第1話 不安な旅立ち
大分、間が開きましたが本編再開です!
準備が整って死者の都に向かいます。
しかし、本当に大丈夫なんだろうかこのメンバーで……。
※2015/08/17
投稿順変更で投稿日時が変わっています。
「おべんとうよ~し」
「よ~しニャ!」
「よ~しだワン!」
「…………(つくった~)」
「…………(とちゅうで、たべて~)」
「テンちゃん、チーちゃんこれな~に?」
「…………(ゆでたまごに~)」
「…………(あじつけたまご~~)」
「おお~~ありがとう~途中で食べるね~」
「…………(コクコク)」
「…………(コクコク)」
「あとは、え? ソウルキャンディ? あ、マユちゃんに頼んだやつ部屋におきっぱなしだ! ごめんごめん直ぐに取ってくるよ~」
早朝、M&Mの前で響くティナの声に色々不安を覚える。
今からどこに行くかちゃんとわかってるんだよな? ティナ?
死者の都とか、呪いの都とか呼ばれる殆どダンジョン化したような場所に行くんだぞ!
そりゃな、ダンジョンに行くにしても食い物は大事だよ、だけどな……まず食い物から確認っておかしいだろ?
そもそも、その辺の準備は全部俺がやったし……。
ティナは自分の装備を確認してくれよ……。
それに比べてセリカの方は、準備万端の完全武装に身を包んで馬車の御者台で今か今かと出発を待ちわびている。
彼女の首には、先日作ったばかりの六芒星のペンダントが光っている。
だけど、あれだと……。
「セリカー」
「何です? 師匠?」
「そのペンダントは鎧の内側に入れておけ。敵に攻撃されて壊されても困るからな」
「了解です、師匠」
あとは……向こうでセリカが転職した後で装備するために作った魔法使い装備もアイテムボックスにちゃんと入ってるな。
他にも、予備の装備、食糧、馬のエサなどなど……。
うん、大丈夫そうだ。
「セリカ、渡した回復アイテムは持ってきたか?」
今回は、HPやMPの回復薬以外に、混乱や恐慌などの精神系の回復アイテムなども用意した。
ゴースト系が出るとしたらそっちも怖いからな。
本当ならアクセサリで無効化したいところだったのだけど……100%の即死耐性で手一杯だったんだよな。
俺の持ち込み品には一応そっち方面の耐性も付いてるけど、俺が混乱して手加減無しの魔法をぶっぱなすとか全滅フラグだから貸し出すわけにも行かないんだよな。
「大丈夫です」
セリカがアイテムボックスから取り出してみせながら答えてくる。
う~ん、それなりに使いこなせるようになったかな?
ただ、とっさの時はわからないから……。
「セリカ、アイテムボックス以外の何時も入れてた場所にも1セット入れておけ」
「了解です」
うん、セリカの方は問題なさそうだ。
問題は……。
「報酬をわすれるな~って? ごめん、ごめん。でもちゃんとこんなにあるし許してよ~」
ティナが何かが一杯入った皮袋を2つほど持って戻ってきた。
独り言を言ってるように見えるが、あれはたぶん妖精達に話をしているのだろう。
「ティナー六芒星のペンダントはちゃんと装備したか?」
「勝手に食べちゃダメだからね! 後でみんなで分けるんだから! って、クロちゃん何?」
ああ、あの袋はソウルキャンディか……。
なんか、妖精達の間で嗜好品のような感じになってるっポイと言う話を聞いたけど、本当らしいな。
それにしても、妖精に報酬の支払いが必要だったのか?
まあ、半分ノリでやってるような気もするけど……。
「俺が作ったペンダントだ、ちゃんと持って来たか?」
「あああ! 忘れてた~~取って来るね~」
おい!
一番大事なものだろ!
まずそこを確認しろ!
あと、もしかして……。
「回復アイテムとかも忘れてないか?」
「…………」
「…………」
「!?………………大至急取ってくるよ!」
なんか急に顔を青くして大急ぎで取りに戻ったけど……ああ、リーフさんか。
怖い笑顔になってるな。
ついでだし、ティナにもう一度釘を刺しておいてもらおう。
なんかすごい不安だけどPTの戦力的にティナは外せないんだよな。
戦力以外の部分でどれだけ問題が大きそうでも……。
完全即死耐性の六芒星のペンダントを作り終わって死者の都に行く準備が整った所で、一つ問題が持ち上がった。
即死耐性のアクセサリの個数だ。
今回作った2つとWMOからの持ち込み品の1つで、合計3つ。つまり3人分しかないのだ。
流石にアクセサリ用意した理由から言ってメンバーを増やす事も出来ない。
なので3人を選ぶ訳だが……。
まず最初にセリカ。これは当然だ。彼女を連れて行って転職するためなのだから絶対に外す訳にはいかない。
次に俺、うちのチームでは回復魔法や補助魔法が使えるメンバーがほぼ居ないので俺も外れる訳には行かない。
で、問題は3人目だ。
まず候補に挙がったのはシーナ、リーフさんの二人だ。
シーナは索敵やトラップなどの対応してもらう為で、リーフさんは遠距離攻撃で支援って感じだ。
だけど、これは諦めざるを得なかった。
なぜかというと、アンデット系のイメージとして物量で攻めてくるというのがあったからだ。
シーナに聞いてみると、「それは否定できないわね」何て答えも返って来た。
彼女達は、単体の敵を攻撃する攻撃力はそれなりにあるのだが、範囲攻撃などの一度に多数を殲滅するような攻撃力に不安があったのだ。
そう考えて、うちのメンバーを見てみると、範囲攻撃がそれなりに出来るのは……。
俺、威力が不安定で殆ど禁呪扱い。
マユさん、一応使えそうだが、鍛えてないので威力に期待できない。
リーフさん、場所(森など)によってはそれなりに使えるけど……今回は使えるかどうか不明。妖精の力を借りるのは……。
アン、【大天使】に戻ればそれなりにできそうな気はするけど……戻り方がわからない。
って感じで単体火力は強いけど、多数の敵の殲滅能力に難があるんだよな、約1名のぞいて……。
ここはすごい悩んだ。
リーフさんも妖精に力を借りる事が出来るから彼女でとも思った。
だけど、彼女が言うには、あれは色々異常なんだそうだ。
本来妖精に力を借りる場合は、その場の属性というかその場に居る妖精にしか力を借りれない。
火山で水の妖精の力は借りれないとかだな。
あと、何気なくとんでもない威力をたたき出してるけどあれは、相当の条件がそろってないと本来出来ないはずなのだとか……。
ある意味戦闘能力と言う面では、妖精のおかげでオールラウンダーなんだよな。
それも相当高い水準の……。
戦力的な事だけを考えるなら彼女以外の選択肢は無いんだが……。
そんな感じで1時間ほど悩んだのだが、最終的に最後のメンバーを彼女……ティナに決めた。
リーフさんにきつーく、きつーく釘をさしておけば数日はもつだろう……たぶん大丈夫……もつといいな……。
と言った感じの経緯できめたのだが……う~ん、早まったかもしれない。
戻ってきたら、うちのチームの回復要員と広域殲滅要員の育成を考えた方がいいかもしれない。
誰か立候補してくれないかな?
――はい、はい、はい、私がやるよ~――
真っ先に手を上げそうなのは、あのバカな気がするのだけど……。
「よ~し! 準備完了だよ~出発だ~!」
ティナがセリカの隣で御者台に座りながら声を上げる。
「師匠、そろそろ出発しましょう」
「そうだな……」
俺は、御者台のセリカの隣、ティナと反対側につく。
後ろにちゃんとした馬車があるのに3人とも御者台に座っているのは何のことは無い。
馬を操れるのがセリカとティナだけだからだ。
そして、その二人だけに馬を任せると……色々不安だからな。
という訳で3人で御者台に居るのだ。
「いってらっしゃいニャー、お土産よろしくニャ~(お魚!!)」
「がんばれワン! お土産ほしいワン!(お肉!)」
「…………(きをつけて~)」
「…………(いってらっしゃ~い)」
「わかったよ! お土産期待しててね~~!」
おい、ティナ今からどこに行くのか本当にわかってるのか?
「ティナ……クロさんとセリカさんの言う事をちゃんと聞くんですよ、もし何か問題を起したら……ふふふ……」
リーフさん、最後に黒く笑うのは怖いよ! すごく。
「ワ、ワカッタヨ! ゼッタイニモンダイヲオコサナイヨ!」
ティナも青い顔で震えてるしな。
「クロさん、気をつけてください」
「ありがとう、レナさん」
「セリカ~転職したらいつもみたいに突っ込むんじゃないわよ!」
「わかってる……たぶん……」
「皆気をつけてくださいね~」
「気をつけるであります!」
「気をつけてください」
「じゃあ、出~~発~~~~~!」
そうして、馬車に揺られる事、数時間。
俺は、セリカに馬の操り方を教えてもらいながら旅路を進んでいた。
ちなみにティナは最初ははしゃいでいたが、飽きたのか後ろの馬車の方に移って居た。
何気に、前に乗った時よりも内装とかが良くなってる気がするのだが……気のせいだよな?
今回は、距離としては、この馬……なんか前よりも力強さを増した感じがする……で一泊二日程だ。
当然普通ならもう少しかかるのだが、今回は関係ない。
途中で一泊、死者の都の近くで一泊して準備を整えて攻略開始と言った予定である。
「師匠、大分良くなってきました。これなら目的地に着くまでに操れるようになりますよ」
「そうか、ありがとうな、セリカ」
まあ、一応騎乗系のマスタースキルはあるはずだからな。
「どういたしましてです」
モンスターとも遭遇しないし、平和な旅だな……。
「ちょっと分けてよ~~」
平和な……。
ドンガラガッシャーン
「まて~~~」
平和……。
「絶対つかまえる~~~」
ドタバタ、ビターン、ゴロゴロゴロ
…………。
「まて~~~」
「おい、ティナ! 何をドタバタやってるんだ!?」
馬の操作はセリカに任せて、御者台の後ろの扉を開いて馬車の方に移動する
そういえば、前は御者台の後ろに扉は無かった気がするんだが……気のせいだろうか?
「あ、クロちゃん~聞いてよ~酷いんだよ~ちょっとぐらい分けてくれてもいいと思わない?」
「は? 何を言ってるんだ?」
「なんかすごく美味しそうに食べてるから、頂戴って言ったんだけどくれないんだよ!」
ティナの言葉を聞いてかどうなのか、妖精さん達が皆で姿を現して口々に反論をしていく。
(ソウルキャンデーは報酬!)
(正当な対価!)
(大事大事!)
(ご主人様がくれたのに!)
(!!!)
(…………おいしい)
(たべちゃった)
(もっとほしい!)
「あ~ティナ。一応ソウルキャンディーは報酬なんだろう?」
「うん、そうだよ!」
「じゃあ、それを取り上げようとするなよ!」
「でも、でも、でも、美味しそうに食べてるんだよ私も欲しくなるよ!」
はぁ……。まあ、分らないでもないけどさ……それでも報酬はとりあげるなよ。
「じゃあ、変わりにこれでも食べておけ」
俺は、つい最近試作してみたベッコウ飴を入れた皮袋をティナに渡す。
他のお菓子と違って、これは砂糖だけで作れるからな。
「これ何? あ! あま~い!」
「まあ、喧嘩せずに大人しくしてろよな」
「え? 欲しい? じゃあ、皆で分けよう~」
うん、ここでさっきまでの事を忘れて直ぐにわける事が出来るってのはある意味すごいのかもな。
ま、ここは放っておいても大丈夫そうだ。
御者台の方に戻ってセリカに馬の操作教えてもらおう。
で、戻った訳だが……。
「おい、セリカ……なんで少し目を放した隙に道から外れて森の中に居るんだ?」
「あ、師匠! さっき襲ってきたモンスターの群に反撃したら逃げ出したので追っかけてました」
うん、モンスターが襲ってきて反撃は良い。
だけど何でそれを深追いする!
逃げ出したなら方っておけよ!
「で、元の道はどっちだ?」
「あれ? どっちからきたんでしょう?」
「…………」
う~ん、俺たちは無事に目的地に着くことが出来るんだろうか?
不安だ……。
次の話は、何とか死者の都に付いたクロ、セリカ、ティナ果たしてそこで待ち受けるものは……。
乞うご期待。




