第3話 惨劇の教会
すごくすごく、開いてしまいましたが、やっとやっと本編更新です。
う~ん、すごく難産でした。
それはともかく、今後もよろしくお願いします。
ティナ「私が主人公、私が主人公、私が主人公……」
クロ「何やってるんだ? ティナ」
ティナ「おまじないだよ! 私が主人公、私が主人公、私が主人公……」
クロ「何かの呪いのように感じるんだが……」
※2015/03/27
題名修正しました。
※2015/08/17
投稿順変更で投稿日時が変わっています。
「モンスターと全然戦えません……」
「全部クロちゃんがピカーとかキュピーンとかゴゴゴゴーとかチュドーンってやっつけちゃうね~あ、これはどうだ?」
「あ、やっとゴーストが近くに……」
「ジュバンって一瞬で倒されちゃったね~あああ~ボロボロで崩れちゃったよ」
「…………攻撃すら出来ませんでした……」
「もう、今日はクロちゃんにまかせようよ~あ、見っけ今度は良さそう」
「ところで、さっきから何をしているんですか?」
「色々落ちてるから、面白そうなのを探してるんだよ。セリカちゃんも一緒に探そうよ」
「ああ、アンデッド達のドロップアイテムですか……」
「お土産を沢山拾うんだよ! だけど……お肉やお魚はないな……ゾンビの肉って食べられるかな?」
「それは、流石にお土産に渡されたら泣くんじゃ?」
「クロちゃんなら美味しく料理してくれないかな?」
「さすがに、それは……」
「あ、袋が一杯になっちゃった。妖精便お願いね~」
「妖精便?」
「有料でお家まで荷物を運んでくれるんだよ」
「それは便利ですね。私も頼めないでしょうか?」
「今度、聞いてみるね~あ、着払いでお願い~えええ~ソウルキャンディ2つ? なんか値上げしてない? 割増料金!?」
「お~い、お前達、早く来いよ~」
お、もうレベルが一つ上がった。
うんやっぱりいい!
こんなボーナスタイム今度また何時来るかわからないんだから、今日は思いっきり稼ぐぞ!
レベリングは時間効率なんだぞ!
如何に効率的に移動、索敵、殲滅するかにかかってるんだ!
ちんたらやってる暇は無いんだぞ!
「クロちゃん~まって~色々落ちてるんだよ!」
「そんなの帰りにまとめて拾っていけばいい!」
うん、あとあと、競合してる相手もいないんだから拾われる事もない!
「師匠! 少しは敵を分けてください!」
「見つけたら速攻で片をつけろよセリカ!」
分けてる時間なんかないから、打ち漏らしたのを殲滅してくれ。
「だから……敵を……」
じゃあ、どんどん稼ぐぞ!
あれから、2時間ぐらいか?
真っ直ぐ直線距離ならここまで時間は掛からなかったんだろうけど、道が潰れていて迂回したり、裏道なんかのモンスターの群を殲滅したりしたからな。
まあ、目的は経験値かせぎ――あれ? なんか忘れてるような……。
そんな俺達は、死者の都の真ん中にある大きな建物の前までやってきていた。
水路っぽい跡に囲まれた相当広い敷地に建った昔はさぞ……と思われる建物だ。
「大きいですね、師匠」
「でも、ボロボロだよ~」
その建物はかなり大きく遠目で見た時は領主の館かとも思ったのだが……。
「これは、領主の館とかじゃなく……」
「教会ですね」
「え? これ、教会なの!? すごい、良くわかったね~」
これだけ無駄に華美な建物は教会意外に思いつかないからな。
住む場所とかにするには、あの三角屋根は居住スペースはあんまり取れないからな。
それに、あの天辺あたりに教会のマークの半分残ってるしな。
「え~~あの屋根とか高くて面白そうだよ!」
うん、その感想は、どうなんだろうな?
ティナお前登ったりでもするのか?
「ですが、教会と言っても、ずいぶんと禍々しい気配がするのですが……」
確かに、神聖とは程遠い禍々しい気配がするな。
元は白っぽい外壁には、赤黒く染まってる箇所が所々にあるし。
あれ、血痕だよな?
「まあ、滅びた街なんだから……とは思うが、この街に入ってから一番やばいかんじだな」
ゲームだと、あそこに入ってからがダンジョンの本番って感じだよな。
「それじゃあ、早速、入ってみよう! 何か面白い物があるかもしれないよ!」
だがな……ここに入らなくても、外でも十分稼げて美味しいし、中はなんか危なそうなんだよな。
「それに、あの中なら昇格できるかもしれません!」
うん?
昇格…………。
「あ!?」
「どうしたんですか? 師匠?」
やばい、経験値稼ぎに夢中で、それすっかり忘れてたなんてセリカには言えない……。
「いや、なんでもない。まずは建物に入らず敷地のあたりで試してみろ。そこでも十分に空気が違う」
「了解です!」
「じゃあ、早速レッツゴー」
ティナが瓦礫で埋まった水路を越えて一歩踏み込むと……。
「な、なんか、いっぱい出てくる気がするよ……」
うん、俺もそう思う。
そこら中の地面が盛り上がり始めてるからな。
「今度こそ、戦えそうですね!」
「早く、出て来い! いっぱい倒すんだよ!」
ティナはじっと、ゾンビ達が出てくるのを待っている。
「セリカ、一応戦闘終わるまで昇格できてもやるなよ!」
「もちろんです」
そう言って、セリカはグッと剣を握りこみ今にも飛び出そうと――したところで。
「『セイントストーム』、『セイントストーム』もいっこ、『セイントストーム』」
俺は、光の範囲魔法をばら撒く。
「ええええ~~~」
「し、師匠……」
うん、わざわざ出現しきるの待つ必要ないだろう。
「少しは戦いたかったです」
「今日は、アイテムを拾う日にするよ」
肩透かしを食らった二人はなんか不満そうな目をこっちに向けてきているが、気にしない。
「それよりも、セリカ昇格できそうか調べてみろ。ただ、少し危ないからまだ昇格はするなよ」
「はい、えっと……あ、ここでもダメでした……」
セリカの声には思いのほかがっかりした感じがなかったので彼女のほうを見ると……ボロボロの教会の建物の方がロックオンされていた。
うん、そうなるよな。
「じゃあ、探検に出発だね!」
そうして、俺達は、ボロボロの石畳の道を真っ直ぐ教会の建物まで進んでいく。
もちろん、出てきたアンデッドは全て光で焼き尽くしてだ。
「鍵開け~ってやってみたかった!」
教会の扉前でティナがそんな声を上げるように、教会の扉はすでに朽ち果てていて、残骸が少しあるていどだ。
「一応、支援魔法をかけておくぞ」
俺は、念のため防御と魔法防御のバフを全員にかけておく。
「ありがとうございます。それじゃあ早速行きましょう師匠!」
そうして、三人で教会に踏み込んだ瞬間――。
――やめて~~いやあああああ――
――この子だけは、この子だけ……ぎゃああああ――
――神よ我らを……ぐふっ――
――助け……て……――
――こわいよーままー痛いよーままー――
――何故だ! 何故こんな……ごふっ……――
そこにあったのは、白い鎧に身を包んだ集団が女、子供、神父、関係なくひたすら殺戮を続けてる場面だった。
な、何打これ……うげぇ……。
あまりの惨劇に吐きそうになるが何故かそれすら出来ない。
何なんだよこれ……。
教会の中は、まさに血の海だった。
そこら中に事切れた死体が転がっている。
しかし、それでも足りないかのように念入りに心臓を貫いていく、白い鎧の集団。
そこには、一人たりとも生かすことが出来ないという、一種狂気じみた執念すら覗かせる。
そこに、俺をすり抜けて一人の少女が走りこむ。
相当慌ててたのか、途中で死体のに足を引っ掛けて転んでしまう。
そんな少女にも嬉々として剣を振り下ろす白い鎧の男。
そこには微塵の躊躇も見られない。
いや、逆に歓喜の表情すら浮かべている。
なんだよ、これ! 何なんだよこれ!
少しでも助けようと、魔法を使おうとしても、発動しない。
白い鎧の一人に、剣で斬り付けてもそのまますり抜ける。
何がどうなってるんだ!?
俺は、ただその凄惨な虐殺現場を見続けることしか出来ない。
それがどのくらい続いただろうか?
突然何かが……空気のような物が変わった気がした。
ふと見ると、先ほどまで嬉々として襲っていた白い鎧の集団がありの子を散らすように逃げ出し始めているのだ。
それも、俺の後ろのほうを指差しながらそこから遠ざかろうとしている。
うん? 何かあるのか?
後ろを振り向くと……。
「ク~ロ~ち~ゃ~ん~」
…………。
巨大化したティナがこっちに突っ込んでくる。
は? 何だ? その脈絡のない展開は!?
「お~き~ろ~~~~~」
ちょ、まて、ティナ!
それはやばい、すごくやばい。
俺が最後に見たのは、どんどん大きくなっていくティナの足の裏だった……。
「――――ろ~」
「お――――師――」
う? 何かが聞こえる。
う~ん?
「クロちゃん起きろ~~~。う~ん。目覚ましキックじゃ足りなかったか。目覚まし用の撲殺バットがあれば……」
うん? 撲殺バット?
「師匠! 起きてください! 師匠!」
セリカ?
「しょうがない、もう一度目覚ましキックで……」
その瞬間、俺に備わった危険察知能力で無理やり叩き起こされる。
「は!?」
「師匠! 大丈夫ですか?」
「あ、クロちゃん起きた~」
「ああ、なんか顔面が痛いが、大丈夫だ。それより何があった?」
なんか、酷い夢を見ていたよな。
あと、なんか痛い顔に一応、『ヒール』かけておこう。
う、痛みが引くと同時に、さっきまでのシーンをはっきりと思い出してしまった。
『ヒール』使わなかったほうが良かったかもしれない……。
「教会の中に入ったら、突然クロちゃんが倒れちゃったんだよ!」
突然倒れたって何か攻撃でも喰らったのか?
「そうか……あ、二人は大丈夫だったのか?」
「何か邪な気配がしたので、切り捨てました」
切捨てって、それよりもよく気がついたなセリカ。
「寝てる時によく闇の子達がやってくるいたずらみたいな感じがしたから”ぼうぎょ”ってしたらなんともなかったよ!」
うん、ティナの方は、何処から突っ込んでいいか分からない。
だけど、ティナの話からすると……。
「悪夢を見せられた感じか……」
ゲーム内で言うと、過去のシーンの見せられるような強制イベントとかあるからな……あそこまで酷いのはともかく……。
「何を見たの?」
うん、ティナ。ワクワクドキドキって感じで聞いてるけど、そんないいもんじゃないぞ。
「たぶん、この教会がこうなった時の出来事だな」
ボロボロになった教会内部や赤黒く染まった床などに目を向ける。
「それは、聞いて楽しいようなたぐいではありませんね」
「?」
セリカは何を見たのかは大体想像ついたみたいだな。
ティナは……もう少し考えろよ!
「え? え? 何を見たの? 教えてよ!」
「虐殺シーンだよ」
「う……」
なまじ、その現場で跡が残るだけに明確に想像できてしまったのだろう。
ティナは、嫌そうに顔をしかめた。
「まあ、ここで昔酷い事があったのは、理解したけど、それでどうなるのでもないよな。ずっと昔のことだろうしな」
「そうだね~」
「確かに」
ま、ゲームだと、先に進むのに必要だとかはあるかもしれないけどな。
「ところで、セリカ。昇格は試してみたのか?」
「あ、まだです試してみます。………………あ!? ありました! 闇属性の【魔法使い】に昇格できます! さっそ――」
「まて! セリカ!」
と、【魔法使い(闇)】に昇格できると知ったセリカがそのまま昇格しようとするがまったをかける。
「え? 何故です師匠?」
今すぐにでも昇格したそうに尋ねてくるセリカだが……。
こんな場所でレベル1の無防備になるのは少し怖いからな。
まずは、確認だ。
「俺が寝てる間に敵は襲ってきたか?」
敵が出るかどうかの確認だ。
「入った時にガイコツがいっぱい居たよ~」
「私と、ティナさんで殲滅しました。この街に来て初めて戦えた気がします」
そりゃ、居てもおかしくはないよな……虐殺の犠牲者が……。
「その後は?」
「時々ゴーストが襲ってきたぐらいです」
そっか、ゴーストか……。
来るとなったらふいを突かれるな。
やっぱり安全策をとっておいたほうがいいか。
「アンデッドとかの系統以外は出てないか? 虫とかネズミみたいなのとか……」
「生きてるのは出てきてないよ~」
そういえば、アンデッドのモンスターって倒す前って生きてるのか?
死んでるともいえる気がするけど、アンデッドって意味としては死なないだよな?
どうなんだろう?
まあ、いいか。
それはともかく、アンデッド以外が出ないって言うなら、丁度いい魔法があるから保険に使っておこう。
「ちょっとまってろ、転職直後に危なくないように少し保険をかけておく」
「保険? ってなに?」
「保険ですか?」
うん、ティナ保険という言葉の意味を聞いてるんじゃないよな?
まず先に、昇格後の装備解除の対策のために、大きなバスタオルと、【魔法使い】用の装備をセリカに渡しておく。
「これ昇格する時に使え」
「ありがとうございます師匠」
そして、効果範囲をイメージしながら魔法を始める。
「神聖なる――――――
――――――――――
―――――『神聖なる結界』」
『神聖なる結界』の魔法。
魔除けの結界などのように長時間効果を発揮し続けるタイプの結界というよりは、補助魔法に近いものだったりする。
味方に対するバフや敵に対するデバフを一定範囲に一定時間継続してかけるタイプの物だ。
他にも、敵の動きを拘束するものなどもある。
で、今回使った『神聖なる結界』は……。
効果範囲内のフィールドの属性を神聖属性にする効果がある。
フィールドの属性変換の魔法は『漆黒の結界』の闇や、『炎獄の結界』の火など、各種属性にそれぞれ存在する。
効果としては、対象の属性の効果UPと反属性の効果DOWNだ。
ただ、アンデッドは神聖属性のフィールドに居るだけでダメージを受けるので、『神聖なる結界』だけは継続ダメージを与える攻撃手段になったりする。
他の属性については、例えば火属性とかいっても炎の中に入るわけではなくフィールドが属性を帯びるだけなのでダメージってのはまず発生しない。
あと、使う時の制約として、オブジェクトのない広い平らな地形が必要で、壁とかを範囲内に指定できなかった。
魔法を発動する時あらわれる円形の魔法陣が途切れたりするとファンブルになるからな。
他にも、展開した広さに応じたMPを常時消費とか、発動中は動けないとかある。
あ、神聖属性の結界だけは、発動して放置しておくだけで自動的に敵を倒すとかになるからなのか、アンデッドは入ってこなくなったりする。
と言う訳で、アンデッド避けには、魔除けの結界よりも効果が上だったりするのだ。
「うわ~光ってる~」
「すごいです師匠!」
ティナとセリカが白い光を発する円形の魔法陣……あれ? 円形になってないぞ?
一部、壁にかかってるし、何かの残骸とかででこぼこしてる所もあるぞ……。
あれ? これなんで発動できたんだ?
ゲームの時だとファンブルしたはずなんだが……。
まあ、考えても仕方ないか、発動できたんだからよしとしよう。
「セリカ、準備は出来たから。昇格していいぞ。ただ、昇格後は真っ先に即死無効化のアクセサリを装備しろ。解ったか?」
「了解です、師匠!」
セリカはそう返事をした後、一つ深呼吸をする。
「ワクワク、ドキドキ」
「では、行きます!」
セリカが光に包まれ、一瞬肌色が見えるが直ぐにバスタオルに覆われる。
「おめでと~~」
成功したかと、ほっと一息ついて俺も声をかけようとした瞬間。
「おめで――セリカ危ない!」
その気の緩んだ丁度その時、セリカの隣にゴーストが現れていた。
「え!?」
セリカは装備も何もなく真っ裸だ。
「!?!? あ!? 皆、守って~」
ティナは、一瞬反応が遅れている。
俺は、助けようにも『神聖なる結界』効果で動けない。
まるで時間の進み方が遅くなったかのように、ゆっくりとゴーストがセリカに攻撃しようとするのを見ていることしか出来ない。
そのまま、セリカの体にゴーストの体がぶつかる……。
と思った瞬間。
ゴーストが煙のように消えていった……。
「セリカちゃん大丈夫?」
「セリカ大丈夫か?」
「は、はい……攻撃を受ける寸前でゴーストが消えていきました」
流石に昇格直後の攻撃には肝を冷やしたのかセリカが顔を青くして答えている。
よかった……。
本当に危なかった。
「う~ん、でも何で消えちゃったんだろう? 誰か助けてくれた? う~ん、皆違う?」
そうだな、確かにその通りだ。何でだ?
いや、そんな事よりも。
「セリカ、直ぐに装備しろ! 急げ!」
「は、はい。師匠!」
俺の言葉で、慌てて装備していくセリカ。
よし、即死無効化のアクセはちゃんとつけ終わったな。
「ティナ、敵が来ないか警戒しろ!」
「わかったよ、クロちゃ――うわ~なんかいっぱい来た~」
ティナの声と共に、ゴーストが大量に沸き始めた。
結界の中にまで現れてるじゃないか!
あと、奥のほうからスケルトンとかの足音まで聞こえて来てるぞ!
「今から結界を解除する。解除したら直ぐに撤退だ」
「戦わないの!?」
「セリカが転職直後で今はまずい!」
「解ったよ!」
「ティナは、セリカの護衛だ敵を近づけるな! セリカは敵が来ても戦おうとせず守りに徹しろ!」
「了解です!」
「クロちゃんはどうするの?」
「魔法を撃ちまくって道を開く。じゃあ行くぞ!」
そう言って結界を解除しようとしたのだが……。
「あれ? 直ぐに消えていってるよ」
ティナが消えていくゴーストを指差している。
「あ、確かに……」
そうか、『神聖なる結界』の継続ダメージも俺のマスタースキルなんかで増幅されているのか!
『セイントストーム』一撃で倒せるような相手に『神聖なる結界』なんて使ったことなかったからな……。
「クロちゃんどうしよう?」
「自滅して言ってくれるんだからしばらく様子を見よう」
「解りました」
にしても、放置してるだけでも経験値入ってるみたいだなこれ。
楽でい――あ! いい事思いついたぞ!
儀式場を作って目いっぱい効果範囲を広げれば……。
ふふふ、これで経験値の無限増殖が出来る!
敵の出現がひと段落ついたら一旦街からでて準備だな。
次回は、クロの思いついた秘策です!
果たして……。




