第1話 冒険者ギルドに登録だ~
大分、あいてしまいましたが、更新再開です。
これからもよろしくお願いします。
今朝は、冒険者ギルドにやってきていた。
前回朝早くに来た時は凄く混んでいたから少し遅めだ。
何しに来たのかというと、ちびっ子達(ティナ以外)やリーフさん、レナさん、ミルファさんの登録だ。
うん、登録に来たんだけど……。
受付で、キツイ感じの受付嬢が、俺とティナの顔を見ていやな顔をした。
受付が顔に出していいのか!?
心あたりが無いとは言わないが……。
その上、「ギルドマスターお願いします」と、他の冒険者と雑談していたガロウズのおっさんに丸投げされた。
おっさんが、「今、ちょっと忙しいから他まわせ」とか言うのを、キツイ受付嬢は、ひと睨みで黙らせられてるし……。
ギルドマスター立場弱いな。
じゃない、俺たち厄介者!?
ううう……やっぱり心当たりがありすぎる……特に、どこかのちびっ子!
「しょうがねぇな~」
そんな事を言いながらガロウズのおっさんが受付にやって来て、手続きを始める。
おっさんまで、めんどくさそうな顔するなよな~。
さて、今回ちびっ子達他の冒険者登録をしに来た理由は、昨日の夜にさかのぼる。
「なかなか、いい感じね。で、何時から工事を始めるの?」
「明日の朝にでも、ティナとリーフさんに建物を目隠しの為に覆ってもらってから始めようと思う。他に何か意見とかあるか?」
夕食後に、ギルドコアの前で、具体的な大浴場パワーアップ計画について皆に相談していたのだ。
内容的には特に反対意見は出ずに、追加でいくつか希望がでたくらいだった。
・バーカウンター(シーナ)
お酒がなければ意味が無いと保留に……。
その代わり、ワインセラーの様なお酒の倉庫(ワイン以外もお酒の保管が出来る)を一室作ることになった。
・裏口から大浴場への直通転送ゲート(ミルファさん)
狩の後、廊下を通ると汚れて掃除が必要なので、裏口から直通で大浴場にいけるように。
拠点内の移動用の転送ゲートは、廊下や扉などの延長のようで、少し高めの扉ぐらいのGPだけで設置が出来た。
・テラスや展望フロアのデザイン(レナさん他、女性陣)
デザインで要望が出たので、デザイン的なものは女性陣(ちびっ子除く)に丸投げした。
・森林浴が出来る部屋(リーフさん)
室内に森を作るのは……って事で却下。
エルフの森にゲート繋がってるしな。
そのまま、問題なく次の日の朝……つまり今日の朝から建築を始めるはずだったのだが……。
「お風呂は静かに入りたいです……」
マユさんのこの一言から空気が変わった。
「確かに……」
「そうですね……」
シーナ、ミルファさんも賛成する。
レナさん、アン、セリカは、特に気にしない感じだ。
「あなた達、もうちょっとお風呂は静かに入るようにしなさい」
リーフさんも静かにお風呂に入りたい派のようでちびっ子達に注意する。
まあ、ちびっ子達は当然のように、大反対。
「ええええ~~~~」
「ワン~~~」
「にゃ~~~」
「…………(あそぼうよ~)」
「…………(およごうよ~)」
ちびっ子達は、リーフさんと睨みあって一歩も引かないぞと対峙している。
リアルの世界の感覚だと、マナーとかでリーフさんの方が正しいような気はするんだが、この世界だとそういう事もなく今回はリーフさんの押しが弱い。
でもな……俺もお風呂は静かに入りたいぞ。
そんな事を考えながら、
「泳いで遊びたいならプールでも作ったらどうだ?」
と、ポツリと何気なく呟いた一言にちびっ子達が反応してしまった。
「プール?」
「るーぷにゃ?」
「ぷーワン?」
「…………(プルル?)」
「…………(プルルン?)」
すぐにちびっ子達は、ギルドコアでプールの検索し始めた。
「これにゃ!」とか「これだよ~」とか、「ワン!」とか、「「…………(これ!)」」とか相談している。
まあ、プール程度なら特に問題起こらないだろうから好きにさせるか。
「泳いだり遊ぶのはプールで、お風呂は静かに入るってことでいいな?」
そう確認を取る。ちびっ子達以外は皆うなづいていたんだが……肝心のやつらは……プール選びで聞いてなかった。
あとで、ちゃんと言い聞かせておかないとな。
そんな感じで、ちびっ子達を残して大浴場パワーアップ計画の相談は終わった。
で……、今日の朝食時だ。
「プール作るのにGPが足りないから、みんなで稼ぎに行きたい!」
ティナを筆頭にちびっ子達が声を上げた。
プールってそんなにGPが必要なのか……。
まあ、稼ぎに行きたいなら……。
リーフさんの方に目線を向けてみると、彼女は「いいです」って感じで一つ頷く。
「まあ、無茶しないならいいんじゃないか?」
「本当!」
「ワン!」
「ニャ~」
「…………(ワーイ)」
「…………(ワーイ)」
「それなら、冒険者ギルドに登録した方がいいんじゃない?」
確かに、そろそろ登録してもいいころあいかもしれない。
街の中にはそれなりに獣人も居るし、色々見られているから隠す必要性も薄そうだからな。
「それなら、リーフさんも登録して置きませんか? これを着けて置けばエルフの特徴を隠せますし」
リーフさんに、先日採掘してきた幻惑石で作った木の葉型の髪飾りを渡す。
「特徴を隠すですか?」
彼女は手にした木の葉型の髪飾りを頭につける。
すると、エルフの特徴的な尖った耳が普通の人の耳のように丸くなる。
また、整いすぎた見た目が気にならないようになる。
「確かにそれならエルフって感じはしないわね」
シーナが感想を口にする。
うん、彼女が見分けれないなら大丈夫だろう。
「ありがとうございます。これなら耳を帽子に隠して窮屈な思いをしなくてすみます」
リーフさんは、髪飾りに手を当てて嬉しそうにしている。
「で、登録はどうします?」
「はい、これなら問題ありません。これで、ティナ達の訓練にいい依頼を探せます」
「え゛!?」
ちびっ子達からは、冷や汗がだらだらと流れている気がする。
すまん……許せ、ちびっ子……。
スパルタ特訓(冒険者ギルドバージョン)が始まりそうだ……。
ちびっ子達の冥福を祈っていた所で、
「それなら、わたくしも登録したいです!」
レナさんが真剣な表情をこちらに向ける。
「それは……」
ちびっ子達とは違って、彼女は一応第三王女で色々面倒な立場だからな……。
「だめでしょうか?」
悲しそうに小さく声にする。
やっぱり、外とかに自由に出たいのだろうか……。
城の塔の上に閉じ込められたと時よりはましではあるんだけど、このままずっと自由に動けないってのもあれだよな……。
「色々狙われたりしないか?」
暗殺とか色々危険が……まあ、店番とかで情報の隠蔽は今更感があるけど……。
M&Mの中なら、そういった危険は殆どないからな……色々チートの設備のおかげで。
それでも、冒険者ギルドに登録ってのは……。
「大丈夫です! クロさんが守ってくださいますから! 守って……くださいますよね?」
な、なんか信頼が重い……。
「俺が守れないことも……」
「大丈夫です! ミルファが居ますし、街の中に入る時はクロさんと一緒にいればいいですから!」
「レナは、何があっても守ります!」
う~ん、それなら……。
まあ、考えようによっては、冒険者と身分を作って置くのは良い事かも知れないな。
丁度、リーフさんに渡した髪飾りと一緒に作っておいた、個人情報隠蔽する腕輪が役に立つな。
2つあるから、レナさんとミルファさんに一つずつ渡せば、『人物鑑定』スキルなんかは誤魔化せるだろう。
そんな感じで、冒険者ギルドに加入してないメンバー皆を登録させる事になった。
ああ、アンは生産者ギルドの見習いだから冒険者ギルドには登録はしない。
それにしても、本当に……レナさんの信頼が……。
とまあ、ぶっちゃけるとちびっ子達のプール費用を稼ぐついでって感じだな。
そんな事を考えてる間に登録用紙に書き込みが終わったようだ。
ちなみに、ちびっ子達はリーフさんが代筆している。ティナが書こうとしたのを取り上げたのだ。
「ちびっ子共は、『冒険者見習い』でいいのか? これから冒険者としてやっていくんじゃないのか?」
タマ、ポチ、天狐、地狐は、職業欄を『冒険者見習い』としたみたいだった。
まあ、細かく書くと色々問題が出てくるからそんな感じでぼかす感じがいいよな。
「まだ、どんな職業をやるのが決め切れていませんから……」
そんな風に誤魔化しておいた。
「そっちの嬢ちゃんは、『弓使い』か……初心者って感じじゃねぇな。なかなかやりそうじゃねぇか」
「よろしくお願いします」
リーフさんは、『弓使い』。
まあ、無難だよな。これならエルフを思い浮かべる事もないだろうしな。
「で、盾もった嬢ちゃんは、『戦士(盾役)』かぁ。お前達のチームの壁役って所か……結構硬そうだな今まで登録してなかったのは訳ありか?」
「気にしないでいただけると……」
ミルファさんは『戦士(盾役)』、おっさんの言葉に検索無用と釘をさしている。
「で、そっちの綺麗な嬢ちゃんが……『メイド見習い』か……メイドって職業は少し気になるが……あいつら凶悪なやつらは恐ろしいからなぁ」
「がんばります!」
レナさんは、『メイド見習い』、手を握り締めやる気をアピールしてる……のだけど……可愛いしぐさと感じてしまうのは……冒険者としてどうなんだろうな。
まあ、身分の高いミルファさんに仕える、メイド見習いのレナさんって感じに思わせておけばいい。
お姫様がまさかメイドになってるとは思わないだろうからな……。
「で、加入クエストなんだがなぁ。おめぇ達が受けたときよりも変則的になってきてるんだわ。雑用10個の方はあいかわらずなんだがなぁ」
俺やティナの方を何か苦虫を噛み潰したように見ながら説明を始める。
その内容は、おっさんが言うとおり大分内容が変わっていた。
まず、薬草採取。
これがしばらくの間、クエストから外されているようだった。
高値ではあるが回復アイテムが一応市場に出回るようになったので、群生地の復活を目指す為に採取禁止になっているそうだ。
特に元々大きな群生地があった場所などは種を蒔いてある程度復活するまで24時間体勢の警備もするらしい。
それにしても、商人は利に敏いよな。回復アイテムを他の町から持ってきて、帰りはだぶついてる素材を買い叩いていくとか……。
ゴブリン退治の方は、ある程度森なんかだと数が回復しているそうなんだが、街の周りに出現するほどは戻ってないらしい。
ぶっちゃけると、森の外で狩をする必要があるほど数が居ないってことらしい。
それで、無理にゴブリンを倒そうとすると、森などに行って戦う事になってしまって逆に危険だから此方も停止中ということだった。
その代わり、最下級のランクのモンスターなら何でもいいことになっていた。
あと、一つ上のランクのモンスターもそれなりの経験(ランクE以上)を持った冒険者の引率があれば、そっちでもOKらしい。
こっちは、PTやチームメンバーへ勧誘されたような場合を考えているようだった。ま、回復職とかは引く手数多だろうからな。
俺達の冒険者ギルドのランクは……どうだったかな?。
確かセリカがランクCだったよな。
まあ、あいつは、ひたすらモンスターを狩りまくってたからな。
次に高いのが、マユさんとティナでランクDだったはずだ。ティナの方は、今カードを見せてもらったから間違いはない。
結構狩に出かけているティナはともかくとして、マユさんがランクDなのアイテムの納品系の結果だろうな。
残りの、俺とシーナはランクEだ。
F→Eに上がってるのもPT(チーム)として登録してる為に他の皆の達成分で上がってる感じだしな。
シーナもEだよな? そのはずだよな? なんかシーナは、何気なく受けてそうな気もするけど……。
まあ、シーナもサボリ組みって事で……。
ちなみに、この世界でのPTとチームの違いは、単純に6人以上でPT組む時にペナルティが出るので、それ以上の人数で活動する場合にはチームとなるらしい。
まあ、WMO内での小さなギルドって感覚みたいだ。
「なんか楽になっててずるいよ!」
ティナが苦労してゴブリンを倒した事を思い出して口にしたんだろう、その言葉をおっさんが聞きとがめる。
「薬草の方はともかくとして、ゴブリンの方は……おめぇ達にも半分くらい責任があるんだがな……」
う……。
隣で作業をひと段落させたキツイ感じの受付嬢さんと一緒に冷たい視線を向けてくる。
俺たちが何をしたっけ……あ、コロスライムの巣をしばらく使えないようにしたな……。
「なんかしたっけ?」
おい、ティナそれ以上聞くな墓穴を掘ってる!
「はぁ……わかってねぇようだから。説明しておいた方がよさそうだな」
ため息交じりでおっさんが説明を始める。
まあ、まとめると、うちの奴等は普通の高ランクの冒険者が襲ってこなければ無視するような低ランクのモンスターも軒並み殲滅してるってことらしい。
確かに……ティナ(妖精達)の索敵範囲の広さと、徹底したサーチアンドデストロイだと……初心者の狩場に丁度いい草原なんかでぽつぽつと出現するモンスターなんか根絶やしにされるよな……。
注意しようにも、実力はともかくギルドランク自体は低くて文句も言えなかったらしい。
「解った、それじゃあ変異種なんかの特別なモンスターが出たりしない場合は低ランクの狩場は、家のメンバーには避けるように言っておく」
俺がそう答えたのだけど、その答えに対してもおっさんは少し微妙な表情を浮かべている。
なんだ? 初心者用の狩場を荒らさないようにすりゃいいんじゃないのか?
「う~ん。実力のある奴が低ランクの狩場を通ること自体は此方としてはうれしいから、難しい所なんだよなぁ」
「え? 高ランクの冒険者が、その辺に行ったら問題になった乱獲とかするんじゃ?」
「普通ならそんな稼ぎの悪い事はしねぇんだよ。その辺はおめぇらがおかしいんだ。だが、さっきも言った通り行ってくれるなら、こちらとしてはうれしいんだよ」
「何故?」
「低ランクの狩場とは言え、稀に手ごわい変異種とかが出てくる事があるからなぁ。ひよっこ共だと情報を持ち帰るのも難しいんだよ。そんでぇ、結構な犠牲が出ちまう事があるんだよなぁ」
「そういうのを見つけて狩って欲しいと?」
確かに、WMOの時の情報だけど、変異種とかっていうのは、全てのモンスターに低確率で発生だったはずだからな。
数が多いザコはもちろん、MAPで1匹だけしか出現しないBOSSでも極稀に変異種の話を聞いたことがあったな。
前に逃げ帰ってきたオーガキングが変異種のBOSSの疑いはあるんだよな。最初に変異種引くなんてとんでもない悪運な気がするんだが……。
そういえば、あいつどうなったんだろう?
討伐の報告なんかも聞かないよな。
「まあ、情報持ち帰ってくれるだけでもうれしいんだよ。あと、ピンチになってるひよっこ共なんかが居たら助けてくれるとありがてぇ」
ま、情報を持ち帰るというよりは撃破になるだろうな家のメンバーの場合。
逆に逃げなければだめな変異種とかだと、下手に手をだしても犠牲が増えるだけな気もしないでもないよな。
あと、ピンチになってる冒険者の方の救援の方は、ちびっ子達でも普通にしそうだから問題ないよな。
「まとめると、低ランクの狩場を荒らさないように、だけど避けずに通って欲しいと……」
「ま、そういうことだなぁ。ひとつまぁ、頼むわ」
「一応、話しては置くけど……どうなるかは……」
「それでいい、頼む」
俺の言葉に、おっさんはニヤっと笑みを浮かべる。
「モンスターを出来るだけ倒さずに……ですか……。丁度いい訓練になりそうですね」
リーフさんの不穏な呟きが聞こえたような……。
ちびっ子達の冥福を祈っておこう。
冒険者ギルドでのやり取りの後、俺たちは、街の近くの森にやってきていた。
セリカが前に、ゴブリンの変異種を倒したと言っていた場所だ。
その森の入り口で、俺たちは二手に分れる事にした。
ちびっ子&リーフさんチームと、俺、レナさん、ミルファさんチームだ。
「まずは、この森の深部まで、出来る限り敵を避けて突破します! ただし、強いモンスターがまぎれている場合は殲滅です!」
ちびっ子チームの指揮は当然の様にリーフさんが取っている。
うん、加入クエをしに来たリーフさんが、ティナ(ランクD)込みで指揮をするのは……とか思わないでもないがまあ、何時も通りか。
「じゃあ、ガンガンモンスターを倒していく――ギャウン」
普通通りにサーチアンドデストロイで行こうとしたティナにリーフさんの雷(鉄拳制裁)が入る。
うん、ティナ話ちゃんと聞いてないだろ!
その後、凄いプレッシャーを放ちながらもう一度リーフさんが説明を繰り返していた。
「わ・か・り・ま・し・た・ね!」
「了解!」
「わかったニャン!」
「了解だワン!」
「…………(コクコク)」
「…………(コクコク)」
ティナの口調が変になっていたり、残りのちびっ子達が半分涙目だったのは……見なかったことにしておこう。
ドナドナの如く、森の奥に連れられて行った。
助けを求める五対の瞳が……心に……。
「まあ、色々あったような気がするけど、気を取り直して俺達もクエストを始めよう!」
「はい、がんばります」
うれしそうな笑顔のレナさん。
自由への第一歩だからだろうな~。
ちびっ子達のスパルタ特訓に連れて行かれなくてうれしいとかじゃないと思う……。
「よろしくお願いします」
ミルファさんの方は真剣な顔つきだ。
万が一にもレナさんに危険が無い様にしようとか思っているんだろう。
まあ、ミルファさんの方は問題ないだろうから、レナさんの方をどうするかだな。
適正レベルのダブルスコアはおろかトリプルスコアもゆうに超えてるから問題ないとは思うけど……。
まずは、森の中を索敵してモンスターを探してみる。
俺は『索敵(M)』スキルで余裕で発見できるが、危険な場合を除いてレナさん達が見つけるのを待つことにする。
「あ、あそこにゴブリンが居ます!」
少し緊張した面持ちでレナさんがゴブリン達の方を指差す。
近くのちょっとした広場のような所に5匹ほどのゴブリンがたむろしている。
まだ、俺たちの事は発見されていないようだ。
「まずは、1匹残して倒してしまおう。俺が3匹倒すから、ミルファさんはレナさんを守りながら1匹を……」
「わかりました」
ミルファさんは頷きをかえす。
「私は、どうすれば?」
「まずは、ミルファさんの守りやすい位置に動く事を考えて」
「わかりました!」
う~ん、レナさん少し硬くなってるけど大丈夫だろうか?
そんな感じで役割分担をしたんだが……。
所詮ゴブリンだよな。
瞬殺に近い感じで残り1匹となっていた。
「あとは、レナさんがんばるんだ!」
その残りの1匹のゴブリン、小さめのこんぼうを手したレナさんがそれに対峙する。
ミルファさんは、その戦いに割って入ってレナさんを守りたそうにしていたがそれは止めている。
いざと言う時、レナさん一人で戦えるってのも大事な事だからな。
ゴブリンが手にしたこんぼうの一撃を慌てて後ろに下がって避けるレナさん……あ、木の根で躓いてこけた!
「レナ!」
慌てて飛び出そうとするミルファさんの腕をがっちりとつかんで様子を見る。
本当に危ない時は介入するがまだ、大丈夫だ!
転んだレナさんに対して、好機だとおもったんだろう、ゴブリンがこんぼうを振り上げる。
そのままの体勢で後ずさるレナさん。何とか回避したみたいだ。
だけど、一撃目はいいけど、そのままだと……あ、いわんこっちゃな木にぶつかって止まった。
ゴブリンはもう一度こんぼうを振り上げて……振り下ろす。
レナさんは慌てて地面を転がる。
うん、動きは悪いけどステータスの高さで無理やり動いてる感じだ。
そんな感じで何とか避け続ける感じが続いた後……。
避けきれずに、ゴブリンが振り下ろしたこんぼうをレナさんのこんぼうで受け止める。
「きゃぁぁ……あら?」
受け止めたこんぼうの衝撃が思いのほか弱かったのだろう、不思議そうな顔をして力ずくで押し返している。
あ、吹っ飛ばした!
まあ、いくら成長率が悪い【プリンセス】とはいっても、あのレベル差だからな。
「これなら……」
ゴブリンをぶっ飛ばした事で余裕が出たレナさんは立ち上がって駆け出すと、飛ばされて動きが鈍っているゴブリンにこんぼうを振り下ろす。
グシャリと何かが潰れる音がする。
見事にレナさんのこんぼうがゴブリンの脳天を叩き潰していた。
「や、やりました! クロさん、やりましたよ~!」
うれしそうにはしゃぐレナさんを見ながら、命を奪う忌避とかそういった精神的なダメージがなさそうでひとまずは安心する。
「さすが、レナです」
ミルファさん、さっきは飛び出そうとしてたじゃないか!
その後、それぞれレナさんとミルファさんが、ゴブリンを5匹ずつ倒した所で、冒険者ギルドに戻った。
ゴブリンを倒してきた事で少し嫌な顔をされたが、レナさんに無理をさせる訳には行かないからな。
他のメンバーはともかく、レナさんだけは普通の初心者冒険者に近いからな……。
ちなみに、ちびっ子チームは、夕方遅くまで狩りを続けて、通りがかりに倒したゴブリン数匹と、おなじみキリングベアーを人数分もって行ったらしい。
リーフさんによると、キツイ感じの受付嬢が頭痛をこらえるように対応してたとか……。
うん、初心者が狩るモンスターじゃないよなあれ……。
まあ、何はともあれ、皆無事に冒険者ギルドの加入クエストをクリアする事が出来た。
「GP全然たまらなかったよ~~~」
ティナが嘆いていたり……。
「これで、クロさんと街にお買い物にいけます!」
レナさんが何か呟いていたり……。
まあ、何はともあれ無事に終わってよかった。
次の話は、やっとお風呂の改築です!




