砦の薬草畑のお陰で大分安定してきたので、購入制限はなくなったのでありましたね。
毒消しは、ポーションと同じ棚の下の段であります。
あと、氷袋は業務用冷凍庫からとりだすであります。
この氷袋でありますが、何かの胃か腸で作ってある安い袋であります。これに水を入れて凍らせるだけで20G、袋代が1枚2~3Gだからぼろ儲けであります。
それなのに、結構売れるであります。不思議であります。
「合計――――Gなのであります」
「これで良いか?」
「丁度なのであります。あと、氷袋は破れやすいので気をつけるであります」
「おう、解ってるよ。いつも通り水筒の中に入れていくさ」
そう言って、手を振りながら今日の最初のお客さんは、店を後にするであります。
「まいどありがとうございますなのであります!」
最初のお客さんにはナイフ売れなかったであります。
でも、まだまだ今日は始まったばかりであります!
「ポーションと携帯食糧――――」
次のお客さんであります。
開店してからしばらくは、忙しいであります。
がんばるでありますよ~!
売れないであります。
「セッケン2つと髪用の1つ、お願いね」
セッケン2つとシャンプー1つでありますね。
「合計で――――Gであります」
「これでお願いね」
「おつりは――――Gであります。まいどありがとうございますなのであります」
売れないであります。
冒険者のお客さんがひと段落したあと、増えてくるのは、セッケンとかのシーナさんが売り出してる物を買いに来る人たちであります。
いつも通り、結構売れて行くであります。
お風呂にあるのを詰め替えてるだけなのに、なんであんなに売れていくでありますか? 不思議であります。
でも、売れないであります。
発売記念特価で70Gにしたのでありますが、全然売れないであります。
まだ一本も売れてないであります!
マユさんにお昼休憩で代わってもらった後、午後一番で、やっと売れたであります!
「使い捨ての投げナイフとしてなら悪くないんじゃないの?」
買ってくれたのは、シーナさんであります。
「身内が買ってどうするんだ? 何時もは、普通に鍛冶場でやり取りしてるだろ」
そうでありました。シーナさんは時々「これ、もらって行ってもいい?」とか言って練習で作ったナイフをもらってくれてるのでありました。
それでも、初めて売れたのはうれしいのであります。
次は普通のお客さんに売れるとうれしいのであります!
午後からは、色々なものが売れたのであります。
マンガも結構売れ筋なのであります。
コピーしたマンガは良く売れるであります。
あと、レナさんの書いたマンガも時々売れてるのであります。
なのに、ナイフはシーナさん以外に売れないであります。
悲しいであります。
そんな事を思っていたときであります。
「かいにきたニャ!」
「買うワン!」
「…………(いつもの)」
「…………(おれい)」
ポチさん、タマさん、天狐さん、地狐さんの4人が買いに来てくれたであります。
皆一本ずつ買ってくれたであります。
これで合計14本売れたであります!
一杯売れたであります。
だけど、普通のお客さんには全然売れてないであります!
1本ぐらい売れてほしいであります。
日か沈んできたであります。
もう直ぐ、閉店の準備をしないといけないであります。
結局、家の皆以外には売れなかったであります。
すごく悲しいであります。
「はぁはぁはぁ……まだ大丈夫ですか?」
店を閉めようとしていた所で女の子が走りこんできたであります。
どこかであったでありますか?
「まだ大丈夫であります!」
「よかったです。ギルドで失敗しちゃって遅くなってしまったんです」
あ、ティナさん達と一緒に冒険者ギルド行ったときにお世話になる事が多いリズさんであります。
冒険者ギルドのイメージが強かったのでうまく思い出せなかったであります。
「でも、急がないと街の門がしまっちゃうでありますよ」
「あ! そうでした! マンガの新刊に、セッケンを1つお願いします。あと……あれナイフも売り始めたんですね。何かすごく安いです。今料理に使ってるのが刃こぼれしてたんで丁度良かったです。これも1本もらえますか?」
ほ、本当でありますか!
うれしいであります。
「了解であります!」
「あの? いきなりどうしたんですか? 何処かの騎士団なんかでやるような敬礼なんかして?」
「気にしないでほしいであります。合計――――Gであります! 特別に20Gオマケするであります!」
初めて買ってくれた御礼なのであります!
「本当ですかありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとうございますであります」
リズさんが街の門に消えるまで、お見送りたであります。
さて、今日のM&Mはこれで終了であります!
最後にナイフが一本売れて本当にうれしいであります。
リズさん、本当にありがとうなのであります!
その後、今日の売り上げを計算してたマユさんが計算が合わないと困って居たであります。
あ! 20Gオマケしたのを忘れてたであります!
その後、何故かシーナさんに、勝手にオマケしたことをすごく怒られたであります。
「うちは、色々ギリギリなんだから、少しでも値段変えると転売とかの騒動になるから気をつけなさい! 前みたいな騒ぎはこりごりなのよ!」
そういえば、私がここに来る前に酷い騒動になったという話を聞いたでありましたね。
少し反省なのであります。
でも、今日は、初めて売りに出したナイフが売れて嬉しいのであります!
シーナさんに10本、ポチさん達に4本、そして、リズさんが買ってくれた1本なのであります!
明日からはもっと一杯売るのであります!
がんばるでありますよ~!
次の話は、アンのナイフが売りに出されて困る人々の登場です。
もう、主人公たちからは、時の彼方に忘れ去られていそうですが……。
氷袋
この世界では、一部の寒い地方を除き、魔法かマジックアイテムがないと氷が作れないので、手に入れようとするとそれなりに金がかかる。
氷の使える魔法使いの就職先に氷屋さんとかがあったりする。
氷の質によっては結構稼げたりもする。
セッケン、シャンプー、リンス、化粧品
シーナが売り出したものだが、何気にM&Mの売れ筋商品になっている。
他の町の商人が大量に仕入れていく事も……。
マンガ(コピー)、マンガ(レナ作)、マンガ(妖精さん達作)
この世界では著作権という概念がないので、コピーしてすき放題売ってたりする。
まあ、写本を作って売るのが普通の世界だから誰も気にしないのかもしれないが……。
売り上げは、 コピー>レナ作=妖精さん達作 って感じになっている。




