第6話 白銀の戦乙女の冒険 その2
今回は、白銀の戦乙女の話です。
クロの夢に毎晩出てきてたのは……。
そういえば、皆さんって夢を覚えてる方ですか?
私は、たまに覚えてる事があるのですが、起きて5分で思い出せなくなって不思議に思う事が良くあります。
――キュピーン!――
「なにやってんのよ!」
私が突然上げた声に、即座に臨戦態勢に移行するミコさん。
「な、なにがあったんです! シロさん!」
「あ、ごめん。あいつが悪女にたぶらかされてる気がしたのよ」
しまった。
一応、安全を確保して休憩中とはいえ、ここはダンジョンの中だったわ。
突然あんな事を言い出したら驚くよね。
「シロさんが探してるって言う人ですか?」
「そうよ! 女のカンがキュピーン! と来たのよ!」
あいつバカだから簡単に女に騙されるのよ!
――そんな覚えないぞ?――
私が、危なくなる前に撃退してるのよ!
――撃退って……――
く、今は、そんな事より、あのバカの事よ!
急がないと、取り返しのつかない事になる気がするわ!
「ミコさん、休憩はこれくらいにしてとっととこのダンジョン封印しちゃうわよ! 残りのダンジョンも少ないし急いで終わらせるわよ!」
「それなら、シロさんには大分手伝ってもらったので何とか私一人でも……」
「何言ってんのよ! ここまででも封印が間に合わなかったダンジョンが6つもあったじゃない!」
ここまで、ミコさんとダンジョンの封印のメンテナンスに50個ほどダンジョンを回ったのだけど、最初のもあわせて11個も封印が破られてしまっていたのだ。
大体5個に1個封印が破られてる計算だ。
あと残りのダンジョンは8つの予定だから、1つも破られて無い可能性は相当低い。
「それは、そうですが……。いいのですか? 探してる人の方は……」
「わからないわよ! だけど、ここで放り出して行くっても気持ち悪いじゃない! それに、手がかりが全く無いのよ! ミコさんの勤めてる神社だっけ? そこで情報探してくれるんでしょ?」
「神社ではありません、神龍の社です! 確かにそうですが……。その人の事を危険を感じ取れるなら居る場所も感じれるのではないですか?」
「それが出来たらとっくにやってるわ! もう、とにかく、急いでその神社に行くわよ!」
「だから、神社では無いですって……」
一刻も早くダンジョンを片付けてあのバカを探さないと!
早まるんじゃないわよ!
ダンジョンの封印を終わって外に出ると、真っ暗になっている。
流石に今から次のダンジョンに行っても、体力とかが持たないので夜営する事になった。
回復アイテムなんかを使えば無理はできない事は無いかもしれないけど、今からだと徹夜になっちゃうから。
ゲームの中の時は、徹夜もしたけど、結構寝落ちで死んだからね。
流石にこの世界ではやる気にはなれない。
そんな訳で夜営の準備を整えた後、ミコさんの作った料理を二人で食べている。
「このダンジョンのボスは、やけに弱かったわね。これなら封印といても問題ないんじゃないの?」
「いえ……。今日は……あれから……シロさんが何か鬼気迫るような戦いでしたから……。私が出来ることが殆どありませんでした」
――殆ど、虐殺だったよな。八つ当たりは、ほどほどにしておけよ~――
誰のせいよ! だ・れ・の!
「それにしても、今日はもう一箇所行っておきたかったわね」
「いえいえ、ダンジョンを1つ1日で攻略するのがおかしいんですよ! 私が力を使った時でも、数日かけて攻略してましたよ」
このレベルのダンジョンならそんなに時間掛からないと思うけど……。
ゲームの時だと、もっと面倒なダンジョンは山ほどあったし、これだけ出る敵が弱いんだったらこれでも遅い方だと思うけど……。
「まあ、残りは8つ、後のダンジョンは全部飛んでいくの?」
今まで、ダンジョン間の移動は、転移と徒歩(歩きと言っても移動手段で速度は疾走に近い)だった。
全部に転移が使えればよかったんだけど、ミコさんの力の残量の関係で近いところは節約して徒歩にしていたのだ。
「そうですね、力の残量には余裕がありますし、いけますよ!」
「それじゃあ、明日で全部終わらせ――」
――キュピーン!――
あ……女のカンが……。
さっきよりも、ピンチになってる予感がする!
ど、どうしよう!
このままじゃ、あいつが……悪女にたぶらかされて連れて行かれちゃう!
「シ……シロさん? 大丈夫ですか? 急にどうしたんですか? 顔が真っ青になってますよ!」
「どうしよう……ミコさん……。今すぐあいつの所に行かないと間に合わない気がする! 時間が……無いよ……」
どうしよう、どうしよう!
あいつが、手の届かない場所に連れて行かれちゃう!
どうしよう!
「それは……」
どうしよう、何か無いの!?
連絡取るだけでもいいから何か手段は!?
チャットは……。
ギルドも、フレンドリストもこっちに来て全部消えてるからダメ!
どうしよう、どうしよう!?
「何か……何か……あ! 会いたい人に夢であえるおまじないと言うのがありますが、試して見ますか?」
「おまじないなんて……それに……夢って……夢?」
夢……夢……夢で会う……。
何か、あったような気がする。
ゲーム内でそんなスキルが……。
う~ん、何だった?
「シロさん? 大丈夫ですか? シロさん?」
夢……夢の世界……。
夢の世界?
「シロさん? シロさん!」
あ!
思い出した!
「夢幻の世界!!」
「え? むげんの世界? 無限? なんですかそれは?」
確か、夢の中に作られたダンジョンとかそういう話だったはず。
問題はそこじゃない。
夢幻の世界に特化した職業があったはずだ。
確か、私もマスターさせてたはず。
システム画面を頭の中に表示させ、マスターした職業をかたっぱしから調べていく。
………………。
…………。
……。
見つけた!
【夢使い】よ!
今は、夢幻の世界に特化した職業ということより、夢に色々干渉できる『夢使いの極意(M)』の方が重要だわ!
ゲーム内だと確かネタ的な使い方があったはず……。
相手の夢に現れてメッセージを残すとか言う、チャットの方が早いじゃんっていう本当にネタにしかならないスキルだ。
一度、あのバカにやられてすごく驚いた覚えがある。
――あの時は面白かったよな~――
黙りなさい!
今はそれよりも、スキルの話よ!
受信時も、寝たときに限られるので、あいつがやったみたいに、ドッキリとかサプライズ的な使い方しかされてなかった。
「ミコさん、悪いけど、今日の見張りとか全部お願い!」
「え!? それはかまいませんが突然どうしたんですか?」
「夢の中であいつに、会うスキルを思い出したのよ!」
「そんなスキルがあるんですか!?」
「というわけで、夢の中に行く為に今すぐに寝るわ」
「はい……。本当にそんなスキルが……」
シロさんは、半信半疑な様子だがそんな事を説明してる暇は、今は無い!
『夢使いの極意(M)』を発動させてあいつの夢に突撃するわよ!
発動条件は……。
…………。
……。
何らかの相手との絆ね……。
ギルドメンバー、フレンドリスト、PTメンバー、他……。
でも、これなら大丈夫!
私達には、幼馴染の大切な絆がある!
左手の薬指に嵌った、輝くリングにキスを1つ。
『おやすみなさい(M)』のスキルで即座に夢の……せ……か……い……へ……。
翌朝、ミコさんに夜の番を全て任せてしまった事を謝罪する。
「それよりも、昨日は、探し人さんに会えたのですか?」
彼女、目の下に少し隈が出来てるわね……悪いことしたわ。
「もう、ばっちりよ! しっかり言い聞かせたから。これで暫くは大丈夫よ!」
「そうですか。それはよかったです」
「それじゃあ、今日中に残りダンジョン全部封印終わらせるわよ!」
早く探しに行かないと!
「それは、いくらなんでも無理です」
「早く終わらせてあいつを探さないといけないんだから急ぐわよ!」
無理でも何でも急ぐのよ!
「夢の世界で会えたって言うなら、そこで会う約束とかすればいいのではないでしょうか?」
「あ……」
そうよ! 何故気づかなかったの!?
あのバカの居る場所を聞くなり、こっちに迎えに来させるなり出来たじゃない!
「今日の夜にでも試してみてはどうでしょうか?」
「そうね、そうするわ」
連絡が出来るようになったのは良かったけど、相手が寝てないとダメな点はやっかいね。
そして、そのまた翌日。
なによ、あのバカ!
昨日の夢の記憶があいまいだとか!
なんか説教されたような気がするとか……。
はっきり覚えておきなさいよ!
迎えに来いって頼んでも、記憶に残らないんじゃ意味無いじゃないの!
あと、M&Mってなによ!
どこよそれ!
地図にも載ってないし、ミコさんも知らないって話だし!
知らない地名言われても分からないわよ!
というか、もっとちゃんと受け答えしなさいよ!
寝ぼけてるとかどういうことよ!
「あの……無理やり夢の中に入るんですから……影響があっても……」
次の章は……ついにあいつが……。
※夢幻の世界
夢の中の世界という設定で、お手軽に箱庭世界を作り公開できるシステム。
夢の中という設定は、「夢の中なら何がおきても、世界観壊さないよね」と言う見も蓋もない理由だったり。
(詳しくは6-2 目覚めたミルファにて)




